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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】the band apart(2006年9月号)-円熟味を増したバンド・サウンドと鋭意に満ちた挑戦者の感覚── とこしえに色褪せぬ究極のマスターピース『alfred and cavity』

円熟味を増したバンド・サウンドと鋭意に満ちた挑戦者の感覚──とこしえに色褪せぬ究極のマスターピース『alfred and cavity』

2006.09.01

「好きにやろう」という意志がより明確に出た

──1stアルバム『K. AND HIS BIKE』は結成以来のバンドの集大成的作品で、2ndアルバム『quake and brook』はそこから発展させて完全なオリジナリティを確立させた意欲的な作品だったと思うんです。2ndは今振り返ると凄く肩肘の張ったように思えるんですけど、今度のアルバムはそれよりもヘンに力まず伸び伸びとプレイしている印象を受けましたが…。

木暮:逆にそんなに気負いがなかったのかもしれないですね。2ndを作ってる時に凄く覚えてるのは、雑音が周りからしたこと。「作ってる曲、こんな曲だよ」ってスタッフとかに聴かせるじゃないですか? そうすると「もっとキャッチーに…」とか言われて、「コイツ、何言ってるんだ!?」って感じだったんですよね。そういうのって身近な人に言われると無意識のうちに気にするじゃないですか? そういった意味で力みがあったのかな、とは思います。それに対して、今回は特に力みはなかったですね。

荒井:多分2ndの頃は、1stがセールス的なこととかじゃなくて、周りに良いと言われてプレッシャーみたいなものが僕達自身の中にも深層心理としてあったんじゃないかと思いますね。スタッフ、周りの取り巻き自体もそれを受けて僕らよりもっと違った角度で評価を受けて_いたんでしょうから、彼ら自身もそういう手探りの状態でよく判んない、みたいな。だから「もっとキャッチーなほうがいい」とか、短絡的に道を探しちゃって…そういうことになってたんだろうし。みんな手探りでやってて、それである程度、意見をぶつけ合ってお互いに影響しながらやってて。逆に今回は「好きなことやんないでどうするんだ!?」ってことがあって、今までももちろんそうだったんだけど、そういうことが今回はより明確に出たと思うんですよ。誰がどんなアイディアを持ってきても構わないし、逆に僕もスタッフとかに「どんな曲が聴きたいんだ?」って訊いたりもしましたから。基本的には何でもありなんですけど、決して独りでやってることじゃないし、スタッフを含め数人でやってることだから、お互いの気持ちを考えながら作業を進めたんです。だから、何でもありの度合いが良い意味で広がってきたんじゃないかって思いましたね、好き勝手ってことじゃなくて。そういう気負いがなくなったっていうか、ある程度うまくやんなきゃいけないとか、そんな変な気負いはなくなったかな、と。2ndが決して悪い訳じゃなく、あれがあったから今回1stと2nd、両方のテイストを混ぜた集大成的なアルバムが出来たんだと思ってます。まぁ、まだある意味模索してると言えば模索してるんでしょうけどね。ただ、「好きにやろう」っていうムードはどんどん強くなってる気がしますね。

──今回の制作過程で特に苦労された点は?

木暮:苦労したって言えば全部になってしまうんですが、新しく取り組んだことで言うと、各々が自分の楽器とかの音を曲ごとにイメージを持って作ったりしましたね。前まではそういう意識がウチのバンドには欠如してて、自分の好きな音を鳴らすだけっていうのはあったんですが、今回は「こういう曲だから、こう…」みたいな。

──ということは、以前は曲のアイディアを持って来た人がそれぞれにイメージを伝えて「こう弾いて」みたいなオーダーをしていた?

木暮:音作りに関しては、各々考えてやったみたいな感じで。曲作りに関してはそうですね、元々アイディアを持って来た人が持って来たイメージに則して他の人がヘルプしていくというか、アイディアを足していくみたいな感じで。それが今回面白いなと感じたのは、誰かがこのパートだけではなく…例えば川崎とかが俺のドラム・パートのオカズを考えたりとか、そういう感じで全員がいろんなパートにぐちゃぐちゃ関わってて、もちろん元ネタはちゃんとあるんですけど、前2作以上にみんなでいろんなことやって、みんなで作り上げた感じが強いですね。

──the band apartのレコーディングは、先ほど荒井さんが仰ったように何でもありで禁じ手は余りないと思うんです。だからこそ逆に「これだけはやめておこう」というルールみたいなものはありますか?

木暮:なんだろ? 余りにもあからさまにやめようっていうのではないですが、いつも必ずどこかに斬新さというか、新鮮な部分が欲しいですね。シンプルっていうのは一番目指すところではあるんですけどね。

荒井:安直っていうか、「これでいいか、こんな感じで行っちゃおう」みたいな、そういうのはないですね。

──「なんかこれ、前に出した曲に似てきてるなぁ」と思ったら変えてみる、とか?

