これぞ! HIGHWAY61!!
──1月に発売された『Best of HIGHWAY61』なんですが、まずバンド名がタイトルになってるというところで、何か意図的なものはあったりしたんですか?
トモシロウ:「これがHIGHWAY61ですよ」という感じですかね。これより前に、シングル1枚アルバム1枚出しているんですけど、今回のアルバム1枚で全て集約されています! みたいな。
──今のHIGHWAYがぎっしりつまっていると・・・。
トモシロウ:とは言うもののこれを録ったのが去年の9月なんで、今といってもだいぶ前の話になってしまうんですが・・・。
──アルバムのフライヤーがまたインパクトありますよね。「すごいの出来た」って。手応えは?
鞭:オレなんか、レコーディング終わってもう4ヶ月ぐらい経つんですがかなり聞いてますしね。何度も聞けるアルバムだと思います。たぶん2003年度の1月における僕たちのベストであるアルバムなんじゃないかな。これ以上でも以下でもありません! かっちょいいところもかっちょわるいところも全部ひっくるめてこれが僕たちです! っていう内容にはなっていると思います。
渡辺:僕は心のハードディスクにダウンロードされてるアルバムですね(笑)。
──(笑)ということはみなさん、自身の作品というのはレコーディングが終わってからもけっこう聞かれるほうなんですか?
トモシロウ:前の2作とかオムニバスはほとんど聞かなかったですけど、これは聞いてますね。マスタリング終わるまでに何百回も聞いてるんだけど、終わってからも100回ぐらい聞いたかもしれないし・・・。
鞭:前回の作品までは、後で聞いてみて「何でできなかったんだろう」って思うところがあったんですけど、今回はそれがなかったしね。
トモシロウ:そうだね、その空間と時間の中でやれることは全部やれましたって感じです。
──けっこう長く活動しているバンドだと、ファーストアルバムに自分達の全てが集約されているという言い方をされることがあるんですが、このファーストアルバムに関して何か記念碑的な意識で録られたところはあるんですか?
トモシロウ:レコーディングしている最中は一生懸命やるだけなんで・・・。記念碑という意味では、これが出来上がりさえすれば、今死んじゃっても悔いはないというものにしようとは思いましたね。でも、それは毎回そう思うし、なんか可能性を残しつつやるっていう余裕はまだないですからね。このアルバムに魂ささげてますよ。
鞭:アルバムが発売されて何人かの人に、1回プレイボタンを押すと最後まで聞き通 さないと動けないっていうことを言われたんですよ。そういうものであったってのがすごい嬉しいね。
トモシロウ:そうだね。最近パンクミュージックもだんだんBGM化してきているじゃないですか。僕らの曲も最終的に心地良いものであれば、BGM感覚で聞いてくれてもいいと思うんです。どんな種類の心地よさなのかは受け取る人によって違うと思うんですけどね。スピード感を楽しんでくれるのもいいし、詩を楽しんでくれてもいいじゃないですか。たとえば、このアルバムの全部の曲に“僕”という人間が存在するんですけど、その“僕”は同じ人なのか、それとも全然違う人なのか、自分の共感できる“僕”はどの人なんだろう、なんて聴き方をしてみるのもオシャレかと思いますよ。僕、堀井与志郎が歌っているんだけど、歌うときはその曲の人(僕)になってしまってますし。いろんな“僕”になれたなぁって。
──スピード感というところで、レコーディングはライブの勢いをそのままアルバムに・・・って感じでした?
