アイドルとロックの境界線を打ち破る奇跡のコラボレーションの実現である。うるさ型のロック・ファンからも絶大な支持を集めているメロン記念日が、名うてのロック・バンド全5組とのコラボレート・シングルを相次いで発表していくという画期的な一大プロジェクトが遂にその口火を切った。華々しい初戦をメロンと共に飾るのは、甘美なメロディと躍動感溢れるサウンドに定評のあるビート・クルセイダース。今月5日に晴れてバカボンのパパと同い年となる(エンダァ、本厄!)ヒダカトオルが提供した『DON'T SAY GOOD-BYE』は、レッドゾーンを振り切った激情サウンドと胸を締めつける哀切のメロディが交錯した掛け値なしの大名曲だ。毎月5日になると本屋へ駆け込み、世界最大の実売部数を誇るHM/HR専門誌『BURRN!』を貪るように読み干した世代はとりわけ激しく心を揺さぶられるナンバーと言えるだろう。構想期間2年を経て遂に完成したこの至高の楽曲のミックス・ダウン当日、我々編集部は都内某所のスタジオで作業真っ只中のメロン記念日とビート・クルセイダースを直撃。このメロン記念日ロック化プロジェクトに懸ける両者の思いを余すところなく訊いた。(interview:椎名宗之)
ビークルさんには心から感謝です
──メロンの皆さんとヒダカさん、掟ポルシェさんとの座談会取材(本誌2007年4月号掲載)から2年余り、遂にメロン記念日のロック化プロジェクトが本格始動しましたね。
ヒダカトオル(vo, g):2年掛けてやっとね。『DON'T SAY GOOD-BYE』も2年掛けて作りましたからね、1日1小節ずつコツコツと(笑)。昨日が"ミ"なら今日は"ファ"っていうノリで(笑)。
──セイント・ヴァイタスばりに"BORN TOO LATE"ですね(笑)。まず、メロンの皆さんに現在の心境なんぞを伺いたいのですが。
カトウタロウ(g):そうですねぇ、やっぱり......。
クボタマサヒコ(b):オマエには訊いてないよ!(笑)
大谷雅恵:じゃあ私から。やっとこさスタートを切ることになりまして...2年って聞くと凄く長かったなぁと思うんですけど、ロックに取り組みたい気持ちはずっとあったので、機会を与えてくれたビークルさんには心から感謝ですね。
ヒダカ:いやいや、ウチのお陰じゃないですよ。
メロン全員:いやいやいやいやいや......。
マシータ(ds):メロンの皆さんを引き合わせてくれた掟さんのお陰ですよね。レコーディングには1秒も立ち会ってないけど(笑)。
ヒダカ:そう、メロンはイヤだろうけど掟さんのお陰ですよ(笑)。
柴田あゆみ:いやいや、イヤじゃないですよ!(笑) 私もホント、ビークルさんには感謝の一言ですね。こんなふうにコラボできるとは思ってなかったので、ホントに嬉しい限りです。
斉藤 瞳:私も凄く嬉しいんですけど、感謝がまず先ですね。ロック・バンドとコラボしたいというのはこの2年間ずっと至る所で言い続けてきたんですけど、こうしてやっと形にすることがとにかく嬉しいです。この2年間、Rooftopさんを始め私たちを支えて下さる人たちがたくさんいたことと、メロンがこうなることを望んでくれた人たちが多かったからこそ実現できたことだと思うんですよ。
ヒダカ:Rooftopがこんなに褒められたの、創刊以来初めてじゃないですか?(笑)
──ホントですよ。今の斉藤さんの一言は絶対に使いますので(笑)。村田さんはどうですか?