荒井:もう気になるところがあればイジるし、他と被るとかじゃなくても、「これだと何か面白くないけど、他に浮かばないからこれでいっか?」とか、そういうのは絶対にないですね。「これだ、これで行こう!」と思うまで曲の繋ぎ、パートの繋ぎひとつをとってみても、どんな小さなフレーズひとつをとってみてもそこだけは曲げないです。

──では、今回も12曲すべて色が違うように心懸けて…。

荒井:まぁ、12曲同じ時期にバァーっと作ってるから、多少雰囲気が似てるなとかはありますけど、そんなに抵抗はないですね。さすがに同じ人間が作ってるから、それを持ち味と捉えるかどうか、その時の気分だと思うんですよね。作ってる途中でこれやめようと思ったらそれまでだし、これは持ち味だからなって解釈で進めていくのならそれでいいし。それにしたって、無意識のうちに何かしら差を付けようとはしてるんでいいんじゃない? っていう。 ツアー・ファイナルは大相撲の聖地、両国国技館

──普段、詞は誰がよく書いているんですか?

荒井:前は木暮が多くて、後は僕と共作とか。今回はジョージという元Nahtの英語が堪能な奴に手伝って貰って、自分でもだいぶ手掛けるようになったんですよね。ジョージとは今年の3月くらいに知り合ったんですけど、いきなり仲良くなりましたね。歌詞を見せるとか、思ってることを伝えるってことはいきなりケツを見せることとあんまり変わらないんで、仲良くなるのは早かったですね。

木暮:まぁ、そういうやり方で作ったのでジョージと荒井がやって、俺は俺でやって…みたいな感じで、今まではほとんど2人で_い1曲ずつ取り組んでたから時間が掛かりましたけど、今回は半々でやったんで早かったですね。

荒井:今回、木暮と一緒にやったのは12曲目(「KATANA」)くらいですかね。

木暮:そうだね。

──曲をスタジオである程度まとめておいて、詞はそこからって感じなんですね?

荒井:そうですね。完全に出来上がってメロディが付いた後からスタートさせてます。

──楽曲は同時進行ではなく、1曲ずつ固めていく感じですか?

荒井:ええ。曲を書いた人、その人が持つ曲のイメージと僕達が思う詞のイメージもあるんで、完全に曲ごとに仕上げていきますね。

──詞が出来たらもうどんどん録っていく感じで。

荒井:歌詞を書いてる段階で他のアレンジとかもだいたい出来ちゃってる場合が多いんで、歌詞が完成した段階で歌も入れちゃうみたいな感じですね。

──今回のツアーはワンマンを含めて全国31ヵ所を回りますが、ツアーは今年2回目になりますね。

荒井:今年はライヴがいっぱいやれて嬉しいなってところはありますね。今こういう状況だと「余りライヴを乱発するな」みたいなことを言う人もいるんですけど、ライヴはやっぱり常にやっていたいし、出し惜しみするようなものでもないと自分達では思ってるんで、こうやってたくさんライヴが出来る状況は単純にいいなと思いますね。

──今回も見事なまでに対バンがいつもの“仲間”で固められていますね(笑)。

荒井:ホントにWRONG SCALEとかはもう一緒にツアーは回らないって誓ったんですけどね。こないだの6月のツアーの時に話したんですよ。「もうロンスケとは回らないと思う。そのほうがお互いイイっしょ?」って(笑)。そう言っといてまた呼んだ、みたいな。

木暮:しかも極北ツアーに(笑)。東京に近い場所で未定のところはそれなりに考えてるんですけど、仲のいいバンドは即返事が来るから。

荒井:即答でね。WRONG SCALEとかはその日に返事が来るくらい即答なんですよ。

木暮:heもそうだし、あとavengers in sci-fiか。

荒井:まぁ、今回のメインは一緒にツアーを回るavengers in sci-fiですね。

──そして、ツアー・ファイナルはなんと大相撲の聖地、両国国技館ですが。

木暮:どこからこんな考えが…。

荒井:全くウチのスタッフは何考えてんだか…。

──大相撲のイメージが余りにもありすぎて、どういうことになるか判らないですね。

荒井:僕達もさっぱり判んないです。まぁ、なぜ国技館なのかはさておき、楽しみですね。

木暮:最初はもの凄い抵抗あったんですけど(笑)、今はホント楽しみですよ。

──ツアーは基本的にこのアルバムからの曲を中心に?

木暮:そうですね。全曲やります。あ、でも「KATANA」の最後は判んないです。

──それは気分次第で?

木暮:あれはやってもどうなんだろ? って思いますけど(笑)。

──みんな待ち望んでいるかもしれないですよ。

荒井:あそこに関しては、面白いか面白くないかだけですからね。しかも最後の曲にやんなきゃならないし、盛り上がるかどうか不安だしね(笑)。

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