Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】TIMESLIP-RENDEZVOUS(2008年2月号)- オリジナル・メンバー4人による8年振りのフル・アルバム、遂に完成! 現在・過去・未来を超えてひとつになったバンドが切り拓いた新たな境地

オリジナル・メンバー4人による8年振りのフル・アルバム、遂に完成!現在・過去・未来を超えてひとつになったバンドが切り拓いた新たな境地

2008.02.01

あの曲がり角まで、もう1回戻ってみる

──まずは“取り戻す”という感覚が強かったんでしょうか?

金吾:…あの、『ELMIRAGE』のレコーディングって、今も凄く鮮明に覚えてるんですよ。脱げば何とかなるって思ってましたからね、あの時は。思うようなテイクが録れないと、“よし、じゃあ脱ぐか!”っていう。

泰次:とりあえず裸になるっていうね(笑)。

──どういう状況なんですか、それ(笑)。

井澤:それくらいのテンションだったってことですね、要は。

金吾:山中湖で合宿してたんですけど、夜中でも何でも、“よし、やろう!”ってなったら、すぐにレコーディングを始めて。あの時の熱……あれが俺達のレコーディングなんだろうな、っていう気持ちが強かったんですよ。あれくらいのところまで持っていこうっていう。気持ちで何とかなるって思ってましたから、今回も。だから、“あの曲がり角まで、もう1回戻ってみる”っていう感じかもしれないですね。

──その時のレコーディングが、タイムスリップ・ランデヴーにとっての理想の形だったのかも。

冨澤裕之(ds):
デビューしてから、ずっと笹路正徳さん(スピッツなどを手掛けたことで知られる名プロデューサー/アレンジャー)にプロデュースをお願いしてたんですよ。でも、『ELMIRAGE』の時はセルフ・プロデュースだったんです。当然、自分達だけでやらなくちゃいけないっていう気概もあったし、それが気持ちにもサウンドにも表われてて。

金吾:笹路さんは最近、森山直太朗さんのプロデュースをやってるんですよね。昨日得た情報なんですけど。

井澤:コブクロとかね。

──ご活躍ですよねぇ。シンガー・ソングライターのRie fuさんの楽曲も手掛けてるし。

井澤:あ、今回一緒にやったエンジニアさんも、Rie fuと作業してるって言ってた。

──意外な繋がりが(笑)。アルバムのサウンド・メイクにも、さっき仰っていた“進化”が凄く出ていると思います。まず、バンドのアンサンブルがたっぷり楽しめるアルバムですよね。

金吾:あ、そうですか。

──はい。音圧とかダイナミクスだけに頼らないで、アレンジ、アンサンブルの妙で聴かせると言うか。ギターの音がいいんですよね。歪みの少ない、クリーン・トーンが凄く気持ち良くて。

井澤:ああ、なるほど。そこはね、こだわった部分でもあるんですよね。以前はどっちかって言うと、“歪ませてナンボ”っていう感じもあったんですよ。でも、今回のアルバムは楽曲のキャラクターにしても、その頃とは違ってるし。明るめと言うか、全体的にライトな感じだから、それはギターの音色にも出てると思いますね。

金吾:実はデビュー当時の感じに近いんですよね。初めてこの4人でレコーディングした頃って、そこまでギターも歪んでなかったんで。そういう意味でも、さっきの“あの曲がり角まで…”っていうのがあったのかもしれないですね。自分達としては“戻った”っていう感じではなくて、今の自分達がやりたいことをやった結果なんですけど。そう言えば『ELMIRAGE』の時って、特に歪ませてたかもしれないですね。当時はそれがやりたかったんですよ。

泰次:そう、それが最先端だと思ってたから。

金吾:重ねモノ(ダビング)もほとんどなくて、打ち込みもなくて、4人でガーンとやるっていう。その感じは今もそのままやれるんだけど、今回のアルバムはそうではなくて。

泰次:今回も4人だけで全然やれるんですけどね、ライヴでも。もちろん、ライヴでは出せない音もCDには入ってるけど。

井澤:打ち込みも充実してるからね。

金吾:レコーディングでしかやれないことを楽しむっていうのも好きですからね、もともと。シーケンスやヴァイオリンが入ってるバンドが好きだし、その辺は全然気にしてないと言うか。

