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トップインタビュー【復刻インタビュー】怒髪天(2006年12月号)- 腑抜けた時代に殴り込む トーキョー・ロンリー・サムライマン

腑抜けた時代に殴り込む トーキョー・ロンリー・サムライマン

2006.12.01

結成から22年、現メンバーになって18年、そしてあの劇的な活動再開から7年。増子直純(vo)、上原子友康(g)、清水泰而(b)、坂詰克彦(ds)という不動の4人から成る怒髪天が1年振りに放つ一撃必殺の渾身作『トーキョー・ロンリー・サムライマン』は、寂寞として痩せた荒野で愚直なまでに種を蒔き、堅実に畑を耕し続けてきた彼らの集大成的作品であり、同時にバンドの新章突入を強く印象づける鮮度の高さをも感じさせるアルバムだ。
日常を生きる中で沸々と湧き起こる喜怒哀楽を、一篇の歌として彩り豊かに織り込む姿勢は本作でも不変。誰しもが共感し得る普遍的な歌詞に、つい鼻歌で唄いたくなるメロディという公約数的かつ深みのある音楽性は格段にビルドアップが果たされ、彼らが身上とする"R&E"〈リズム&演歌〉の洗練度は過去随一だ。まず何より全12曲の圧倒的なクオリティの高さに加え、パンク、R&R、ロカビリー、昭和歌謡、ガレージ、ジャズ、フュージョン、果ては人力テクノといったあらゆるジャンルを貪欲に呑み込み紡ぎ出されたバンド・サウンドのキレとコク、有機的に絡み合うアンサンブルの妙、益々堂に入った感のあるヴォーカルの凄味...そのどれを取ってもこれまでの諸作品を遙かに凌駕している。
増子いわく「荒みきった大都会の片隅でまんじりともない夜をやり過ごす時代遅れのサムライ達に捧げる、懐かしくも新鮮に突き刺さる望郷哀歌」というタイトル・チューンを筆頭に、自らの内面と取り巻く社会に極限まで対峙して書かれた歌詞の叙情性、鋭利な社会風刺は本作の大きな聴き所のひとつである。気分と上っ面ばかりが先走る消耗品のような音楽が持て囃される昨今の日本の音楽シーンにおいて、どこまでも愚直で一本気、向こう見ずの無頼漢である彼らにとってこの平成の"浮き世"は"憂き世"でしかないのだろう。しかし、こんな"憂き世"だからこそ、ささやかだが力強い怒髪天の歌が我々の胸を深く衝くのだ。(interview:椎名宗之+稲垣由香)

歌モノとしての完成度を極めた次のステップ

──イイ歌を紡ぎ出す、良くないものは出さないという怒髪天の本懐は本作『トーキョー・ロンリー・サムライマン』でも不変だと思うんですが、それでも何かが決定的に違う印象を受けたんですよね。勿論、いい意味での確かな手応えなんですけど。

増子:これまでと変わったと言うか、前作の『ニッポニア・ニッポン』で一段落着いた感はあるよね。前作辺りまでは歌モノとしての完成度を高めることを重視してて、それを自分達なりに何処までできるか突き詰める感じだったんだけど、『ニッポニア~』の後のシングル『銀牙伝説WEED』まで行った時にそこはもう極めたな、って思ったんだよ。

──『~WEED』に収められた「つきあかり」は、怒髪天流歌モノのひとつの完成形でしたからね。

増子:そうだね。あれが出来て、今回は新たな方向に行ってみよう、っちゅう感じになった。

──レコーディングの現場監督である友康さんは、そういった流れを受けてサウンド面で新たに何かトライしてみようと考えたところはありましたか?

