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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】APOGEE(2008年1月号)- 肉体性を帯びた知覚への扉、『Touch in Light』

肉体性を帯びた知覚への扉、『Touch in Light』

2008.01.01

好戦的かつファンタジックなバンドサウンドと、それに立ち向かう唯一無二のボーカルで前人未踏の音楽を標榜するAPOGEE。CDを聴いて、ライブを見て、知能犯だというのが第一印象だった。徹底的に作り抜かれた無駄のないスリーピースと、圧倒的な存在感を放つシンセサイザーの音色、純粋に美しい歌声とメロディーが作り出すユニークなサウンド、ステージから漂う雰囲気。全てが完璧だった。今回リリースされる2nd.アルバム『Touch in Light』は情報量がたっぷりでエッジの立った楽曲はそのままに、1st.『Fantastic』から比べると人肌感の感じられる作品になっているように思う。いつまでも耳に残り、いつまでも聴いていたい楽曲の数々。こんなに素晴らしい曲を作るAPOGEEの正体が知りたくて、お話を伺いたいと思った。実際にお会いした4人は、意外にも気さくで思っていた以上に人間味に溢れた方々だった。APOGEEに対するイメージが変わった(もちろん良い意味で)と言っても過言ではない。今年のAPOGEEもますます目が離せない存在となった。(interview:やまだともこ)

2007年は収穫の年

──最初に2007年を振り返っていただきましょうか。

間野航(Dr.):2007年=レコーディングでしたね。レコーディングというか制作期間。曲作るのとかけっこう時間がかかるほうなんです。

永野亮(Vo.G.):僕らにとっては制作ももちろんですけど、印象に残るライブが多かったな。本数こそ少ないですけど、自主企画をやったり、対バンしたり、サマーソニックに出たり、初めてツアーに回ったり(with 9mm Parabellum Bullet)印象に残るライブがあって、そこのフィードバックがあった1年でしたね。個人的にはけっこう大きかったですよ。

──サマソニはどうでした? 炎天下の中って想像がつかないんですけど…。

永野:野外のちょっと外れだったので大人数の前でやったわけじゃないですけど、あのイベントに参加できたことと、炎天下の中でやるのが初めてだったんですよ。僕らの曲って冬の室内で夜っていう、内省的な曲が多くて雰囲気を楽しみながら酔ってもらう感じのものが多かったんで、見に来る人もやり手もどうなんだと思ってたけど、お客さんもかなり集まってくれたし、盛り上がっていたし、なんとかなるもんだなってフロントマンなので経験として大きいですね。

──意外とお日様が似合うバンドだったということですね。

永野:似合うかどうかはわからないですけど、お日様でもやれんことはない(笑)。そういう経験って次のライブでもフィードバックされるのでやれてよかったと思いますよ。

──今までツアーをやらなかったのは意図的なものが?

永野:そんなことはないんです。うちはライブバンドなんですけど、制作に時間がかかるっていうところで、まず曲を作ることありきで、そこに時間をさいてしまうがあまり…。ライブをやってないわけではないんですけどね。

曲にAPOGEE印が付くまでの狭き門

──ライブをやってCDの制作があって。2007年に制作されていたのはアルバム『Touch in Light』とシングル『アヒル』と『Just a Seeker's Song』。年が明けた頃から作っていた感じですか?

永野:『Just a Seeker's Song』ができたのは3月ぐらい。それが『Touch in Light』の最初の1曲。そこからゆるりと作っていってだんだんケツのほうになってきて焦り始めて(笑)。

──『Touch in Light』を作るにはけっこう時間をかけた感じですね。

永野:俺らとしては、けっこう巻いてやったほうなんですけど(笑)。

──時間のかかる部分っていうのは具体的にどういうところなんですか?

永野:各人が曲を書くんですけど、僕らはお互いがバラバラなところを良しとして始めているので、1曲の中でまとまりがつくポイントとなると当然好みが分かれるので狭き門なんです。その門をくぐらせるのに時間がかかるというか。個々人が作ってくる楽曲のペースはそんなに遅くなくて、合わせれば多い方だと思いますよ。

大城嘉彦(Synthesizer):とっかかるまでにすごく選別があるんです。実際みんなでやろうと思うのは、5ネタに1ネタぐらいですね。それで選ばれるっていう第一のハードルがあって、その次にアレンジ。APOGEE作品として発表するかどうかっていうのはアレンジで決まるというか。ここから第二審査が入るわけですよ。

──厳しいですね。

大城:厳しいですよ(笑)。

──審査は何段階ぐらいあるんですか?