11_ap1.jpg

遊び心を持って80年代のテイストを散りばめた

──「流れ星を待って」の“小さい頃は誰もが 夢は叶うと信じてた”もそうですが、歌詞の内容も、新たな決意を感じさせるものが多いですよね。前向きって言っちゃうと、言葉が簡単ですけど。

金吾:『Re'TIMES』っていうタイトルもそうですよね。タイトルは例によって、みんなでアイデアを持ち寄って、“どうしよう?”っていう話の中から最後にポツンと出てきたんですけど。こういう言葉は実際にはないのかもしれないけど、響きも凄く気に入ったし、そこから伝わってくる意味も“あの頃に戻ろう”だったり、“あの頃に戻りたい”だったり、“あの頃にもう一度”だったり……それは決して後ろ向きなことではなくて、前向きなイメージもあるなって思ったので。再スタートっていうつもりでやってましたからね、レコーディングも。

井澤:「WISH COMES TRUE」を録ってた辺りから、そういう空気はありましたね。ここから始まると言うか、“いつもここから”と言うか。

泰次:“嬉しい時ぃ~”って感じ?(笑)

──ははは。まぁ、バンドのキャリアを振り返ってみても、いろんなことがありましたからね。2000年に井澤さんが脱退するわけですが、その後もバンドは3ピースとして活動を続けて。それから6年が経って井澤さんが戻ってきて、また自然な形でリ・スタートできるっていうのは、なかなか稀なことだとも思うし。

井澤:はい。ホントにもう…いろいろすいません。 全員:ははははは!

金吾:いいねぇ。リアルでいいよ、今のは(笑)。

井澤:『Re'TIMES』のお陰ですよ、ホント。脱退してからはバンドとは別の現場でいろいろやらせてもらってたんですけど、他の人の話を聞いてると、“バンドが解散して、今はサポート・ミュージシャンをやってる”っていう人が結構多いんですよ。でも、僕の場合はデビューさせてもらったタイムスリップ・ランデヴーがずっと続いていたわけで、そのことには凄く感謝しています。だって、“デビュー10周年だから何かやろう”なんて言っても、バンドが残ってないケースだってたくさんあるんだから。

金吾:雄逸が戻るまでは解散しないぞ、って思ってましたから。

井澤:え、マジっすか!?

冨澤:(笑)でも、名前は残そうと思ってたよ。

井澤:たとえ冨澤さん独りになってたとしても?

冨澤:そうそう(笑)。

井澤:ありがとうございます(笑)。でも、ホントにバンド名の通り、ですよね。

──そう思いますよ。今回のアルバムの内容も、これまでのバンドの歴史も、まさに“タイムスリップ・ランデヴー”だな、と。現在・過去・未来っていう時間を超えて、4人がひとつになってると言うか…。

井澤:いいですねぇ、それ。見出しはそれにしておいて下さい(笑)。

──はい(笑)。もう少し、楽曲についても教えて下さい。まず「Inivisible World」ですが、80年代のニュー・ウェイヴのテイストが感じられて、個人的にはかなりグッと来ました。

金吾:お、そうですか。(泰次に向かって)デュラン・デュランって言われなくて良かった(笑)。

泰次:(苦笑)

金吾:いや、この曲のベース・ラインが凄く好きなんですよ。自分達って、80年代が一番多感な時期だったんです、こう見えても(笑)。雄逸が一番若いんですけど、それでも80年代は知ってるし。デュラン・デュランとかカルチャー・クラブとか、あの時代の感じをやるってことに対して、何の抵抗もないんですよ。それは今回のアルバムにも活かされてると思いますね。遊び心を持ちながら、80年代のテイストを散りばめるっていう。だって、「Inivisible World」のベース・ラインはデュラン・デュランでしょう?(笑)

泰次:(笑)さっきも言ってたけど、歪みで押していくんじゃなくて、シンプルなフレーズをいくつか重ねることで厚みを出すっていうことだと思うんですよね、あの時代の音楽って。そういう感じはやってみたかったんですよ。

金吾:“Invisible World”っていうコーラスも、80年代の感じだし。こんなことやっちゃうの? っていう人もいるかもしれないけど、それが楽しいし、自然にやれてるんですよ。レコーディングしてる時も“ここ、ハモっちゃう?”みたいな(笑)。

井澤:しかも、曲のド頭でやってますからね。楽器を始めたのも80年代だし、そういうのは自然に出てくるんです。

金吾:ギターのフレーズも“そうそう、そう来るよね”って。

休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