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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ロットングラフティー(2003年4月号)- 意味のある偶然が重なって生まれた会心作、ここに誕生!

意味のある偶然が重なって生まれた会心作、ここに誕生!

2003.04.01

あの坂本龍一お墨付きの異色曲

──今回のミニ・アルバムはまさにロットンの音楽性ここに極まる! という感じで、相変わらず濃厚なエキスが凝縮されてますね。
 
NOBUYA:っちゃいました、って感じです。過去最高。集大成ですね。もう頑張りましたもん、ホンマに。
 
NAOKI:こんな濃ゆいの作ってどないすんねん! みたいな(笑)。前作までの根の部分は変わらず、新しい音も鳴ってるみたいな感じで、徐々に広がってるんちゃうかなぁと思います。
 
──一番の目玉はやはり、あの『戦場のメリークリスマス』のテーマ曲を元に作った「悪巧み~Merry Christmas Mr. Lawrence」だと思うんですが。単なるカヴァーでもサンプリングでもない全く新しい感触だし、無理なく『戦メリ』と融合してますね。
 
NOBUYA:もともと僕が教授(坂本龍一)の大ファンで。2年くらい前に集中治療室に放り込まれるような交通 事故を起こしちゃったんですけど、体は凄く元気やったんで、入院中にラジカセを持ち込んだりしてたんです。その時に『戦メリ』とかを聴きながら勝手に別 のメロディを付けたり、ラップを乗せたりして遊んでたんですよ、独りで(笑)。で、“あー、これイケるんちゃうかな”と思って、退院してからそれをスタジオに持って行ったんですよね。もともとあった母体の曲に、その『戦メリ』のカヴァーを乗せ替えてみたんですよ。1回合わせてみたらこれがバッチリ! 教授の音も僕らの音もちゃんと鳴ってて、潰し合ってない。
 
──しかも「カヴァーさせてほしい」という世界各国からのオファーを教授は断っているのに、これはご本人のお墨付きだとか。
 
NOBUYA:らしいですね。“ここまでされたらもうええわ”みたいな感じでオッケーもらえたんちゃうかなと(笑)。ロットン自体がなぜか気に入ってもらえたみたいで、「他の音源も送ってくれ」って言って下さって。
 
──それはもう、ファンとしては最高の喜びですよね。
 
NOBUYA:いやぁもうホンマに、教授のファンとしては一歩抜け出したかなって感じです(笑)。
 
──そんな話題曲以外にも、レゲエっぽい曲からヒップホップ、ストレートなハードコアまで実に多彩 な音楽が1枚に収まっていて、いろんなことが同時に起こるというタイトルに偽りナシですね。
 
NAOKI:そうですね。“SYNCHRONICITY”(共時性)という単語に“主義”っていう言葉を付けて、「意味のある偶然主義なんだぞ」みたいな。このアルバムも意味のある偶然が重なってできました、というか。もともとロットンを始める時も、誰もやってへんようなことをやりたいっていうのが凄いあったんで。あるもん壊していって自分たちで新しく作りたいっちゅうのが常にあって、それに少しずつ近づいていってるなぁ、みたいな感じですね。
 
──Dragon Ashの馬場(育三/IKUZONE)さんとの共同プロデュースはどうでしたか。
 
NAOKI:自分らで客観的に見れなかったところが、馬場さんがいてはることによって凄く広がりましたね。頭ごなしに「ああせえ、こうせえ」とか言うんじゃなくて、僕らが煮詰まってる時にいろんな引き出しから「こんなんあるよ、あんなんあるよ」言うて出してくれる感じで。僕らの手の届かへんカユイとこにも手が届く、みたいな。もう1人のメンバーっちゅうか、“アンちゃん”みたいな感じですね。
 
NOBUYA:“Dragon Ashの馬場育三”っていうんじゃなくて、そこを取っ払った“対人間としての馬場育三”みたいなところに凄い惹かれたっちゅうか。
 
──6曲目の“Ktgi~Monochrome Smell”っていうのは?
 
NAOKI:“京都グラフティー”の頭文字だけ取ったんです。前のアルバムに「075 GRAFFITI」っていう曲があって(“075”は京都の市外局番)、タイトル的には似てるんですけど。歌詞の内容がちょっとストレートすぎるから英語にして。
 
──ジャケットも鮮やかな京都タワーですよね。やっぱり京都をベースに活動する意識やこだわりがありますか?
 
NAOKI:10代の頃に上京してたらそこまで地元意識はなかったと思うんですけど、いろいろあってここまで京都に残って、改めて京都を見直してみると、そこからもらってるパワーとかエネルギーとか凄いなぁ思うて。別 に京都を背負ってるわけじゃないんですけど、「すげーんだぜぇ、京都は」みたいなことを言ってしまいたくなるっていうか。
 
──独特なバンドが多いですよね。そのなかでもロットンは群を抜いて独特だと思いますけど(笑)。
 
NAOKI:今まであったもん壊してますよ(笑)。それが京都なんかなぁ、みたいな。今まで自分が育ってきた京都の町並みと、その時間の流れで俺が立ってて、時間の概念を飛ばされるって言うたらいいんですかね。町並みはどんどん変わってるけどめっちゃ古いもんもちゃんと残しつつ、みたいな。アナログとデジタルの調和というか。
 
