ストライカーズの1st.フルアルバム『GOLD』が遂に完成! しかも、初の全国流通盤!! 今作は彼らが意識する"80's"のキラキラ感を充分に取り入れ、アゲアゲでイケイケなパーティーチューンや、疾走感のある楽曲、かと思えばボーカル3人の絶妙なハーモニーを聴かせる曲があったりと、個性的な光をギラギラと放つ10曲が収録された、まさにGOLDな作品。ライブのステージで見せる、暑苦しいほどのパッションとエネルギーとユーモアを詰め込んだ『GOLD』は、今のストライカーズにおけるベスト盤だと言えよう。
アルバムが出来上がった瞬間から興奮しっぱなしだという彼らにインタビューを敢行!! (interview:やまだともこ)
ストライカーズのゴールデンベスト『GOLD』
──前回『PASSION』でインタビューをさせて頂いた際に、「『PASSION』が会場限定でちゃんと形にならないと全国流通しても意味がない」とおっしゃってましたが、今回1st.アルバム『GOLD』が全国流通になったということは、バンドが良い調子になっていると考えて良いですか?
星野概念(Vo、psychiatrist) :そうですね、まあ...。
──ガツンと言ってやってくださいよ。
星野:いやいや(笑)。自分で言うのもアレなんですが、『PASSION』を出して以降、ライブの動員も増えてるし良い感じなんです。
MKTMN(Vo、Gt):『PASSION』の評判もすごく良いですよ。
松岡名作(Vo、Gt、guitar synthesyzer、program):今回、全国流通ができるのは『PASSION』がきっかけだし、そういう意味では大成功です。
──タイトルが『GOLD』ですけど、銅も銀も飛び越えて"金"に達したわけですね(笑)。
星野:常にトップを目指していたいんです。
──どんな意味で付けたんですか?
星野:前身バンドのザ・ストライカーズの時に、松岡くんと2人でやっていた曲も何曲か入っているんです。その時に英語で歌っていた曲を『GOLD』では日本語にして入れたり、リアレンジしてレコーディングし直して入れているんですけど、昔出した曲も入ってるし新しい曲も入っているし、今までの集大成的なイメージで作ったので『GOLD』なんです。
MKTMN:ゴールデンベストということですね。
松岡:ミックスは2人のエンジニアさんにお願いしたので、雰囲気的に変わったものが混在していて、それが結果的に良いバランスになっていると思うんですよ。
──ザ・ストライカーズの頃の曲は、今作ではどんな風に変わったんですか?
松岡:とっぽくなりましたね。
星野:『Kung-fu cider』(M-1)、『奇跡の回路』(M-2)、『ヒバリ』(M-9)がザ・ストライカーズの時代の作品になるんですが、前は打ち込みも入ってなかったんですけど、今回からギターシンセサイザーを導入したんです。
松岡:僕のギターからシンセサイザーの音が出るマイクを買ったんですよ。それがサウンドがとっぽくなってるように聴こえるんです。
MKTMN:今回の音の要ですね。ギターシンセサイザーは。
松岡:ギターはマコちゃん(MKTMN)に任せて、飛び道具的な感じにしました。
MKTMN:前回は打ち込みがメインでしたが、今回はバンドサウンドにギターシンセサイザーを使った曲が多いです。
──『GOLD』を聴いて、シンセのサウンドは全て打ち込みだと思っていたんです。なので、メンバーにキーボードを迎えることは考えてないんですか? と聞こうとしてましたが、その役目をギターシンセサイザーが担っているということですね。
松岡:はい。ライブで演奏してもシンセの音が出せるようになったんですよ。『PASSION』に入っていた4曲は打ち込みの曲で、今回新しく入れたものは全部ギターシンセで、そのバランスも...GOLDです。
星野:キーボーディストがいたほうがいいというのは、今までもけっこう言われてましたけど、試行錯誤して辿り着いたのがギターシンセサイザーだったんです。だから、キーボーディストがいるようなものなんですよ。ギターシンセを使う感じがかっこいいかなって思ってます。それがGOLDかな(笑)。他のバンドが使っているのはあまり見たことがないし、ストライカーズのポイントになりましたよ。
松岡:ザ・ストライカーズの時もギターシンセを使おうという話は出たんですけど、結局買うタイミングがなくて、そんなことを忘れかけてる時にマコちゃんが「(ギターシンセの)新しいヤツが出たんです、名作さんぴったりじゃないですか?」って見つけてきて、3人で弾きに行って「コレだ!」って。
星野:買った物だけ見たら、なんだコレってヤツなので、こいつが要になるとは思わなかったです。ダークホース的なアイテムを手に入れました(笑)。今までは打ち込みを流しながらやっていたので、何でもかんでもやりたいことはできちゃっていたんですけど、それは逆から見ると楽曲のまとまりのなさに繋がっていたんです。まとまりがなくても核があればいいですけど、その核がサウンド面になかった。でも、ギターシンセは目立つ音なので核となって聴こえるようになったから、ライブで聴いてる人もこういうサウンドを出すバンドなのかってわかりやすくなったと思うんです。
松岡:掴みやすくなりましたね。
──ということは、逆に打ち込みは少なくなったということですか?
