
枠にはめられているから自由を感じることができる
──また、全曲の詞を読んで「自由」がキーワードになっているんじゃないかと思いましたが、今回はそういうモードだったんですか?
Leo:実際それが人間にとって一番大切なものってなんだろうなって思うんですよ。僕は日本語で歌えないので英語ではありますが、和訳を付けて歌詞を読んでくれた人にちゃんと言葉を伝えたいと思うし、生きていく上で大切なものを素直に書きたいと思ったんです。尊敬している詩人が何人かいて、そういう方に対するリスペクトもあるし、俺が読んで"ワー!! "ってこみ上げてくる感じを、僕の歌詞を読む人にも感じてもらいたいし、そういう表現をしたいというのが衝動としてあって。
──The John's Guerrillaのライブも、フロアをステージにしたり自由度が高いですよね。
Leo:自由ですね。さっきずっと思っていたんですけど、自由って枠があったり法律で決まっているものがあるから、枠を外れた時に自由だと感じるんですよね。枠がなければ自由もない。芸術もない。全て自然なんですよ。僕がやっていることは、枠だと人が考えているちょっとした枠を外しているだけなんです。枠がなければ自然と一緒ですよ。自由というのは、与えられるというよりも自分でなろうとすればなれる。僕はその反動で自分から鎖をどんどんはめていくんです。結局自由って100とかマイナスじゃなくてゼロの状態なだけで、100からゼロ、マイナスからゼロになれば、それが自由なんです。そうやって、自分から下がったり上がったりを楽しんで行ければ良いんじゃないかと思っています。
──気持ち次第?
Leo:気持ちというよりは、その人の歩き方次第。簡単なことでもないけど、僕はなるべく自由を感じられる人生を歩きたいとずっと思っていて、枠とかしがらみだらけだけど、枠を作ったことで感じる楽しみもあるんです。だから最後の『Carnival For Unity』で、「毎日恋をする」って歌ってるんです。
──それって、いろんな意味を含んでません(笑)? でも、『Carnival For Unity』は、まさにお祭りのような賑やかなサウンドで自由の象徴のようにも感じましたよ。音で言うと、木琴とかも入ってますよね?
Leo:あの音、かわいいですよね。でもすごく大変だったんですよ。シンセで作った木琴の音なんですけど、アレンジでくっきり聴かせるために3トラック重ねているんです。
──それと、T-REXの『TWENTIETH CENTURY BOY』は完全にThe John's Guerrillaのモノになってますよね。この曲はライブでやっているそうですが、昔から好きだったんですか?
Leo:T-REXの妖術性というか見えないものを信じる感覚が好きで、ライブでやっていて評判も良いんですけど、レコーディングしようかって言われた時は、本気でやろうというよりはどれだけバカ騒ぎしてやろうかって思ったんです。変なかっこつけというのは、まず止めようって。バカ騒ぎしてる感じをどうやって出すかというところに重点を置きました。
──かっこつける感じを止めたっておっしゃってましたけど、そういう部分で昔に比べるとタイトになったと感じる部分ってありますか?
Leo:この曲の中で、人が一番注目をするところはどこだろうという部分に重きを置きましたね。だから情報量は変わってないんだけど、メリハリを付ける作業が増えたのかもしれません。今まで培ってきたものを削ぎ落としたというよりは、表現の仕方のひとつであって音楽的アプローチの幅を変えただけなんです。変化したというよりも、こういうのもできますよっていう。
──それをつい"変化"という言葉にしたくなってしまうんです(苦笑)。
Leo:そうそう。でも、僕としては変化と聞くと、うーんって感じもするんです。そういう表現を使っただけなんだけどなっていうのが一番近い。前からできないことではなかったし。例え話が出来るようになったのも今年からだし、物事を客観的に見れるようになったし、僕も日々変わっているように、前作に比べたら、ちょっと表現の仕方を変えただけで。でも、メンバーの意識は変わってきましたよ。特に最近ドラムは見違えるほどに変わりましたね。少し前からBRAZILIANSIZEのParock86くんにドラムを見てもらい始めたら、1回すごくヘタになって、ヤバイってなったんです。でも、Parock86くんからは「習うと1回ヘタになるけど、そのあと戻るから大丈夫(笑)」って言われていて、そこからすごく成長して来てます。意識も変わってストイックなドラムを叩くようになりました。Parock86くんは恩師ですよ(笑)。
快感か不快かという感覚が大事
──ところで、タイトルが『UNITED DIAMOND』ですけど、これはメンバーをダイヤモンドと喩えて、結合してThe John's Guerrillaになって、一番輝いているというイメージですか?
