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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】磯部正文×工藤"TEKKIN"哲也×ISHIKAWA(2007年8月号)- 瞬く過現未を超えて唄い継がれるHUSKING BEEのイノセントな歌々

瞬く過現未を超えて唄い継がれるHUSKING BEEのイノセントな歌々

2007.08.01

BEYONDSによる「摩訶不思議テーゼ」アカペラ・ヴァージョン

──「摩訶不思議テーゼ」を選んだのは誰だったんですか?

工藤:確か健さん(谷口 健)だったと思います。健さんの奥さんがこの曲を好きらしくて。で、「アレンジをどうしようか?」って話になった時に、「前にテッキンが言ってたアカペラでやるのはどう?」って健さんか岡崎さんに言われて、それならできるかなと思ったんです。スタジオにMTRを持ち込んで練習の時に録ってみたんですけど、これが結構グダグダで、“大丈夫かなぁ…”と思いましたね(笑)。

──各自、何度も唄い直したんですか?

工藤:いや、アヒト君(アヒト・イナザワ)のドラム・ヴォーカル(笑)はほぼ一発で。作業的にはサクサク行ったんですけど、音の周波数とか、どの音を使ってどこを切ればいいのかとか、最終的にまとめるのが難しかったんですよ。それでアヒト君にパーカッションを足してもらったり、コーラスの代わりに何人かでギター・リフを足そうとか、細かく詰めの作業もやって。まぁ、それも全部ヴォーカルなんですけど(笑)。

磯部:楽器を持って行かなくていいから楽だよね。レコーディング行くのに手ぶらだもんね(笑)。

工藤:「ホントにベース持ってきてないの?」って言われたけど(笑)。もうキャッキャッ言いながら作ってましたよ。色々と大変だったけど、それでも一日で何とか録り終えて。ゲスト・ヴォーカルにWATER CLOSETのASUKAちゃんにも参加してもらって、ずっとやりたかったことを今回やり切れてホントに良かったと思ってます。

──しかも、頭には妙な寸劇まで入っている手の込みようで(笑)。

磯部:あれは何?(笑)

工藤:あの寸劇は、僕の知らないところで話が進んでたんですよ(笑)。新宿の小便横町(思い出横町)に4人で集まって呑んだ時に録ったんですけど、呑む前に録ればいいのに、散々呑んだ後に「そろそろ録ろうよ」なんて話になって(笑)。

──健さんの棒読みのセリフがまた何とも言えないですね(笑)。

工藤:わざと大根役者みたいな話し方をしてますよね(笑)。あの寸劇も含めて、やれて良かったと思います。まぁ、賛否両論あると思うんですよ。HUSKING BEEをずっと聴いてくれてきた人達はふざけすぎだと本気で怒るかもしれないし、BEYONDSに対する評価も喧々囂々あるかもしれない。でもそれは、HUSKING BEEの元メンバーである僕がそこにいるから許して下さい、って感じなんですよね。

磯部:でも、僕は凄く愛情を感じましたけどね。オリジナルの「摩訶不思議テーゼ」を愛してるファンの受け止め方がピュアだと違和感を覚えるかもしれないけど、それはBEYONDSのやり方でしょうし。僕は不器用な人が器用にできないからこそやる表現をじっと見たい。見て感じたい。そこで自分とはどう違うのかを感じるテーゼ…そんな「摩訶不思議テーゼ」だと僕は受け止めましたけどね。

──敢えてこうしたアカペラのスタイルでやるのは、セルフ・カヴァーに対する照れの気持ちもありますよね。

工藤:そうですね。軽い思い付きでやったことでは決してないし、時間がないからヴォーカルだけにしたわけじゃないんですよ。だから、どう取られようとBEYONDSとして発表しようとしたんです。こういう表現でもパンクのテイストが出せると思ったし。実際、オリジナルの「摩訶不思議テーゼ」でやった細かいアレンジを思い返すと、なかなか崩すことができないんですよ。「摩訶不思議テーゼ」のハードコア・ヴァージョンをやれって言われればやれるけど、余りそういう部分には魅力を感じないから。