松岡:上物の打ち込みは『PASSION』に入っている3曲と『ヒバリ』以外は全部ギターシンセです。
──『ストーリー』(M-6)のピアノの音は?
松岡:それは打ち込みです(笑)。
MKTMN:ギターシンセでピアノも弾けますけど。
松岡:ギターで弾くと難しいんです(笑)。
歌詞はリズム感が大事
──『Kung-fu cider』は昔からの曲だとおっしゃってましたが、元はどんな曲だったんですか?
星野:英詞だったんです。英詞を日本語詞にしたんですが、響きメインの歌詞なので読んでも意味はよくわからないと思います。英詞のニュアンスを消したくないところもあったので、英詞のフレーズを残して意味が通じるようにつじつまを合わせる作業をしました。『Kung-fu cider』は初めて作った曲で、ようやく作品に入ることになったんです。
──人生で初?
星野:いや。人生で初めて作った曲は高校の時に作った『今夜はパーティーナイト』って言うんですけど(苦笑)。大学に入ってバンドをやろうと思って、初めて作ったオリジナル曲。それが今回PVになり...。
──10年ぐらいあたためた曲になるんですね。でも、なぜタイトルは『Kung-fu cider』なんですか?
星野:タイトルの意味とか全然考えてなかったです。言葉の響きだけで、18歳ぐらいの時にかっこいいと思っていた言葉だったんでしょうね。でもブルース・リーが好きで、その頃ヌンチャクの練習とかしていたんです。
一同:(失笑)
星野:それが、"Kung-fu"が付いた原因になっているかもしれないです。
──途中で"YOUはSHOCK!!"と叫んでいる部分がありましたが、あれは?
星野:英詞の時は、全部『北斗の拳』をイメージして詞を書いていたので、「胸に7つの傷がある」を英語にして「胸にセブンスターな〜」という歌詞になっているんです。ケンシロウみたいに強がってろっていう意味で。...誰も理解できてないと思いますが(笑)。
──なるほど。一生懸命歌詞を解読しようとしましたが、どうしても理解ができなかったんです。
星野:そういう曲もあると思いますよ。昔は他の人が読んでもわからないような歌詞を書いてましたから。
MKTMN:『奇跡の回路』(M-2)とか、昔からやってる曲はそうですね。
星野:自分の中では意味が通っているんですけど、自分の中でも意味が通ってないというか難解だと思うのは『Kung-fu cider』とか。
──前回のインタビューで、「昔は自分が特別な存在だと思っていた」とおっしゃってましたね。そういう星野さんが書いていたとなると納得です。
星野:誰にも理解なんかさせるもんか、できるもんならしてみろ、できるはずないじゃないか、と思いながら歌詞を書いてましたから(笑)。
──ひねくれた感じは残ってますね。音楽的な間口は広がっているんですけどね。
星野:歌詞は"哲学おじさん"の時のままなんです。
──(笑)でも、最近は歌詞の難解度はやさしくなってきてますよね?
