Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ザ・キャプテンズ(2006年2月号)- 何かの瞬間、僕達が一番ポップになる

何かの瞬間、僕達が一番ポップになる

2006.02.01

僕達は出発点からも目を逸らさずに、日本人にしかできないロックを携えて世界に対峙している

──今回のアルバム・ジャケットのアイディアはどんなところから?
 
傷彦:これも“今、僕達が生きている証”っていうテーマがある。今まではそれこそコンセプトがあってカッチリ決めて、っていうのをずっとやってきて、今でもそれは信じているんだけれども、それはともすればファンタジーの世界の住人じゃないかと思われる危険性があるんだね。それは判ってはいるし、それでもやっぱりグループサウンズってああいうものだからってやってきたんだけど、僕達の中でも変化があって、「僕達はグループサウンズをやっているけど、今生きているロック・バンドだ」っていうことをもっと外側でも表現したいってずっと思ってた。もっと直接的に、パッと見で判ることが大事だと思ったんですね。だからこういうジャケットになった。ロックンロールの出発点が西洋のものだっていうことがありますよね。もちろん僕達はブリティッシュ・ロックを中心に凄く大きな影響を受けていて、その出発点を表したかったっていうのがあって。モッズ・スタイル、パンク・スタイル、グラム、ニュー・ロマンティックみたいなもの、イギリスで生まれた代表的なジャンルを配置してみて、もちろんそれだけじゃないんだけど、そういうものを経て僕達は日本人にしかできないロックに到達してるんだよっていう。西洋のロックが日本的ななまりを経てグループサウンズになったように、僕達は今現在、出発点からも目を逸らさずに、日本人にしかできないロックを携えて世界に対峙しているんだよ。結果、僕が意図していたよりも、もの凄くグループサウンズっぽいジャケットになったなと思ってます。
 
──パンチのあるジャケに仕上がりましたもんね。レコーディングのほうはいかがでした?
 
ヒザシ:ギターは悩むよ~。鍵盤がないぶんギターにかかってくるので、だいぶ構成を練りますね、苦労します……。
 
──GSでもロックでも、参考にしたり影響を受けたアーティストはいますか?
 
ヒザシ:影響を受けたというか、好きなのはディープ・パープルのリッチー・ブラックモアとか、あとザ・モップスの星勝さんのギターは洋楽に匹敵するくらい格好いいなと。意識はしてないけど、あの辺のエッセンスは出ているかな。
 
テッド:僕は(ザ・ゴールデン・カップスの)ルイズルイス加部さん、もの凄く好きです。あの人も僕と一緒でギター出身のベーシストで、もう“全部に勝ってやる”くらいの押しの強いリフと音、あれは結構影響を受けましたね、ホント大好きで。僕の中で常にベースのあり方があって、耳で捕らえる部分って凄い大事なんですけど、ベースにしかできない身体で捉えるものがあると思ってて、そのお陰で人が踊れるっていうのが凄く大事だと思ってるんで、そこには気を遣ってます。
 
ヨースケ:好きなアーティストはいますけど、俺は自分のドラム、自分から出てきたものを信じたいっていうのがありますね。
 
傷彦:グループサウンズのヴォーカリストは非常に魅力的な人が多い。マチャアキ(堺正章)、ショーケン(萩原健一)、ジュリー(沢田研二)っていうグループサウンズの中でも最も有名なこの3人、素晴らしく思うし影響を受けている。ザ・ダイナマイツの瀬川洋さんの声も素晴らしいですね。洋楽ももちろん聴くからジョン・レノンみたいに歌ってみたいとか、デヴィッド・ボウイみたいに歌ってみたいとかいう欲求もあるけど、やっぱりグループサウンズっていうのは日本語に合ってる歌い方だと思うね。自分の声の幅もあるしね。
 
──ヴォーカルはもうスタイルが確立されてますよね。今回、ゲスト・プレイヤーなどは?
 
傷彦:「恋のゼロハン」だけですね、中シゲヲさんのギター・AE蹶ソロ。
 
ヒザシ:音を一発出した時のトーンがね、もう「うん、納得」。本当に素晴らしかった。今聴き返しても、金属的な「弦叩いてるぜ」っていう、僕が感動した音がそのまま詰まってるんで是非みんなに聴いてほしいです。でも中さんを尊敬してるけど悔しいって思う部分もあるからね、負けないようにやるぞ~中さ~ん! 色々得るものがありました。
 
──得たものを自分にどう生かせそうですか?
 
ヒザシ:う~ん、まずは猫背かな(笑)。スタイルから。
 

僕達こそが王道なんだよ

──オフィシャル・ホームページのほうに、激動の去年1年で少し見失ってた部分というか、心がすり減って愛さえ疑うことがあったという内容のことを書かれていましたが……。
 
傷彦:僕達はずっと変わらない姿勢でいる決心をしてやってきたんだけど、単純にスケジュールがハードになり、その中で生活も変わるから見失うものがあったんだと思う、今思えば。その時は気づかなくても、どうしたって消費されちゃうんだね。愛をずっと歌ってたつもりでも、本当の愛が何なのか、……今も判んないんだけどさ、(去年12月の)仙台ワンマンではそのヒントを凄くもらった感じがした。最近、凄くそれに気づいたんだ。音を録っている時はまだ今よりかはファンタジーでいたかったのかもしれない。でも、いいアルバムができたし、もちろんこれを否定するわけじゃないからさ。ここから発展していきたいと思っているしね。
 
