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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】THEATRE BROOK(2005年6月号)- Reincarnation ~巡り行く愛の輪廻と時の車輪~

Reincarnation ~巡り行く愛の輪廻と時の車輪~

2005.06.01

シングル「世界で一番SEXYな一日」に続き、オリジナルとしては2年振りとなるTHEATRE BROOKのニュー・アルバム『Reincarnation』が完成。間違いなく、もの凄く素晴らしい一枚。砂ぼこり舞う果 てなき荒野を旅する男たちが、ありったけの思いとスキルと情熱を注ぎ込んで奏でるロック。今回のアルバムは4人(本作よりTHEATRE BROOKは4人体制)のルーツにある音楽を徹底して究めるところから始まったという。その結果 に生まれた豊潤な音。そこに乗せたリリックの切れ味も鋭い。たとえば、「大統領やめてくれないかい?」と歌う「大統領」。70年代にも、当時のニクソン大統領を糾弾する激しくカッコいいソウル・ミュージックを歌ったシンガーがいた。時代は流れても音楽は残り、輝きを放ち続ける。誕生したばかりのマスターピースを前に、佐藤タイジが語る。(interview:梶原有紀子)

ロック・バンドとは処世するための手段ではない

──決してバンドが止まっていたわけではないんですが、新曲とニュー・アルバムを聴いて、“THEATRE BROOKが帰って来た!”という感じがありました。
 
タイジ:あるでしょうね。移籍ってこともあるし、このアルバムから俺と中條(卓)さんと、沼澤 尚さん、エマーソン北村さんの4人を正式メンバーとして打ち出すことになって、まずバンドの中では景色が変わったっすね。それは凄く変わったな。
 
──沼澤さんもエマーソンさんも、これまでも一緒にやってこられた方たちですが…。
 
タイジ:そう。10年近くやってるし、4人とも辞める気はないし。で、アルバムを作ってる時に、「正式なバンドとしてやりたいんだけど」って言ったら、「もちろん、いいよ」って話で。写 真なんかもさ、やっぱ4人で映ってるとバンド感が出ますよね。で、実際にバンドになるってなったら、沼澤さんも北村さんもちょっと意識が変わって、「だとしたら、言うことあるぞ」って感じで(笑)。俺はもちろん言いたいことは言うから、いわゆるバンドらしい光景になるわけですよ! とはいえ、子どものバンドじゃないんで、痴話喧嘩になったりすることはなく。
 
──いいですねぇ、大人のバンド。そして新作『Reincarnation』ですが、タイジさんの中で最初に「こういう作品にしよう」というようなイメージは?
 
タイジ:Sun Paulo(沼澤 尚、森 俊之と組んだダンス・バンド)をやり始めて、打ち込みのテクニックをここ何年かで身につけたんですね。自分の出したい音楽、表現したい音が水みたいなものだとすれば、Sun Pauloをやったことで蛇口が2つできたようなものなんですよ。実験的なものやプログレッシヴ、オルタネイティヴな欲求は全部Sun Pauloって蛇口から出す。そっちはダンス・ミュージックでありプログラム・ミュージックで、サウンド面 が主体ですよね。で、さてTHEATRE BROOKのアルバムを作ろうってなった時に、こっちの蛇口では歌もんをやろうってことになるんですよね。歌詞がちゃんと伝わって、歌もので、大人が演奏するロック。大人のロックをやろう、って思ったわけですよ。
 
──なるほど。
 
タイジ:大人のロック。THEATRE BROOKって、何となく漠然としたイメージがあるじゃないですか? 「ロケンロール!」とか言うのとはちょっと違って、ミッシェルやJUDEともちょっと違って。やっぱ黒人音楽が大好きだから、その要素もあるし。で、今回は、我々が思うルーツ・ロックをやろうと。その中には、レゲエやディスコやソウルやファンクも入ってるロック、っていう景色になるんですよね。Sun Pauloで培った打ち込みのテクニックも駆使しながら。
 
──タイジさん含め、4人の中にあるルーツ・ロックを。
 
タイジ:そう。Sun Pauloができた副産物として、THEATRE BROOKの方向性がビシッと定まりましたね。これまではTHEATRE BROOKって蛇口しかなかったから、そこにやりたいことを全部詰め込んでたんですよ。そしたらオモシロい作品はできるけど、今回のアルバムはより判りやすい方向性が打ち出せてると思うわ。今までで一番納得がいってます。
 
──さっき話に出ましたが、私が持ってるTHEATRE BROOKのイメージは、土ぼこりが舞う道を行くロード・ムーヴィーを観てるようであり、そこで鳴っている音楽、荒野を駆ける音楽といった感じなんですね。その感じと、ライヴを体験した時に感じる、無心に踊ってしまう感じやグーッと胸に迫る感じが、もの凄い濃度で今回のアルバムには詰まっているなと思いまして。
 
タイジ:そうですよね。大人になって、今までやって来たTHEATRE BROOKを、客観視できる部分が多くなってきましたよね。「俺たちは今、何をやるべきなんだろう?」っていう考え方が、以前より全然できるようになりましたね。10年前だったら、“どうしてもやりたいこと”を真ん中に据えるんですよね。もちろん、このアルバムは俺たちのやりたいことが詰まってるんですけど、それよりもTHEATRE BROOKがやるべきことというのかな。
 
──それは、THEATRE BROOKが鳴らすべき音、伝えるべきメッセージということですか?
 
タイジ:そうですね。サウンドのスタイルも含め。やっぱ、俺とか30代後半で、ロックをやってる人間で、それなりの責任があると思うしその責任を全うしたいと思うから。『NIIGATA AID』みたいなことも含めてね。サウンドのスタイルも、いわゆる、バンバン消費されてくようなロック ──ま、消費されるのは実はロックじゃなかったりするんだろうけど──まぁでも、いつの間にかロックはビジネスに取り込まれて“商品”みたいなことになってるじゃないですか? その中でTHEATRE BROOKがやるべき仕事っていうのは、どっかで警鐘を鳴らす、じゃないけど……、「自由なのだ」ってことをちゃんと伝えるべきバンドなんですよね。ロック・バンドっつうのは、就職活動の結果 ではないっていうことですよね。処世するための手段ではないということです。
 
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