村田めぐみ:ビークルさんと出会って2年経って、私たちもそれまで以上にロックが好きになったし、ファンの皆さんもメロンに対してもっとロックを期待してくれるようになったんですよね。だからこの2年の間に積んできた経験を活かしながらも、これからもっともっとロックを突き詰めていこうかなと。
ヒダカ:余り突き詰めすぎると、最終的にはオジー・オズボーンみたいになっちゃうからね(笑)。
──"月に吠える"ようになったら困りますからね(笑)。それにしても、今回の『DON'T SAY GOOD-BYE』は完膚無きまでの名曲ですね。往年のジャパニーズ・ヘヴィ・メタルのテイストもありつつ、涙腺を直撃するメロディ・ラインに心底グッと来ました。
ケイタイモ(key):タロウのソロ・ギターも80年代のJ-メタルを意識してる部分がありますからね。
ヒダカ:イメージとしては、ビリー・アイドルの『REBEL YELL』でギターを弾いてるスティーヴ・スティーヴンスなんですよ。だからメロンにもビリー・アイドルみたいに口をひん曲げて拳を突き出すアクションをしてもらおうと思って(笑)。ただし、怒髪天の増子さんみたいに拳を横に流さないように気をつけて欲しいんですけど(笑)。
メロンのために温めておいた至高の楽曲
──ヒダカさんは最初からこの曲調で行こうと?
ヒダカ:実はこの曲、依頼される前からメロン記念日のために作ってたんですよ。
メロン全員:エーッ!!
村田:2年掛けてですか?
ヒダカ:そう、2年掛けて。いつかメロンに唄わせたろと思ってたんです。
──過去に『LAST GOOD-BYE』という名曲を書いたヒダカさんがメロンのために『DON'T SAY GOOD-BYE』を。
ヒダカ:俺は"GOOD-BYE"好きなんですよ。いつかバンド名も"THE GOOD-BYE"に改名しようかなと思ってるんですけど(笑)。
──それじゃ野村のヨッチャンですよ(笑)。メロンの皆さんは『DON'T SAY GOOD-BYE』を聴いてどう感じましたか。
大谷:最初、みんなで揃って聴かせて頂いたんですけど、ビークルさんの色が凄く出てて、ホントに"メロン記念日×ビート・クルセイダース"だなっていう曲だと思いましたね。
斉藤:うん。「直球な曲だね」っていうのはみんなで話してたんですよ。遊びの要素がたくさん入ってる曲じゃなくて、凄くストレートなロックが来たなと。
ヒダカ:アツいヤツがね。俺としては、とにかくエモい曲にしようと思って。
──凄まじいエモさですよね。サビの"MY LOVE, TONIGHT"っていうところが特に。
柴田:凄い! ヒダカさんと同じこと言ってる!(笑)
村田:どこかでレコーディングの現場をご覧になっていたんですか!?(笑)
──ええ、市原悦子ばりにドア越しからそっと...って、そんなわけないじゃないですか(笑)。
ヒダカ:ちょっと全盛期のバウワウみたいな雰囲気もあるかもしれないですね。ひとみげんきさんが唄ってもおかしくないような曲にしようと思ったし(笑)。
斉藤:......ん!? ヒトミ? 何の話だか全然ついてけないです(笑)。
ヒダカ:いや、ついてこれなくて大丈夫だよ(笑)。
──大谷さんのブログを読んでなるほどなと思ったんですけど、メロンの皆さんが楽曲の音作りの過程を見るのは今回が初めてだったんですよね。
大谷:そう、全くの初めてだったんですよ。今までは歌入れしか経験したことがなかったので。
ヒダカ:メロン記念日は純然たるシンガーですからね。オケありきで何をどう唄うかが問われる世界なわけで。バンドっていうのは何をどう唄うかが最初ではないから、音作りを最初から見てもらって良かったと思いますよ。
村田:いつものレコーディングだとひとりひとり時間が決められていて、他のメンバーが唄うのを聴く機会もなかったんですよね。それが今回はメンバーがそれぞれ唄う時でもみんな一緒にいたし、私たちは演奏していないんですけど、全員で作り上げていく感覚がありましたね。
ヒダカ:図々しいね(笑)。
村田:ドS頂きました! ありがとうございます!(笑)
