付いてきてほしい、私達のヴィジョンに
——メモリアル・イヤーの漠然としたヴィジョンは?
谷口:曲はマイペースに少しずつ作り出していって、ライヴで新曲を散りばめていきたいと思っています。さっきも申し上げたんですけど、キャッチーさはかなり目指してきたつもりなんですよ。そのキャッチーさは維持しつつも、そこだけに重きは置かずに、もっと遊び心を出していきたいんですよね。漠然とした言い方ですけど、今はそういう方向へ行ってみたい気がしてますね。それがまた違ったfOULの新しい一面になるかもしれないし。
——とにかく記念すべき“砂上”30回目、本当に楽しみですね。
谷口:ワンマンですから、フルスイングにならざるを得ませんからね。まずは体力作りから始めて(笑)。
大地:10年っていう月日はやっぱり長いものですけど、人それぞれにタイム感みたいなものがあって、長かったと感じる人もいれば、あっという間だったと感じる人もいると思うんです。その月日のなかに自分達の音楽が入っていけているなら凄く嬉しいことですね。“砂上”30回目は確かに節目ですけど、ずっと続けていくつもりなのでこれからも期待していてほしいです。
平松:これからも付いてきてほしいですね、私達のヴィジョンに。
大地:ウマイなぁ、オイ!(笑)
谷口:30回というのは確かに通過点であって、それを踏み台にしてこれからもやっていくんだぞ、ってことですよね。もう30回経った、でもまだ30回だし…という意識を持つと共に、結成から10年というのはやっぱり節目だなという想いがあって、気持ちを新たにしたいですね。
——じゃあ、最後に川上さん、長森さんからfOULの皆さんにエールを。
川上:10年っていうと、バンドが寿命を終えてもおかしくない年月だと思うんだけど、fOULに関してはそういう感じが全くしないんですよ。まだまだこれから新しいことが出てくるんじゃないかっていう、そんな期待を抱かせてくれるライヴや曲作りにこれからも邁進して頂きたいと思いますね。
長森:こうして話をしてるとさ、やっぱり“まだ10年”っていう気持ちのほうが自分は大きいよね。美学を追求し続けてきてさ、これでやっとスタートラインに立ったんだよ。だからやめる訳にはいかないよね、色々大変だけどさ。周りを見渡してみても、3枚アルバム作って解散しちゃうバンドって多いんだよ。初期衝動が1枚、2枚とあって、もう1枚作ったら終わっちゃうんだ。そこをfOULは4枚目のアルバム(『アシスタント』)を作った。音楽の歴史を考えると、優れたバンドは5枚目、6枚目くらいから後に残るいいアルバムを作ってるわけ。そういう意味でもスタートラインに立ったんだよ。…と、俺は思う。
大地:オオッ、さすが坂本商店代表!(笑) 勝手にスタートラインに立たされたよ!(笑)
川上:…そう言えば、凄く基本的な質問なんだけど、“砂上の楼閣”って凄くネガティヴな言葉じゃない? そんな言葉を敢えて自分達の企画に付けたのはどうして?
谷口:やっぱりネガティヴなニュアンスから始まったというか…その言葉がパッと浮かんだんですよ。どれだけ自分の立派なスタイルを構築しようが、その時々の流れや社会によってドゥッフワー、何にもありませんでしたーってなってしまうんじゃないの、どうせ俺の人生、みたいな。そういうのがどこかにあるんです。それをむしろ打ち消すためにも、敢えて逆説的にタイトルに付けたんですよね。でもこのタイトルを付けて良かったって今でも思ってますよ。
——そういうネガティヴな発想は基本的に今も変わらないですか?
谷口:たぶん変わらないんですね。それはしょうがないですねぇ。お客様に多くを求めないというのも最初から判っていたことだし、ちょっと飛躍した言い方をすると、fOULを始めた時、僕達としてはある程度悟っていたつもりなんですよ。ライヴの動員、CDの売上げ、我々の知名度、名誉…そういうものすべてを捨ててバンドを始めた。だからこそ“fOUL”というバンド名、だからこそ“砂上の楼閣”なんですよ。ヒットでもない、ホームランでもない、“ファウル”なんです。だから多くを求めてはいけないんです、僕らは人に対して。そんなスタンスだったからこそ、この10年間バンドを維持できてきたのかもしれませんね。
【2004年1月24日/“砂上の楼閣29~ライドオンエレファント”終演後、下北沢SHELTER・楽屋にて】