Leo:僕は、輝いている曲が集まったというところで『UNITED DIAMOND』にしたんです。メンバーに「お前は輝いてるダイヤモンドだぜ」っていうのは恥ずかしいです(笑)。でも、DIAMONDをメンバーっていうのも正しいと思うし、実際そうだと思います。その曲を作ってるのもメンバーと僕だから、究極はメンバーになるんですよね。美しいものの集合体というイメージ。
──また、1st.の時は1枚の中で日が昇って沈んでというドラマがありましたけど、今回は1曲1曲がドラマ性があるというか、そういう6曲を集めた短編集という感じがしました。
Leo:今回『Peace』を作り終わった時に思いつきましたけど、1枚でひとつの祝祭なんです。そうすると、初めは国歌斉唱で、その後いろんなところでいろんな音楽が始まって、『TWENTIETH CENTURY BOY』でスーパースターのT-REXが出てきて、最後に『Carnival For Unity』で団結して終わる。僕は進化前に行われる祝祭を1枚でイメージしています。音楽的にはシングル集みたいなニュアンスが強いですけど、初めと終わりのイメージを作り上げて、あとは人が入りやすい隙間を作ったんです。その中に、どこかひとつ気に入る場所を見つけてもらえたら嬉しいです。
──では、曲を作る上で大切にしていることってどんなことですか?
Leo:空気感と、快感か不快かは大事だと思う。それ以外ないんですよね。音楽って何か良いねとか何か良くないねしかないので。その何かってみんな頼りないもので、1週間したら変わってしまうかもしれない。その中で、ダイレクトな人間の感覚を大切にしたいとも思うし、時代にも近づかないといけないとも思うし。
──でもThe John's Guerrillaの曲は、何年経っても風化されない感じがあります。
Leo:英語で歌っていて流行りの音楽とはパッと見違うんだったら、時代を超えていくぐらいのものをちゃんと作っていかないと置いていかれちゃいますよね。でも、先を走り続けていれば後が追いかけてくれますから。曲の書き方に関しては、そういう気持ちで作りました。
──それと、Rooftopとしては海外でライブをやられてアメリカでのツアー(2009年6月)以降インタビューをしていなかったので少しお聞きしたいのですが、やはり海外でのライブ経験から得たものってありますか?
Leo:あのライブは、非常にタフでした。期間は1週間ぐらいでしたけど、ライブが3日連続であって、飛行機を含めた移動日が2日。良い修行というか、僕最近スタジオを作ったので毎日音楽に接することができますけど、あの時はもちろんそういう生活ではなくて、ただ音楽のことだけを考えたミュージシャンとして人生を生きるたったの1週間なのに、人生の記憶に残る1週間でした。あのツアー中に、メンバーと話したことや自信は、いつどんな形で返ってくるかはわらかないけれど、気付かないところで出てきていると思う。表現の糧にはなっていると思う。『UNITED DIAMOND』のどこかに入っているかもしれませんし。今は、またアメリカにも行きたいと思うし、より世界を意識し始めています。
──アメリカ以外に行ってみたい国ってありますか?
Leo:韓国に行きたい。今韓国から来て日本で活躍されている人ってたくさんいますけど、インディーズのシーンでその逆ってあまりないので、行ってみたいと思っています。
──日本語の歌詞じゃない分、どの国でも受け入れられる幅は広がりそうですよね。
Leo:そうそう。しかもこんな顔だから、反日感情もクソもないんですよ。それって悲しいことでもありますけど、海外で活動するにはメリットでもあるんですよね。22歳の時にアメリカに行って、これまでにも夢は5年ごとに叶ってきているんですよ。次の5年後には海外でCDを置きたいと思っています。フランスと韓国で出したいんです。
──私、海外に行ったことがなくて、だから実のところを言うと英語の歌詞だけでは何て言ってるかもわからなくて、今回も最初はインターネットの辞書を駆使して歌詞の意味を調べたんですよ。
Leo:そういうもんですよね。だから和訳を付けたいって言っているんです。今回は付けてもらいましたけど前回は付けてなくて、和訳が知りたいっていう意見もチラホラあったし、なにより僕自身が伝えたかったから、意見を押し通しました
──聴く側は何を唄ってるかも知りたいですからね。それと、今だから言いますけど、The John's Guerrillaが"サイケデリック"と例えられている時に抵抗を感じたことがあったんです。"サイケデリック"に抵抗を感じたというか、どこか難しい音楽なんじゃないかと。でも、『UNITED DIAMOND』を聴いてみるとロックだし、わかりやすいし、聴きやすい。だから、そういった意味でThe John's Guerrillaの曲を聴かずして、抵抗を感じている人がいたら、一度聴いてみてもらいたいってすごく思っているんですよ。
Leo:"サイケデリック"って今までにないみたいな意味ではあるんですけど、Radioheadにしてもジャンルはないんですよね。だから、本当は僕らもジャンルを"The John's Guerrilla"って言いたいんですけど、デビュー作からThe John's Guerrillaの音と言ってもわからないから、"NEW サイケデリック"っていうキャッチフレーズが付いたんです。僕も精神的なものは好きだし、サイケも好きですけど、さっきの「あの音は木琴ですか?」っていう、何の音なんだろう、何の音楽なんだろうという、そういう感じでフラットに聴いてもらえるのが一番嬉しいです。こうやって、いろいろと説明していかなければ伝えきれない部分がたくさんあるから、このバンドは理解してもらうのにすごく時間がかかるんですよ(苦笑)。 【LIVE PHOTO by SYUNSUKE SHIGA】