──唄い出しを斉藤さんから始める順番もヒダカさんが決めたんですか。
ヒダカ:俺が4人の歌声を聴いた上で決めマシータ。斉藤さん唄いの柴田さんハモり、村田さん唄いの大谷さんハモり、サビで4人全員、大谷さん唄いの斉藤さんハモり、柴田さん唄いの村田さんハモり...っていう順番でございます。
ケイタイモ:その順番を伝える時、何かスターティング・メンバーの発表みたいだったよね(笑)。
ヒダカ:4人それぞれが1パートずつ唄い始めるのは俺の中で決めてあったんですよ。ライヴで見てたら絶対にそのほうが面白いと思ったので。また同じ人でAメロから始まっちゃうと、ヲタモダチとしては楽しみが半減するんじゃないかと。"次、まぁしぃ来るぞ!"みたいなポイントがあったほうが、お客さん的には気持ちを乗せやすいじゃないですか。掟さんにしろ俺にしろ、客席から見てる時に如何に気持ちを乗せられるかが大事なんで、こういうものは。
タロウによる"すなおジャッジメント"
──まさに我々ヲタモダチのカユい所に手が届く采配っぷりですね。
ヒダカ:これで俺は掟さんを越えたかなと。掟越えが目標でしたからね。もの凄く小さい目標ですけど(笑)。基本的にシンガーの方というのはプラクティカルにレコーディングをするものですけど、良し悪しがあると思うんですよ。もちろん我々だってダラダラやってたらお金が掛かってしょうがないし、チャッチャとやれるならそのほうがいい。だから今回はその間を取ろうかなと。レコーディング自体は実質2日で全部録って、ミックスが1日なので、3日しか掛かってないんですよ。
──まるで楽曲に則したかのようなスピード感ですね。メロン記念日のレパートリーの中でも最短記録なのでは?
ヒダカ:歌入れは1日でやるだろうけど、オケはもっと時間が掛かってるんじゃないですかね。そういう意味ではバンドっていいなと思いますね。
斉藤:最初にデモを頂いた時点で充分に格好いい曲だなと思っていたのに、作業を進めていく中で「ここはこうしたほうがいい」とか「ここは転調しないとダメだ」とかヒダカさんが細かく直しているその姿に感動したんですよね。メロンのためにここまで尽くして下さるんだなと思って...。
ヒダカ:まぁ、メロンに限らずいつもやってることですけどね、そういうのは。
斉藤:エーッ、そうなんですか!?(笑)
ヒダカ:訂正します。いつもそんなことやってません。メロンのためだけです(笑)。
カトウ:今回のレコーディングはですね、ビート・クルセイダースのメンバーがコントロール・ブースに参加する率がこれまでの歴史の中で一番高かったんですよ。
マシータ:そうだね。いつもメンバーはバラバラなのに、みんな必ず集まってたもんね。
カトウ:何でかって言うと、いい匂いがするからです(笑)。
柴田:エーッ、そうでした?(笑)
ヒダカ:俺たちのレコーディングは大体、エンジニアも含めて臭うからね(笑)。
──メロン記念日とのレコーディングともなれば、臨む意識もだいぶ変わりそうですけど。
クボタ:今斉藤さんが言ったように、ビート・クルセイダースの曲を作るのと全く同じようにリハーサルをして、その前日にはマシータとふたりで地味に練習したりもしたんですよ。まぁ、いつもよりちょっと多めに練習したかな?
マシータ:うん、張り切りマシータ(笑)。
ヒダカ:いつもと違うのは仮歌が裏声だったことだけだね。あとは大体一緒。ちゃんと朝に風呂へ入るようにはなりましたけど(笑)。
村田:お、朝シャンですね?
マシータ:朝シャンって言葉も楽曲同様に80'sな感じがしていいですね(笑)。
──歌入れで気を留めたところはありますか。
ヒダカ:唄いにくかった?
大谷:いや、凄く唄いやすかったですよ。
斉藤:私はヒダカさんがもっとドSぶりのディレクションをすると思って、若干覚悟はしていたんですよ。
ヒダカ:ホントは泣かせようと思ってたんだけどね(笑)。
斉藤:でも、実際は凄く優しかったんですよね。
クボタ:ただそのぶん、タロウが必要以上にしゃしゃり出てたでしょ。
カトウ:針すなお先生ばりにね(笑)。
──ん? どういうことですか?