星野:自分なりに言葉のこだわりはすごくありますけど、景色が伝わるように書いてますよ。たぶん、このアルバムの半分ぐらいは、人それぞれですが景色が見えるようにはなってますね。
──今回の星野さんの詞は「オ イェ」と「トゥトゥトゥトゥ」が多いんですね。
星野:歌詞が思い浮かばないと「オ イェ」と「トゥトゥトゥトゥ」になるという部分もあるんです(笑)。言葉のリズムは昔から大事にしていて、そこにもうちょっと意味を持たせようとしているのはストライカーズになってからですね。ザ・ストライカーズのときは、リズムと雰囲気だけあれば言葉に意味は全くなくていいと思っていたんです。その頃読んでいた本がビートニクとかばかりに傾倒していて、でもそれになりきれない。それっぽく書いてるだけの曲が多かったんですけど、最近は書き方がわかってきて、言いたいことを自分の満足する言葉の並び方で表現できるようになってきたんです。
──ということは、その時に読んでいた本などから曲のインスピレーションが湧くことって多いんですか?
星野:曲を書いて詞を書くんですけど、曲をアレンジしている時に、その曲から物語とか画とかが浮かぶようになるんです。それを書いているという感じ。ちょっとキザっぽいこと言ってて恥ずかしいんですけど...。その情景をどれだけ伝えられるかというのが勝負。その情景が伝われば勝ちなんですよ。うまいこと最近はできるようになってきたんですけど。
──で、うまくはまらないときは「トゥトゥトゥトゥ」で...。
星野:余ったら「オ イェ」なんです(笑)。これが常套手段です。
──松岡さんはどんな風に詞を書いてます?
松岡:曲が最初でその後に詞を書くのは星野くんと同じ。詞は自然に書くとよくわからないってなりがちで、みんなと話しながらわかりづらいねって、相談しながら書いてます。『ストーリー』は星野くんとマコちゃんと3人で書きましたから。『gift』は曲を作っているうちにイメージができてきて、所々言葉が出てきて、そこから広げていくんです。
星野:マコちゃんは今回作詞も書いてますが、『ストーリー』『gift』とか曲のタイトルを付けることが多いですよ。
──『ヒバリ』は何でこのタイトルなんですか?
星野:これはザ・ストライカーズの時代に作ったんですけど、疾走感があるなと思っていて、シュッとした感じがヒバリなんじゃないかと。青い空をすごいスピードで飛んでいくイメージです。曲名なんて、なんとなくわかるっていう感じで良いんです。でも、わかんないから聞かれたんですよね? だからちょっと失敗ってことですね(笑)。
──歌詞にあるように若い頃は、海でイケイケで遊んでいたんですか(笑)?
星野:いえ。サーファーの友達は、イケイケで超ナンパとかして楽しんでいたみたいですけど、俺はそうはなれないなという立場から書いた曲なんです。
MKTMN:憧れってことです。俺もそっちのほうに行きたいって。
星野:そう。海とかで遊んでたら、もっとカラっとした感じの曲になったと思うんですよ。ああゆうのいいなと思いながらも、俺達の方が絶対センスいいぜって心の中で思ってました。イケてる人たちに憧れていながらも、自分のほうがセンス良いって思っているような気持ちの人たちってたくさんいると思うんです。そういう人たちのほうが絶対に多いし、共感してもらえたらいいなとは思ってます。
MKTMN:イケメンの気持ちがわかる人なんてちょっとしかいないですから!
──でも、イケメンはだいたい「自分のこと好きじゃないんです。自分の顔は好きじゃないんです」とか言いますよ。
星野:自分の顔が好きじゃないのは俺達も一緒ですよ(笑)。ただ、「それでそんなことないですよ」って言われるか、「あー」って言われるかの違いなんです。
──そんなことないですよ。
星野:超軽い言葉ですね(苦笑)。
ありえないが大事
──『Kung-fu cider』はメタルもスカも入ってるサウンドでしたけど、これは全員でアレンジしているんですか?
