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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】LIZARD『ROCK'N' ROLL WARRIORS -LIVE '80-』発売記念鼎談 モモヨ(LIZARD)×地引雄一(テレグラフ・ファクトリー代表)×平野 悠(ロフト席亭)(2007年3月号)- 一貫して先鋭であり続ける表現者・モモヨの内なる小宇宙

一貫して先鋭であり続ける表現者・モモヨの内なる小宇宙

2007.03.01

うひ〜! 長げぇ〜なぁ。この小さな文字で超長い対談を最後まで読めた人は偉い。というかパンク好きというか、まぁ私でさえ読むのを途中で投げ出したい衝動を我慢して、最後まで読み続けることに美学があるんだっていうことを感じていた。この対談に立ち会ってくれた椎名編集長が「とても面白い対談だった」と言っていて、彼の意図が「苦痛から学べ」と言っているように見えてくるのが不思議だ。多分、「そら、今の若い連中はこのひとつの激動の時代を生き抜いてきたおやじ達が今どこにいるのかを我慢して読め! きっとこの長く小難しい対談を読み切れば君もきっと何かを得られるはずだ」というルーフトップ編集部の意志なのだと思った。「ロックはひとつの音楽形態にとどまらず、そこから派生した文化や、もっと言えば政治的態度でもあると思う」という観賞用ロックに挑戦するおやじ対談であったなと思う。(text:平野 悠)

ひねくれているけどポップに聴こえる音楽

平野:今回発売されたDVD『ROCK'N' ROLL WARRIORS -LIVE '80-』の特典映像にあるモモヨへのインタビュー、あれにはブッ飛んだよ。あのインタビュー映像を見て、僕はモモヨが今考えていることやあの時代に何を言いたかったのかが本当によく判った。後追いで東京ロッカーズのムーヴメントに触発された若い世代は絶対に見るべきだと思う。いや、それどころかロックを愛するすべての若者はあのインタビューを見るべきだとすら思った。これはヨイショでも何でもなくね。モモヨのやっているバビロニック・ドットコムというサイトも見たけれど、モモヨはこんなにも哲学者だったんだということに驚いてしまったよ。あのサイトで随筆やら雑文やら、よく書いてるね。

モモヨ:今は話したい言葉を探している最中なので、このところはしばらく書いてないんですけどね。書いても、せいぜい月に1本くらいですよ。結局、書きたいテーマは今も昔もみな同じなんです。

地引:モモヨは東京ロッカーズの頃からそういういろんな主張を折に触れてしていたよね。それがちゃんと届いていたかどうかは判らないけど。当時のリザードの歌詞を読むと、社会性、メッセージ性の強い歌詞だったと思う。高木完も「今の時代にこそ通ずる音楽なんじゃないか」と言っていたけど、確かにその通りなんだよね。その前の時代みたいに反体制の直接的なアジテーションじゃなくて、一旦自分で受け止めた上で発せられたものだから、その時代の表現としては突出したものだったと思う。現実を自分の問題として取り込んだ上での表現だったから。

平野:それこそがパンクの原点でしょう。でも、あの頃はサウンドばかりが先走っちゃって、歌詞カードもろくに読まない時代だった気がするけどな。

モモヨ:今でこそ「リザードはメッセージ性のある歌詞を書いていた」とか言われますけど、初期においては、パッと見にはいわゆるロックンロール・バンドだったんですよ。そう見えるようにもしていたし。ティーンネイジャーがライヴハウスに来て、それなりに遊べるような形を作っていましたから。テクニックもそれなりにあったしね。

平野:モモヨはそう言うけど、僕は単なるロックンロール・バンドとは一味も二味も違うと思った。それまで聴いてきたロック・バンドよりも断然テンションが高かったし、前のめりに突っ込んでいくようなロックだと感じていたよ。

モモヨ:今回のDVDに収録されたライヴよりも前、まだキーボードがいた時は、それほど人の神経を逆撫でするようなアレンジはしてないんです。

平野:ノイズは出してないっていう意味?

モモヨ:そういうこともあるし、自分が“これだ!”と思ったものに比べて一般的な嗜好というものをまず頭の中で模索するわけですよ。その一般的な嗜好に近いものを出していたのがファースト・アルバムだったんです。まだ東京ロッカーズの頃ですね。初期のリザードにおいては、ひねくれているけどポップに聴こえる音楽をやるのがひとつのコンセプトだったんです。それはかなり異質に聴こえるはずですけど、アヴァンギャルドではないですよ。東京ロッカーズの中にもいくつかバンドがあって、その頃の私達は下の世代に向けてやっていた。同世代に向けてやっているバンドが結構多かったから、そこはかなり違うと思いますよ。

地引:初期は凄くポップだよね。

平野:僕は地引と違って、はっぴぃえんどが日本語ロックの出発点としてあるんだよ。細野(晴臣)とか大瀧(詠一)とかはっぴぃえんどのメンバーがどんどんメジャーになって、それはユーミンも(山下)達郎もそうなんだけど、「もうロックなんて恰好悪いんだよ」とでも言いたげにみんなロフトを切るわけだよ。そこで戸惑っていた時期に、地引が僕のところにやって来たわけ。「どのライヴハウスもパンクをやらせてくれないから、ロフトでやらせてくれませんか?」と。僕は元々ティン・パン・アレー系だから、当然最初はパンクになんて全く興味がなかったんだけど…今でも覚えてるよ。夏の昼下がり、地引がロフトの事務所にやって来たんだ。

01_ap01.jpgモモヨ:いや、違いますよ。最初は田中(唯士/S-KEN)さんと私が平野さんのところに行ったんです。だって、地引君はその時まだミラーズのマネージャーじゃないから。

地引:そう、その時はまだ単なるカメラマンだった。

モモヨ:平野さんが夏の昼下がりに会ったのは、田中さんと私ですよ。六本木にあったS-KENスタジオがもう終わるので、「こういう企画をやってみませんか?」と話しに行ったんですよ。

平野:そうだっけ? うーん、全然覚えてないや(笑)。でも、当時僕がパンク・シーンを支持するなんて発想はひとつもなかった。毎年夏の終わり頃っていうのは、東京に人が少ないから基本的にライヴハウスには客が入らないんだよ。そこで何かやるしかないと思って、まぁパンクでいいや、と(笑)。自分で店に行かなきゃいいんだからっていう軽い気持ちだったんだよ(笑)。

モモヨ:それは『Drive To 80's』('79年8月28日〜9月2日、東京ロッカーズと呼ばれた一群のバンドからテクノポップの旗手までが一堂に会した新宿ロフトのイヴェント)の前の話ですね。

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LIZARD
ROCK'N' ROLL WARRIORS -LIVE '80-

TMSS-039/価格:¥4,935(税込)

収録曲:【STAGE-1】ニューキッズ・イン・ザ・シティ/モダン・ビート/まっぷたつ/エイシャ/サ・カ・ナ/王国
【STAGE-2】ロボットラブ/マーケット・リサーチ/リザード・ソング/ニューキッズ・イン・ザ・シティ/モダン・ビート/エイシャ/サ・カ・ナ/王国/ガイアナ/T.V.マジック/ゴム/レクイエム
パーソナル:Momoyo(Vox)/Waka(Bass)/Bell(Drums)/Kitagawa(Guitar)
特典映像:ロンドンでのライヴ、1stアルバム・レコーディング風景などの写真を元に作成されたミュージック・クリップ/ヴォーカル、モモヨへのインタビュー(2006年撮影)/2007年発売予定『リザード全集』予告編
封入特典:『リザード写真集』復刻版

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