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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】アンダーグラフ(2007年12月号)- 呼吸する時間と光溢る未来の向こう

呼吸する時間と光溢る未来の向こう

2007.12.01

ゆったりと時間が流れていたイギリスの音楽業界

──今回のレコーディングはどんなところが大変でした?

真戸原:『ティアラ』(M-12)は友達の結婚式に感動して作った曲なんですけど、これは一番難しかったですね。僕は小さい世界を歌うのが苦手で…って、わかりにくいかもしれないですけど、例えば『セカンドファンタジー』は“大きい”から120%のパワーで歌えば歌の世界を表現できるんです。でも『ティアラ』は60%とか70%ぐらいの力でその歌の世界を求めて行くっていう感じなんです。素直に歌うと全然ダメで何回も録り直して。

──リズムが全面的に前に出る『春前の灯火』は、4人の技術的な演奏が求められたと思いますが…。

真戸原:ロンドンで録ったんですけど、日本よりも確実にストイックにレコーディングをしたんですよ。いいのが1回出たら終わりじゃなくて、いいのを10回ぐらい出さないとOKをくれないっていう感じなので。「いいよ、良い感じ」って言いながら何回も録るんです。

──ということは、ずっとスタジオに籠もってたんですか?

真戸原:そうなんです。だからレコーディング期間を長くもらえるんです。そういうタームでやっているので、それはうらやましかったですね。そのやり方を日本でやろうと思うと時間がかかりすぎて、なかなか許してもらえないところがあるんですけど。

──1日何時間ぐらい入っていたんですか?

真戸原:ドラムだけで初日は2日かかってました。

──滅入ったりしませんでした?

真戸原:谷口(奈穂子 / Dr)は滅入ってましたね(苦笑)。「なんでこんなにやるの? 何回やらせるの?」って(笑)。それがクリスのやり方なんですけどね。時差でもだいぶやられてましたね。ロンドンに着いた次の日からスタジオに入ってたんで。

──イギリスと日本のスタジオ環境で一番大きな違いは何でした?

真戸原:最初にビックリしたのは防音のゆるさですね。防音が全然きっちりしてないのに、気にしないでやってくれって。

──音圧は違います?

真戸原:向こうはラージスピーカーっていうデカいスピーカーでやるんですよ。日本ではあまり使わなくて、誰が使うねんって感じの存在なんですけど、向こうはそれを使って音作りをして。設備的には日本のスタジオの方がいいかもしれないですね。出音を聴いてる限りでは、電圧が違うっていうほどの音はアンプから聴こえなかったので。エンジニア次第なのかな。

──楽しくはできました?

真戸原:ゆっくりな時間が良かったですね。イギリスの音楽業界のタームでやらせてもらったみたいな(笑)。ゆっくりすぎて、僕ら的にはちょっと不安でしたけど。「これで間に合うの?」ってエンジニアにずっと訊いてましたけど、「大丈夫」って。2週間で3曲ですからけっこう時間かけてやってますよね。日本なら10日で3曲なので。

──また向こうで録りたいっていうのは?

真戸原:いろんな環境が揃えば録りたいですよ。音は確実に良かったから。クリスとはもう1回やりたいと思います。でも今度は日本で一緒にやってみたい。どれだけ違うんだろうっていう興味はありますよね。まぁ、今回は2週間のレコーディングだったんで…僕らがロンドンに10年ぐらい住んだら曲が変わっていくかもしれないですけどね。もっとゆったりした曲とかを作りたくなるんだろうなって。僕らが泊まってたところはロンドンの中心街からちょっと離れた町で、広い公園があって、鳩が集まってきて、老夫婦がゆっくり散歩してるようなところで。この空気に似合うような音楽が作ってみたいって思ったりします。

──そこにはDCマダムとかプレイメイト(『楽園エステ』より)もいない感じの?

真戸原:(笑)通りの裏側にはいると思いますけど、その公園にはいませんでした。鳩と老夫婦だけでした。

──この詞は刺激的でしたね。

真戸原:面白いなと思ったんですよ。誰につっこまれることもないかなと思って書いたんですけど。

──中高生のファンが聴いたら気になると思いますよ。

真戸原:書く側も楽しんで書いていたので、聴く人にも楽しんで聴いてもらいたいんです。

──『春前の灯火』っていう言葉遊びも面白いですね。

真戸原:パッと思い浮かんだんです。“風前の灯火”ってあるじゃないですか。 “春前”って言葉を思いついて辞書を調べたら、そんな言葉は載ってなかったんですが、そのまま使っちゃおうって。

──所謂アンダーグラフ節というか、シングルのヒットチューン的な甘く切ない感じは、イギリスで録るものよりも日本のほうが音の肌つやがいいのかなと思いますけどどうですか?

