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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】bloodthirsty butchers(2007年4月号)- 結成から20周年を迎えたブッチャーズが踏み出した新たなる"イッポ"

結成から20周年を迎えたブッチャーズが踏み出した新たなる“イッポ”

2007.04.01

人の作品をミキシングしてる時が人生で一番真剣な瞬間かもしれない

──最後の「イッポ」は既にライヴでも何度か披露されていますけど、非常に重いテーマの曲ですよね。

吉村:そうだね。それが一番最後に出来て、歌詞が一番最初に出来たんだけど、作るのに結構苦労して。初めに「イッポ」っていう曲を作りたいってことになったんだけど、だんだん歌詞を作って音を完成させていくうちにイライラしてきてね。どうしよう、どうしようって混乱が生まれて。で、「この曲が出来なかったら、その瞬間にやる気が出なかったら俺もう(バンドを)やめるから」ってみんなに宣言した。そうやって自分に勢いをつけた。

──確かに、この気迫のこもり方は尋常じゃないですよ。

吉村:まぁ、この曲が出来てアルバム作りに勢いがついたよね。自分にもバンドにもハッパかけないと、みたいなね。

──それにしても、自主レーベル第1弾に相応しいこれだけの充実作が完成して、ファンとして喜びもひとしおです。

吉村:それはみんなの協力があっての上だけどね。一人だったら絶対にできないことだよ。

──最後の最後にマスタリングをし直したと聞きましたけど、それは何が問題だったんですか?

吉村:まぁ、一言で言ったらマスタリングの相性が悪かった。人とか音とかじゃなくて、相性がちょっと悪かったっていう感じ。ミックスダウンくらいになると、自分のバンドって困るんだよ。toddleとかswarm's armとかは自分のやってるバンドじゃないから、ああしようこうしようって開き直って考えられる。今回は3つ同時進行でやってたんだけど。

──そうなんですよね。ブッチャーズのレコーディングと合わせて、吉村さんはtoddleとswarm's armのプロデュースも同時進行されていたという八面六臀の大活躍で。

吉村:で、最後に自分のバンドのことになったら、どこを活かすか、何を大事にするかっていうのが自分の中であるんだけど、訳が判んなくなっちゃって。まぁ、結果オーライになったけど、やっぱり100%客観的には見られないよね。判ってるはずなのに“どうしたらいいんだろう!?”っていう。

──ブッチャーズのレコーディングで使わなかったアイディアをtoddleで使ってみるというようなこともあったんですか?

吉村:それはもう全然あった。使ったのもあるし、使ってみたらダメだったとかもあるし。

──プロデューサーの立場から見て、toddleとswarm's armのアルバムはそれぞれどんな感じなんでしょうか。

吉村:あの……判んないね(笑)。判んないけど、ブッチャーズも含めて今回テーマに置いていたのは特に“斬新”っていう言葉。意味も響きも含めて。さっき国語辞書を引いたら、「ザン」のところに他にもリンクするような言葉があって。「残酷」でもいいし、「燦然」でもいいし、そうやって並んでる言葉を全部含めてなんだけど。

──toddleの新作はいち早く僕も聴かせて頂きましたけど、とにかく1曲目から泣けますね。

吉村:そこは気をつけてやってた。泣けるように作りたかったんだよね。実はtoddleのマスタリングもやり直してて。出来は全く悪くないんだけど、泣けたはずの曲が泣けねぇなってなっちゃって。それでやり直してもらった。大胆なことはやってないんだけどね。だからマスタリングって大事なんだなっていうのが今回はホントによく判った。

──swarm's armのほうはどんな感じですか。

吉村:ちゃんとしましたよ。うん。どちらかと言うとローファイな感じかな。

──プロデュースした2作品で吉村さんがギターを弾いたりとかは?

吉村:それも全然できるけど、今回はやってない。アイディアは出せるんだけどね。作ってる時はあまりにも時間がタイトで、途中何回か頭から煙が出たよ(笑)。でもまぁ、楽しくやってたんだけどね。いい音出してるし。元の曲がいいから、それを活かすっていう。ギタポですよギタポ! 僕の中ではギタポです!

──ギター・ポップですか(笑)。ちょっと胸がキュンとする感じの。

吉村:でもどっちにしても、1枚のCDに音として綺麗に収めても、絶対にトゲはあるよね。

──そういう尖った部分と親しみやすさが同居しているのはブッチャーズの常ですからね。

吉村:ということはまぁ、掴みにくいって言ったら掴みにくいとは思う。

──でも、聴いた人に「何だこれ!?」と思わせる強力なイビツさみたいなものがないと、作品を世に問う意味がないですもんね。

吉村:まぁ、お利口さんにはしないっていう感じ。あとは斬新であること。それは自分がプロデュースするものもそうだし。掴みにくいかもしれないよね、世の中的には。

──そういう意味では、親切ではないのかもしれないですね。

吉村:うん、親切ではないよね。でも彼女、彼らが俺をプロデュースに選んだっていうのは、そういうところが求められてたってことだよね。俺たぶん、人の作品をミキシングしてる時が人生で一番真剣な瞬間かもしれない。自分でやってて、何でこんなに真剣なんだろう? って思った。自分ってすっげぇ真面目なんじゃないかって(笑)。

──まぁ、ブッチャーズの新作については次号の本誌でまた詳しく話を訊かせて頂きますので。

吉村:そうだね。自分でもまだ客観的に聴けないんだよ。

──今の段階で読者に言っておきたいことはありますか。

吉村:まぁ、凄くいいアルバムなんで、どうぞ買って頂いて。君達が行動していかないと変わっていかないんで。

──ところで、吉村さんはレコーディング中に凄まじい数の写真をスタジオで撮っていましたけど、ギターを弾いているのと写真を撮るのと、今はどちらが楽しいですか?

吉村:(迷うことなく)写真!

──エエッ!?(笑)

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