メロン記念日は、アイドル・グループとして最も注目すべき存在だ。'99年のデビュー以降、不動のメンバーで活動し続けているメロン記念日は、やはりデビューからずっと応援してきた多くの熱狂的なファンに支えられており、その佇まいは地道に活動実績を築いてきたロック・バンドのようである。音楽的にも、80年代松田聖子的な王道アイドル歌謡から、セクシーなR&B路線、そしてなんといってもフロアを一瞬にしてモッシュ・ピット化させるエモーショナルなロックまで、もともとアイドルPOPSが一番得意とするところであるミクスチャーを正しく展開しているのだ。昨年末に発売された初のベスト・アルバム『FRUITY KILLER TUNE』に続き、先日15枚目のシングル『アンフォゲッタブル』をリリースしたメロン記念日が、今回、Rooftopに待望の初登場! それを記念して新宿ロフト陣営から、今やメロン記念日の音楽的夏先生とも呼べるビート・クルセイダースのヒダカトオル(中洲産業大学教授)と、メロン記念日をデビュー当時から公私にわたって応援し続けている掟ポルシェ(ロマンポルシェ。)にご同席いただき、メロン記念日がいかにロックな存在であるのかをメンバーと一緒に語っていただいた。これを読んだロック・ファンは、もうメロン記念日を避けては通れないはず!(構成:加藤梅造)
「いったい客席で何が起こったの?」
──今日はメロン記念日のRooftop初登場を記念して、メロン記念日ファンの第一人者でもある掟さんとヒダカさんにご協力いただき、Rooftopのメイン読者であるロック好きのみなさんに、メロン記念日がいかに素晴らしいかを判っていただこうという企画なんです。
掟:あ、そういう趣旨なんだ?
ヒダカ:なんだと思ってたんですか!(笑) でも俺は、プロレス、アイドル、ロックのファンは、かなりの層が被っているジャンルだと思うんです。
掟:俺の場合も、プロレス雑誌やアイドル雑誌の連載が多いんで、逆にそういう偏った知識しかないんだけど。
ヒダカ:ロフトに来るような人は、メロン記念日みたいなアイドルのことを知りたいはずだと思うんです。
掟:アイドルを好きな人っていうのは、味覚に例えると、すごい甘口とすごい辛口のものしか食べないみたいな人が多い。ゴリゴリのデスメタル好きがアイドルも好きって感じの人。
ヒダカ:まんじゅうをつまみに酒を飲む、横山やっさんみたいな(笑)。そういった層がメロン記念日を支えている…と我々は思っているんですが、本人達としてはそういうロック・ファンに支えられているという実感はありますか?
村田:そういうファンの方もいらっしゃると思いますが、私たちと一緒にロックを好きになっていくという方もいるのかなと思ってます。
掟:そもそもメロン記念日がロックだと言われるようになったのは、4枚目のシングル『This is 運命』がパンク/ニュー・ウェイヴ風味のロックだったことがきっかけで。これがヒットしたことで、いわゆるメロンのロック路線というものが定着した。それまでアイドル・コンサートの客席のノリとしては、いわゆるヲタ芸と言われるものが中心だったのが、メロンのコンサートでモッシュやクラウド・サーフィンが起こるようになった。それはこの曲を楽しむためにファンの中から自発的に起きた現象だったと思います。
斉藤:ファースト・コンサートでこの曲が始まった時に「いったい客席で何が起こったの?」と私たちも衝撃を受けました。
掟:その時は赤坂BLITZで、ちょうどオール・スタンディングだったんですよ。その日は雪も降っていて……。
大谷:よく憶えてますね〜(笑)。全部憶えてるんですか!
掟:いやいやいや! まぁ、メロン記念日のコンサートには生粋のアイドル・ファンも多くて、そういうロックのライヴの雰囲気に歓迎的な人ばかりじゃないから、メンバーのみなさんから「モッシュは危ないから禁止です」と注意があったりして。
村田:必ずしもそういった楽しみ方をするファンの方ばかりではないので、注意させていただきました。
ヒダカ:でも、アイドル界でモッシュを起こしたのはメロン記念日が初めてですよね?
