生きることとは戦い続けることなんだ
──『HANG OUT』にも『RAIN DOGS』にも"street"という言葉が使われていて、SAの立脚点が一貫してストリートにあることと重なりますね。
タイセイ:そうだね。ロックンロールはストリートに根差したものだからさ。少なくとも俺たちの世代はそうだった。SAというフィルターを通してノスタルジックな部分を出してみたかったんだよ。って言うのも、ロックンロールが"ロックっぽいもの"に取って代わりそうでさ。パンク・ロックが"パンクっぽいもの"に持ってかれちゃいそうだし、自分たちが体験してきたことは何だったんだろう? っていうのを再確認したかったんだよね。胡散臭いまがいものがあまりに横行しすぎてるからさ。
──『RAIN DOGS』がまさに今のSAを象徴した曲だと僕は思うんですよ。ドシャ降りに立つ野良犬だけど、諦めることなく吠え上げているっていう。
タイセイ:そうなんだよ。今この歳で"ファイトソング"って言葉を最後に使ったんだけど、これも一歩間違えるとダサい言葉になると思うんだ。でも、戦いの歌を唄いたかったんだよ。サラリーマンでも学生でも、どんな立場の人間だって形は違えど日々戦ってるわけだからさ。
──SAはステージ上で戦い抜くことを体現しているから、チープな言葉には聞こえませんけどね。
タイセイ:パンク・ロックで"ファイトソング"なんて青臭い言葉を使うとヘンな解釈をされそうだけど、違うんだよ。生きてるってことなんだ。生きることは戦いなんだからさ。だから、『RAIN DOGS』をライヴでやるとガッツリ来ると思うよ。
──パンクで在り続けることの決意表明みたいな曲でもありますからね。
タイセイ:うん、そういう部分もあるね。やっぱり、剥き出しの言葉で唄いたかったんだよ。俺たちの前を走っていた先輩バンドもそういう言葉で俺たちを揺さぶり続けていたしね。だから、俺たちもそう在りたい。オブラートに包んだり、もうごまかしちゃいけない歳なんだと思うよ、俺たちは。
──今の時代、老いも若きもごまかしてばかりな気がしますけどね。
タイセイ:うつむいたままやり過ごす奴が多い気はする。うつむいて轟音を鳴らしてりゃいいのかよ!? って言うかさ。もっと目を見て話そうぜ! って俺は思うよ。
──そのブレのないスタンスは、去年の渡米経験を経てより明確化された部分がありますか。
タイセイ:多分、腹を決めたってことなんじゃないかな。アメリカでコテンパンにされてたら"ああ、やっぱりこんなもんか"って思っただろうけど、そうはならずに"まだやれるな"って思ったからね。
ナオキ:バンドのポテンシャルは高いよ。他のバンドから「毎年いろんなアイテムをよく出すよね」って言われるし、休むことなく活動してるけど、何なんだろうね。40代も中盤に差し掛かってきてるっていうのに、未だにステイ・ハングリーなんだよ。必ずしもそうなりたかったわけじゃないんだけどね。でも逆に言えば、今もこうしてバンドがやれてることは幸せだと思う。今のポジションを嘆いてもいないしね。嘆いてばかりじゃ何も始まらないし、世の中を取り巻く現状とか今の音楽シーンに対する怒りはずっとあるよ。その思いをいつも等身大の言葉で叫んでるしね。SAはただ10代の言葉を借りてきて唄ってるわけじゃなくて、今も同じ感情を抱いて唄ってるんだよ。
──こんなに青々しくもポジティヴに、相手の目を見ながら歌を届けているバンドが今は少ないんですよね。何だか萎縮した佇まいのバンドが多いし、まるで今の日本社会を象徴しているみたいでイヤなんですよ。
ナオキ:親がごっついお金を注いで音楽の専門学校に入れる時代やからね。そこに入ったからって、心が揺さぶられるものを生めるかって言ったらそうではないと思うよ。
──みんな訴えかけたいことはあるんでしょうけど、真に迫る表現が凄く少ないですよね。それは何故なのかなと思って。
タイセイ:何なんだろうね。俺たちは凄く洋楽的なこともやりたいし、凄くドメスティックなこともやりたい。そういう両極端なことがやりたいんだよ。思春期にもの凄く憧れてた英米のロックやパンクの格好良さを追求したいのと同時に、日本人としてのプライドみたいなものも追求したい。それは海外へ行って凄く感じたね。日本人としてありのままの姿を見せ付けたいと思った。
SAの凄さはステージで証明してみせる