自分の土俵に持ち込んで汗をかくのが恰好いい

02_ap02.jpg──他にも非常に興味深いカヴァー曲が数多く収録されていますが、NahtのSEIKIさんとSLOTH LOVE CHUNKS/SPIRAL CHORDの中尾憲太郎さんが中心となったTHE OZONESによる「A SMALL POTATO'S MIND」('00年10月発表の3rdアルバム『FOUR COLOR PROBLEM』に収録)は、その原曲の破壊っぷりたるや相当なインパクトがありますよね。

ISHIKAWA:レコーディングに足を運ばせてもらったんだけど、入れ込みようが凄かったね。節々に「これをやったらイッソン怒るかな?」っていうフレーズが頻出してたけどね(笑)。

磯部:へぇ…(笑)。

工藤:中尾憲ちゃんがマスタリングの時に僕に一言、「ごめん、ベースは全然違うの弾いちゃった」って(笑)。「いや、全然いいでしょう」って言いましたけど。カヴァーするほうとしては、原曲を作った本人達がどう思うかを当たり前のように気にするし、みんなそういう部分に凄く神経を使ってくれてるんだなぁと思って。

ISHIKAWA:まぁ、オリジナルに忠実でもそれはそれでいいんだけどね。でも、さっきテッキンが言ったように、自分の土俵に持ち込んでガッツリといい汗をかく状況っていうのがやっぱり凄く恰好いいんじゃないかな。HUSKING BEEの曲がテクニック的に難しくて苦戦するよりも、アレンジの方向で苦戦するほうがとんでもない汗をかく気がするからね。THE OZONESはクールな打ち込みだけど、そんな心意気みたいなものが感じられたよね。

──それと、トイズ盤ではASIAN KUNG-FU GENERATIONがカヴァーしている「欠けボタンの浜」(3rdアルバム『FOUR COLOR PROBLEM』に収録)は、MOGA THE ¥5の名演によって楽曲の持つ力強さや深みを改めて痛感しましたね。

工藤:やっぱり、エッさん(エスカルゴ)の歌の巧さが際立ってますよね。日本語の歌詞がはっきりと判るように、いつものMOGAの曲よりもヴォーカルのレヴェルを敢えて大きく出してるんじゃないですかね。

ISHIKAWA:アレンジは直球だけど、絶対にカラオケには聴こえないMOGAっぽさがあるよね。これも、バンドの持ち味をガッツリと出してきてるんだろうね。

──ある意味、今回のトリビュート盤が生まれるきっかけにもなったNOT REBOUNDの「YOU CAME BACK」('98年10月発表の2ndアルバム『PUT ON FRESH PAINT』に収録)はどうでしたか。

工藤:最高でしたね。ある程度想像はできましたけど(笑)、だからこそいいんですよ。HUSKING BEEと旧知の間柄にあるバンドは自ずと直球のアレンジになるだろうし、それでこそバンドの良さが出るんだと思う。めぐちゃん(藤井めぐみ)も凄くめぐちゃんっぽいし、「瞬く過現未」(4thアルバム『the steady-state theory』に収録)を選んでくれたのも凄く嬉しかった。イッソンが書いた曲の中でも個人的にかなり好きな曲なので、このアルバムに入って良かったです。

磯部:めぐちゃんに声を掛けた時は何を唄うか相当悩んでましたけど、聴いてみたら非常にいい感じでしたよ。

──TROPICAL GORILLAは1stシングルに収録されていた「OUT OF SIGHT, IN MY MIND」という渋い選曲で。

工藤:選曲のマニアックさが如何にもCim君っぽいですよね。仕上がりは凄くポップでトロゴリらしくて。

磯部:懐かしいですね。この曲は、新宿アンチノックや下北の屋根裏でやってた頃のライヴでしか演奏してないんじゃないかな。ホントに初期の頃しかやらなかった曲だから。

ISHIKAWA:“俺はこれしかできないッス!”感が全面に出ていて、そこが凄くいいんだよな。まぁ、それは8Pが言ってたんだけどさ(笑)。

工藤:あと、SLIME BALLはアルバムの1曲目狙いだったみたいですよ(笑)。だから『FOUR COLOR PROBLEM』でも1曲目になってる「#4」を選んだって。“1曲目は俺達だ!”と思ってたのに、見事に2曲目に収録されてますけど(笑)。でも、イントロのアレンジなんかも凝っていて、みんな時間のない中で最大限のことをやってくれたのは有り難かったですよね。

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