Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューSEBASTIAN X('10年8月号)

次は僕らの時代だ!
闇を抱えつつ愛と希望を高らかに謳う新鋭バンド、彗星の如く現る!

2010.07.20

敢えて歌モノをやるのが"NEW WAVE"

──歌の中で思いの丈をぶつけている"サファイア"は、『リボンの騎士』の主人公のことなんですか。

永原:ではないです。ある種の偶像なんですよ。

──偶像に対して宣戦布告していると?

永原:何と言うか...ふと思ったんですよね、"次は僕らの時代だ"って。今まではお父さんやお母さんの世代が社会を支えていたけど、これから先は私たちが親になって世間の中心の層になるじゃないですか。単純にそういう意味合いも強いです。音楽的な意味でも、"TOKYO NEW WAVE 2010"みたいに同世代のバンドがたくさん集まっていて、上を見上げると次は私たちの番だなと思うし。そういういろんな感覚が混ざり合って自然と出た言葉ですね。

──SEBASTIAN Xは"TOKYO NEW WAVE 2010"のどんな部分に賛同して参加したんですか。

永原:私自身の中では、"TOKYO NEW WAVE 2010"はもう終わったものなんですよね。オワリカラのタカハシヒョウリ君が"TOKYO NEW WAVE 2010"を立ち上げた時は線が交わる手前で、今は各バンドが交わった後にそれぞれ違うところへ向かっている段階なんです。偶然同じポイントで交わったドキュメントをCDとして発表しただけで、もう終わっていると思うんですよ。

──LOFT、MARZ、Motionの3会場で開催される"TOKYO NEW WAVE 2010"のイヴェントはまだこれからですけど...。

永原:イヴェントは正直、ぶつかった後の余韻でやるだけですね。ただ、イヴェントっていうのはCDが流通された後にやるしかないし、ここから何か新しいことが生まれることはないと私は思ってます。そんなこと言ったら怒られるかもしれませんけど(笑)。

──まぁ、捉え方はバンドそれぞれでしょうからね。でも、新進気鋭のバンドが集まって新しい潮流を生み出そうとする意味でとても有意義なムーヴメントだったように思いますが。

永原:うん、凄く面白かったです。ただ、それ以前からずっと集まってた顔触れなので、得たものが何かあったかと言えば、何とも言えませんけどね。

沖山:"TOKYO NEW WAVE 2010"が始まる前から得たものがあったし、衝撃みたいなものは改めてなかったですね。初めて会うバンドもいましたけど、それ以前から何かしらの繋がりがあったんですよ。前のバンドの時に対バンしたりとか。

永原:ただ、当たり前に"いいよね"って思えるバンドばかりが集まってるし、"何でこの人たちが入ってるの?"っていうバンドは一組もいませんね。

──皆さんなりの"NEW WAVE"の定義というのは?

永原:私は『NO NEW YORK』とかが好きなので、"NEW WAVE"と言うとそっちのイメージのほうが強いですね。"TOKYO NEW WAVE"よりも"関西ノー・ウェイヴ"のほうが鮮烈だったし、自分が"NEW WAVE"と銘打ったところに集約されると不思議な感覚に陥ります。もうちょっとアヴァンギャルドな印象も強いですし。

──確かに、1979年当時の"TOKYO NEW WAVE"は今以上にアヴァンギャルドで刹那的なバンドが多かった気がします。

永原:"TOKYO NEW WAVE 2010"のCDも、割と歌モノが多いじゃないですか。アンダーグラウンド・シーンの中で歌モノをやるのが逆に"NEW WAVE"なのかなと。アヴァンギャルドなことをやり尽くしちゃった世代がアヴァンギャルドだった世代に対するカウンターとして、ポップでキャッチーな音楽性を追求するのが2010年の"NEW WAVE"のような気がします。

──前衛の極みを行くと大衆性に辿り着くし、その繰り返しなんでしょうね。

沖山:そう思います。たまたま僕らがその波の位置にいただけと言うか。

バンドの姿勢を歌詞に出すようにした

──本作は歌モノ好きな層にも充分訴え掛けるものがあるし、歌を際立たせることに腐心した音作りになっていますよね。

沖山:歌を中心に置いて活かすのはSEBASTIAN Xを始めた時からのテーマで、メンバー全員、常に意識しているところなんですよ。

──永原さんは声量もあるし、歌詞カードを読まなくても何を唄っているかが明瞭なのがいいなと思って。

永原:それは嬉しいです。歌詞はちゃんと聴こえるように頑張って唄ったんですよ。

──それも前のバンドの反動ですか?