ヒダカ:歌録りしてる時のタロウの佇まいが、ヘッドフォンの片方だけを耳に当てて頷きながら聴いてたりして、まるで『ものまね王座決定戦』で審査員をやってた針すなお先生みたいだったんですよ(笑)。
──何なら似顔絵まで描いちゃうか? ぐらいの(笑)。
カトウ:すなおジャッジメントをオレなりに入れてみたわけですよ(笑)。でも、オレがとやかく言うまでもなく皆さん技術的には巧いですからね。ただ、余り言いすぎると良い部分が取れてしまうし...。
ヒダカ:さすがすなお先生、言うことが違うなぁ...(笑)。
マシータ:でも困ったことに、すなお先生が指導してたらそのうち自分でも唄いたくなったみたいで、最終的にラップで参加しちゃったんですよ(笑)。
ラップのパートは"ザ・オーディション"
──ああ、"終わらない 敵のない競争"以降のラップのパートで聴こえる男性の声はタロウさんなんですか!?
ヒダカ:一瞬俺の声なのかと思わせといて、実は斉藤さん、大谷さん、タロウなんですよ。タロウに仮ラップを入れろと命じて、いつものように「YO! YO! オッペケペー!」と言うのかと思ったら言わなかったんです。SoulJaっぽく"ちゃんと飯食ってるか?"的な感じで唄ったら意外とハマりが良かったので(笑)、それをなぞるようにひとりずつ録ってみたんですよ。それで最終的に良かった斉藤さんと大谷さんを採用したわけです。
村田:ザ・オーディションですよ。私は落選しましたけど(笑)。
ヒダカ:正直、柴田さんのラップはヒドかったです(笑)。
柴田:確かに...あれはホントにマズかったですね(笑)。
ヒダカ:判ってるんだったらオッケーです(笑)。
柴田:すなお先生に「やる気出せ!」と言われましたし(笑)。私は最後に唄ったんですけど、他の3人はある程度音程が合ってたのに、私だけ何故か1音上がってたんですよね。
ヒダカ:柴田さんは"競争"とか"妄想"っていう言葉が似合わないんですよ。"キョーソー"って朗読っぽく話してる感じだから(笑)。
柴田:答辞みたいな感じですかね?
カトウ:答えてどうするよ!?(笑)
──でも、『さぁ!恋人になろう』や『香水』で聴かれるように、メロンの皆さんにとってラップはお手のものじゃないですか。
村田:まぁ、ちょいちょいは...。
ヒダカ:でも、こういうオフめなヤツは今までになかったでしょ? その辺は時代に即してウチのタロウ・ソウルが絡ませて頂きマシータ(笑)。
──メロン記念日にとって、ここまで激しい曲調の歌は『LEATHER』以来じゃないですか?
村田:スピード感という意味ではそうですね。
ヒダカ:俺としては、天才・上田ケンジさんが作詞を手掛けた『お願い魅惑のターゲット』的なタイトさのさらに上を行こうと思ったんですよ。ここはちょっとウエケンさんに勝たなきゃいけないなと。要するに掟さんとウエケンさん越えの楽曲ってことですね(笑)。
大谷:ライヴのがっつり盛り上がるゾーンに見合う曲がもっと欲しいねってみんなで話してたんですけど、『DON'T SAY GOOD-BYE』を聴いて"もうこれしかないでしょ!"って思ったんですよね。
ヒダカ:あとはヲタモダチが付いてこれるかどうかですね。この曲でモッシュ&ダイヴできるかっていう。まぁ、俺自身がヲタモダチなので全然大丈夫だとは思いますけど(笑)。
村田:じゃあ大丈夫ですね!