──その言葉を聞いて安心できました。正直生身の人間だってことを忘れそうになる部分があったんで、今後の動向にはさらに期待しちゃいます。GSだけに幅広い年代の人に判りやすいベーシックなメロディがあるわけですが、そこに現代版の装飾をしてる感じもあるんですかね。
 
傷彦:僕達はただ、最新型のグループサウンズでありたい。もっと言ってしまえば、この世にいる日本のバンドは、全てがグループサウンズだと僕は思っている。
 
──根っこの部分は。
 
傷彦:そうそう、スタートはそこだから。その中で僕達だけが堂々と「グループサウンズだ」って言えているのは凄く大事だと思うんだよね。「最新型のグループサウンズだ」って言ってるのに恥じない曲を作ってライヴでやっていくだけだね。
 
──どんなところが60年代のGSとの一番の違いだと言えますか?
 
傷彦:もちろんサウンドは違う。でも愛を歌う、ラブソングだけを歌うっていう精神的な部分は一緒だよね。グループサウンズっていうものは、当時流行ってた時は凄くミーハーなものだったと思うんだよね。つまりそれが最新型のロックだったと思う。それを僕達はやりたいだけ。今の時点の僕達の曲にはその違いはまだ見えないかもしれない。サウンドにもっともっと僕達の思想が表れた時に、その違いがはっきり見えるものだと思ってる。今はまだ偉大なグループサウンズの先人が作った道を、僕達が「最後のグループサウンズです」って言って歩いてるように見えると思うんだけど、そうじゃない、たぶん“切り開く”ってことはもっと違うことだと思ってるから、そこまで到達した時にはもう凄いことになる。
 
──例えば今ならではの言葉や昔なかった言葉も、今は歌詞に使えたりしますよね。
 
傷彦:普遍的なテーマはそこにあるからね、そういうものを持ってきたりすることもあると思う。ただそこにもリアルは必要なんだよ。根底にあるものは一緒でも、そこにまつわる現代風俗みたいなものがどうしても違うから、そこを無視して歌ったらそれはただのファンタジー。ファンタジーが必要な時もあるだろうから、そういう曲も作ってはいくだろうけど、僕はたぶんそこだけには行かないかな。
 
──もうちょっと地に足がついた感じなんですかね。形、フォーマットとしてのGSはやっぱりこだわりではあるんですよね?
 
傷彦:その精神性ですね。グループサウンズは日本で最初に生まれたロックンロールだと思ってるんですよ。ザ・スパイダースが「フリフリ」っていう曲でデビューするまでは、職業作曲家と歌い手は完全に分離していた。それを一つにした瞬間っていうものが、日本のロックが生まれた瞬間だと思ってるんです。そういう原始のロックを僕達は受け継いでいるんだよ、そしてもう1点大事なのは“愛を叫ぶロック”だっていうこと。この世で一番大事なもの、愛を。だからその2点において、もの凄く日本ロックの王道だと思っていて。僕達はよく色モノだとか不思議なことやってるねって言われるけど、そうじゃなくて、僕達こそが王道なんだよってことが言いたい。形も思想が表れるものだから大事なんですけどね。
 

今後もっと必要なロックを取り出せる

──GSという形を借りながらも、凄く今日性の高いロック・アルバムで、いわゆる王道なものに仕上がっているのが面白いでよね。
 
傷彦:そのギャップさえも面白いってことなんでしょうけどね。僕もグループサウンズっていうのは、懐メロであり歌謡曲だとばかり思ってた。でもある時「フリフリ」とザ・ダイAE蹶ナマイツの「トンネル天国」を聴いた瞬間に、「これは世界にも誇れるロックンロールだ! どうして誰もここに目を向けないんだろう!?」と思って始めたバンドだったんで。
 
──最初は外見の印象から入られてしまうのかなと思ったんですけど、現場に出てみるとお客さんだったり対バンだったり、その反応はすんなり“いいものはいい”って縛りなく素直に判ってくれてると思いますよ、やっぱり音は王道だし。
 
傷彦:だとしたら凄く嬉しいよ。どうしてもグループサウンズのイメージ自体が非常にマニアックであったりアンダーグラウンドなものであったりして、本当のリアルタイム、60年代以外は凄く下に潜ってたシーンだと思うんですね。一瞬“ネオGS”っていうのはあったけど、それでもアングラだったと思うし、それは今もそうだし。でもそれが王道であった、日本で一番ポップだった瞬間があるジャンルなんだよっていうのは、みんなまだ気づいてなくて、そこを僕達はやるべきだと思っていて。何かの瞬間に僕達が一番ポップになる。その手始めとしてこのアルバムは凄くいいんじゃないかな。
 
──で、さらに今現在のみなさんは、また先に進んでいるわけで……。
 
傷彦:今作っている曲はもっと広がるものだっていう確信があって。アルバムは集大成と言っているから、まだ閉じている中でのロックなんだよ。それでも凄く自信があるし、それは絶対やるべきもので、今の日本に必要なロックではあるとは思っているけど、僕らは今後もっと必要なロックを取り出せる。それを信じてほしいっていう提示でもあるね。
 
このアーティストの関連記事
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