上原子:基本的にやってることは変わらないんだけど、ひとつ言うならドラムを…ビートを強くしたかったんだよね。ドラムのリズムだけでノレる曲…要するにライヴで盛り上がる曲っていうのを。それを11曲入れて、最後にバラードも入れたい、と。

増子:前作はバラードを入れなかったからね。でもまァ、どっちに振れるかっていう話で。『ニッポニア〜』は結構歌モノのほうに振ってたと思うんだけど、今回は割とサウンド寄りと言うか、ロック・サウンドを強めてみよう、っていう。だから反作用が働いてるんだよね。これまではこっちを極めたから、今度はそっちに行ってみよう、っていう感じ。それが今回は顕著に出たんじゃないかな。

──なるほど。ドラムの話が出ましたが、坂さんのドラムが確かに今回ちょっと違う響き方をしていると感じたんですけど、何かアプローチを変えたんですか?

増子:今回は違う人が叩いてるから(笑)。

清水:ロボットだから(笑)。坂さんそこどうなの? ドーンと答えてやってよ!

坂詰:……あのォ、今回は湿度にこだわりました。

一同:(笑)

──えーと、どう突っ込んでいいのか判らないんですが(笑)。

上原子:でも、今回はマイクの位置にもこだわったんだよね。換気扇の前にマイクを立てたりして。

清水:そんで換気扇の音が入っちゃって、一回止めたんだよ(笑)。「なんか風の音がする!」って言って。

──坂さんなりの課題として、具体的に「こうしてみたい」っていうのは?

坂詰:まァ色々あったんですけど…時間的なところで出来なかったっていう。

増子:それじゃ愚痴だよ(笑)。

坂詰:でもまァ…ドラム・アドバイザーの小関(純匡)さんという方からアイディアを出して頂いて。ディスカッションしたりしてサウンドを作りました。曲がパッと華開く感じの…重いけど軽い、みたいな。

増子:もう意味判んないから(笑)。でも俺、今まで他のドラマーの人で唄ったりして判ったんだけど、坂さんみたいにドラムで色が出るっていうのもあんまりないんじゃないかと思う。俺は正直ドラムに関してはよく判んないけど、最終的には坂さんが気持ちよくノレるっていうところで決まるからね。

清水:でも、今回はいつもよりドラム主導だったよ。かなりドラムに全体の軸を乗せたっていうのがある。引っ張ってもらったって言うか。それがさっきの友康さんの話にもあったけど、ビートの強いサウンドっていうのになったんじゃないかな。

坂詰:まァあの…8ビート関係が。いくら叩いても巧くならないのが8ビートなんですけど。

──ははは。それ、書いて大丈夫ですか?(笑)

坂詰:いや、それが最近叩けるようになってきて、今回それが出せたかな、って。スネア一発でバックビートじゃなくて、ハイハットと合わさってバックビートとか。その辺が意識できたかな、っていう。

──同じリズム隊としてシミさんはどうですか。自分なりに意識した部分とかは。

清水:前回が凄くキツかったのを覚えてるんだよね…。でも今回は友康さんが持ってきた曲にバーンってベースを付けて、そこからは余り変えてない。ホントに最初のイメージのままできた。俺、『リズム&ビートニク』以降、ベースを見失ったんだよね。迷いが出たって言うか、「どこまで弾いていいんだろう?」っていう状態で。それが今回抜けたって言うか、「ああ、これでいいんだ!」っていう。だからそんなに苦労はしなかった。そのぶん他のところを考えたりもできたし。周りがよく見えたって言うか、全員が前回より上手に物事を進められたっていう気がする。そういうやりやすさがあったかな。

増子:シミはベースを先に録り終わった後に、レコーディングの全体的なところを客観的に見てくれるんだよね。歌詞だとかアレンジ的なところまで。それは昔からずっとそうだったんだけど、ここ最近は余り言ってなくて。でも実際はシミが俺と友康が行き過ぎるのを止めたり、「そのままでいいんじゃない?」って押し進めたりする役割なんだよね。シミは歌詞のことまでちゃんと言うから。友康は歌詞のことは言わないんだよ。

上原子:俺は歌詞のセンスないからね(笑)。その辺はシミに任せてる。
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