ヒダカ:掟さんみたいな電脳系のヲタモダチがどう反応するかもちゃんと押さえてありますよ。ラップの後にシンセがベンベッと鳴る電脳ゾーンを用意してますから。
ケイタイモ:ビリー・アイドル的なね(笑)。
ヒダカ:そうそう。4つ打ち好きはそこで反応してくれと。だから論理的には完璧な1曲なんですよ。真剣そのものだし、これはホントにメロン記念日のためだけに作った曲ですから。今までいろんな人たちに楽曲提供を頼まれましたけど、この曲だけは渡しませんでしたからね。
メロン全員:ありがとうございます!
村田:私たち、幸せもんだぁ...。
ヒダカ:曲のアイディア自体は去年ぐらいに出来てて、Aメロも自分の中では何となく決まってましたからね。あと、タロウがスティーヴ・スティーヴンスみたいなソロを弾くっていうのも決めてました。
カトウ:オレ、レコーディングで凄く久し振りにアームを使いましたね。
ヒダカ:タロウは最近ヴァン・ヘイレン・モデルを買って、ニコニコしながらそれをスタジオに持ってきて置きっぱなしにするから、邪魔でしょうがないんですよ。誰も見てないのに(笑)。
カトウ:いやぁ、もう嬉しくて嬉しくて(笑)。ギター・ソロも笑いながら弾いてましたよ。
ヒダカ:ヲタモダチはあのギター・ソロにも反応すると思うんですよ。世代的にメタル好きも多いだろうから。
カトウ:それこそ、前に"MELON LOUNGE"に出させてもらった時にDAIGOみたいな革の手袋を付けてポーズを取ったら、ヲタモダチが過剰に反応してくれましたからね(笑)。
メロンをロック・バンドに喩えると?
──これだけの名曲が完成したわけですから、早く生で聴きたいものですね。
斉藤:私たちも早くライヴで唄いたいですよ。
ヒダカ:"〜LOUNGE"が楽しみですね。今のところ、この新曲ともう1曲何かセッションしようかなと考えてるんですよ。前にメロンがライヴでカヴァーしてたジョーン・ジェットの『I LOVE ROCK'N ROLL』みたいなロックの定番曲をね。ただ、メロン、俺たち、ヲタモダチ、スタッフみんなの考える定番ってそれぞれ違うじゃないですか。だからどこに軸を置くか迷いますよね。メロン的には全く知らない曲を唄いたいか、知ってる曲をアレンジしたほうがいいか、どっち?
斉藤:やっぱり、どこかで聴いたことのある曲のほうがいいような気がしますね。
大谷:共通項じゃないですけど、メロンも知っててビークルさんも知ってる曲がいいですね。ヲタモダチはどんな曲をやっても絶対付いてきてくれると思うんですよ、ちょっとムリをしてでも。
──ビート・クルセイダースの皆さんにお伺いしたいんですが、メロン記念日をロック・バンドに喩えるとどんな感じになるでしょうか。
ケイタイモ:さっき一緒にアー写を撮った時に思ったのは、L7みたいな感じですね。ちょっとビッチすぎるかもしれないけど、写真を見た印象ではね。
斉藤:L7? ああ、L7ね(笑)。
マシータ:どうせ後で必死になってウィキるんでしょ?(笑)
ヒダカ:それはオマエだろ。マシータはウィキペディアを見るのがもの凄く早いんですよ(笑)。
マシータ:会話に出たことをその場で調べますからね(笑)。メロンはですね、楽器を持つとバングルスみたいな感じになるのかなと。
斉藤:バングル? ああ、バングルね(笑)。
マシータ:ちょっと、"ス"が抜けてるよ、"ス"が!(笑)
クボタ:CSS(カンセイ・ジ・セール・セクシー)とか、かわいい感じよりは酸いも甘いも噛み分けた明るいビッチ感のあるバンドなんじゃないかな。ほら、メロンのメンバーもそろそろ妙齢なわけだから(笑)。
村田:おっと、軽いSを頂きましたよ(笑)。
ケイタイモ:再結成ゴーゴーズとかいいんじゃない? 何年か前に見たけど、まだ充分かわいかったし。
