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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】HONESTY(2005年6月号)- 冗談で投げた球をホームランにするのがHONESTYの醍醐味なんです

冗談で投げた球をホームランにするのがHONESTYの醍醐味なんです

2005.06.01

HONESTYは出すカードが全部“当たり”

──このアルバムのなかで一番シングル・カット向きなのが「1984」かなと思いましたけど。
 
高桑:うん。自分で作っておきながら、そういうのがどうもしっくりこなかったんですね。でも歌詞ができて「1984」というタイトルも決まった時に、恥ずかしい気持ちも特になく、割と素直にやることができた。ギター・ソロ・フリークの俺としては、「1984」のアイゴンのギター・ソロには純粋にワクワクしたけどね。EL-MALOやFOEでもアイゴンはそんなにギター・ソロを弾かないから、今回は俺がアイゴンに「ギター・キッズが思わず弾きたくなるようなソロを弾いてよ」ってリクエストして。
 
──アイゴンが『YOUNG GUITAR』の表紙を飾るくらいの勢いで(笑)。
 
高桑:そうそう。まぁ、ちょっと時代に反したことをやってるかもしれないけど(笑)。
 
會田:圭クンが最初に「バンド名は“HONESTY”にしない?」って言ったのもそうだし、「1984」の成り立ちもそうだし、最初は冗談のつもりで投げた球を真剣に打ってホームランにする感じっていうのが、HONESTYの醍醐味としてあるんですよ。最初は“これでイイのかな?”と思いながらやってるんだけど、やっていくうちに自分でもウットリしちゃったりして(笑)。楽に作っている上にこれだけイイ作品が生まれるっていうのも、なかなかないことだし。
 
高桑:そうだね、それは不思議だよね。凄く気合いを入れて作ってみても、後で聴いたらどうも今ひとつだった…っていうのはこれまでに結構あるんだけど、HONESTYみたいに、これだけ楽にやって納得したものができるっていうのが自分たちにとっても新たな発見だったよね。
 
──“こんな引き出しがまだ俺にはあったのか?”というような?
 
高桑:うん。でも、その引き出しは普段から開けていたりするんですよ。開けているくせに今までは使っていなかったというか。もしくは、いつも使ってはいるんだけど、うまく使いこなせていなかった。だからアイゴンがよく言うんだけど、「HONESTYは出すカードが全部“当たり”」っていう感じなんだよね。
 
──それも、考え抜いた末に差し出すカードじゃなくて、「じゃあ、これで」ってパッと差し出す感じ?
 
高桑:そう。何も考えずに「ハイ」って差し出したら、「あ、それイイ! 当たり!」っていう。サウンドに関しても、特に綿密な話し合いが事前にあったわけではなく(笑)。
 
會田:圭クンの部屋にあるプライヴェート・スタジオで録ったんですけど、凄く早い作業でしたね。僕らもちゃんとしたレコーディング・スタジオでエンジニアの方と作業を進めるキャリアがずっとあるわけだから、録音のテクニックとか機材とか、自分たちの経験に基づいた知識をそれなりに持っているんですけど、そういうのとは真逆でしたよ。エンジニアもいないし、「圭クン、こんなソロ録ろうよ」って言うと、「イイね!」っていきなりレコーダーを回したり。そういう早いやり取りがイイ結果 を生んだと思うんですよ。いろいろと考える余地もなく録り進めたし、機材に関しても、2人の間にはマイクも1本しか立てなかったし。
 
高桑:向きを変えて、同じマイクでアコギやコーラスも録ったりね。
 
會田:マイクで唯一のこだわりは、息がかかるのを防ぐウィンド・スクリーン。マンチェスター・ムーヴメントを描いた『24 HOUR PARTY PEOPLE』っていうイギリスの映画にジョイ・ディヴィジョンのレコーディング・シーンが出てくるんですけど、ウィンド・スクリーンが針金にストッキングを巻き付けたものだったんですよ。それを見て恰好イイ! と思って、自分たちでも作ってみることにして。それが今回唯一のこだわり(笑)。
 
高桑:最初にアイゴンが買ってきたストッキングは編み目が大きいヤツで、それじゃ空気が抜けて意味がないっていう(笑)。
 
──女性が穿いた時の好みで選んでしまった、と(笑)。
 
會田:バンドを始めたばかりの頃の初期衝動っていうか、HONESTYはずっとそういう感じで進んでるんですよね。音楽に夢を抱いている純朴な中学生なのに、学校へ行くにはタクシーを使っちゃう、みたいな(笑)。バンドを始めた頃の初期衝動がずっと続いてはいるんだけど、「この曲にCHARAがコーラス入れてくれたら最高だよね?」「イイね! じゃ、ちょっと電話してみるわ」って話にもなるという(笑)。
 
──そう、「TRUE 80%」にはCHARAさんが、「Tokyo Girl」にはBONNIE PINKさんがそれぞれコーラスに参加したり、「Tokyo Girl」の作詞は東京スカパラダイスオーケストラの谷中 敦さんが作詞を担当していたりと、ゲスト陣もまた豪華なんですよね。
 
會田:CHARAのコーラスは彼女の自宅で録ったんですけど、その間中ずっとCHARAの子供に“ダルマさん転んだ”を強要されて(笑)。
 
高桑:BONNIEさんは俺の家まで来てくれて。「“HONESTY ROOM”、めちゃくちゃ和むわー」って言ってくれました。何の変哲もない普通 の部屋なんですけどね(笑)。あと、谷中さんはメール詩人で、普段からいろんな人に自作の詩をメールで送ってくるんですよ。
 
會田:谷中さんの詩には、まるでフランス文学みたいな堅い詩と、男の子の胸がハートマークになったような詩があって、僕はその男の子の詩が前から凄く好きだったんです。あんな三國連太郎のような顔をして(笑)、こんなにカワイイことを普段から考えているのかと思うと、純粋に恰好イイなと思って。で、「谷中さんの“男の子の詩”をお願いしますよ」って頼んだら、「かなり光栄」というメールが返って来まして(笑)。谷中さんは圭クンの中学の先輩でもあるし。
 
高桑:俺の1年先輩なんだけど、そんなことに気づいたのはお互いプロになってからの話で。俺のところには「曲も良かったよ」って谷中さんから返事が来たけど(笑)。
 
──ここまでヘンな力みもなくイイ作品ができると、HONESTYの行く末にますます期待が持てますね。
 
會田:改めてこの『AMERICAN ROCK』を自分で聴き直してみると、これだけ肩の力が抜けた状態でイイ作品を作れる人ってなかなかいないかなぁって…自画自賛になっちゃいますけど(笑)。積み重ねてきたことを割と自然にできているのは、自分でもビックリだなというか。HONESTYってやっぱり“ホーム”っていう感じがしてるし、自分たちで決めた枠でもドンドン自分たちで崩せたりするから、本当に楽しいですよね。HONESTYを店に喩えるなら、売るモノがたくさんあるから開けるのが楽しくてしょうがないっていう状態なんです。
 
高桑:HONESTYとして海外でのレコーディングやライヴも今後やりたいと思ってるし、それをちゃんと実現させるだけの力量 と状況も今はあるからね。夏の“RISING SUN ROCK FESTIVAL”は初のバンド形態でやろうとも思ってるし…いろいろと楽しみにしていて欲しいですね。
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