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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】磯部正文×工藤"TEKKIN"哲也×ISHIKAWA(2007年8月号)- 瞬く過現未を超えて唄い継がれるHUSKING BEEのイノセントな歌々

瞬く過現未を超えて唄い継がれるHUSKING BEEのイノセントな歌々

2007.08.01

Hi-STANDARDと並び、日本におけるメロディック・パンク・シーンを牽引する先駆者的存在だったHUSKING BEE。解散からすでに2年が経過した今もなおその人気は衰えることなく、今年の春にはKen Yokoyama、BRAHMAN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、MONGOL800など錚々たる面子によるトリビュート・アルバム『HUSKING BEE』がトイズ・ファクトリーから発表され、好セールスを記録中。その姉妹盤とも言うべきもうひとつのトリビュート作品『LIV-ING HUSKING BEE-ING ~tribute to HUSKING BEE~』が9月9日に発表される。トリビュートする側とされる側のリスペクトがダイレクトに伝わるこの作品集を巡り、イッソンこと磯部正文、テッキン、アルバムのプロデュースを手掛けたロフトレコードのISHIKAWAの三者に語り倒してもらった。(interview:椎名宗之)

トリビュート盤は大変なご褒美であり宝物

02_ap01.jpg──まずはこの『LIV-ING HUSKING BEE-ING ~tribute to HUSKING BEE~』を発表するに至った経緯をISHIKAWAさんからお願いします。

ISHIKAWA:
事の発端はですね、去年の年末に名古屋クアトロでやったNOT REBOUNDのワンマンにテッキンが遊びに来ていて…。

工藤:そうそうそう。

ISHIKAWA:その時、春先にトイズ・ファクトリーからハスキンのトリビュート盤が出るのをテッキンから聞いて。「そのアルバムに参加する顔触れも内容にも凄く満足してるんだけど、また違うアプローチのものもやってみたい」なんて話を聞いたんだよね。例えばその時ライヴをやってたNOT REBOUNDが参加できるようなトリビュート盤があってもいいかな、と。その言葉が頭の片隅に引っ掛かってて、トイズのトリビュートが出た後に俺が正式にテッキンに提案したのが最初かな。

工藤:トイズ盤の時に誰に参加して欲しいかをリストアップしてみたら、結構な数になったんですよ。そこから実務的に連絡を取る作業になったんですけど、スケジュールのタイミング的な都合で参加できなかったバンドがたくさんいて。そんな話を名古屋でISHIKAWAさんにしたんですよね。

──トイズ盤のほうは、参加バンドのピックアップから磯部さんとテッキンさんが関わっていたんですか。

磯部:最初は「こんな企画があるんですけど、どうですか?」という話をトイズから聞くだけだったんです。自分でも聴いてみたいので、「是非に」と返事をして。トイズとしては、僕とテッキンがバンドをセレクトして、しかも声を掛けて欲しいと。そのほうが何事も手っ取り早いからと。外部の人から見ればいろんな誤解が生じるかもしれないけど、確かに僕らが直接声を掛けたほうが色々と事がスムーズに運ぶんですよね。健君(KEN YOKOHAMA)も「イッソンから電話を掛けてきてくれたのが嬉しい」と言って快諾してくれたし、“ああ、こういうことなんだな”と思って。

──上がってきた音源を聴いて、どう感じましたか?

工藤:もうホントに素晴らしいなと。HUSKING BEEというバンドを11年間続けたことに対する大変なご褒美であり、宝物だと思いましたよね。

磯部:僕の所にはミックスの終わった音源が毎回真っ先に届いていて、何だか凄い経験をしましたね。あんなにまとめて自分の曲を客観的に聴いたのは生まれて初めてだったから(笑)。

工藤:今回出るロフトレコード盤もそうですけど、参加してくれたアーティストはみんな、HUSKING BEEのある曲を自分達の土俵に持ち込んで自分達の曲として消化するから、自ずとその人の持ち味や色も出るし、自分達の作った曲の新たな解釈も新鮮で面白かったですね。

──このロフトレコード盤のほうは、テッキンさんが参加アーティストをピックアップしたんですよね。

工藤:はい。ISHIKAWAさんに色々と相談しながら。

ISHIKAWA:テッキンと俺が呑みながら挙げていっただけでも、50~60組はいたよね(笑)。ウチのほうは、トイズ盤にはないテイストを出したかったんですよ。敢えて言うなら、かなり前からHUSKING BEEを知ってる人達を中心に参加してもらったというかね。

──確かに、収録曲を見ると『GRiP』('97年2月発表の1stアルバム)や『A SINGLE WORD』('97年9月発表の1stシングル)といった初期の音源のカヴァーが多いかもしれない。

ISHIKAWA:でも、何だかんだ言って敬遠してやってないような気もするね。

工藤:ロリータ18号が「the steady-state theory」('02年9月発表の4thアルバムのタイトル・トラック)をやってたりとか、そういうのは意外で面白いと思って。マーちゃん(石坂マサヨ)から「何をやればいいかな?」とメールを貰ってやり取りをしていて、ずっと決めかねていたんですけど、最終的にこの曲になって驚きましたね。

──トイズ盤のほうではハナレグミがカヴァーしていて、その落差も面白いですよね(笑)。

工藤:そうですね。でも、マーちゃんはやっぱり歌が巧いなと思いましたね。自分の持ち曲じゃないキーやメロディなのに、あそこまでちゃんと唄えるわけだから。そういう発見も面白かったですね。

CORNERによる「WALK」の気迫の込もった熱演

──CORNERの「WALK」は、『走るナマケモノ』('03年8月発表)の初回限定盤に収録されていたものですね。当時、この「WALK」のセルフ・カヴァーをやろうと思ったのは?