永野:だいたいその2個を乗り切っちゃえばっていうところです。歌詞は曲ができれば何らかの形ではまりますけど、曲はそのままボツになる可能性もありますから。ネタを持ってきて、他の3人のうち1人でもいいと言ったら良い感じに回っていく可能性は高い。誰も「うん」と言わなかったら持ってきた人が最後まで仕上げる気合いがないとそのネタはボツになるんです。

──第一審査の時の基準ってなんですか?

永野:各人がいいと思うかどうかと、デモを持ってきた段階で自分が乗っかりたいと思うパワーを持っているかどうか。その時にグッと来てなくても、作った人が引っ張ってやっていくうちになるほどと思うこともありますし。

──APOGEEの音楽には肉感的ではなくて知性を感じるんです。でも、お話を伺うと肉体的にグッとくるものを直情的に出すという感じなんですね。

永野:僕らの基本であるライブバンドの感覚をかなり大事にしているところが大きいので、変わりはないと思いますよ。

──ジャムで作ってとかは?

永野:今回のアルバムはそんなにないですけど、『Fantastic』(1st.Album/2006.11リリース)はジャム始まりのものもたくさんあるし、今でも1回演奏してみた感覚を大事にしているところはありますよ。そこで掴まないと、曲がどういうものか実感できないっていうのがありますからね。ネタを持ってくる人のタイプで作り方が全然違いますけど、掴んでから細かいアレンジメントを考えていくんです。

──ライブで映えそうだからこういう曲にしようって考えてます?

永野:そういう曲もあります。

大城:ギターを3本入れないようにしようとか(笑)。

永野:アレンジをして乗ってきたら、音をたくさん足すパターンがあって…今回けっこう多いんで、ライブではどうやろうかって思ってます…。よっぽどのことがない限りみんなお互いのパートの事を考えてやってますよ。

──今回シンセサイザーの音がより響いてる曲が多かったと思いますけど、アレンジの段階で考えていることってあります?

大城:僕はもともとキーボーディストではないのでピアノは弾けないんです。ギターとかのほうが弾ける。だからシンセサイザーを裏方として使うのではなくて、主張する楽器としてギターのような気持ちで乗っけているので、それは他のキーボーディストとは違うやり方ですね。

──だからあれぐらい前に出てくるわけですね。

大城:そうですね。伴奏みたいなことはできないので、バリッと。曲によってはフワッと。

永野:音色とか世界観を広げる意味ではギターよりシンセサイザーのほうが優れている部分がたくさんあったんです。バンドを組んだ頃って下北にかっこいいギターポップのバンドがたくさんいて、ギターだけで頭抜けるのって難しいなみたいなところがあって、オッシー(大城)はギターも弾けるしそういう視点でシンセもやれるし、これはバンドの力になると思って、うちのバンドいいかもって思い始めたんですよ。

──内垣さんは音作りとかどんな感じで今回はされました?

内垣洋祐(Ba):
今までは使わなかった音色が多いですね。

永野:彼はコンプがかったベースをバキバキ弾くというよりは、ナマに近い音でブンブン弾いてるほうに熱さを感じる人なんです。今回はロック寄りの音作りやをしてもらったので、そういうのは前回と具体的に違いますね。ひずんでるという感じです。

内垣:おかげで幅も広がりましたしね。平和に終わりました(笑)。

──音はアグレッシヴで攻撃的ですよね。

永野:前回に比べたらそういう曲もたくさんあるんじゃないかな。特にオッシーが作った曲は湿度が低くて、前に出るような曲が多い。

大城:今回それを経てギターで作った曲が多いんです。『ESCAPE』(M-2)、『Spacy Blues』(M-4)、『Rain Rain Rain』(M-8)とか、僕が今回持ってきた曲は半分ぐらいギターきっかけで作った曲なんですよ。攻撃的って言われましたけど、シンセって良くも悪くも無機的でAPOGEEも無機的なイメージが『Fantastic』の頃は強かったんです。演奏はホットにやっているのに、そこが伝わってないのが惜しいと思っていて、今回はギターの生々しい特徴とか弦楽器特有のエッジ感とか、そういう力を使いたいと思ったのはありますよ。

──クールな感じを払拭して沸点が高いモノにするというのは、今回のテーマだったりするんですか?

永野:こっちは伝わっていると思ってたのに伝わってなかったところの伝え方を工夫しました。元からないものを無理矢理やろうとしたわけじゃなくて、やり方でロスしていたところをもうちょっと。そういう側面も素直に出していくっていう意識はいいことなんじゃないのかなって思ったんです。

内垣:ライブだと「ファーストの曲でも意外とアツイんですね」って言われて、意外なんだなって思いましたよ。

──ライブを見ると印象変わりますからね。

大城:これからリリースはライブ盤にしたほうがいいかもしれないですね(笑)。

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