歌を共有する時間は何物にも代え難い
──ノスタルジックな雰囲気の「三輪車」もそうですけど、自分達のルーツを気負いなく表現できている。“2008年らしく響かせるためには、どうしたらいいか”ってことも考えてました?
金吾:えっと、どうだったかなぁ…?
井澤:それほど意識してないかもね。
金吾:たとえば、ファッションでも“80年代っぽい”とか“70年代っぽい”ってあるじゃないですか。それが受け入れられるのは、過去のものをそのまま持ってきてるつもりでも、意識しない部分で2008年なりのマイナー・チェンジが為されてるからだと思うんですよね。音楽もそれと同じで、自分達が楽しんでやっていれば、自然と今のモードになっていくんじゃないかなって。あと、この記事を読んだ人がデュラン・デュランに興味を持ったとしたら、それはそれでいいことだと思うし。…いないか、そんな人(笑)。
井澤:ベースに80年代の音楽があったとしても、この4人のフィルターを通すことで2008年の空気感になっていくってことですよね。それこそ、このバンドが10年以上続いてきた秘訣なのかもしれない……なんちゃって。
金吾:いや、今、凄くいいこと言ったよ。“なんちゃって”はトミー(冨澤)のセリフだし(笑)。
井澤:じゃあ“なんちゃって”はナシってことにしといて下さい(笑)。
──(笑)「歌はマジック」も印象的でした。歌や音楽によって何かが変わるってことを、心のどこかで信じてたりしますか?
金吾:……このタイトルはかなり悩んだんですけど、ストレートに行こう、って思って。何て言うか、タイムスリップ・ランデヴーで唄ってる時もそうだし、自分達の曲をアコギ1本で唄ってる時もそうなんですけど、最近、ちょっとずつ意識が変わってきてるんですよね。“歌が何かを変える”なんて、“え~?”って思ってた時期もあるんですけど、歌によって救われる人も、きっといるんだろうなって思うようになってきて。
──はい。
金吾:自分達が唄ってる時もそうですけど、その瞬間には、現実の生活とは全く違う空間があるわけじゃないですか。そこで歌を聴く、一緒に唄うっていうことは、その人の生活の中で凄く重要なことなんだろうなっていうのが判ってきたんです。何かを変えられるとか、変えなくちゃいけないっていうことではなくて、イヤなことを一瞬でも忘れられる、そういうことがとても大事なんだなって。たとえば楽しそうな顔をして街を歩いている人も、子供のことだったり、田舎の親のことだったり、いろいろあると思うんです。そんな毎日の中で、好きなバンドのライヴに行く、好きなバンドのCDを聴く瞬間は、何物にも代え難いんじゃないか……そういうふうに思うようになってきたんですよね、少しずつ。
──その実感は大きいですよね、きっと。
金吾:うん、もしかすると自分達の音楽も変わってくるのかな、って思いますけどね。どんなふうに変わってくるのかは、判らないですけど。
──10代、20代の時は誰しもシニカルになりがちですけど、もうそんなことも言ってられないと言うか。
金吾:年を取ると考え方が変わるってこともあるかもしれないけど、でも、どうなんですかね、今の20歳くらいの人達って。そこまで感じてないのかな?
──いや、多分、もっと深刻になってると思いますよ。よく言われてることだけど、誰が敵かも判らなくて、でも、生き辛い感覚は確実に増していて……あれ、すいません、何の話でしったけ?
金吾:いや、そういう話を聞きたかったんですよ。そういう若い人達にも聴いて欲しいと思うしね、このアルバムは。
井澤:そこで「歌はマジック」っていうのを実感してもらえたら、凄く嬉しいですよね。
──そうですね。最後に訊きたいんですけど、この後もタイムスリップ・ランデヴーは続いていくんですよね、この4人のメンバーで。
金吾:ライヴもレコーディングもそうなんですけど、やってる時は凄く楽しいし、全然飽きないんです。それがある限り、続いていくと思いますよ。
──まだまだやるべきことがたくさんある、っていうことですよね。
金吾:そうですね。自分達でやるべきことを探していくのか、“やるべきことは何か?”という答えがあるのか。多分、その両方だと思うんですけどね。