カトウ:うん、かわいかった。オレはやっぱり、女性版ボン・ジョヴィと呼ばれたヴィクセンとかですね。あと、ケイタイモが挙げたL7じゃないけど、ホールぐらいの悪い感じを出してもいいんじゃないかと思うんですよ。ああいう捨て身な感じの格好良さが出たメロンを一度見てみたい。
ヒダカ:俺が初めてメロンを見た時、4人の佇まいがそもそもバンドみたいだなと思って。今度の曲で俺がイメージしてたのはランナウェイズなんですよ。ただ、ランナウェイズ最大の失敗は、代表曲である『CHERRY BOMB』をライヴでやっても意外と盛り上がらないことなんですよね。"チェ、チェ、チェ、チェリーボム!"のところでドカーンと一発終わる感じだから。そこにどうやって色をつけようかと試行錯誤したのが『DON'T SAY GOOD-BYE』なんです。この曲はだいぶ爆発ゾーンが多いんですよ。
──メロンの皆さんはこの後4組のロック・バンドとのコラボレーションが控えていますが、今後どんなテイストのロック・チューンを唄っていきたいですか。
大谷:今回はビークルさんにすべてをお任せしたことで凄くいい作品が仕上がったので、関わるバンドさんにすべてをお任せしたほうが自然にロック色に染まれると思うんですよね。今までのメロン記念日のイメージを変えるには、自分たちが把握してる自分たちのイメージじゃないものを色づけてもらったほうがいいのかなと。
──「こんな素材です」とまな板の上に乗るような覚悟で?
大谷:はい、そうですね。
ヒダカ:マグロ?(笑)
大谷:マグロは大好物ですけど、何か?(笑)
ハロー!を卒業してゼロからのスタート
柴田:私は、みなさんが今お話ししていたようなロックの話にもゆくゆくは入っていけるような知識を身につけたいですね。
ヒダカ:俺、学校やろうかな?
──それこそ中洲産業大學で是非(笑)。村田さんはDJムメとしてミドリの野音ライヴにも出演されますね。
村田:はい。先日、ミドリさんのライヴも拝見させて頂いたんですけど、まだまだ知らない音楽がたくさんあるんだなと思ったんですよね。初心者としては圧倒されっぱなしだったんですけど、いろんな意味で凄く楽しめたんですよ。そこで得た経験をちょっとずついいスパイスとして自分たちに与えられればいいなと思って。だからまずはいろんな音楽を聴いて、そこからだなと。私たちは3月にハロー!プロジェクトを卒業したので、ゼロからのスタートなんですよ。
──メロンの皆さんがビート・クルセイダースのライヴを見て学んだのはどんなことですか。
大谷:今までの曲だと、私たちには振り付けってものがあるじゃないですか。最初はそれありきでファンの方も盛り上がってくれてたんですけど、いつの間にかロック系の曲が増えてきた時に、振り付けに関係なく盛り上がるようになったんですよね。ビークルさんのライヴを見に行ったらお客さんがモッシュやダイヴをしていて、凄くゴチャゴチャした空間がそこにはあって。それを見た時に"あ、遠くないぞ!"って感じたんですよ。だから早くそっちの世界に行きたいなって思います。
斉藤:私はビークルさんのライヴを見た時に、自分たちのライヴをロックと呼んでることがちょっと恥ずかしいと思いました。
ヒダカ:あららら、全然そんなことないのに。
斉藤:いやいや、それぐらい凄い盛り上がり方で、私たちはお客さんとの距離感や乗せ方がまだまだだなと強く感じたんですよ。
ヒダカ:でもこっちは逆にメロンのライヴを見て、ウェイヴをする曲はここで必ず決め打ちにしようとか、この曲で必ずこのアクションをやろうとか、振り付けまで行かないけどそういうのを決めたんですよ。バンド側にもそういう決め打ちの見せ方があってもいいんじゃないかと思って。
斉藤:そうなんですか! でも、見せ方は難しいですよね。曲の見せ方をアレンジしすぎると、原型を留めなくなってしまう部分もあるし。
