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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】メレンゲ(2003年9月号)- やっぱり前を向いていたいなって

やっぱり前を向いていたいなって

2003.09.01

 甘く切なく瑞々しい恋のプラシーボ(=疑似薬)  昨年末にベースのタケシタツヨシが加わり、3ピース(ライヴではサポート・ギターが参加)となったメレンゲ。新作ミニ・アルバム『少女プラシーボ』では、バンド感を前面 に押し出した力のあるサウンドと、クボケンジの描く、心の動きに寄り添うような繊細な歌風景が彼らならではの世界を作り上げている。その新作発売記念となるメレンゲ企画ライヴ〈初恋サンセットvol.2〉が、9月25日ロフトで開催。ライヴに向けた意気込みを聞こうと思ったら、意外に話は男くさい方向へ......。彼らの知られざる(?)魅力をかいま見ることのできるインタビューですよ!(interview:梶原有紀子)

ある種の緊迫感みたいなものの中に“切なさ”は宿る

──メレンゲ企画〈初恋サンセット〉のvol.2が近づいてきましたが、初回に行けなかった人のためにも、vol.1はどんなふうに盛り上がったのか教えて下さい。
 
クボケンジ (vo, g):すごい楽しかったですよ。前回はOO TELESAとHARCOを呼んで、自分らとやったんですけど、GOING UNDER GROUNDの松本(素生)くんが僕らのゲストとして遊びに来てくれて。で、Runt Starのシゲくんも1曲サポートで参加してもらって。そんな感じで、お祭り的に盛り上がれましたね。
 
ヤマザキタケシ (ds)タケシタツヨシ (b, cho)うんうん。 
 
クボ:自分らの企画っていうのであれだけお客さんも入ってくれて、本当に何かすごい感動しましたし、やってて楽しかったですね。僕らにとって初企画ですし、そういう意味でも“自分たちが仕切ってやってるんだ”っていうので気持ちが引き締まったところもあって。これからもずっと続けていけたらなぁって。
 
──出演者ももちろんですけど、ゲストも豪華ですね。メレンゲは、そういうバンド同士の横のつながりが広いんですか?
 
クボ:いや、浅いですよ(笑)。仲のいい人もそんなにいないし。だから友達を全部集めたって感じです。 
 
タケシタ:一回目で全員出ちゃったね(笑)。
 
──それでvol.2となる今回の顔ぶれは、つばきとLUNKHEADとの3マンですけど、今回はどんなライヴになりそうですか?
 
クボ:まだ具体的ではないんですけど、やっぱり、普段のライヴでは見せれないものっていうのをこれから考えていきたいし、やっぱり気合いの入れ方が違うよね。
 
ヤマザキタケシタうん。
 
クボ:うん。自分でもすごい楽しみにしてます(笑)。どのライヴもそうなんですけど、全力の自分らを見せれたらなって思いますし、特別 変わったことができるかどうかは判らないけど、そこで燃え尽きてもいいぐらいのライヴをしたいと思います(キッパリ)。 
 
──おぉ! タケシタさんはいかがです?
 
タケシタ:えーとですね、いつもはできないことができるといいますか……、来てくれるみなさんにもリラックスして頂いて、僕らも楽しんで。こう、“いらっしゃ~い”っていうか。
 
ヤマザキ:えぇ?(苦笑)
 
タケシタ:いや、“おかえり~”みたいな場に。いや、違うな。ちょっと待って下さいね。えーと……。
 
クボ:………………。
 
ヤマザキ:……普段ならここで誰かが手助けするんですけど、(タケシタに向かって)今日はお前ひとりで頑張れ、ってことで。こうやって、ちゃんと自己発言できるように鍛えてるんです(笑)。
 
──じゃ、待ってます(笑)。けど、同じライヴでも、自分たちの企画と、他のバンドのイヴェントに呼ばれて出るのとでは、たとえばどんなところが違います?
 
タケシタ:うーん。自分たちのイヴェントは、やっぱり気楽ですよね。メレンゲを聴きに来てくれてるお客さんもいますし。だからこそ、来てくれた人の期待を裏切らない、みなさんに興奮と感動を与えれられるライヴができたらと思ってます!
 
──あ、今のはさっきの質問に対する回答でもあるわけですね(笑)。さっきヤマザキさんが“自己発言できるように鍛えてる”って言われましたけど、タケシタさんはライヴでもよくMCされてますよね?
 
