Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】Radio Caroline(2007年6月号)- パブロックからハードコアまで自らのルーツに根差し、 極限まで振り切ったソリッドでスリリングなロックンロール

パブロックからハードコアまで自らのルーツに根差し、極限まで振り切ったソリッドでスリリングなロックンロール

2007.06.01

バンドの音楽的な振り幅を一気に広げた『HEAVY GLITTER』から9ヶ月、早くも4枚目のアルバム『extremes』をリリースするレディオ・キャロライン。タイトル通り、ギラリと光る際立った個性を持った楽曲が収録された本作からは、彼らのコアなルーツがしっかりと息づいている。「パブロックもG.B.H.もロックンロールなんだけどね」(ウエノコウジ)という彼らの気合い、しっかりと受け止めてほしい。(interview:森 朋之)

ルーツにある音楽を判りやすくカタチにした

──ニュー・アルバム『extremes』、さらに自由になったという印象を受けました。

PATCH(vo, g):……あ、そうですか。ありがとうございます。

楠部真也(ds, vo)ウエノコウジ(b):…………。

──あ、あれ?

楠部:
いや、まだ何か言ってくれるのかなと思って(笑)。

PATCH:まだ時間が早いから、口が回らないんですよ。(註:現在、午後1時)

──(笑)去年の秋のツアーが終わって、すぐにスタジオに入ったんですか?

PATCH:どうだったっけ? ちょっと記憶があやふやなんですけど。

楠部:12月には入ってたんちゃうかな、確か。リキッドが終わって、間髪入れずって感じではないですけどね。ちょっと休憩して、体を休めて、ワンクッション置いてから、次の制作に入って。

──その辺りはいつもの…。

楠部:パターンですね。

──曲作り、レコーディングに関して、何か方向性はありました?

楠部:や、それもいつも通りですよ。スタジオの日に向けて、個々それぞれ、自然に出てくるものをやるっていうか。特別なことはなかったと思います。

──ウエノさんも?

ウエノ:でも、なんか、簡単なほうがいいなって思ってたけどね。単純っていったら、ちょっと違うんだけどね。単純じゃないから、ホントは。考え抜いたうえの単純っていうか。そういうことは漠然と考えてたけど。まぁ、つながってる感じはするけどね、『HEAVY GLITTER』(昨年9月にリリースされた3rdアルバム)と。

──『ALL-OUT』で3人のすべてを出し切り、その後の『HEAVY GLITTER』ではやりたいことを貪欲に試して。今回のアルバムはその先にある、と。

ウエノ:そうだね。もうちょっとコアな感じがするけどね、今回は。自分達のルーツというか、そういうものも出てると思うし。あと、あんまり手を加えてないというか。前のアルバムは“これもいいね、あれもいいね”っていう感じだったから。まぁ、周期なんじゃない? 単純なものがいい時と、広げていきたい時と。気分だよ。

PATCH:ディレクターとも話して、“もっと簡単なのをやってみれば?”とも言われたし。今ウエノさんが言いましたけど、前作は好きなことをどんどん試して、広げていったんですよ。俺だったら、グラムっぽいものだったり、サイケっぽいものをやりたい、とか。今回はホントに“ロックンロール”っていう感じの曲が多いと思いますね。これはパブロックで行きましょう、とか、これはパンクだよね、っていう判りやすいキーワードで行けるような感じというか。1曲1曲、ベクトルが見えてたと思いますね。

──アレンジの方向性もハッキリ見えてた?

PATCH:前はいろいろと加えていくのが楽しかったんだけど、今回は割と削ぎ落としていく作業が大事だったんじゃない? 難しいんだけどね、それも。もう少し音を加えたいなって思っても、「いや、それは潔くない」って話したり。

──ギターのダビングも少なくなってます?

PATCH:それは言えないですね。聴いてくれてる人の夢を壊しちゃうから。聴いたまんまを感じてもらえれば、それでいいです。

──(笑)でも、1曲目の「Charlene」を聴いた瞬間、明らかに今までのサウンドとは違ってるなと思ったんですよ。切れ味が鋭くなってるというか…。

ウエノ:これこそね、“パブ(ロック)な感じで”っていう曲だよね。実際はいろいろ試してみてるんだけどね。もっと歪んだ音でもやってみたし…。もちろん、パブロックも大好きだからさ、俺達のなかでは自然なことなんだけど。持ってないものをムリに出してきたわけではなくて。

