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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】BANDWAGON(2005年1月号)- "パンクの7インチ"感を目指した2005年型New Music

“パンクの7インチ”感を目指した2005年型New Music

2005.01.01

 BANDWAGONがまたやってくれた。ファースト・アルバム『The Equipment!!!』から14ヵ月のインターバルを経て届けられたミニ・アルバム『New Music Machine Extended Play!!!』は、我々三十路街道爆走中のオッサン連中には徹頭徹尾とにかくグッとくるニュー・ウェイヴな質感でひねくれメロディは満載、思わず快哉を叫びたくなる文句なしの傑作と断言できる。スレッカラシの音楽インポをも必ずや勃たせるであろうこの驚異の音盤バイアグラ開発に成功したヴォーカル&ギターのナベカワミツヨシに話を訊く。(interview:椎名宗之)

周りからどう思われようが構わない、僕達は僕達でしかないんだ

──前作『The Equipment!!!』とはまた趣の異なるミニ・アルバムが完成しましたが…お世辞抜きで傑作ですよ、これ。
 
ナベカワ:ありがとうございます。実際問題として、去年アルバムを出した時点で持ち曲が一切なかったんですよ。全て出し切った感がありまして、このままバンドを解散してもいいかな? くらいに思ってて(笑)。ヘンな諦めではなくて曲作りの自分の限界を判ってたつもりだったんですけど、今回のミニ・アルバムという目標設定に向かっていったらどんどんと新たに曲を作れてしまった自分がいて。僕ら自身の“今こういう音楽を作りたいんだ”っていうマインドが凄くフレッシュなまま出てると思いますね。あと、これは前のアルバムを出した時にも思ったんですけど、みんなもう30を超えていい歳なんだから(笑)、きちんと自分達の音楽的ルーツと向かい合おうと。
 
──三十路を過ぎると、いい意味で開き直れますからね(笑)。
 
ナベカワ:そうなんです。だから今度のレコーディングはただただ単純に楽しく終わった感じなんですよ。前回のアルバムを作った時に、ある程度のレコーディングにまつわるエトセトラを体得したのも大きかったですね。そうした技術的な面 を余り気にしなくなったぶん、他のことをより考えられるようになったんです。もっとメロディを立たせるためにはどうしよう? とか、より客観的に自分達のことを見られるようになったというか。以前に比べて肩の力を抜いて楽しめるようになりましたね。
 
──3テイク以上はテンションが落ちるのでやらなかったとか。
 
ナベカワ:ええ。それも前回のレコーディングで学んだ部分ですね。
 
──その割には、どの曲も緻密なアレンジが施されていて、より手間が掛かっている印象を受けますけど。
 
ナベカワ:難しいことを難しくやることって、実は簡単なことなんだと気づいたんですよ。奥が深いものを相手に判りやすく伝えるためにはどうしよう? っていうのがテーマとしてあったんで、曲作りに関しては前よりももっと考えるようになりましたね。
 
──アルバム・タイトルにある“New Music Machine”の意味するところは?
 
ナベカワ:一昔前は“J-POP”っていう言葉はなくて、“ニュー・ミュージック”って呼んでたじゃないですか? 山下達郎とかユーミンとか。その“ニュー・ミュージック”って言葉を復権させたいっていうのと(笑)、自分は“新曲を生み出せるマシーン”のようだなと。前回のレコーディングで枯れてしまったと思ってた自分も、まだまだ曲が作れるじゃないかっていう。それと、僕のなかではこのミニ・アルバムをEP(Extended Play)=シングルっていう捉え方をしていて、EPって言葉も最近はなかなか聞かないですよね。タイトルをパッと見た感じのダサカッコ良さって言うんですかね? そういう部分を敢えて若いリスナーに提示したかったし、逆に昔の音楽を知ってる世代には懐かしく感じるだろうし。“シングル感”みたいなものを今回は強く出したいと思ったんですよね。
 
──そうしたシングル感のあるコンパクトさに加えて収録曲がどれも粒揃いだから、何度も繰り返し聴きたくなる作品に仕上がってますよね。
 
ナベカワ:このミニ・アルバムでバンドの世界観を完結させるんじゃなくて、次の作品に繋げたいんですよね。前のアルバムを聴いて僕らのイメージを固めて持った人には、今度のミニ・アルバムは結構違和感があるんじゃないかと思いますよ。6曲収められてますけど、聴き終わった時に“これはとても恰好いいシングルだ”っていう感じを持ってくれたらいいなぁって。
 
──THE CLASHの「Rock The Casbah」のカヴァーっていうのも、余りに豪直球で意外と言えば意外でしたが。
 
ナベカワ:僕の洋楽体験はCLASHから始まったし、いつかは自分のバンドでやりたいと思ってたんです。ちょっと前に、ライヴ会場限定リリースで『TWO COVER SONGS.』っていうカヴァー2曲入りのCD-Rを作ったんですよ。その時にCLASHの『Rock The Casbah』とDURAN DURANの『Ordinary World』を録ったんです。言い出しっぺはCLASHを全く通 ってないギターのイケダで、彼が“『Rock The Casbah』イイじゃん、カヴァーしようよ”と。僕が言い出すのと彼が言い出すのとではベクトルが全く違うと思うんですよ。その全く違うベクトルから出たものだから、これは逆に面 白いものになるんじゃないかと。
 
──それこそ、「Rock The Casbah」が収められてるCLASHの『COMBAT ROCK』に近い質感がアルバムの根底にあると思うんですよ。『SANDINISTA!』でレゲエやダブにまで取り組んだCLASHが、シンプルでストレートなロックに立ち返った感じというか。
 
ナベカワ:そうですね。ルーツ・サウンドからの影響は自ずと出てると思いますよ。まだ20代だったら恥ずかしくてできなかったことが、今回は全部できた気がするんです。周りからどう思われようが構わない、僕達は僕達でしかないんだっていうか。
 
──2曲目の「P+E=M Not Us.」にある曲名の頭文字は何の略なんですか?
 
ナベカワ:頭文字の数式にしたのは、リスナーに好きなように判断してほしかったからなんです。一応、意味としては“Political+Enter=Minority Not Us”(政治に参加する=少数派、でも我々は違う)っていう。“P”は“President”(大統領)でもいいんですけど。何でもいいんですよ。好きなように取ってほしいんです。政治的なステイトメント云々を誰かに伝えたいってわけでもなくて、何かの引っ掛かりになって掘り下げてくれればいいなと。それこそCLASHとかは政治にも直接関わっていきましたけど、日常生活のなかで食事をするのと同じレヴェルで自然と政治に関心を持つものだと思うんですよね。それによって世の中を変えようってわけじゃなくて、自分を取り囲む社会っていうのは常に隣にあるものだし、こうしてCDを出せるのも社会との関わりのひとつでもありますからね。
 
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