namidacoatが、前作の『namidacoat』から2年半ぶりとなる作品(この間に先行シングルあり)をリリースすることとなった。タイトルは『Park』。以前に比べると、ほどよく肩の力が抜けた今作は、よりポップへと進化し、キラキラとしたサウンドを鳴らす。誰の心にもある普遍的なものがイコール"ポップミュージック"とは言えないかもしれないが、彼らはいつの時代にも色褪せることのない音を聴かせてくれる。時に優しくて、ときに温かくて、時に涙を拭ってくれるような、そんな楽曲。今回は、新しく立ち上げられたレーベル"POPTOP"からの第一弾アーティストとしてリリースされることとなった。彼らの最良のポップスが世の中に浸透する日も遠くはないだろうと思う。(interview:やまだともこ)
長い制作期間を経て遂にリリース
──Rooftopへの登場は1st.ミニアルバム『namidacoat』以来となるので2年以上ぶりになりましたが、この期間はどんな活動をされていたんですか?
中川 敬雄(Vocal/Guitar):ほとんどアルバムの制作をしていました。今年の4月にアルバム先行第一弾という形でタワーレコード限定で『さくら』をリリースして、9月には第二弾で『いとしのlady』をリリースしたんです。それまでは曲を作って、レコーディングして、ライブをして、4人でアコースティックもやるのでショッピングモールで歌ったりしていました。
──いついつにはリリースしたいということは考えず、とにかく曲を作っていたんですか?
神田 尚紀(Guitar):目指すところはリリースですけど、良い曲が出揃うまではという感じでした。
中川:それで出揃ったので、レコーディングを始めたんです。
──今回の『Park』では、中川さんと神田さんが作った曲が半々ぐらいでありますよね。お2人が作った曲の中から良いものを選んでいったら、ちょうど良いバランスになったという感じですか?
中川:それに近いですね。あまり考えず、良いと思うものを出して、アルバムの軸が決まってきたらもっとこういう曲が欲しいなってまた作り始めて…。
──全体的にラブソングが多かったんですが、今回は恋しちゃいたいモードだったと?
中川:いやぁ、そうなんですかねぇ(苦笑)。その間に僕はフラれたりもしてますけど…。
一同:…(沈黙)
中川:ここは笑っていただいたほうが嬉しいんですけど(笑)。
神田:ラブソングは基本的に多いですよね。詞になりやすいと言ってしまうのはよくないかもしれませんが、自分の経験を踏まえると一番書きやすいんです。スッと書けるんですよ。
秋山 圭吾(Drums):この2年間、彼(神田)は輝いていましたよ。
──ラブソングって一番永遠なものだと思うんですが、ずっと歌い続けていきたいからこそこういう曲を書きたいというのはあるんですか?
中川:大事な人は誰にでもいると思うし、友達でもそうですけど喜怒哀楽をお互い見せ合える仲でいられる相手ってなかなかいないじゃないですか。そういう人に対する曲となると感情も入るし、できやすかったりするしというのはあると思いますね。
──『さくら』の「不安とか絶望が君を迷わせたとしても〜」という歌詞がすごく良かったんですが、これは応援歌になるんですよね?
中川:友達に向けて書いたんですけど、応援歌に近いですね。友達がギターの先生になったんです。初めて大学の時に組んだバンドのメンバーというのが中学から一緒だったその友達で、ギターを始めたきっかけにもなったヤツなんですけど、僕はお客さんの前でライブをしたい、友達はギターを教えたいって別々の道を選んで、ついに先生になったんです。同じ音楽の世界にいて近いようで遠いところにいるんですけど、お前はギターが上手くて自信もあるから頑張れよ、俺も頑張るからって。今おっしゃっていただいたフレーズは僕もすごく好きな部分です。
笑顔になれるような楽曲
──ところで、1st.ミニアルバムの『namidacoat』と聴き比べると、歌い方がだいぶ変わりましたよね。前も良かったんですけど、改めて聴くと今回のほうがリラックスして歌えているような気がすごくしたんです。
中川:『namidacoat』を出した時ぐらいから、このバンド名を付けたのも自分だし、サウンドプロデューサーの田中さんとの出会いも経て、僕は笑顔になれるような楽曲というのをやりたいんだということがわかってきたんですよ。それがあって、『Park』に入っているような楽曲ができたんですが、まだ自分がやりたい音楽がちょっと形になったかなというアルバムなので、個人的には思うところもあるし、もっと肩の力を抜きたいというのもあるし、このフレーズはこういう歌い方のほうが曲としては良いのかなというのは今後出てくると思っています。でも歌い方に関しては、変わってきているとは思います。前は力が入ったまま歌ってましたから。
鳴海 武(Bass):11曲目の『ねぇ』はフラットな状態で歌えていて、それは前のアルバムにはなかったですね。普段のライブではまだ力が入っているんですけど。
中川:お客さんが目の前にいるし、生の演奏だし、生声だし、感情がガーッとなってきてしまうんです…。
──伝えたい思いが強くなる?
