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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】THEATRE BROOK(2005年2月号)- 漠然とした怒りはあっても矢印がわからんようになってるんだろうね。その怒りに対してどう行動していくのか?

漠然とした怒りはあっても矢印がわからんようになってるんだろうね。その怒りに対してどう行動していくのか? 

2005.02.01

 昨年1月から4月までマンスリー・ライヴを行い好評を博したTHEATRE BROOKが、今年もマンスリー・ライヴを開催決定! THEATRE BROOKの数多い名曲はもちろん、毎回テーマを変えて、プリンスやニール・ヤング、はてはピンク・フロイドの曲までを取り上げるといった趣向は、ロックの楽しさやカッコよさはもちろん、ヒストリーやメッセージまでをも伝える懐深いライヴとして多くのオーディエンスを魅了した。果 たして今回はどんな展開を見せてくれるのか、否が応でも期待は高まる。そこで、待望の新作をレコーディング中で多忙を極めるTHEATRE BROOK 佐藤タイジの自宅に押しかけ、寝起きのタイジさんに突撃取材を敢行した。(interview:加藤梅造、椎名宗之)

ロック王道中の王道

──2月からいよいよマンスリー・ライヴが始まりますが、まずは昨年のマンスリー・ライヴの感想からお聞かせ下さい。
 
タイジ:楽しかったですね。THEATRE BROOKの曲以外にも、毎回テーマを決めてがっつりカヴァーするというのをやって。これが結構勉強になるんですよ。1回目にプリンスをやって、ニール・ヤング、ジミヘン、ツェッペリン、あとピンク・フロイドの『狂気』A面 全部とか(笑)。
 
──まさにロックの王道的なチョイスですね。
 
タイジ:もう王道中の王道。でもやっぱりプリンスとか大変でした。演奏は楽しいんだけど、歌が難しいの。やってみたら、なにコレって感じで。もう(プリンスは)天才だって思いました。
 
──それで、今年のテーマはもう決まったんですか?
 
タイジ:まず、サンタナでしょ。ストーンズもやりたいし。トッド・ラングレンもやっておきたいし。あとフランク・ザッパ…、これはやめといたほうがいいな(笑)。でも、こういうカヴァーって、なにげに楽しいんですよ。
 
──楽しいっていうのが一番なんでしょうけど、今あえて王道ロックをカヴァーするっていうのには何かわけがあるんですか?
 
タイジ:そんな深い理由はないんですが…、でも、いるでしょ? 若いお客さんの中には“サンタナって何?”って人も。“ジミヘンってマニアックじゃん”とかいうのが普通 の感覚になるのはマズイと思うのね。ロックにもズバーって歴史があるわけで、俺もそれを全部わかっているわけじゃないけど、普通 よりかは知ってるだろうからさ。だから俺らみたいなのが、そういうのもちゃんとやってる方がいいんじゃないかなって。
 
──『狂気』A面全部っていうのは普通ライヴではなかなか聴けないですよね。
 
タイジ:アーティストがやりたいことを、アルバム全体を通 して聴くという感覚、そういうのって以前はテレビにもラジオにもあったと思うんだけど、最近なくなっちゃった。それはバンド・ブームでも顕著だったけど、ロックが単なるカッコよさの消費になってしまってる。
 
──確かに『カウントダウンTV』とかはロックの商品性を象徴してると思います。
 
タイジ:あれ、もっとも気持ちの悪い番組ですよね。不気味っていうか。最近また『ベストヒットUSA』をやってるけど、必ず昔の映像を流してますよね。小林克也さんもきっと今そういうものをきちんと紹介したいっていう気持ちがあるんじゃないかな。
 
──ライヴの現場でもそういうのは聴きたいですもんね。
 
タイジ:あと、こっちも勉強になるんですよ。ニール・ヤングとか実際に演奏してみて初めて入り込めたようなところがあって。もうクレイジーホース気分なんですよ。あらためてニール・ヤングの凄さを噛みしめる感じですね。
 

真面目にやって欲しいっすよね(笑)

──音楽界だけじゃなくて、社会一般でそういったロック的なものが求められてるような気もするんです。
 
タイジ:そういう気分はあるよね。今は情報の投げつけ合いになってるから、深く考えて最終的に行動するっていうことがなくなっているんじゃないかな。
 
──深く考えないからすぐに単純な暴力とかに結びついてしまうんでしょうね。
 
タイジ:漠然とした怒りはあっても、矢印がわからんようになってるんだろうね。その怒りに対してどう行動していくのか。そういう時こそ、ミュージシャンはもっと賢くなって、いい作品を出すべきなんでしょうね。
 
──前作『THEATRE BROOK』の「なにもないこの場所から」などはまさにそうした曲だと思いました。9.11後の、ある種破綻した現実をきちんと切り取っているなあと。
 
タイジ:実際、どうしたらいかわからんぐらい大変な時代になっているよね。イラクも泥沼になってるし。そもそもまったく理由のない侵略戦争だから。ある一族が金儲けしたいってだけの。 実は今、レコーディングしているアルバムも結構強力なナンバーが揃ってますよ。これ本当に出せるのかっていうくらい言いたい放題歌っちゃってるから。
 
──レコード会社的には大丈夫なんですかね?
 
タイジ:だってもう録っちゃったよって言うしかない(笑)。
 
──世に問うのが楽しみですね。
 
タイジ:問う…そうね、というか自分がそういうの聴きたいんですよ。え、そんなこと言っちゃって大丈夫なの? っていうぐらいのものを。一部の放送局では放送できないような。だって法律的にも、言いたいことを言っていい国なんだから。
 
──法律的にはよくても、なんかへんな規制がありますからね。一見、自由なようで、意外と自由がないという。
 
タイジ:ないっすねえ。本音を言ったら悪いみたいな。それでセックスと暴力だけが浮き彫りになってきて。そういう意味で、クリエーターはもっと雄弁になるべきだよね。
 
──そうなんです。もっとガンガン言って欲しいと思います。ところで、新曲は今度のライヴで披露されるんですか?
 
タイジ:そうだね、やってもいいよねえ。じゃあ、あれだ、アルバムの曲順通 りにやるとか。それならあんまり練習しなくていいし(笑)。でも、なんか思いがけないこともやってみたいんだよね。マッシヴ・アタックの1stとかカヴァーしたらカッコいいかな。ビージーズとか昔のディスコものとか。ザ・バンドもいいなあ。って、こういうのを考えるのが楽しいんです」 ──このシリーズ、まだまだ終わりそうもないですね。 「延々できますね(笑)。まあ、ライヴの前には告知もするので、あらかじめ予習してくると楽しいかもしれない。
 
──漠然とした質問ですが、タイジさんとしては、THEATRE BROOKのアルバムやライヴを聴いた人がどうなってくれると嬉しいですか?
 
タイジ:うーん、そうだなあ、真面目にやって欲しいっすよね(笑)。今年のテーマは真面目にやろう! なんでもええやんけどな。これいいなって思ったものに対して真剣に取り組んでみるっていう。それがもし音楽だったら、長くお付き合いができるでしょうね、っていう感じですね。
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