永原:前のバンドでも歌詞がちゃんと聴こえるようにシャウトしてたんです(笑)。ただ、あの頃は歌詞よりも姿勢を強く打ち出していたんですよ。ハードコアが格好いいのは、姿勢が音楽と直結してるところじゃないですか。当時はライヴでのパフォーマンスやシャウトに姿勢を込めていたんですけど、このバンドではその姿勢を歌詞に出すようにしました。今は曲作りも姿勢も凄くバランスがいいんですけど、そのバランスもいつかは崩れると思うんですよ。その時にどうなるのかが楽しみなんですよね。

──前身バンドのようにダークな世界に舞い戻ることもあると?

永原:あり得ますね(笑)。そんないつまでも明るいことばかり唄っていられないですから。

──他のメンバーが歌詞を書いたりは?

永原:ないですね。私が書くものに口出しされることもないですし。

沖山:そこは信頼を置いていますし、口を出したところでどうにもならないので(笑)。その代わり、音作りは4人で民主的にやっていますけどね。

永原:ホントに民主的ですよ。「これがいいと思う人は?」って多数決を取ったりしますから。

──音作りの現場監督は沖山さんなんですか。

沖山:いや、僕はむしろ仲介人ですね。まなっちゃんが持ってきたメロディと歌詞を飯田君か歩里に渡して一緒にアレンジを詰めることが多いんですけど、そこで意見が分かれた時に僕が間を取る感じです。まぁ、こだわる部分は最後まで主張した人の勝ち、みたいなところもあるんですけどね。絶対にイヤな部分はみんな最後まで引かないんですよ(笑)。

永原:その結果、今回は結構生々しい音を録れた気がしますね。

沖山:エンジニアさんがそういう志向で取り組んでくれましたからね。音の質感は『ワンダフル・ワールド』とだいぶ違う感じで録れたと思います。

──『TOKYO NEW WAVE 2010』に収録された『LIFE PLEATS』の質感とも違って奥行きもあるし、音の粒が際立ったように感じますね。

永原:そうなんですけど、録ってくれた人は今回と同じなんですよ。

沖山:今回のアルバムを録る前に一度お願いしたのが『LIFE PLEATS』で、それを踏まえたからこそ今回は抜けのいい音になったんじゃないですかね。

永原:レコーディングをすると楽器の音が変わるのがずっと疑問だったんですけど、今回はスタジオでいつも聴いてる音に近い感じで録れたんですよ。私は声が高いので、そこに主眼を置いて録ることが多かったんですけど、今回は中域の音や倍音もちゃんと拾いたかったんです。それでたくさんマイクを用意してもらって、その中から気に入ったものを使ったんです。曲によってマイクを替えたりもしましたし。

沖山:メンバー全員、まなっちゃんの声をひとつの楽器として捉えているところもあるんですよ。凄く特徴のある強い声だし、曲作りもそれに合わせるところがありますね。

──記名性の高い声だからこそ、メッセージ性の高い歌詞が聴き手の感受性に余計深く響くんでしょうね。『GOODMORNING ORCHESTRA』の"言葉をまるでボールのようにそちらに投げても/受け取る人がいなければ/手を取る人がいなければ/言葉は死んでしまう"という歌詞は至言だなと思いました。ウチも読者がいなければ廃刊ですから。

永原:そうですよね。私がどれだけ一生懸命唄っても、耳を開かない人には届かないんですよ。もちろん聴き手に選ぶ権利はあるし、100人中100人に聴いて欲しいとは思いません。みんな好きなように好きな音楽を聴けばいいと思います。ただ、そこで耳を開かない人を目の当たりにすると、自分がいくら喉元を振り絞って唄っても、その人には何の意味もない。それはバンドを5、6年続けてきて思ったことのひとつですね。

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LIVE INFOライブ情報

寄り添って! ユニコーン ツアー
10月1日(金)大阪十三FANDANGO
10月2日(土)京都MOJO
10月10日(日)水戸SONIC
10月11日(月・祝)横浜club Lizard
10月15日(金)新潟CLUB RIVERST
10月22日(金)静岡 Freakyshow

SEBASTIAN X presents「タンタララン」
11月14日(日)仙台PARK SQUARE
11月19日(金)名古屋K.Dハポン
11月21日(日)大阪十三FANDANGO
11月27日(土)新宿MARZ

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