中川:そう。今までがそういう歌い方をしていたし、それはそれで良いのかも知れないですけど、今回のアルバムで曲を揃えた時に、それはいつでもできるから自分が今足りないことややりたいことを身につけたいなと。そういう意味で、『ねぇ』はフラットな状態で歌ってみたんです。前のアルバムを作っている時からあった曲なんですけど、その時はこれを入れたら重くなるんじゃないかというのがあって入れなかったんですが、今回はアレンジも変えて入れてみようって。当時に比べると、曲の解釈もだいぶ変わってきてます。
鳴海:しかも、それが音になると余計に解釈が変わってきていて、ピアノの伴奏が入ったり、今のような感じになっていったんです。
──オーケストラでやったらすごいおもしろい曲になるんじゃないかと思いましたよ。
中川:それはやってみたいです。
──チェロが入っている部分もありましたが、これは打ち込みですよね?
中川:キーボードとピアノは弾いてますけど、あとは全部打ち込みなんです。だから、その曲はすごく冒険でした。最後の歌入れの時に、僕1人で東京まで来てスタジオに着いてから初めてオケを聴いたんですけど、思ってもいなかったオケになっていたので大丈夫かなって…。でも、今までにはなかったサウンドですし、こういう雰囲気の音で歌うというのは成長に繋がると思うし、全てプラスに考えたら、良い形に転がるんじゃないかと思っています。やはり、田中さんと一緒にやることで、どんどん新しいアイディアが入ってくるのは面白いですよ。スタジオもほとんど一緒に入って、「こういうアレンジで考えたんですけどどうですか?」って聴かせて、「こういうのもどう?」というやりとりがすごく刺激でもありましたし、発見がいっぱいあるんです。
神田:自分が作った曲が明らかに良くなっていくので、それが楽しい。
──思ってもない形になっていく?
神田:なることもあります。
中川:僕たちは、まだまだ引き出しが少ないと思うので、それを田中さんがいろいろ助けてくれるというか。最初はマイナーの曲が多かったですからね。
──前と比べて、よりポップになった感じはしますよ。
中川:そこは目指していたところでもありますね。今の僕達の状態で一番ポップなものを作ろうというのがテーマだったので満足してます。これからも楽しみですよ。
──では、みなさんが考えるポップというのはどんなものですか?
中川:僕自身が思うのは笑顔。今でもライブを見ている人が純粋に笑顔を見せてくれることもありますし、僕がライブ中にやるパフォーマンスは例え笑われているという状態でも、それは笑ってもらえているということですからね。namidacoatにとって笑顔は欠かせない。僕たちの音楽を聴いてもらったりライブを見てもらった時に、最終的には笑顔で「楽しかったよね。何かすごく残ったよね」って言ってもらえるようなものは目指しているところではあります。
秋山:前のインタビューの時にも言ったかもしれませんが、ライブを見て元気になって帰ってもらいたいと思っています。自分もライブを見て頑張ろうと思うこともあるし、それを与える側でありたいとも思いますし。あとは、そういった気持ちをわかりやすく伝えたいなと。
神田:僕は…楽しいという感じなんですかね。あとは体が揺れるとか、のれるとか。漠然としてますけど、そういうイメージですね。
鳴海:みんなそうだと思いますけど、子供の頃に聴いていた音楽って頭に残っていると思うんです。フォークソングとか歌謡曲とか、大人になってから聴いた音楽じゃなくて、昔聴いたことがある音楽。それは今でも歌えますし、そういう曲こそがポップだなって思います。