何を入れても壊れない丼のように
──今回は何と言ってもゲスト・ミュージシャンが参加しているのが新鮮ですけど、曲作りの段階からゲストありきで考えていたんですか?
上原子:いや、最初は普通に4人の形で考えていて、ゲストを入れることにしたのは後からだね。
増子:丼のトッピングとして面白いんじゃないかと思ってさ。
──実際にゲストを迎えてみて如何でしたか?
増子:ミト君(クラムボン)のキーボードなんかは完全に狂ってるよね。ミト君のやってるような音響系の音楽なんて、俺達と対極のところにあるわけじゃない? それが融合したらどうなるのかっていうのがあって、結果的には凄く良い方向に行ったね。
──凄くハマってますよね。
上原子:バッチリだよね。フワフワした音なんだけど、どんな音よりもエッジが立ってるっていうか。ホントに凄いよ。ビックリした。
増子:そういう化学反応みたいなのが凄く面白かったね。
──友康さんから「こんな感じで弾いてくれ」みたいな指定はしたんですか?
上原子:「この曲にはこんな感じで弾いて欲しい」みたいなのはあったけど、それ以上のものが返ってきたよね。曲を渡した時に、最終的に見たい画っていうのが俺達と一緒だったから。ケイタイモ(ビート・クルセイダース)なんかは、スタジオに来た時に「これ(ドンマイ・ビート)は僕的にはロッド・スチュワートの『アイム・セクシー』かな?」って言うから「そうそう、そんな感じ」って(笑)。だからやってて凄く楽しかった。
増子:この曲にはコレを入れたいっていうのが最初にあって、そのスペシャリストを呼んでるわけだからね。しかも仲がイイっていう。
上原子:「不惑 in Life」のギターも、俺はあんなふうに弾けないからね。自分で弾けたら弾いてるんだけど。
──ギターであれだけ個性が出る人もなかなかいないですよね。
増子:ああいう70'sパンクの音が欲しかったんだよね。セイジ君(ギターウルフ)のギターを入れたから、初めに入れてた友康のカッティングのリズム・ギターを1本分丸々カットしたんだよ。
上原子:そう、別に要らないかなぁと思ってね。
増子:だから初めはペロンペロンの音だったんだよ。そこにセイジ君のギターが入って凄く良くなった。実験的だったよね。で、敢えてそれを1曲目に持ってきたのは、もう誤解を恐れないっていうかさ。そこまでの自信が付いたんだよ。しかも最後にもう1回持ってきちゃってるからね(笑)。ホントはまた別の曲を入れようかって話もあったんだけど、セイジ君がせっかく2回弾いてくれたから。『爆裂都市』のサントラで言うところの「セルナンバー8」みたいな感じだよね。
──ゲストを入れたことも含めて、凄く新しいんだけど凄く怒髪天っぽいアルバムになっているなと思ったんですよ。
増子:今回は色々実験したね。エンジニアの人も、カメラマンも、ジャケットのデザインも、全部新しいチームでやってるんだよ。
──ジャケットは何故にウシなんですかね?
増子:あれはもうお任せで、デザイナーの人に「コレを聴いて感じたものを作ってみてくれ」って出来上がった音源を渡したんだけど、「最高でした、ホントに良かったです!」って言って4パターン持ってきてくれたら全部ウシだったんだよ(笑)。「いやぁ、ウシかなと思いまして」って。
一同:(笑)
清水:メンバー内でしばらく流行ったもんね、「ウシかなと思いまして」(笑)。
増子:でも、凄くイイのが出来たよね。最後にこのジャケットが来て作品が締まった感じ。レコード屋なんかで並んだ時に壮観じゃない? 今までナシだと思ってた新しいことに挑戦できるようになった。何を入れても丼が壊れないっていうか、ひとつの丼になるぞっていう自信が出てきたっていうのがあるよね。
来年の20周年はみんなが“ムチュー”に(笑)
──それにしても、あれだけのライヴ数をこなしながらこれだけ素晴らしい作品を作って、まだまだ上が見えないという感じですね。
増子:まだまだやれることはいっぱいあるよ。音源も毎年1枚ぐらいは出していきたいし。今年はライヴも90本近くやったしね。
──ライヴでは地方のお客さんも増えてきていますしね。
増子:仙台とか広島でワンマンができるようになるなんて思ってなかったもんね。イヴェントに出たりして着実にやってきたことがようやく成果として実を結んだというかさ。ライヴっていうのは決められた時間で曲を何曲やるってことだけじゃなくて、同じ時間、同じ空間をみんなで共有するっていう意義が凄く大きいと思うんだよ。MCにしても昨日のテレビの話をしたりとか、それによって俺達の印象を忘れなかったりするわけ。やっぱりライヴはこれからもいっぱいやっていきたいっちゅうのはあるね。
──では、これからも同じようなペースで?
増子:まぁ、体力の持つ限り…あと2年ぐらいはね(笑)。
──いやいや、10年、20年と頑張って頂かないと(笑)。来年はシミさんが加入されて20周年ということですが。
増子:シミが加入して20周年って、どんだけシミが偉いんだって話だけど(笑)。まぁ、今のメンバーが揃って20年ってことだから、何かしらやろうとは思ってる。坂さんを血祭りとか(笑)、何かしらの祭りをね。
──じゃあ、ファンは来年に期待してイイですね?
清水:来年はいよいよ全員が厄年に入ります!(笑)
増子:それを記念してお客さんを人柱に(笑)。まぁ、来年は色々仕込んでいこうとは思ってるよ。お祝い事みたいなのって楽しいじゃない? そういうの大好きだもん。楽しいのと楽しくないのだったら楽しいほうがイイでしょ? せっかくだったら祝ってもらおうじゃないのと。誰も祝ってくれないんだったら自分達で祝おうと(笑)。イヴェントとか考えてさ。だから来年は楽しい年になると思うよ。ネズミ年だけにみんなが“ムチュー”になれる年にね(笑)。