MKTMN:はい。昔から比べるとアレンジはかなり変わってますよ。
──かなりMKTMNのギターが鳴りまくっているように聴こえました。メタルっぽい速弾きがあったり...。
Yoshi-Ito(Drs):最近ドンドン速弾きに染まってるよね。
MKTMN:僕の世代だと中学生ぐらいでメタルにハマるんですけど、僕は20代半ばに来てメタルとハードロックばかり聴いてます。今まで嫌いだったけど、素晴らしさに気づいたのが1年ぐらい前ですね。
星野:最近速弾きの練習ばかりしてますからね。
MKTMN:とにかくかっこいいんです。やっぱりギターは速弾きなんです。スピードなんです!!
一同:(笑)
──今までは?
MKTMN:一切そうじゃなかった(笑)。ギターをいかに泣かせるかばかり考えてました。
星野:今は泣いてるヒマなんてないよね。
MKTMN:今は誰よりも早く走るかみたいなことを考えてます。
──その反面、『ストーリー』は泣きのギターじゃないですか?
MKTMN:まあ、そうですね。
松岡:両立です。
MKTMN:でも、これからはどんどんスピードしか興味がないギタリストになってくと思う。
松岡:両立してよ(笑)。
星野:『ストーリー』を作っていた時は、泣き重視ですからね。
──『ヒバリ』はかなりドラムが早いですよね? あれはBPMはどれぐらいですか?
Yoshi-Ito:けっこう早いです。BPM183ぐらいでしたっけ?
星野:メロコアぐらい?
Yoshi-Ito:ビートを直したからメロコアぐらい早いかもしれない。
松岡:そういう曲ばっかりですよ。
──1番早いのは?
Yoshi-Ito:今のところ『Kung-fu cider』が最速でBPM199ぐらい。
──そのスピードはどなたの要望ですか?
Yoshi-Ito:MKTMNです。「遅い! 上げてくれ!!」って。
MKTMN:速さしか考えてないので。
星野:スピートキングですよ。
Yoshi-Ito:その結果、すごいスピードになってライブで苦労する曲になりました(苦笑)。ありえないですよ。
MKTMN:ありえないが大事なんです!! 他がやってないことをやらないと!! 限界に挑戦ですよ。
星野:スポーツみたいなものです。
MKTMN:短距離走みたいなものですかね。
──ストライカーズ自体がスポーツマンみたいなものですよね。
MKTMN:常にハードルを上げていかないとおもしろくないじゃないですか。僕だって速弾きはできなかったけど、イングヴェイ・マルムスティーンが目の前に立ちはだかっているでっかい壁なんです。1年前までその壁はなかったけど、その壁が今はあるからどんどんうまくなると言うか、壁がないと面白くないんです。壁があればバンドの中身も変わっていくし、ストライカーズのテーマだなって思います。
──前回のインタビューでも、ずっと求めるものがないとやれないっておっしゃってましたよね。
MKTMN:じゃないと面白くないですから。聴いてるほうも、そういうことには敏感だと思うんです。こいつら求めてないなって思ったらライブにも来てくれなくなる。先を感じるから、例えセットリストが同じでも来てくれるんじゃないかな。
星野:何か到達したいところが明確にあって、全員がそこに向かってギラギラしているからすごくいいものが出ているんです。それだけは今ある気がしてます。他の演奏力とかはわからないですけど、一体感と乾きはいつも欲しています。
MKTMN:もっともっと良い曲を作りたい、良い演奏をしたいというのは、ミュージシャンの健康体なんです。それをなくしたらやる意味がない。
星野:マンネリとか絶対にないですね。
MKTMN:『GOLD』で最高のものを作れたから、さらに良いものを作らないと面白くない。
星野:『GOLD』は最高だと思ってますけど、まだ全然できると思っています。今は次のアルバムに入れたい曲がどんどん溢れてきていますよ。
MKTMN:新曲の嵐です。すぐにでもミニアルバムのレコーディングができるような状態です。
星野:全員音楽のことしか今は考えてないんで、それがうまく回っているし、ありえないぐらいのペースで新曲ができていたり、ライブをこなす原動力があると思ってますが、根本はただ音楽が好きなだけ。到達したいところはもちろんあって、基礎練とかスポーツ選手並みに毎日やってますから。
目指すは80's
──今回アルバムを作るにあたって、何かコンセプトがあったんですか?
