高木フトシ(ex.HATE HONEY / BAD SiX BABiES)とゴンダタケシ(GRiP)によるアコースティックデュオ"gonvutーゴンブトー"が、遂に1st フルアルバムをリリースする。タイトルは『universe of love』。2人が鳴らすアコースティックの音色はフワッと包んでくれる柔らかい毛布のように温かくてやさしい。これまでの活動とはまた違った表現とサウンドは、今の年齢になった彼らだからこそ奏でられる音と雰囲気が詰め込まれているように思う。ひょんなことがきっかけで出会った2人だが、実はまるで最初から決められていた運命だったかのように意気投合し、これだけの大作を生み出したのは奇跡でもあり当然のことだったのかとも思う。なかなか明るい未来が見えなくなっている時代に、光をもたらすような作品が誕生した。(interview:やまだともこ)
ピュアな音を出したい
──2007年の6月からこれまでに会場限定のCDを3枚リリースし、ようやくフルアルバムという形で全国リリースとなりましたね。
高木フトシ:形になったというよりは、させられたという感じだね、どちらかと言えば(笑)。周りが次に出すならアルバムしかないよねって感じになっていたからね。
──そもそもお2人はどういう出会いだったんですか?
高木:新宿ロフト店長の大塚が「2人は中身が全く同じだから」って引き合わせてくれたの。「はぁ?」って思ったけど、会って飲んだらすぐに意気投合して、タケシがやってたスプリットシングルを一緒にやろうって話から家に来て曲を作って、それが時間を経てこういう形になったんです。
──スプリットというのは、2007年6月にリリースしている『Split #05』になりますが、この時はFUTOSHI TAKAGI&TAKESHI GONDA名義ですね。
ゴンダタケシ:スプリットは俺がTHE JETZEJOHNSONやYUTAROさん、高畠俊太郎さんと何枚か出していて、ジェッジとやった時はお互いの曲をリミックスしあったり、相手のアイディア次第でやり方も決まっていく感じで、例えば曲を書くと言って来たら俺が詞を書いたりしてたんだけど、フトちゃん(FUTOSHI TAKAGI)は一緒に曲を作るというコンセプトになって曲を作ったらポロポロって出てきたんだよ。
高木:30分で3曲ぐらいできたんだよね。俺がコードを弾き始めてタケシがギターを合わせてくるんだけど、それがすごく良くてメロも浮かぶからすぐに出来ちゃって。
──今回アルバムに入った曲もそうやってセッションしながら作っていったんですか?
高木:元になるネタを作ってきて広げていくというパターンもあるけれど、これがあればタケシはこう来るというのもある程度わかるから、詞も曲も半分しか作ってなくて会った時にこんな感じなんだけどって合わせるとそれでできる。だからすごい不思議な感じですよ。
──これまでのバンドとは作り方が違いますよね?
高木:全然違うよね。
──2人でやるときはシンプルな作り方になるということですか?
高木:シンプルだけど、難しいことも何気にやっていたりするんだよね。上手く説明できないけれど…。ただ、gonvutに関しては難しく考えたくないというところがあって。
ゴンダ:お互いボーカルで背負ってきた立場が一緒だから、gonvutは気楽に行きたいねって感じだったんです。
──でもCDとして全国に流通するとなると、背負うものが増えてしまうんじゃないですか?
高木:だけど、これまでの経験もあるから流通したところで何があるかはよく知っているし、その上でスタッフと俺達とロフトがどこまで楽しくやれるかというところに終始したくて、だから曲はピュアでありたい。ピュア度をドンと上げられれば、すごい作品になるんじゃないの? って、そこを注意してやったら良いのが出来たんです。その上での『universe of love』というタイトルだし、良いアルバムができたなと思っていますよ。
──聴いていて、包み込んでくれる感じがするんですよ。私31歳になったんですけど、すごく響くんです。声も良いですし、歌い方も好きですし、アコースティックの音色は疲れた30女にはたまらないというか(笑)。
ゴンダ:(笑)そう言ってもらえるとありがたいですよ。
高木:まさにそれを感じてほしいよね。それが全てだったりするから。これまでバンドで育ててきたものを、gonvutでは一切排除してやっているので、間違いなく本人が一番癒されたいと思ってやっているんだよね。詞を書くとか曲を作るとか、長年やっているとイメージを自分で作っちゃうけれど、gonvutではかっこつける必要もないし、時代のことを考える必要もないし、最新の音楽を考える必要もない。俺達がこのCDを聴いて良いねと言うのは聴く人の感情と一緒だと思うんです。俺達は俺達で疲弊しているところがあるんだけど、ある意味開き直っているところもあって、でも逆に言えば攻撃的でもあって、自分がやってきた音楽の中では最もこれがパンクだと思っている。だからこそ、1人でも多くの人に届いて欲しいと思う。俺達ぐらいの年になって、ロック畑でずっとやってきていたりすると、そこからブレないようにしたりするじゃない? でもgonvutで曲を作ったらこういう曲もできちゃったので、心からの叫びという意味でもパンクだよね。そのぐらいピュアな音楽をやれている自信はありますね。
ゴンダ:バンドで続けてきたものを守るのもかっこいいんだけど、ナチュラルをどれだけナチュラルにできるかというのはパンクだよ。
──gonvutは、純粋に楽しくてやっていたものが作品になりましたという感じなんですか?
高木:ちょっとは頑張ってますよ。あとは、バランス。他のアーティストのサポートをやっていたり、俺もソロとvezがあったりアコースティックのAKUHもあって、その中でgonvutをやっているんだけど、明日gonvutだと思うと、その瞬間すごいラクになりますからね。
──息抜きみたいな感じ?
高木:たぶん(笑)!
──その気持ちは音になってますよね。小難しくやりすぎちゃうと聴く側が構えちゃうところがあるんですけど、このCDはリラックスしながら聴くのが一番良いんじゃないかと思うんですよ。たぶん弾いてる人たちもそういう感じなのかなという温かい音が出ていたので。
高木:今まで「ぶっ殺す!」とか言ってたヤツが、『fall』のような詞を書いて歌っているわけですからね。だから俺は言いたいんです、「俺だって恋とかするもん!」って(笑)。それも大事なことで、俺がこういうことを言えたというのは今迷っている人たちに自信を与えているような気もします。