真戸原:イギリスでも環境によると思うんです。ガッツリ作るんであれば充分できますけど、今回は旅先でのレコーディングって感じだったんです。持って行けるものも限られるし、参加してくれるミュージシャンも限られているし。そういうことで言うと、今の環境なら日本のほうがやりやすい。でもミュージシャンとして、いろんなところで録ってみたいっていう気持ちもあるんですけどね。

──向こうのエンジニアさんは、アンダーグラフの音楽に対してどういう感想だったんですか?

真戸原:「イギリスのアーティストと何か違いはありますか?」って聞いたら、メロディーの作り方がこっちの人には考えられないって言ってました。それは嬉しかったです。日本っぽいと思っているのかアジアっぽさと思っているのか、どこまで日本の音楽を理解しているのかわからないですけど、イントロの部分とかギターリフでも「おもしろいね」って感じてくれてるみたいでした。ライブでやった『アカルキミライ』(2006.4リリース『君の声』c/w)とかは向こうではウケがいいというか、オリエンタルな感じは一番僕らに似合う音楽みたいですね。

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アンダーグラフというバンドの映像

──今回はプロデューサーには宅見将典さんを迎えられてますが、一緒にやってどうでした?

真戸原:宅見くんは大阪にいた頃からの友達で、すごく才能があるんです。今までは島田(昌典)さんにプロデュースしていただいて、頼りすぎてしまったところがあったんです。だから、今回は自分たちの力でやってみたいと思って、それに協力してくれる人っていうところで探していた時に、たまたまスタジオで宅見くんに会ったんですよ。彼はバンドをやってた人なので、バンド体質なんです。

──音的に変わったっていうのは?

真戸原:今までは生楽器を使っていたんですけど、今回はデジタルなものも取り入れたりしました。

──今までよりもサウンド的に厚くなったというか、濃くなった感じがすごくしましたよ。

真戸原:そうなったことが嬉しいんです。完成度が高い緻密なサウンドはメンバー全員好きで、それが僕らの目指す道だと考えてるんです。今回はそれを追求してましたから。

──アレンジはみんなで考えて?

真戸原:そうですね。

──ギターも響いてましたね。

真戸原:阿佐(亮介 / Gt)は音楽に対してすごく欲があるので、何通りもフレーズを作ってくるんです。最終的に使わないものも出てくるんですけど、やりたいことはやりきってほしいので、まずはいろいろやってみてもらって、後から整理するんです。いるものは使って、いらないものは忘れてもらう(笑)。

──ライブではどうなるんですか?

真戸原:ライブは全く別物なんです。レコーディングでやったことは一度忘れて、4人で一番音圧が出るアレンジを考えていく。すると、どんどん変わっていくんです。

──CDとライブは全然違う音かもしれないと?

真戸原:そうなんです。イメージを壊さないようにってことは考えますけど。曲作りのアレンジの段階では、ライブのことは考えていないですね。

──『呼吸する時間』に続いて、初のビデオクリップ集DVD『アンダーグラフというバンドの映像』がリリースされますけど、映像作品は初めてですよね?

真戸原:そうなんです。これまでに作ったビデオクリップが全部入ってるんですけど、スペシャル映像も収録してて。『また帰るから』は、河瀬(直美)さんに撮影をお願いする前に、自分たちで作ってみたのがあるんです。手持ちの8ミリで撮影したのを中原(一真 / Ba)が編集して。フィルムの使いかたも間違っちゃって、夜用のフィルムを昼に使ったりして、ものすごい明るかったり…それでも何とか完成させたビデオクリップがあって、それも今回収録しました。

──アンダーグラフってバンドを始めた時のワクワクした感じをずっと保ってる感じがしますね。

真戸原:(笑)そうですね。そんな感じです。バンドを始めた当初は4人で全部やってたわけじゃないですか。だから、自分たちでいろいろやってみたかったんです。時間があったら自分たちでHPも作ってみたかったし…ボツになりましたけど(笑)。

──すごくいい雰囲気のバンドですね。

真戸原:普通に焼き肉を食べに行ったり、遊びに行ったり、音楽以外で集まることも多いですからね。

──真戸原さんとしては、2008年はどんな年にしたいですかね。

真戸原:2007年にやってきた曲の作り方ってすごく良かったんです。それは継続してやりたいというか、やれそうな気もしてるし。このアルバムで個人的に言いたいことは言えたので、次どういう曲ができるのか楽しみですね。そういう曲を作りながらマイペースでやれたらいいですね。バンドが精神的に健康であれば(笑)。1年幸せだと思います。2008年もがんばります(笑)!

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