世界を斜めに見ているような捉えどころのないヴォーカル、聴いているものの身体に絡みつくような重厚なサウンド。12月3日にリリースされた1st Full Album「Hello! My Friends」は2作品目とは思えないほど完成度の高い一枚となった。音楽の嗜好が特に重なるでもなく、それぞれがオリジナリティを持って楽曲を構成 しているのにこの統一感。捉えどころのない彼らに翻弄されながらも、このバンドがいったいどうなっているのかを探るべくインタビューを決行。話題が話題 を呼ぶバンド、髭の断片を垣間見て頂ければこれ幸いなり。(Interview:和田富士子)
持ってきたものに対してのエクスプロージョンがバンドの醍醐味
——自己紹介からお願いします。
須藤寿(Vo.G):ヴォーカルの須藤(すとう)です。
川崎裕利(Dr.):ドラムの川崎です。
宮川智之(Ba.):ベースの宮川です。
斉藤祐樹(G.):ギターの斉藤です。
——では髭の結成についてから伺わせてください。
宮川:元々この2人(宮川・斉藤)が大学のサークルが一緒で先輩・後輩でバンドやろうかって話になって。その時ドラムとヴォーカルは別にいたんですけど、そこからヴォーカルが抜けて須藤が入って。その後ドラムも抜けて須藤の知り合いだったフィリポ(川崎)が入ってきたんです。
——加入にあたって共通の音楽の趣味とかはあったんですか? 音楽の話をしてたとか。
須藤:いや、してないです。
宮川:してないですね。須藤は声が良かったんですよ。歌が上手くて、すごいいい声してるなと思ってて。で、最初に組んでたバンドのヴォーカルが、申し訳ないんだけどあんまり納得のいくヴォーカルじゃなくて。だったら須藤の方がいい声出すよって。
——須藤さんは髭以前にバンド活動等をされていたのですか?
須藤:いや、このバンドが初めて。バンドは一つも組んでなかったんだけど、ギターを弾いて曲だけは書いていたんですね。シンガーソングライターというわけでもなく、別にどこに出て歌うでもなく。ただなんとなく、コピーもせず曲だけは書いてた。
——楽器に触れるきっかけみたいなのがあったと思うんですけど。
須藤:大きなものはなかったですね。
——気がついたら触ってた?
須藤:聞こえはかなりいいですけどね、そういうことだと思いますよ。
——ほんとにそうですか?(苦笑)。私が先に言うからいけない気が。
須藤:そういうところから伝説は生まれてくると思うから、多分そうなんじゃないかな?いや、ホントに理由ないです。
——ギターが欲しいとか思わなかったんですか?
須藤:それは思いましたけどね。“俺もギター弾きたいな”って思わせてくれる友達が近くにいたんですよ。で、ギターにシールとかいっぱい貼って……でも誰に見せるでもなく(笑)。
——1人部屋で。髭の楽曲は須藤さんが作られているんですよね。この捉えどころのない、文学っぽい感じ、でも聴き応えは洋楽な感もありっていうこのニュアンスがすごい気になるのですが。
須藤:洋楽っぽく聴こえるっていうのはよく言われるんですけど、曲を作るときに俺は曲と歌詞を同時に出さない。基本的にメロディを出すときは鼻歌で、そこに日本語を当てていくから韻はものすごく大事にしているタイプ。日本語のごろごろしてる(笑)メロディに全然同調していない歌詞も好きなんだけど、ただ、そういう作り方ができないだけで、始めに適当にしたハミングのじゃまをしない歌詞にはなっていると思う。言葉の選び方もそうだと思うし、狙ってはいないけどクセついていると思う。
——ものすごい複雑なパズルみたいな感じなんですよね、聴いていると。
須藤:歌った瞬間に歌っている人間の答えが出ているよりは、出てないものの方が俺は好きというか。ある程度の信念は踏まえつつ、ルールは自分の中にちゃんとあって、そのルールを外れない程度に直接的でないものがいいなと思っている。直接的であることはいいことだと思うんだけど、具体的に説教臭いのは好きじゃないし。
——今、信念という言葉が出てきたんですが、信念っていうのは自分とバンドで一緒たっだりしますか?
須藤:いや、一緒じゃないと思う。だってバンドはみんなでやっていることだから。俺だけの意見が通ればおもしろいってことじゃ絶対ないと思うし、自分の意見だけが通っていくならソロでやるし。俺が持ってきたものに対して“なんなの?”っていうことに対するエクスプロージョンがバンドの醍醐味だと思うんだ。そのエクスプロージョンがないってことはやる必要はないってことだから、髭は俺を反映しているものとは限らない。少なからず、俺だけを反映しているバンドではないことは間違いないと思う。
——そういうのを受けてメンバーの皆さんは、いかがですか?音を作っていく上での自分の思うところみたいなのはあったりしますか?
宮川:信念っていうとあれだけど、作る上で思っていることは、ぱっと浮かんだものを大切にしつつ、歌をじゃましないように。それなりの色を持って微妙なところで作りたいなと。
斉藤:そうですね、どっかで“これ斉藤っぽいな”っていうのがあればいいかなと。どうせやるんだったらね、自分らしいところがどっかにある感じには。意識はしてないんですけどね。川崎 俺もそうですね、俺っぽいドラムに。意味ないことはしないというか。なんかつまんない答えになっちゃうけど(笑)、シンプルにやっていこうと思う。