NOBUYA:古いお寺の隣に高層ビルが建ってたりとかね。
 
NAOKI:けどそれが馴染んでて当たり前、っちゅうか。
 
NOBUYA:そういうのを音に表したら今のロットンの音楽になったんかな、っていう。でもそれも、偶然。
 
NAOKI:それも“SYNCHRONICITIZM”なんかな。 どこに放り込まれてもロットングラフティー
 
──古いものも新しいものも等しく呑み込む感覚っていう土壌からして違いますよね。
 
NAOKI:そうですね。育ってきたのが京都やったからそんな発想が生まれてきたのかもしれへんし、自分のなかにもともとあったもんなんかもしれへんですけど。
 
NOBUYA:ロットンがミクスチャーとは僕ら思ってないんです。ただ自分らがやりたいことやってるだけで。
 
NAOKI:「ジャンルは何?」って訊かれたら、ベタな言い方ですけど「ロットングラフティーです」って言う感じですよね。
 
──ロットンはいわゆるミクスチャー以上にミクスチャーだと思うし、これだけ音楽性に幅があると、あれもやりたい、これも採り入れたい、と際限なくなるんじゃないですか?
 
NOBUYA:いや、最終的に僕らなりのメロディ、サビがあれば何でもハマるんですよ。そのサビさえ捨てへんかったら、音を聴けば「あ、ロットンや」って判ると思うんです。
 
NAOKI:言うたらサビが軸になってるっちゅうか。ちょっと古くさいサビなんですけどね。でも、「ええもんはええやん!」みたいな。今の子はたまたま知るきっかけがないだけで、10年前でも20年前でも、良い音楽は今でも残ってるし。俺らの音を聴いて懐かしい感じがして、ひと昔前のバンドの音楽を聴き出す子もおるやろうし、そうなったら嬉しいですよね。発掘っちゅうか。
 
──うん。そうやって昔の音楽が聴き継がれるのは理想的なことですよ。
 
NAOKI:繋がってってるっちゅうかね。「好きなものは好きや!」って言いたいんですよ。ヘンに年取って、その時好きやったものを「イヤや」とか言うのも逆に違うなぁ思うて。
 
──ロットンのようにいい意味で雑食性であれば、どんな対バンでも実現可能ですね。
 
NOBUYA:そうなんですよ。昔はヘヴィなポップ・バンドってイメージがあったんで、メロコアのところへ放り込まれたら音がいかついし、ゴリゴリのミクスチャーのところへ突っ込まれたら逆にちょっと弱いし、どうすんねん俺ら? みたいな(笑)。どこでも対バンできるけど孤高の戦士、みたいな。
 
NAOKI:でも、それを壊していくっちゅうのがやっぱオモロイっすよね。だからクラブとかヒップホップとかのイヴェントにも出たいし、ちょっと音響系のバンドのとこにも放り込まれたいし。「どこにおってもロットングラフティーや!」っちゅうのを音で判らせたい。それでジャンルの壁をどんどん壊していって、どんどん繋がっていけたらいい。“ここだけ”っていうのがやっぱりイヤなんですよね。それよりはいろいろ喰うて吐き出したい。
 
NOBUYA:現に今誘われてるイヴェントでも、「やってええんかな?」みたいなとこでもやらせてもらえてるし、対バンを観るのが楽しかったりする。今まで出てきたようなメロコアとかスカコアとかミクスチャーとかジャンルの限られたイヴェントに出てるよりは、全然違うとこに放り込まれるほうが楽しいですよ。
 
NAOKI:異ジャンルの人たちと一緒にやることで、こっちも何かを確実にもらえますからね。
 
──“響攻零戦SOUNDSYSTEM”と題された今回のツアーはかなりの長丁場ですね。
 
NOBUYA:新旧問わず曲をガンガンやっていこうと思ってます。初めて行くとこも何ヵ所かあったりするし、年齢問わず、いろんな人に来てほしいですね。
 
NAOKI:性別問わず、年齢問わずで! 遊びに来て、日頃の溜まってるもんを出してってほしいですよね、一緒に。
 
NOBUYA:僕、同世代の人からカッコイイって言われるのが一番嬉しいんですよ。「どこか懐かしくて、何か凄い好きやねん」っていう。
 
NAOKI:「オマエら、何かダサカッコイイわ」みたいのが嬉しいですね。ダサイんやけどカッコイイみたいな。どっちやねんオマエは! っていう(笑)。
 
──判ります。そういうほうがリアルじゃないですか。
 
NAOKI:そうですね。何かカッコエエだけやったら案外何も残らへんかったりとか。ちょっとモッサイとこも見せつつ、シンドイながらも走り続けてるっていうのが俺はカッコエエなと思うんで。
 
──10年後の姿とかって想像できます?
 
NOBUYA:多分、音楽は絶対やってると思う。ほんで、レピッシュとかニューロティカとか、僕らがファンとして観てきた時代の人たちと対バンさしてもらう状況が今あったりするから…。
 
NAOKI:うん。「若い頃はロットン聴いてて…」なんていうバンドと対バンできたらやっぱ嬉しいですよね。
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