トモシロウ:自分達に勢いがあるかどうかはわからないですが、ライブでやってることをそのままやりました。だって、結局は人が何で魂が動かされるかと言えば、人の魂なのではないかと。だから人間というものがそのままの形でおさめられればいいなと。僕らが音楽をやるということはライブハウスでライブをやるという感覚なんですよ。だから、レコーディングでもほとんど機械を使って音をたしたりとかしてないです。
──ところで、このアルバムではメンバーそれぞれが曲を作られていますが・・・。
マサル:僕だけ書いてないです(ポツリ)。
トモシロウ:書いたんだけど一次審査に引っかかってしまってボツになっちゃったんです。
マサル:このバンドには一次審査も二次審査もあるんですよ。
鞭:その審査ってのがあるとするならば、リアリティーがあるかどうかってとこですね。オレが書いた曲でもトモシロウくんにとってリアリティーがあるから歌えるわけで、ってことは聞く人にとってもリアリティーがあるから響くわけじゃないですか。そういうキツイ審査があるんじゃないかなと思います。マサルの歌はトモシロウ君のリアリティーには合わなかったと・・・(笑)。
トモシロウ:いや~ね。彼自体にはすごく感じたんだけど、それが持ってるリアリティーが僕が歌うことやバンドで演奏して同じぐらいのリアリティーが表現できるかと言えば今は無理だろうと思ったわけなんです。どんな時代のどんな場所でも同じように輝いているもの(曲)であってほしいと思うんだけれども、登場するときのタイミングを捕まえるのは作り手の作業だったりするわけですよね。それが曲を作ったり発表する時なんだろうなって思うんですよ。
──演奏する人と聞く人とか役割があって・・・。
トモシロウ:うーん、どうだろう。そこら辺にいるヤツよりは自分がやったほうがいいと思うんですよ。別 に自分が優れた人間であるということをいっているのではなくて、できる人がやればいいんじゃないかなぁっていう話です。僕はギターを弾くことが出来て、幸いにも声を出すことができるので。
鞭:もしオレが聞くだけで癒されたり救われたりエネルギーを放出している人を見るだけで生きていけるって思えたなら、バンドをやってなかったと思うんですよ。でも、それだけでは足りないというか放出していないとツライというか・・・。わりとHIGHWAY61ってそういう人間の集まりで、エネルギーの吹き溜まりそうな生活を送りすぎなので、これは放出していないと生き残れないなって。
──そういわれてみると、ライブの放電具合も凄まじいですもんね。放出しまくって足を骨折された方もいるとか・・・?
トモシロウ:いましたね~。
──そういえば、HIGHWAY61の曲ってほとんどが日本詩なんですが、何かこだわりとかってあったりするんですか?
トモシロウ:特にこだわってはいないんですよね。日本人にはやっぱ日本語のほうが伝えやすいですからね。
鞭:ものすごい演奏力と歌声があったら何語でも伝わるんだろうけど、実はまだうちはそこまでいってないからだと思います。
──詩を読むとすごくインパクトがあるなと思ったんですよ。M-2の『レコード(45rpm)』もそうですし、あととても気になったのが渡辺さんが作詞作曲しているM-6の『センチメンタル・ジャーニー』なんですが、このタイトルを聞くとどうしても松本伊代さんが浮かんできます。
トモシロウ:でも、実はあれ以外にもいっぱいあるんですよ。
渡辺:ジャズのスタンダードナンバー、ドリス・デイの『センチメンタル・ジャーニー』をリンゴ・スターもカバーしてるしね。日本で言えば松本伊代だけど。
トモシロウ:25歳以上の日本人にとったらそうだよね。50歳以上の人はドリス・デイになるけど。でも、そしたら15歳ぐらいの人には、『センチメンタル・ジャーニー』って言ったらHIGHWAY61の曲になるのかな~。なるといいね。
渡辺:うん、そうだね。でも、同じ言葉でも意味が全然違うんですよ。僕の『センチメンタル・ジャーニー』は、欲しいものが手には入らなくてその気持ちを素直に出したらそうなったんですよ。
鞭:欲しいものってな~に?
渡辺:感情ですね。こういう気持ちでいたかったのにっていう。
──全体的にもこのアルバムのノリのいい曲が多いので、ライブとかでもだいぶ盛り上がると思うんですけど、みなさんはモッシュとかってどう考えてますか?