──ロック・バンドがレパートリーのアレンジを必要以上に変えて、オーディエンスがガッカリするのはよくあることですけどね。
クボタ:ありますね。今のモードだと恥ずかしいから"このアレンジ、イヤだな"と思っても、ファンはそのアレンジが聴きたいんだから、ヘンにいじらないほうが絶対にいいんですよ。新しくやりたいことは新曲でやればいいわけで。
ヒダカ:ウチらはずっと同じアレンジでやると思うもん、『HIT IN THE USA』とか。
ケイタイモ:ブレイクの部分で必ず手拍子を入れるしね。
ヒダカ:うん。これまで何万回もやってきたけど、この先また何万回もやるんだろうなと思うし。
斉藤:でも、最後の曲がいつも『This Is 運命』でいいのかなとか、悩むところではあるんですよ。それでもお客さんは盛り上がってくれるんですけど。
大谷:やってる側としては不安な部分もあるんですよね。ライヴのメニューを自分たちで決めるようになってからは、盛り上がる曲の定番が7、8曲ずっと変わらないんですよ。だからその順番を入れ替えたり、アレンジをしてみたり、これでもいろいろと考えてるんです。衣装を替えてみたりとか、そっちに持っていったりもして。
──でも、"MELON GREETING"では毎回趣向を凝らした選曲の妙が楽しめるし、皆さんの"〜GREETING"に懸ける思いがひしひしと伝わってきますけどね。
ヒダカ:それは我々が大人のファンだからですよ。まだメンバーと同世代から下の若いファンには定番曲が欲しいところではあるでしょう。
ロックは最初のハッタリが大事
──なるほど。まぁ、そうしたこれまでの鬱積をすべて吹き飛ばすような新たなフルーティー・キラー・チューンが生まれたわけですから、実に喜ばしいことですね。
ヒダカ:『DON'T SAY GOOD-BYE』が新たな定番曲になって頂ければ嬉しいですよ。
──合同アー写の撮影も先ほど無事終えられて。ポップキャッチャーのいちファンだった立場として言わせて頂くと、クボタさんが村田さんにベースを手渡す日が来るとは実に感慨深いです(笑)。
クボタ:ですよね。アイドルの方にベースを渡すだなんて(笑)。
ヒダカ:タロウとクボタさんはそういう世界とは一番遠い所にいましたからね。
カトウ:ホントですよ。今とっても幸せです!(笑)
斉藤:カトウさん、さっき凄く大きいこと言ってたんですよ。「人生で今が一番オイシイ時です!」って、そんなにスケールが大きいんですか!? っていう(笑)。
カトウ:今までの人生で陽の目を浴びた記憶がないんですよ。
ヒダカ:いや、今もまだ浴びてないよ(笑)。
カトウ:ああ、やっぱり(笑)。
──では最後に、今回の『DON'T SAY GOOD-BYE』の聴き所をメロンの皆さんにおひとりずつ伺って締めましょうか。
斉藤:ビークルさんが曲を作り上げていく段階を見たり聴いたりして、そこで得た感動をそのまま伝えられるように唄いたいという気持ちはあったんですけど、私としてはこの楽曲が凄い挑戦だったんですよ。基本的にハモりは自分の担当じゃないし、トップバッターとして唄うのも凄いプレッシャーだったし...。
カトウ:全然そんなふうには見えなかったけどね(笑)。
斉藤:よく言われます(笑)。自分の中で新境地を開拓できたのかどうかはわからないですけど、今までの自分よりも強くなれたかなと思える挑戦でしたね。
ヒダカ:斉藤さんは一番声が強くてドスが利いてたからね(笑)。だからトップにしたんですよ。ロックは最初のハッタリが大事ですからね、ウチとか怒髪天みたいに(笑)。じゃあ、次は村っち。
村田:村っちはですね、こんなに素敵な楽曲を頂いて、ビークルさんの貴重なお時間を頂いてメロンのレコーディングをしたわけですから、待ってくれているたくさんのヲタモダチはもちろんのこと、メロン記念日のことをまだ知らない方にもどんどんアピールしていきたいって思いました。
