“音としてのDAMNED感”を出したい
──なるほど。でも、そういう引用は言われてみないと判らないですよ。どの曲も完全にBANDWAGON独自のサウンドとして成立していますからね。
ナベカワ:そういうことを言うのは、元の曲をちゃんと知ってる人に対してだけですよ。判ってる人に向けて言うのが楽しいんです(笑)。
──とても光栄です(笑)。その流れで伺いますけど、7曲目の「Phantom Limb Music!!!」の中で“Hang on the DJ”(DJを吊るし上げろ)と唄ってますよね? これってやっぱりSMITHの「Panic」ですか?(笑)
ナベカワ:そうですね(笑)。
──これまでL?K?OやALTZによるリミックス曲を発表してきたBANDWAGONだから反語的な表現だとは思うんですけど、ちょっと意外だったんですよ。
ナベカワ:あれはアイロニーとでも言いますか、『The Weekenders!!!』というタイトルもそうなんですけど、僕らは週末に賭けるしかないんですよね。大事な週末を楽しむことのアイコンとしてDJがある一方で、月曜日が一気にブルーになる要因のひとつでもあるな、と思って。と同時に、普段は会社でバカにされていて、週末にDJをやることでしかヒーローになれない人へのアイロニーだったりもするんです。
──'50年代後半から'60年代中頃にかけて流行したイギリスのモッズにも同じような悲哀がありましたよね。
ナベカワ:ええ。まさに『さらば青春の光』の世界ですね。自分達にとっての週末感っていうのは、楽しくもあり苦しくもあるっていう表裏一体の部分があるんです。僕らは自分達のことを昔から“血だらけの草野球”って呼んでますけど(笑)、練習量が少ないはずの草野球チームがたまにプロのチームに勝ったりするじゃないですか?(笑) あの感じを出したいんですよね。僕らもフル・タイムでバンドをやってる人達に負けたくないっていう気持ちがあるし、バンドに込める熱量は誰にも負けないという自信もありますから。ただ、世に出たCDを聴いてくれる人達にはこれを聴いて騒いでくれたらいいなと単純に思ってます。
──作品を発表するごとにいい意味で間口が広くなってきているし、今作は特にコアなリスナー以外の一般層にも受け入れられやすいアルバムですからね。
ナベカワ:凄く言葉が大きくなっちゃいますけど、やっていく度に自分達が自由になってる感じはありますね。ウチのドラムにしても、僕らが全く聴いてこなかったB'zを練習のために聴いてきたらしくて(笑)、それって最初は出さなかったと思うんですよ。でも、今はそういう部分も恰好良ければドンドン出していこう、と。
──そういう姿勢を貫きつつも、うるさ型のリスナーを唸らせる奥深さがあるのがBANDWAGONの強みですね。
ナベカワ:意味として通じるかどうか判らないですけど、“音としてのDAMNED感”を出したいんですよね。白塗りの奴はいるわ、着ぐるみ着てる奴はいるわ、あのバラバラ感を音として出したいと言うか。バラバラなんだけど最終的にはひとつのイメージとして固まっている雑種っぽさですね。いわゆるミクスチャーの意味とは違うんですけど、中期〜後期CLASHのあの自由な感じがやっぱり僕は凄く好きなんで。ただ、共感を得たい気持ちと得てたまるか! っていう気持ちが常に同じ分量で自分の中にあるんですよ。ポップであることも自分の中で凄く大事だし、ポップの定義は人それぞれだと思うんですけど、僕のポップ観っていうのはMELT-BANANAみたいな音楽に近いのかな、と。特にメロディのある音楽ではないんですけど、受け手の印象として僕は凄くポップに聴こえるんです。歌モノは歌モノで普段からよく聴くし、好き勝手なことをやりながらもちゃんと歌を唄いたいっていう気持ちが今回はこれまでの作品以上にありましたね。
──歌と言えば、「Phantom Limb Music!!!」の唄い出しのファルセットは新鮮でしたね。
ナベカワ:あれはもう完全に美輪明宏になりたかったんです(笑)。渋谷ジャンジャン系の匂いを出してみたかったんですよ。まぁ、言うなれば魂を安売りしている最近の美輪明宏に対するアンチテーゼですね(笑)。
──美人を超えた麗人にまで牙を剥くとは、パンク魂ここに在りですね(笑)。
ナベカワ:ははは。結局、パンクを感じられる音楽が僕は一番好きなんですよね。逆に、パンクを感じられない音楽が自分は一番嫌いなんだなと思って。パンクと言っても傍若無人に振る舞うわけじゃなくて、自分の理想像であるジョー・ストラマーもイアン・マッケイも品行方正ですからね。品行方正と言うか、真面目に生きた上で自由に音楽をやるのも自分の中ではパンクだと思ってるんですよ。