星野:今は自分達のイメージとしては80'sっぽいというか、フィットネスしながら聴ける感じを目指してます。80'sのすっとぼけてるけど攻撃的で鋭角的なイメージを統一したかったから、ゆっくりな曲は1曲だけでいいだろうというのがあって『ストーリー』を入れてます。『GOLD』は80's感で統一したかったんです。その頃をリアルタイムに生きたわけではないですけど、今いろんな80'sが特集されている写真集を見たりしてますけど、今のストライカーズは80'sの音楽とかファッションが一番しっくりくると思ってます。
MKTMN:作曲者の2人は80'sのハードロックなり、洋楽邦楽に一番影響を受けているんです。その頃の音楽って今聴くとちょっとダサいんですよね。だけど、すごい良いメロディーだったりするのが俺ら的にしっくり来るんです。
星野:あえてすっとぼけるセンスの良さがあって、必要以上にギラギラしている感じがトータルイメージとしてあればいいかな。それをすると80'sに目が行くんです。俺らの格好も最近はカラフルすぎてでたらめのように見えていると思いますけど(笑)。
──アーティスト写真でも、その色とその色は普通合わせないだろうという洋服を普通に着てますが、まずこの写真を見てバンドだとは思わないです。どこのダンスチームだろうって...。
MKTMN:最初からあった"ダンス"というコンセプトに一本筋を通したらこういう感じになるんです。
──今はこのファッションセンスに驚かされることが多いですが、もしかしたら時代の先端をストライカーズが担うことになる時が来るかもしれないですしね。
星野:そのためにやってるんです。第一線とはそういうもので、ありえないものをやるんです。それが10年後におしゃれだったりするんです。俺『Tarzan』と『MEN'S NON-NO』を毎月読んでるんですけど...『Tarzan』を読むとみんなこんな格好してますよ。
MKTMN:要はすごいミーハーなんです。流行りに乗って。
星野:イメージ的にはCSS(Cansei de Ser Sexy)っていうサンパウロ出身で、女性のモデルさんが主体で結成されているディスコ・パンク・バンドがいて超おしゃれなんです。それはちょっと影響受けてます。見たら「違うんじゃない?」って感じると思いますけど、CSSみたいだねって言われることは多いですよ。
MKTMN:あと、モチーフにしたのはヒップホップの写真集。こういう格好で、こういうポーズで、こういう背景でっていうのを探して撮影したんです。
星野:オールドスクールのヒップホップが始まった頃の写真とかジャケって本当にかっこよくて、簡単なんだけど中身がある感じがする。その感じが良いんです。変なポーズも様になってるし...。俺達はまだですけど(笑)。おしゃれしてる感じがいいなと思ったんです。
──今目指しているところってどこになるんですか?
星野:80'sのイメージで、あえてふざけるところを目指しています。ギターシンセだって、ギターを弾いてる人から見たらへっぽこなアイテムなんです。
MKTMN:エモな感じのバンドとかは、ギターシンセを絶対にダサいと思っていると思いますよ。それをあえて使ってバンドの核にするというのは、80'sのセンスに繋がるところですよ。80'sの本人たちはダサいと思ってやってないと思いますけど...。ダサいとかっこいいは紙一重ですしね。
星野:ダサいという先入観から、人が手をつけないところに俺達が求めている答えがあると思っています。全員がそういうのを探していて辿り着いたのが80'sの文化。人が捨てていくものたちに輝きを見つけるというか。
──未開拓を探していくんじゃなくて、今まであったものを掘り起こす?