ヒダカ:是非『紅白』を目指して下さい。次は大谷さん。
大谷:はい。今から心配なのが、ラップのところで前へ出てきて、3人でちゃんとラップができるのかな? と...(と、カトウを見る)。
カトウ:...オレ!?(笑) そこは"ひとり『ジャッジメント・ナイト』パート"ですから(笑)、抜かりなくやります。
マシータ:まさにメタルとヒップホップの融合だね(笑)。
大谷:最初はヒダカさんにも唄って欲しいってずっと言ってたんですよ。そのほうがビークルさんのファンの方もアガるんじゃないかと思って。
ヒダカ:それがまさかのタロウ・ソウルになったと(笑)。でも大丈夫、俺が唄わなくても俺のメロディ感は充分出てますから。
メロン型にくり抜かれた最後のピース
ヒダカ:じゃあ、最後に柴田さん。
柴田:そうですね、ビークルの皆さんの音を感じて欲しいです。
ヒダカ:...え、そんだけ?(笑) 柴田さんの聴き所はあそこでしょ、ピンで唄う所でちょっとヘンな声が入ってるっていう(笑)。
柴田:もう、勘弁して下さいよ(笑)。
ヒダカ:ちょっとクセをつけることにして、"ルールの"を"ルゥフゥルゥのォ"みたいな感じでフェイクっぽく唄ってるんですよ。
柴田:吐息混じりなのが気になったもので、録り直したいって言ったんですけど...。
ヒダカ:それを全力で阻止しました(笑)。そこが萌えポイントなんですよ。タロウで萎えポイントを作っちゃったんで、柴田さんのパートで何とか盛り返さないと(笑)。
柴田:それも、マシータさんの強い意向で...(笑)。
カトウ:マシータが唯一そこで凄いジャッジメントを下したんですよ(笑)。
ヒダカ:「俺の"MP"を取るな!」って言うから、「"MP"って何?」って訊いたら「"萌えポイント"だ」って(笑)。あと、これは言っておこうかな。そもそも俺がメロン記念日を好きな理由は、ほっとけないからなんですよ。
大谷:うわー! 今、胸がキュンキュン言ってますよ!(笑)
──ほっとけないよ、と。楠瀬誠志郎も我々も思いは同じなんですね(笑)。
ヒダカ:ハロー!にいた頃からメロンが一番いいっていうのはそこでしょう? バンドマンにほっとけないと思わせる何かがメロンにはあるんですよ。4人っていう人数も凄く強いんだと思う。ギャルバンみたいなイメージがあるからね。
クボタ:僕が尊敬するのは、一度もメンバー・チェンジしないでずっと活動を続けていることなんですよ。活動歴で言えば、今のウチよりも長くやってるわけだから。
ヒダカ:そう、そこもバンドっぽいんだよね。そんなメロンに抱いてるほっとけない感を凝縮させたのが『DON'T SAY GOOD-BYE』なんですよ。
──ほっとけないからこそ、"さよならを言わないでくれ"と。
ヒダカ:そうです。メロンが唄ってはいるけど、こっち側の気持ちなんですね。"さよならを言わないでくれ"っていうヲタモダチの心の叫びなんですよ。
村田:おお! そういうことだったんですね!
斉藤:私たちは来年の2月でデビュー10周年なんですよ。そこをきちんとした形で迎えるためにもこのコラボレーション5作品を実りあるものにしたいですし、ここで失敗できないという気合いも入ってるんですよ。その第1弾がビークルさんでホントに良かったと思うし、2年掛けて築き上げたこの雰囲気もあって、凄く心地良かったんですよね。だからホントに、ビークルさんには心から感謝したいんです。
ヒダカ:こちらこそ、唄って頂いてありがとうございます。『DON'T SAY GOOD-BYE』はメロンが唄ってくれて完成ですから。パズルのピースは最後の一片だけが足りなかったんですよ。メロンの型にくり抜いてあったピースがね。