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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】the band apart(2006年9月号)-円熟味を増したバンド・サウンドと鋭意に満ちた挑戦者の感覚── とこしえに色褪せぬ究極のマスターピース『alfred and cavity』

円熟味を増したバンド・サウンドと鋭意に満ちた挑戦者の感覚──とこしえに色褪せぬ究極のマスターピース『alfred and cavity』

2006.09.01

今年5月にリリースしたmock orangeとのスプリットEP『DANIELS E.P.』、そしてそのレコ発ツアーの余韻も冷めやらぬ中、the band apartからひとつのニュースが届けられた。10月4日、3rdアルバム『alfred and cavity』発表。1st『K. AND HIS BIKE』で魅せた柔軟性のある動のサウンドに2nd『quake and brook』で得た自信から見え隠れする静のメロディ、その2つが融合したこのアルバムでthe band apartというひとつの世界を完全に作り上げた。今回は待望のアルバムの全貌を暴く為、フライング気味にインタビューを敢行。残念ながら本誌を手に取ることになるであろう9月にはまだ発売されていない。ただ、今回アルバムの本質的な部分から細かいところまで話が聞けたと思う。まずは読んで作品を楽しみに待っていて欲しい。そして発売されて聴きながらまた本誌を手に取って頂くと本望である。(interview:植村孝幸+椎名宗之)

切羽詰まった状況での合理的分業制

──スプリットEPを経て待望のフル・アルバムですが、制作期間は長かったんですか?

荒井岳史(vo, g):スプリットのレコーディングが終わって割とすぐに始まりましたね。スプリットのツアーが始まるギリギリまで録ってまして、ツアーが終わって少しだけ手を加えました。

──ツアー中もリハなどで試してまとめていった感じですか?

荒井:いや、ツアー中は一切やってません(笑)。

──ツアーはツアーで集中して?

木暮栄一(ds):ホントはやんなきゃいけなかったんですけどね、地方の誘惑に勝てず(笑)。でも、暗黙の了解で誰も何も言わないっていう。逃避ですね。

──ツアー現実逃避?(笑)

荒井:そうです。 

──では、スプリットのツアーを回ってファイナル(6月25日、千葉LOOK)で「アルバム出します」ってMCした時には、まだ完成していなかったと?

荒井:1曲足りなかったのかな? ほとんど9割方は出来てたと思います。

──毎回気になるんですけど、アルバムのタイトルにはどんな意味があるんですか?

木暮:タイトルは…サイコロで決めたんですけどね。

──サイコロですか!?(笑)

木暮:悩んでですね、運も味方につけようかな、と。ま、そんなことを言うくらい…そこまで意味を込めたタイトルではない、と。

──いつもながらに(笑)。

荒井:おっしゃる通りです。

──今までとはちょっと曲作りを変えてみようという試みはありました? リズムの取り方が面白いなと思った曲が数曲あったので。

木暮:具体的に何の影響っていうのは多分ないと思うんですけど、無意識に影響を受けたものが出たのかも。ちょっと抽象的な言い方になっちゃうんですけどね。

荒井:曲の作り方は、いつもと余り変わらなかったような気がしたんですけどね。結局、誰かがアイディアを持って来たものに対して全員で取り組むっていう姿勢が基本的にあって。敢えて違いを言うならば、人によっての分業の割合が変わったかな、と。今回の作業は凄い切羽の詰まり方だったんですよ(苦笑)。だから効率よくやっていかないと間に合わなかった。まず、要所要所で話し合うポイントがあって、その間のインターバルは誰かが録ってたら誰かがこっちでメロディを作る。そこで話があって、またやって…みたいな繰り返しで。そういうのが半端じゃない追い詰められ方だったんで、逆にごく自然にそういうところがいつもと違ったのかも。いつもはもっとゆっくりというか、ただぼんやり待ってたりとか逆に他人に待たれたりするところもあるし、そういうゆっくりさが今回はなくて、みんなで同時に作業をしてたかな、と。

木暮:普通、レコーディングってそういう作業の繰り返しなんでしょうけどね。

──今回はいきなり、今までの作品とは違ってライヴの始まりの軽い音合わせみたいなイントロで始まりますね。

木暮:そうですね。最初は全然違うイントロのアイディアがあったんですけど、どうせならライヴの前に再現できるような…初めはオーケストラの調弦みたいなのをギターでやろうか? と言ってたんですけど、最終的にはなぜかこういう形に。

荒井:結局2曲目、この次に来る曲がその段階では決まってなくて、決まった段階で改めて見つめ直した、みたいな。スムーズに2曲目に繋がるにはこんな雰囲気かな? という想像でスタジオに入って。

──ということは一発録り?

荒井:ええ、完全な一発録りですね。

──1曲目(「72」)は何でこんなタイトルになったんですか?(笑)

木暮:これは…まぁ、子供の名前で(笑)。それ以外にタイトルを付けるとしたら、「INTRO」とかじゃないですか? それだったら、やっぱり意味深なほうが深読みする人もいるんじゃないか? と。ま、判る人に判ればいいんですよ。

荒井:でも判る人、喜びそうだよね。「おお!」とか言ってね。

──それに続く2曲目「Still awake」は、従来のバンアパ節炸裂のリード曲ですね。

木暮:荒井がスタッフと話してる時に「新曲、どんな感じがいい?」って訊いたら、「ドライヴ感あるヤツがあったらいいね」って言われて、その言葉を元に作ったのがこの曲で。

荒井:なんか「ドライヴィーな」とか訳判んないこと言ってて(笑)、こいつ何言ってるんだろ? って。

木暮:ドライヴィーって…(苦笑)。

──完全な造語ですよね(笑)。

荒井:そこから連想してこういうことになったんですけどね。俺としては割と浮いてるかな? って思ったんですけど。浮いちゃいないけど、ホント1曲目と2 in 1でイントロになる曲になったかな、と。

木暮:爽やかな秋を象徴する、みたいな。

──続いて3曲目「SOMETIMES」、荒井さんの声が若いというか…結構無理しました?

荒井:無理してというか、その声が変わって聴こえる部分が凄く難しかったんですよね。その必死さゆえに声が変に聴こえたのかな? と。

木暮:必死さゆえに変になるって自分…(笑)。

──ということは、「SOMETIMES」はヴォーカリストとして苦労された、と?

荒井:いや、そう聴こえる部分だけ。

木暮:キュートな感じですよね。

荒井:妙にカワイくなっちゃって気持ち悪いな、って自分で思いましたけどね(笑)。でも結果、雰囲気的にオーライかな、って。

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