星野:それとか、これは本当にかっこいいのに、みんなが気づいてないだけだと思ってます。それを提示してます。
──だからこそ、こういう堂々としたアルバムができるというわけですね。
MKTMN:僕たちの考えるオシャレが詰まったアルバムですよ。
ライブは全部を表現できる場所
──個人的な意見だとは思いますが、ストライカーズって学校で言えばクラスの人気者とは違ったグループでいる存在。本当は派手なグループになりたくて近づきたいんだけど、うまくいかなくて、だったら何とか他の目立てる手段はないかと考えてフツフツしているようなイメージがあります。
松岡:完全にそれですね。
星野:でも、クラスの人気者たちは、実は本当のかっこよさを見落としているんです。俺らは、どうにかしてそいつらの鼻をあかしてやろうって考えているヤツら。このセンスは人気者たちにはわからないだろうと思いながら、それが形になってきて「あんなにかっこよくなってる!」って気づいてもらえるようになるんですよね。だから、同じアンテナを持った男の人に聴いて欲しいです。
──探している感じが、欲求とか原動力になるっていうことですもんね。モテない分、がんばってやろうみたいな...いや、今皆さんがモテないとは言ってないですけど。
星野:いいですよ、気を遣わなくて(笑)。
──内面のグツグツした原動力が詰め込まれているのが今のストライカーズだったりすると思いますが、音楽をやる上で求めているものっていうのは何ですか?
星野:自分の表したいものが一番表現しやすいんです。ビジュアルイメージも言葉もそうだし、何よりも音楽とか踊りとかが表現しやすいから、何でやってるかと言ったらそれですね。
──音楽じゃないと伝えきれない?
星野:はい。言葉で説明しようとしても全部伝わらないと思うんです。だからライブを見てもらいたいと思っています。
MKTMN:結局はライブなんです。やりたいことは。音源はもちろんですけど。
──ライブに来るための手段が音源?
MKTMN:もともとライブが大好きなんです。元気になれるとか笑えるとか、ちょっと恥ずかしいかもしれないし、ダサいかもしれないけど見ていてテンションが上がるって音楽しかないと思っています。ライブハウスに来てストライカーズのライブを見るとスカッとするとか、メロディーが気持ちいいとか感じてもらいたいんです。人に対してプラスになることをできるのは、僕らには音楽しかないなって思っているんです。それが出来ていることが素晴らしいという誇りがあります。僕らはそんなに売れてるわけではないですけど、ちゃんと伝えていきたいと思っています。でも、根本はみんな音楽が好きなんですよ。
星野:全部表現できるのはライブですね。踊る、歌う、泣くを立体的に伝えられるのはライブだし、俺たちの曲を、俺たちのパッションでしか伝えられないことをやっているという自負はある。誰がやってもいい音楽とか、誰がやってもいいライブとかはしてないはずです。パンチはあると思います。それが最近は、本当にライブで表現できたっていう実感がだんだん増えてきているのでどんどんライブが楽しくなってきているし、ライブを見た人に、何か残ったなって思わせられるようなライブになってきていると思います。だから、ライブが本当に全部伝わる手段ですね。音源とか写真とかは断片でしかなくて、ライブは目で見るし、耳で聴くし、MCするし。全部伝えられるような気がしてます。
──人も伝えられますからね。
星野:人間力があるかどうかはわからないですけど、こんな人間ですというのは伝えられる気がする。
──Itoさんは、音楽が何が原動力になってますか?