──海外のお客さんはノリが良くて、日本のバンドでも受け入れてもらえる印象がありますけど、SAは海外と同じノリで日本でもフロアを沸かせているんですよね。
タイセイ:そう、本質的な部分では変わらないんだよ。別に外人にならんでもいいなと思う。何て言うか、最近はどっちつかずのバンドが多いよな。
──どっちつかず...今の日米関係みたいですね。
タイセイ:そうだね。じゃあ、今度は俺が総理大臣になるか?(笑)
──みんな文句ばかりは一人前だけど、大事な時はうつむいてばかりで何も行動を起こさない。ファイトソングを胸に秘めていないし、戦おうとしないんですよね。
タイセイ:端っから戦おうとしてないよね。そりゃ、みんなイヤだもんね。面倒臭いし、傷付きたくないだろうし。だけど、ちゃんと戦っていかないと楽しくないし、熱く生きられないよね。そういうことを唄えてるのがSAの良さのひとつなのかなって思うよ。
ナオキ:今度またラフィンやコブラと一緒に回る『R&R CIRCUS TOUR』があるやん? どうせまた仲良し小好しが集まってやってんのやろ? って思われる部分もあるかもしれへんけど、こっちは"ブッ倒してやる!"って思ってるからね。絶対に俺らのほうがエエ! 勝負にもならないくらいの差を見せ付けてやる! ってさ。そこまでやりきって初めて「楽しかったね」って言い合えるものにしたいよね。地方で久し振りに3バンドが揃って、嬉しく思ってくれるお客さんもいるかもしれないけど、そこで真剣勝負を見せなきゃただの懐メロ大会で終わるからね。そんなのはまっぴら御免だよ。懐メロを聴くんやったら百恵ちゃんだけで充分やから(笑)。今の20代、30代のバンドで、いい意味で力強く発破を掛けてくれるバンドがもっといて欲しいんやけどな。
──なかなかいませんよね。世代間が断絶しているようなところもあるし。
タイセイ:それは感じるね。『SET YOU FREE』みたいに、そういうのを打破しようとするイヴェントもあるけど、その中でもバンド側が壁を作ってるところがある。若いバンドの中へ果敢に飛び込んで、そこでも対等に勝負を挑むSAみたいなバンドは少ないよね。先輩だから偉いとか、売れてるから凄いなんて関係ないんだよ。ステージに立ったら歳もキャリアも関係ないんだから。何でSAが凄いのかっていうのはステージで証明しようと思ってるからね。そのためには体力を付けなアカンけどな。
ナオキ:ホントやねんな。気力を補うにも体力が必要だよね。
タイセイ:40を超えるとステージであまり動かなくなるミュージシャンも多いけど、ロックってやっぱり飛んだり跳ねたりケツを振ってナンボってところがあるじゃない? 少なくとも俺はそういうロックが好きだからさ。
──片意地張って格好いいロックを後進の前で見せ付ける上の世代も減ってきましたよね。
タイセイ:格好いいことは何て格好悪いんだろうっていう風潮がちょっとあるよね。でも、格好いいもんは文句なしに格好いいんだよ。早川義夫さんの言葉を否定するようで悪いけどさ。みんなどこかシラけてる感じがするんだよね。斜に構えてシラけてるのが格好いい、みたいなさ。全然違うんだよな。好きなミュージシャンのTシャツを着てたらそれでロックか!? とも思うしね。俺はバンドのTシャツをあまり着ないんだよ。だって、そいつに負けてることになっちゃうから。ピストルズとかのTシャツを着ちゃったら、それを超えられないってことだから。俺は自分の顔のシャツを着たいくらいだよ(笑)。昔、T・レックスがやってたけどね。マーク・ボランもロック・スターだったよな。
──こんな閉塞した時代だからこそ、僕はロック・スターが必要だと切実に思うんですよ。
ナオキ:今の面子になって軽く500本近くのライヴをやって、オリジナル・アルバムは10枚を超えてるし、この歩みは自分たちでも凄いと思うんだよ。でも、俺たちだけでできることには限りがあるし、もう少し後押ししてくれる力があればなと思うね。そうすればもっと周りの目も変わって"ああいうバンドを目指そうぜ"っていう奴らが増えて、骨太なバンドが今よりもたくさん出てくる気がする。自分たちでできる範囲のことを目一杯やってきた自負はあるよ。ただ、「よろしくお願いしますよ」って頭を下げることは大ッ嫌いやから。ちょっと売れてる奴らと絡んだりとかさ。