掟:そうですね。だから、そういったイメージを今後は活かしていったほうがいいと思います。例えば、モッシュ禁止じゃないロック・フェス的なものに自分たちから出ていくとか。
ヒダカ:そうなると今度は、自分たちの中でロック的なものは何かをイメージしていかないといけないと思うんです。ロックもいろいろありますから。メロン記念日にとってロックとは何か? という。
掟:判りやすいところから訊きますが、普段はどういうものを聴いているんですか?
大谷:私はビート・クルセイダースのライヴを観に行ってからロックに入り込んだのでまだ日が浅いんですけど、最近はフーバスタンクが好きです。
ヒダカ:掟さん、フーバスタンクですよ!
掟:…なんですかそれ?
ヒダカ:アメリカのヘヴィ・ラウド系でちょっとラップやバラードも入った…って、なんで掟さんにフーバスタンクを説明しなきゃならないんですか!(笑)
掟:俺、最近はアイドル歌謡しか聴いてないから、新しめのロックは全く判らない(笑)。
大谷:他には、ロックなのかどうか判らないですけど、フォール・アウト・ボーイ。
ヒダカ:それは完全ロックですよ! えー、掟さんに説明すると、グリーン・デイ以降のエモの潮流も入った4人組のアメリカのバンドですね。
掟:エモって言われても江本孟紀しか知らないしなぁ…。
ヒダカ:それはエモやんですよ!(笑) とにかく大谷さんは最近の洋楽ロックを聴いていることが判りました。さて、ここからは珍回答が期待できますよ。まずは柴田さん。
柴田:私はK-POPですね。
ヒダカ:ゲイ・ポップ? ピーターとか?
掟:×××とか?
ヒダカ:それ書けないじゃないですか! 俺はいいけど(笑)。
柴田:「K」です、K-POP! ロックだと、ルースターは聴いてました。
掟:ああ、下山淳とかがいた…あの。
ヒダカ:違います!(笑)
柴田:他には、THE KBC。去年イギリスでデビューしたバンドです。
ヒダカ:KBC? いや、柴田さんは我々も知らない領域に踏み込んでますね。では次に斉藤さん。
斉藤:私はホント申し訳ないんですけど、ロックは聴きません。洋楽だと、R&B系の女性ヴォーカリストが好きですね。
ヒダカ:でも今のR&Bのトップの人たちがかつて聴いていたのがモータウンとか、いわゆる王道のロックじゃないですか? だから、斉藤さんもルーツをディグっていけば自然とロックに繋がると思いますよ。
掟:『This is 運命』のイントロはジャネット・ジャクソンへのオマージュも入ってますよ。
斉藤:へー、そうなんですか。私はダンスで体を動かすことが好きなんですが、そういう意味で言うと、ロックのノリ方と言うか、壊れ具合は大好きなんです。
ヒダカ:いいですねー。では、最後に珍回答を披露してくれるのは村田さんです。
村田:他のメンバーのみなさんは明確にロックが好きとかK-POPが好きとか女性アーティストが好きというのがあるんですけど、私は広く浅くな感じなので、1枚のCDにいろいろな曲が入っているサントラとかが好きですね。最近は『嫌われ松子の一生』のサントラをよく聴いています。映画から音楽を好きになることが多いです。
ヒダカ:じゃあ、村田さんにはロック映画を薦めればいいんじゃないですか? トム・ハンスク監督の『すべてをあなたに』とか、あとは『フットルース』とか。
掟:ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』がおすすめです!
ヒダカ:まだ早いんじゃないッスか? でも、村田さんの場合は案外ドップリはまりそうで逆に怖いですが。
村田:じゃあ、それがいいです!(笑)