Yoshi-Ito:僕、音楽は昔すごく嫌いだったんです。音楽の授業が大ッ嫌いで、歌うのも嫌いで、その後中学校の時にドラムをやらないかって言われて太鼓ぐらいならできるだろうってやらせてもらったんです。それが人生をガラッと変えちゃって。僕、ドラムがすごく好きなんです。すごく飽き性なんですけど、ドラムは10年ぐらいやっているのに全然飽きないし、奥が深くて魅力的なんですよね。で、ドラムをやっていたいので音楽をやってる感じですね。
──今の話をまとめると、「ドラムがとにかく好きだ」と。
MKTMN:ドラムを取ると何も残らない人です。
Yoshi-Ito:ドラムだけでは表現できないところがいっぱいあるじゃないですか。歌と一緒になった時のドラムの良さとか、ギターと絡んだ時とか、そういうのが気持ちいいんです。
──それがバンド力ですね。バンドがあるからItoさんが楽しくやれていると。
MKTMN:Yoshiくんのいる意味がある。
星野:さっきの話でも、ただ「ドラムがやりたいだけだ」としか言ってないヤツがメンバーとして成立するということは、それだけの求心力が俺らのバンドや曲にあるんじゃないかって解釈もできて、俺たちは嬉しいっちゃー嬉しいですから。
──熱量ですからね、必要なのは。
MKTMN:それだけわかりやすくていいんです。みんながあーだこーだ言い始めると団体ってまとまらないから、ドラムが好きなんですって言ってくれた方が良いんです。
B級の逆襲
MKTMN:僕たちはB級バンドですよ。
星野:何でいきなり(笑)?
MKTMN:80'sってB級というか、人が興味を持たないところに輝きを持たせるじゃないですか。ストライカーズはそれが強みなんですよ。B級でもA級になり得ることもあるわけで、ぴったりだなって思ったんです。それを言いたかったんです。
松岡:時にはA級を超えますからね。
MKTMN:それがライブなんです。B級の逆襲ですよ。
──そのA級にもなり得るライブ映像が、特典のエンハンスドCDで見られるんですか?
松岡:ライブはちょっとで、オフショット映像がたくさん入ってます。
星野:オフショットは、ツアーの時にハンディを持って小ネタみたいなものをやってる小ネタ集。
MKTMN:B級がやるC級小ネタ集です。
星野:けっこうおもしろいですよ。編集がうまいこといってるんです。旅館でダンスの練習している風景も入ってます。
──前作以降、またダンスの練習を強化するとおっしゃってましたが、その後どうですか?
星野:今はサポートベースを入れて5人で踊ってます。
──Itoさんも踊ってますね。
Yoshi-Ito:とんでもないことになってますよね(苦笑)。踊りたくないわけではないんですけど、あれが限界なんです。
MKTMN:見る人が見ると天才らしいですよ。
星野:なかなかああは踊れないって(笑)。今は、同じ曲で同じ踊りでって決めているのでフリの確認ぐらいしかしてないですけど、今後は本格的にロックダンスっぽいフリにできたらなって考えてます。
──このCDでようやくストライカーズの全貌が見える人がいるんじゃないですか?
星野:初の全国流通ですからね。ザ・ストライカーズの時に流通されてますけど、"ザ・"が取れてからは会場限定とかハイライン限定なので、今回初めてなんです。
MKTMN:ファーストですよ。メンバーもバンド名も変わって。
星野:超ワクワクしてます。全国に知れることが。ずっと興奮してます。なんかその興奮が良いように働いて、ライブもアッパーになってきているんです。いい感じです。ひさびさの全国流通ということもあって、友達のバンドマンとか、お笑いの人とかにコメントもらったりして応援してくれる人も多いので、それに応えられるような感じになればいいと思っています。
──では、最後に全国の読者の皆さんに一言ずついただいても良いですか?
Yoshi-Ito:あんまり細かいことは考えてないんですけど、ドラムって楽しいですよ。これを聴いて、ドラムを始めてくれる方がいたら嬉しいです。
松岡:良いアルバムができたし、ライブの調子も最近良いので期待していてください。
MKTMN:自分で良いとかあまり言いたくないですけど、本当に良いアルバムができました。聴いてもらって気に入っていただいたら、ライブが僕らにとって唯一のA級への逆襲なのでライブに遊びに来て下さい。ライブに来てもらって一緒にワーキャーできたらなって思います。僕が誰よりも楽しむので俺についてこいってことで。
星野:そうだね。まだ気づかれていないセンスの良いことを、踊りと歌と笑いと涙で伝えて行きたいと思うので、その皮切りにまずCDを聴いて感じてもらって、ライブに来て踊ってもらえたら最高かなと思います。