Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューSA('10年2月号)

歌えよ、戦う俺たちのファイトソング

2010.01.21

あと何年、全力で走ることができるか

──SAはそういうスタンスの反対側にいますからね。

ナオキ:うん。だけど、理解を示してくれる人たちに対しては「何か力になってくれたら嬉しいよ」って言うけどね。それはいつも切に願ってることやから。バンドなんて、毎年1年を更新することが奇跡だと俺は思ってるんだよ。SAは有り難いことに更新できてるし、俺たちももうちょっと先にある景色を見たいなと思うしね。"あと何年できるんだろう?"っていう漠然とした恐怖もあるわけやんか。俺くらいの年齢のバンドはみんなそう感じてると思うよ。あと何年、全力で走れるのか。タラタラ続けることくらい誰だってできる。久し振りに再結成します、5年振りにアルバムを出します...そんなスタンスでやるのは誰だってできるよ。でも、全力で走ることができるバンドは限られてる。SAの場合は、さっきタイセイが言ったいい意味での緊張感が音やステージに反映してるんだろうね。まぁホントに...どこを向いても嘆かわしいことばかりだね。テレビを見ても情けない番組しかやってないしさ。音楽番組ってどこへ行ったんだろうね?

──番組を作る側のやる気を感じませんよね。制作サイドはそれで何がやりたいんでしょうね?

ナオキ:たまに音楽番組を見ると、一時代を築いた人がカラオケで懐メロばかりを唄ってるもんね。『ファイティング・エイティーズ』とか、昔は気骨のある番組もあったのにさ。

タイセイ:お前がどれだけ辛いかを滔々と唄った歌なんて聴きたくねぇよ、と思うことはあるね。

ナオキ:歌詞の字幕スーパーを見ると、最近の流行歌はビックリするくらい酷いもんな。

──自戒を込めて言いますけど、ライヴハウスをやる側も単なるハコ貸し的な発想をする人が多いと思うんですよ。ノルマを取って交通整理をするだけの殿様商売って言うか。

ナオキ:アメリカのライヴハウスはノルマがないんだよね。

──チケットの売り上げは100%バックなんですよね。チケットの価格設定も安くてお客さんが入りやすいと聞いたことがあります。人と集まってお酒を呑んで楽しむ習慣が日本にもっと定着すればいいなと僕は思うんですよ。海外は居酒屋よりもパブが主流で、パブの向こうにライヴをやれるスペースがあるんですよね。その意味で言うと、日本は音楽を聴くことが本当の意味でまだ身近じゃない気がするんです。ライヴハウスで生のライヴを見ること自体がひとつのイヴェントになっているけど、日常生活の中で呑みに行って、そこでやっているライヴに対価を払う感じになればいいなと思うんですよ。

ナオキ:確かにね。この間、阪神にいた小林繁が亡くなったやん。あの人、スポーツ・キャスターの先駆けなんやけど、ただ「やってくれ」と言われてやってるだけのスタンスじゃなく、自分で会社を興してスポーツ番組を作ろうとしてたらしいんよ。自分の目線から視聴者に対して訴えかける報道番組をね。そういうスタンスが大事なんやろうね。音楽の仕事に携わる人が"今のままでいいのか?"と危機感を募らせて独立して、その人の信じる目線で制作に力を入れれば、音楽業界は俄然活気付くよね。小林繁、単なる男前じゃなかったんだね。熱すぎる男だったんだなと思ってさ。

──そういう人の背中を見ながら、信じたことを行動に移せる人がもっと増えればいいですよね。

ナオキ:今の俺たちくらいの世代が日本社会の中枢にいてこの社会を動かしてるわけじゃない? その世代がロックの衝撃を一番受けたはずだし、その目線で信念を貫いて何らかのムーヴメントを興せばいいんじゃないかと思うよ。そうすれば多少は景色が変わる気がする。景色、変えたいなぁ...。この10年、ロックの世界は相当キツい景色になってきてるからね。俺たちがデビューした85年くらいが一番いいのかどうかは判らないけど。バンド・ブーム前夜で、ライヴハウスがまだ危険で淫らな場所だった頃ね。