磯部:『走るナマケモノ』を作っていた時に、ハスキンの曲をアコースティックで唄ってアルバムに入れようかなと思って。で、ネットで「どの曲がいいと思いますか?」とファンの人達に訊いてみて、一番リクエストが多かったのがこの「WALK」だったんですよ。“やっぱりこの曲かぁ…”って思いましたけど。

工藤:そのレコーディングに遊びに行った時に「WALK」を聴かせてもらって、僕が個人的に感じたのはイッソンの温かいサービス精神だったんですよね。とかくミュージシャンには“過去の曲はやりたくない!”っていうエゴがあるものだし、もしかしたらイッソンの中にもあったのかもしれないけど、それはさておきってところで、みんなのリクエストに応えてちゃんと唄うサービス精神がさすがだなと思って。

磯部:まぁ、“やったほうがいいか?”“やらないべきか?”っていうものは常に付きまといますけど、結局やってみないことには判らないわけで。基本的にやりたくて音楽を作ってるわけですし、実際にモノを発信してみて、そこで物事のいいも悪いも生じるのであれば、その結果を見てみたいとも思う。自分だってそういうふうに音楽を作ってる人達が好きだし、賛否両論いろんなことを言われながらも次の作品に向かっていく姿勢に僕は共感できるんですよ。だから、「WALK」を再録した時もその経過だったと思いますけどね。ちなみに、この「WALK」は一発録りなんですけど。

ISHIKAWA:凄く生々しい演奏だよね。

磯部:唄ってる途中で胸につっかえて、歌詞もちゃんと唄えなくなっちゃってますけどね。でも、それでいいだろうなと思って、一回唄ってすぐにやめましたけど。これ以上唄ったらヤバイ、何回もやり直してもしょうがないわと。気持ちは充分に込もったと思ったし。

ISHIKAWA:なんていうか、あの生々しい臨場感はロバート・ジョンソンみたいだもんね。「収録曲は、CORNERの『WALK』でどうですか?」って提示してくれたのは他でもないイッソンだったし、それが凄く嬉しかったよね。

──トイズ盤のほうではKEN YOKOYAMAさんがこの「WALK」をカヴァーしていますが、歌詞が大胆に変えられたそうですね。

磯部:実は健君と連絡を取り合っていて、「WALK」をやることになったと。やるにあたって、ひとつ提案がありますと。歌詞を変えたいと。イッソンがイヤだったらそうしないけど、俺としては自分の思いを「WALK」の歌詞にしたいと言われて。僕は「健君の思うようにやって下さい」とだけ伝えました。歌詞はそんなに大きく変わってるわけじゃないんですけどね。オリジナルの詞を訳した日本語詞を元にして、健君が唄いやすい英語詞になった程度で。

ISHIKAWA:健君のほうは、言葉数が多かったりするんだよね。

磯部:そうですね。唄い回しが無理矢理な元の僕の歌詞を(笑)、もうちょっと流れ良くしたかったんじゃないですかね。

──テッキンさんはBEYONDSとしてこのロフトレコード盤に参加されていますが…。

磯部:まぁ、いろんな意味でやってくれてますけど(笑)。

ISHIKAWA:テッキンは今回ベーシストじゃないんでね(笑)。

──BEYONDSは今回、「摩訶不思議テーゼ」('04年4月発表の5thアルバム『variandante』に収録)をメンバー全員でアカペラで唄うという快挙を成し遂げていますからね(笑)。

工藤:僕がBEYONDSに参加した当初から、このアレンジでいつか何かしらやりたいとメンバーに話していたんですよ。元ネタはちゃんとあって、DEAD KENNEDYSのトリビュート盤でNO MEANS NOが「Forward to Death」をアカペラでカヴァーしてるんです。それがホントに凄くて、いつか絶対にやりたいとウズウズしていて。だから、他のバンドにこのアカペラのアイディアを先を越されてやられたらどうしよう!? ってずっと思ってたんです(笑)。ISHIKAWAさんからこのアルバムに参加してくれと最初から誘われてたんですけど、ずっと正式に返事をしてなかったんですよ。面子が出揃ってバンド数が足りていれば、自分がやらなくてもいいと思ってたから。で、岡崎さん(岡崎善郎)とISHIKAWAさんが会って話した時にこのトリビュート盤の話題になって、岡崎さんは「是非やりたい」と。後日、練習スタジオで「テッキン、言ってよ! やろうよ!」って言われて(笑)。僕以外のメンバー3人がやりたいと言うなら、そこは参加するべきなのかなと思ったんです。で、曲選びからすべてお任せして。

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