Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】bloodthirsty butchers(2007年4月号)- 結成から20周年を迎えたブッチャーズが踏み出した新たなる"イッポ"

結成から20周年を迎えたブッチャーズが踏み出した新たなる“イッポ”

2007.04.01

2007年、晴れて成人となったbloodthirsty butchersが成し遂げたことは、プライヴェート・レーベル"391tone"を立ち上げ、通算11作目となるオリジナル・アルバム『ギタリストを殺さないで』を完成させたことだった。これは、20年掛けてようやく一人前になった彼らが新たに踏み出した大きな"イッポ"である。どれだけ控えめに言っても最高傑作としか言い様のないこの『ギタリストを殺さないで』について語る吉村秀樹の肉声を本誌ではどこよりも早く奪取。ブッチャーズの豊饒なる音楽をこよなく愛し、吉村が体現するところの"クソッタレ!"の精神を身に宿したすべての人達に謹んでお届けしたいと思う。(interview:椎名宗之)

“391tone”の由来は“さっくい”から

──まずは結成20周年、おめでとうございます。

吉村:はい。ありがとうございます。

──ブッチャーズの結成は厳密に言うと1987年の何月なんですか?

吉村:初めてライヴをやったのは11月。なんかクラブみたいなのがあって、そこで。飲み放題みたいなシステムになってるところで。

──それは吉村さんが勝手に飲み放題にしたわけではなく?(笑)

吉村:違う違う。そういう、必ず暴動が起きるようなシステムのクラブがあったの(笑)。クラブっちゅうか半分ライヴハウスのような、まぁバブルの名残みたいな。

──当時は日本経済が右肩上がりの時代でしたからね。

吉村:俺達は靴も靴下もなかったけどね(笑)。家もなかったし。まぁ、そのライヴは怒髪天とかスキャナーズ(イースタンユースの前身バンド)とかと一緒にやったね。

──この20周年を機に“391tone”という自主レーベルを立ち上げたわけですけど、読み方は“サン・キュー・イチ・トーン”でいいんでしょうか?

吉村:そう。“サン・キュー・イチ”。

──このレーベル、ベルウッド在籍の頃からありましたよね。

吉村:あった。名前が気に入ってるから使ってもいいんじゃねぇかと思って。

──“391”の由来というのは?

吉村:“サン・キュー・イチ”っていうのは、日本語にすると“さっくい”っていうことだね。道内用語かと思ったら、エスカルゴ(MOGA THE \5)みたいに関西在住でも判る奴がいたんだけど。まぁ、“さっくい”っていう状態というか匂いなんだけど。

──どんな状態ですかそれ?(笑)

吉村:“臭い”とかではないんだけど…匂い立つ感じとも言える。さっくい状態っていうのは、非常に切ない、情けない状態でもあるね。ヤバい状態でもあり。しょうもない感じ。

──怒髪天の増子さんとシミさんに訊いたら、“良くない”とか“少しコミカルなヤバイ感じ”と仰ってましたけど。

吉村:うん。とにかく“391tone”っていうのは俺の中の歴史としては凄く古くからあって、とても自然なものなんだよね。みんなからしたら「それはどんな意味なんだ!?」ってことになるけど、俺の中では特に意味はない。意味はあるんだけど問わないでくれっていう感じ(笑)。

──了解しました(笑)。そして遂に、レーベル第1弾となるアルバム『ギタリストを殺さないで』が完成したわけですが。制作には丸1年掛かっていますよね?

吉村:構想から含めたらもうちょっと掛かってるけどね。録り出してから自分達のペースで進めていったから。

──タイトルですが、前作が『banging the drum』だったからドラムの次はギターで…という感じですか?

吉村:単純にそれでいいでしょ。いいよそれで。前のアルバムはドラムとか言いつつテーマはベースだったんだけどね。でも、今回はダビングとかギターでしかやってないし、凄くシンプルだよ。

──前作のインタビューの時に「次はギターを殺さないものを作ろうって思ってる」と仰ってましたよね。

吉村:うん。まぁ、普通っていうかあるがままっていうか、余計なことをあんまりしないっていう。

──今回はヴォーカルに細工を一切していないと聞きましたけど。

吉村:まぁ、ちょっとはしたけどね(笑)。でも、いわゆる当たり前のヴォーカルの姿っていうか。

──レコーディング中のスタジオに何回かお邪魔させて頂きましたけど、楽器の録り自体はかなり早かったですよね。

吉村:うん、楽器は新大久保のFREEDOM STUDIOで録って、ヴォーカルはK-PLANのSTUDIO VANQUISHで録った。

──その流れで、the band apartの原さんが「ホネオリゾーン」でコーラスとして参加されていて。

吉村:そう。録音でも参加してもらってるし、随分協力してもらって。歌詞講座じゃないけど、“歌詞を考えよう”みたいなことをやったりもして。「ちょっと俺の話を聞いてくれ!」って話してるだけなんだけど(笑)。「この表現どう思う?」「それいいですねぇ!」みたいな。

──ははは。本作では収録曲の至るところで「yeah」という言葉が連呼されていますよね。1曲目の「yeah#1」というタイトルを見ると、「#2」も「#3」もあったのかと思ってしまうんですけど。

吉村:あったよ、仮唄タイトルで。あれも「yeah」、これも「yeah」だよ。“こういう気分の時に「yeah」って言ってもいいんじゃねぇか?”とかさ。一人でもいいし、みんな一緒にでもいいし。

──それと、今回は「ムシズと退屈」という曲で小松さんが遂に作詞デビューを果たしていますが。

吉村:そうだね、遂に。「お前作れよ! 作って下さいよ!」って言って。まぁ、そこで出来ても俺にいじめられるわけだけど(笑)。その成果もあって、小松デビューは凄く良かったかなっていう。「ムシズと退屈」なんてさすがに俺も思いつかないし。

──タイトルも小松さんの発案なんですか?

吉村:いや、タイトルは歌詞の中から抜いたんだよ。まぁ、断片的にはみんなが絡んでるんだけど、小松主体で動いた曲っていうことで。

──あと、タイトル曲や「アハハン」など、ひさ子さんとのツイン・ヴォーカルの曲も新機軸ですね。

吉村:それも今回はやろうって初めから言ってて。

──未だに3ピース時代のブッチャーズが良かったと言う意地の悪いファンもいますけど…。

吉村:3ピースの良さっていうのもまぁ判るんだけど、別にいいと思う。聴いてみてくれればいい。

──吉村さんの地声に近い形で唄われている「story」は、近年稀に観る涙腺直撃の大名曲ですよね。

吉村:昨日おとついくらいまで、この曲がどういう作りになってるのか理解できてなかったんだけどね。ギター弾いてる本人がどうなってるのか判んなかったんだよ(笑)。この曲は射守矢主体で作った曲なんだけど。

──やっぱり。この憂いのある感じと言うか湿度の高い感じは射守矢さんのものだとすぐに判りますね。

吉村:そう、すぐにね。それが彼の魅力的なところだけど。俺としてはもっとやってくれよって思うんだけどさ(笑)。

08_ap.jpg

このアーティストの関連記事
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