ロックという名のアートを共有すること

──ライヴハウスに初めて足を踏み入れる人をどれだけ増やすかが僕らのテーマだと思っているんです。ライヴハウスに行ったことがある人って、国民の100人に1人くらいだと思うんですよね。1人を何とか3人にするだけでも環境は良くなるはずなんですよ。自分はそれが楽しいから仕事にしていて、1本のライヴを見てその人の人生が変わることだってあるし、ライヴハウスは面白い人が集まる場所だってことをどうすれば知らしめることができるのかを常に考えていますね。その手段のひとつとして有効だと思ったのが12月にLOFTで見たSAのライヴだったんですよ。こういうライヴを見せればどんな人の心でも動かせるはずだと思いましたから。

タイセイ:あの時のライヴはお客さんの中へ突っ込んでいってさ、後ろのほうには俺たちのことを初めて見るような人たちも多かったわけじゃない? その人たちの表情が明らかに変わったのが手に取るように判ったんだよね。それこそが表現だし、ロックという名のアートの共有なんだと体感したよ。若いバンドのイヴェントに出て、SAを初めて見る後ろのほうのお客さんがどんどん前へ押し寄せてくることの快感もある。そこに言葉は要らないんだよね。だって、その場で初めて聴く曲なんだから歌詞なんて判るわけがないんだから。いいんだよ、何でも。声出せばいいよ、まずはそこから始めよう、っていうさ。それがSAのやろうとしてるパンク・ロックの表現方法なんだよね。

──今の面子になって9年目を迎えても、また新たな扉を開いて現状を突破していけるのがSAがSAたる所以だと思うんですよね。

タイセイ:うん、そう思う。だからたまに、選ばれた人間なのかなとも感じるよ。自画自賛するわけじゃないけど、たまにそうやって調子に乗ることはあるね(笑)。

ナオキ:いや、それくらいの自覚がなきゃダメだよ。自覚と言うか、そこまでの思い込みがないとね。バンド以外のことは何もできないんだから。もの作りに長けた奴に「自分、何でもできるんだね、凄い才能を持っとるね」って何気なく言うたら、「でも、こっちはナオキさんみたいに曲を作ったり、ライヴ・パフォーマンスなんてできませんよ」って言われたことがあるんだよ。あ、そうか! と思ってね。「充分に私たちを感動させてくれてますよ」って言葉を聞いて、誰でもできることじゃないんだなと思ったよ。タイセイも俺も30年近くこうしてバンドに携わってきて、何度でもやめるタイミングはあったはずなのに、結局はしんどいほうを選んじゃうんだよね。

──バンドって、しんどいけど面白いものですよね。

ナオキ:そうなんだよ。しんどくなきゃ面白くないからさ。

タイセイ:さっきの話に戻るけど、しんどくても戦わなきゃダメなんだよね。『RAIN DOGS』の「正義になれず 悪になれず」という歌詞に俺はメッセージを込めたつもりなんだけど、正義にもなろうとしないけど悪にもなりたくないっていうスタンスが一番良くないんだよ。悪になれとは言わないけどさ、どっちかの一番になれよ、って思うね。そういうことを声高に言えるお兄さんがいたほうがいいよ。根拠なんて要らねぇよ。野良犬みたいにただ吠えてるだけでいい。理由なんて後から付いてくるからさ。俺たちはこれからもいろんなものを超えていくけど、見てる側も超えていかなきゃダメだよね。お客さんがオイオイ言うのはいいけど、それも決まりでやらなくていいんだよ。もちろんこっちが煽る部分もあるけど、予定調和にやらなくていい。予定調和になった途端につまらないものに成り下がる。何かを超える瞬間みたいなものがいつだって見たいし、そういうのを体現していきたいね。その瞬間に凄いエネルギーが生まれるし、そのエネルギーで世界を変えられるかもしれないからさ。

──変えましょうよ。SAにはまず日本の音楽シーンを変えて欲しいですね。

タイセイ:エラいでっかいことを背負い込まされたぞ、オイ(笑)。よし、判った。やってみようか。ズッコケることもあるかもしれないけど、コノヤロー精神で行くよ。

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