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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】山部''YAMAZEN''善次郎(2007年1月号)- 音楽都市・博多の伝説的ミュージシャンが語る博多ロック・シーンの系譜

音楽都市・博多の伝説的ミュージシャンが語る博多ロック・シーンの系譜

2007.01.01

ロック・スピリッツが凝縮された最新作『GIFT』

原島:山善は自分じゃ言わんから俺が言うけど、ウエストロード・ブルーズ・バンドが福岡に来てライヴをやった時に、サンハウスと田舎者がフロント・アクトをやったことがあったんだよ。そうしたら山善のステージがドッカンドッカン受け過ぎて、ウエストロードのメンバーが「もうやってられへんわ、帰るわ!」って言いよったらしいよ。まぁ、言うなればリヴァプールへ試合に行ったもんやろね。そこで山善は塩次伸二さんに認められて、京都の拾得に呼ばれて唄ったり、あの『ミュージック・マガジン』で音楽評論家の小倉エージさんが「東のはちみつぱいに西の田舎者」って喝采を送ったりしてね。

──山善さんは、これまで本格的に東京進出を考えたことはないんですか?

山善:30歳の時に最後の勝負を賭けようと思うて、柴山さんに電話して「俺も出てこうと思いよっとるですけど」って言うたら一言、「やめとけやい」って(笑)。「お前ば死ぬ気でサポートするようなマネージャーがおらん限り、この東京じゃお前が“千代町の山部じゃ”言いよっても誰も知らんぜ。大人しくしとけ」って。

原島:ちょうどそん頃よね、エピックとかに殴り込みをかけたのは(笑)。モッズが所属していたこともあって、小さな糸口から「これ行けるばい!」ってエピックの玄関でずっと歌を唄って関心を引こうとしたという(笑)。

山善:エピック前にも行っとったし、ソニーの本社前にも朝の7時半からずっと玄関前で唄って。社員の人が見かねて「どうしたいの?」と訊きよるから「契約してくれ」と。で、「音は?」って言われたから「音はない!」って(笑)。

──今の山善さんにとっては、博多に根を下ろしてコンスタントに音楽活動を続けることが重要なポイントなんですよね?

山善:俺は絶対にそう。東京はやっぱり合わんもん。たまに出てくるぶんにはいいけど。地元で活動することに何ら不自由さを感じておらんしね。今度2年振りに出したアルバム『GIFT』に入ってる「田舎へ帰ろう」っていう曲は、東京に住んどる俺達の友達に対してのメッセージなんね。「気が付きゃこの街に住んで18年/X'masが終わって思うのさ/そろそろ答えを出してもいい頃だと」っていう歌詞で。

原島:それ、俺の歌やないか? 計算しよったら、東京に住んで今ちょうど18年だし(笑)。でもホントさ、今回この『GIFT』にスーパーヴァイザーとして携わってアルバムを世に広めたいと思ったのは、博多の音っていう伝承の部分で言うと、ここまでストレートなロックも今の時代そうはないと思ったからなんだよね。これこそが純度の高い博多の音なんやな、って感じて。今でも博多で音楽を続けている人達の思いや気持ちもここには詰まってると思うしね。正直、俺はビックリしたんよ。自分達が大事にしてるものをどれだけ形にできるかってところで、それがちゃんと詰まっとったからね。YAMAZENというファクターを通して自分達を表現しようっていうのが、今回はホントによくできとって。噛み砕いた言葉で言うとロック・スピリッツみたいなものがもの凄く凝縮されてるしね。俺は勝手に“たそがれたプライマル・スクリーム”って言うよるけど(笑)。

山善:柴山さんに言われたですよ。「アルバム聴いたぜ。良かったやないか。タイコ誰や?」って(笑)。

──他でもない、柴山さんにとって盟友である鬼平(坂田紳一)さんですよね(笑)。

山善:柴山さんにそれを伝えたら、「そうやろ。音いいと思った」って。そういう上からの嫌がらせが今もあるんですよ(笑)。でもね、坂田さんが参加してくれることになって有り難いですよ。レコーディング始まる前に俺の家にメンバー全員集まって話して、その時に坂田さんが「山部、俺はもう後がないけんね。俺、本気やけんね」って言ってくれて。だから今回は俺もいつも以上にエラく気合いが入ったですよ。

原島:ロッカーズに提供した「可愛いアノ娘」を本人が唄うのも、音源としては初めてやけんね。

山善:原島の強い勧めがあったからなんだけど、「可愛いアノ娘」に関しては最初抵抗があったね。陣内が撮った映画『ロッカーズ』で中村俊介が爽やかに唄ってて、あれを聴いた時に素晴らしいと思ってたから余計にね。

原島:Rooftopを読みよる若い世代には、この『GIFT』を聴いてもらうと山善と博多の音楽の今までと今と今からがすべて符合するっちゃね。それとやっぱり、今なお山善は時代のジョイント役を担っていることがよく判るよね。

山善:そこまでの実感はなかけどね。とにかく、今年の春先にはレコ発ツアーも予定してるので、せっかくやけんまたロフトでライヴばやりたいね。

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