──好きなもの、ルーツにある音楽を判りやすくカタチにした、と。

ウエノ:だから、(アルバムの)タイトルじゃないけど、極端なほうに行ったほうが判りやすいと思うんだよ。あとさ、今回は配信するっていうのがあったから、1曲1曲、独立しててもいいなと思ったんだよね。アルバムを作るということになれば、統一感だったり、流れっていうのを考えるじゃない、やっぱり。今まではそうしてきたし。だけど今回は7曲っていう微妙なボリュームだったし──まぁ、10インチ(のアナログ盤)だったら、これくらいでちょうどいいかもしれないけど──そういうことを考えないようにしたんだよ、バラバラでも買えるっていうことだったから。ただ、不思議と(アルバム全体の)流れはあるんだけどね。

──なるほど。ちなみに私、楽曲配信というものを利用したことがなく…。

ウエノ:俺もやったことないよ。でも、試し聴きもできるんでしょ、そういうのって。だったら特徴があったほうが楽しいし、食いついてくれる人も増えるんじゃないかなって思うんだよね。パブロックが好きな人もいれば、G.B.H.が好きな人もいるでしょ。どちらも同じロックンロールなんだけどね、俺に言わせれば。ただ、そこで広がればいいなっていうのはあるよね。

歌詞も“極点まで振り切ろう”

──「Sticky Stink」は裏打ちのビートが印象的ですが、この曲にもキーワードがあったんですか?

PATCH:あんまりネタを明かしちゃってもアレなんだけど、イアン・デューリーみたいなファンキーな感じでやってみたら、どうなるかな? っていうのはありましたね。イアン・デューリーってところがいいかなって。

ウエノ:初めにリフがあったんだよね、PATCHが持ってきたんだけど。その時から「4つ打ちで行こう」って言ってた。

──でも、巷で流行ってるディスコ・パンク的なものとはまったく違う手触りで。

PATCH:そこら辺は俺達の、レディオ・キャロラインのカラーっていうのがあるから。しっかり身についてないことをやっても、カッコ悪いんで。

楠部:自分のなかでの4つ打ち感ですよね。リズムのアレンジは3人の共同作業なんだけど。『TWISTIN' HEAD』の時なんですよ、(レコーディングで)初めてハイハットの裏打ちをやったのは。俺のドラミングのなかにはなかったモノなので、あの時は結構練習したけどね。それが活きたんじゃないかな、今回は。「Sticky Stink」は全編、裏打ちなので。

──あのー、真也さんって、もともと手数が多いほうじゃないですか。

楠部:そうっすね。

──さっきPATCHさんが言ってたみたいに“音を削っていく”ということになると、ドラムもシンプルになっていくんですか?

楠部:どうですかね。確かに“手数が多い”って人からも言われるし、自分もそう思うけど、ひとつ言えるのは、気分が上がれば上がるほど、手数が増えていくんですよ。レコーディングの時って、ライヴに比べたら落ち着いてやってるっていうか、環境が違うじゃないですか。お客さんもいないし。そうなると自然に手数は抑えられていくんだけど、そういう傾向がこの曲では活きてるかもしれないですね。ライヴになったら、また違うんですけど。同じように叩くのが苦手なんで、全然違うフレーズを入れたりもするし。

──あと、今回は「Charlene」と「Just Like Maria」で唄ってるじゃないですか。さらに真也さんのヴォーカルが目立ってきてるような…。

楠部:そうですか? 結構大変ですけどね、歌詞が出てこなくて。

──基本的に、唄う人が歌詞を書いてるんですか?

楠部:そうです。ビートルズ・スタイル、ということにしておいて下さい(笑)。

──PATCHさんと真也さんのヴォーカルの振り分けは?

楠部:それも3人で決めます。でも、「Just Like Maria」に関しては、曲のきっかけとなるものを自分が持っていったんで。もちろん、最終的なアレンジは3人で決めていったんですけど、自分がきっかけを作ったから、歌詞もヴォーカルも自分でやるってことになって。

──メロが立ってる、いい曲ですよね。

楠部:そう? 好きだけどね、もちろん。あと、1曲目の「Charlene」は最初、PATCHが唄ったんですよ。作っていく過程のなかで俺が唄うことになったんやけど、その辺もあんまりカッチリ決めてないというか。今回は何曲唄う、っていうのもないし、自由な感じで。

──歌詞についても、“極点に振り切ろう”っていう意思が働いてる?

PATCH:うん、ありますよ。意味なんか別になくていい、とか、自分のなかだけで完結してて、聴いてる人が“なんだろう?”って思うようなものであっても、それはそれでいいと思ってるし。単なる言葉の羅列だったり、鼻歌を唄ってて“いいな”と思ったものを、そのまま使うこともあって。

15_ap01.jpg

このアーティストの関連記事
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