トモシロウ:別に好きなようにしてくれたらいいと思いますよ。
マサル:後ろのほうで体育座りして見てくれていてもいいですしね。
鞭:ん!? 「なんで後ろの方動かねえんだよ~!!」って言ってるじゃん。 (全員爆笑)
マサル:いや・・・オレが言うと臭くなるけど言わせて。体育座りしててもいいの。心の中が踊ってれば! あっ! やっぱこんなこと言っちゃダメだ・・・。
トモシロウ:ちょっと赤くなってるよ(笑)。でも、全然好きなようにやってくれれば俺らはいいと思いますね。モッシュってお客さんのスタイルになってる気がするんですよ。特にパンク系のライブはそういうふうにやるもんだみたいな。それもひとつの楽しみ方だと思うからいいと思うんだけど、そういう楽しみ方は好きじゃないなって思う人達も心地よく見れる場所であればいいなと。そこで楽しかったと思ってくれれば、それでいいと思うんですよ。まわりがどんな聴き方をしていても、自分が一番楽しめるように聞いたり踊ったりしたてほしいなと。
──確かにヘルシー傾向にありますよね。
トモシロウ:そうですよね。スポーツパンクみたいな。
──パンクって言葉は便利なものじゃないですか。それを一緒にされたらかなわないってところもあるんじゃないかなと。
トモシロウ:そうですね。たくさんパンクバンドとかがいる中で、たったひとつを選ぶ事って無理だと思うんですよ。何らかのしきりを設けてもらって、入り口まで誘導してもらって入る人がほとんどだと思うし、そうじゃなきゃ選べないですよね。だからそういう意味で僕らもパンクというくくりに入れられるのはしょうがないですね。だけどパンクロックとか、何がロックンロールなんだよ! ってところをその人が考え始めた時、負けない自信はあるからその時点で判断してくれればいいかなと。
──最後に『COME ON IN MY KITCHEN TOUR~外は雨だぜ、中に入れよ。~』ツアーについてお聞きします。まずこのタイトルは・・・。
鞭:これはロバート・ジョンソンの歌からとりました。『Come On In My Kitchen』ってありまして、『外は雨だぜ、中に入れよ。』は歌の中でこういうこと言ってるんでこれもかっちょいいなと。
──今回2ヶ月近くに及ぶツアーなんですが、普段もこんなに長かったでした?
トモシロウ:今までは誘われたらどこでも行ってたからけっこうめちゃくちゃなツアーだったんですよ。だから、ホントの意味でのツアーはこれが初めてですね。
渡辺:そうですね。こうやってカッチリ決まっているのは初めてなんですごく楽しみです。
──そのツアーファイナルがロフトで行われますが意気込みとかはあります?
トモシロウ:そうですね。ロフトのライブはまだまだ先のことなんで、今は次にあるライブのことしか考えられないですね。でも、ケガとかなくやれるといいなと思います。ライブハウスの人に行きます! って約束して、楽しみに待っていてくれてる人達がいるわけですから、そこにたどり着いて歌うことができたらあとは一生懸命やりたいです。
鞭:僕はツアーファイナルに関してなんですけど、HIGHWAY61ってパンクを押しつけるのではなくて、音楽を楽しんで下さい! ってことをけっこう考えているバンドなんですよ。踊らせるってことに一番興味があったりしますね。だからロフトの時はスカシーンにいる側のDOBERMANやマグネットコーティングを対バンに迎えているんですが、向こうもパンクシーンの人とやってみたいというので、シーンの融合があったらいいなと思いますね。音楽を共有していてお酒を楽しめていろんなやつらがいて、いろんな音楽があるっていうすごくいいイベントになるんじゃないかな。ツアーファイナルでもあるからうちらがどういう成長しているのかも見物だと思ういますし。
マサル:そうですね~。僕は争いが多いんで、争いを少なくしたいですね。
──ん!?
トモシロウ:味濃いめ、油多め、ケンカ多めみたいな。
マサル:ケンカをやる回数を減らしてツアーを回りたいなと。
(全員苦笑)
マサル:音楽のなかだけでケンカしましょうってことです。はい。