ヤマザキ:そうやって鍛えてるんです(笑)。僕、他のバンドのライヴを観に行くのが好きなんですけど、自分がドラムだからってドラムだけを観るんじゃなくて、やっぱりライヴだしステージ全体を観るわけじゃないですか? そうした時に、フロントマンがバーンといて、それで後ろにドラムがいてっていうのが好きなんですよ。やっぱりフロントマンに主張して欲しいんですね。だから、僕が「MCやれ」って言われたら余裕でできますけど、それは僕の美学に反するからやりたくないんですよ。
 
タケシタ:なので僕は毎回、谷底に突き落とされてます(笑)。一生懸命這い上がろうとしてるところで。
 
ヤマザキ:それに彼(タケシタ)は一番年下だし。
 
──へぇー。そうだったんですか。
 
ヤマザキ:僕は、そういう精神面のことって重要に考えてて。主張っていっても、ただ言いたいことを言えばいいんじゃなくて、たとえば挨拶とかもそうですけど、人間的な礼儀とかがちゃんとできた上で、本当の意味での主張ができるんじゃないかなって思ってて。クボくんも、こう見えても(笑)内側はすごい男くさいとこもあるし、そういうことも音に表れますしね。だから彼(タケシタ)にも“メレンゲ! 男塾”ってことで(笑)。
 
タケシタ:ハイ。
 
──はぁー……っ!!! CDで音を聴いただけでは判らない、すっごく意外な、ギャップのあるお話なんですけど。
 
ヤマザキ:うん(笑)。でも別にそういう男くさい感じを全面 的にバーンと出したいわけでもないですし。
 
──ええ、ええ。出てませんよね!
 
ヤマザキ:今メレンゲを聴いてくれてる人やライヴに来てくれてる方って女性の方が多いんですけど、これからもっとたくさんの方に聴いてもらいたいって思ってるんですよ。男のリスナーとかも。で、聴いてもらえる音楽をやってるし。クボくんの歌声とか、彼の書く詞の世界観っていろんな人に聴いてもらえる“切なさ”があると思うし。そうした時に、男のリスナーってやっぱ“力強い感じがほしい”みたいなのってあるじゃないですか?
 
──はいはい。判ります。
 
ヤマザキ:でも、“切なさ”って常に緊迫感がつきものっていうか、女の子に告白する時にダラッてしていかないのと同じように(笑)、ある種の緊迫感みたいなものの中に、後で振り返ったら切なさがあるって感じなんじゃないのかなと思うんですね。それって男性にも伝わる切なさだと思うし、メレンゲが表現していきたいものなんですよね。
 
──そうでしたかー。しかし“メレンゲ!  男塾”は意外です(笑)。
 
ヤマザキ:こういう話は結構してるんですけどね。 “思い込み”の持つ力を僕らは信じてる
 
──それはそれは。ところでイヴェントの素敵なタイトル〈初恋サンセット〉はクボさんが考えたんですか?
 
クボ:はい。ライヴに限らずなんですけど、“初恋の気持ち”っていうので、自分らは挑んでいったほうがいいんじゃないかっていうのがあって。常に“最初の一回”っていう気持ちでやっていけたらいいって、そういう気持ちでずっと続けていけたらって思って、そのタイトルを考えたんですけど。
 
──そうだったんですか! さっきの話もそうですが、甘~い切な~い感じのタイトルだと思ってたんですが、意外に硬派な意味があったんですね。
 
クボ:アハハ(笑)。
 
──それと、新作の『少女プラシーボ』ですけど、我が家の辞書には“プラシーボ”の意味が載ってなかったんですぅ。
 
クボ:えっ、そうなんですか?
 
──ハイ。なので、どういう意味なのか教えて下さい。
 
クボ:じゃあ、彼(タケシタ)からどうぞ(笑)。
 
タケシタ:えーと(笑)、これはたとえなんですけど、病院で患者さんに、本当は薬じゃない粉なんだけど、「これはとってもよく効く薬なんですよ」って言って、薬だと思い込ませて飲ませるとする。そうすると、薬じゃないんだけど、本人が薬だと思い込んでるから治っちゃったりすることがあるんですね。そういう疑似薬=プラシーボなんですよ。
 
クボ:思い込む力、みたいな。
 
──へぇー。けどそれに“少女”がくっつくとなると、そんなコトになっちゃうんでしょ?
 
クボ:まぁ、それは自分の曲の中に、絵の中に(少女が)いるっていうのがあって。プラシーボだけだと無機質な感じがするっていうのも自分らの中であって。だったら足したらいいんじゃない?(笑)って。 思い込む力で何かが変わったりするし。“思い込み”の持つ力を信じてるっていうのは僕らの中でもあって。
 
──それって今回のアルバムに限らず、音楽をやること全般に通じることですよね。
 
クボ:はい。そうですね。やっぱり自分らの歌を聴くことで、自分の過去と、それぞれ聴いてくれる人の過去が一瞬でもつながったら面 白いなと思うし、初めて聴いた人が、(歌の中の)ストーリーがいいなって思ってくれたら嬉しいし。そこは聴き手の想像の範囲なんで、正解はないんですけど、でもそれによって、(聴き手が)前向きな気持ちになれたらいいよな、とは思います。“切ない”っていうと、後ろ向きな感じに受け取ることもあるかもしれないけど、そうじゃなくてやっぱり前を向いていたいなって。
 
──判りました。9月25日の〈初恋サンセットvol.2〉、楽しみにしてます!
 
クボ:俺らでしか表現できないことをやりますんで、初めて観る人は、他のバンドでは感じれないものを感じられると思うのでぜひ楽しみにしてて下さい! 
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