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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】KIWIROLL(2003年1月号)- KIWIROLL 心の琴線と涙腺を刺激する迷子たちの「うた」

KIWIROLL 心の琴線と涙腺を刺激する迷子たちの「うた」

2003.01.01

噂はもう聞いているだろう。ねじれた轟音と絶叫を轟かせながら、無上のメロディが心の琴線と涙腺を刺激するバンド、それがフロム札幌のキウイロールだ。ブラッドサースティ・ブッチャーズからカウパァズまで続く札幌パンクの血を受け継ぎつつも、誰でもなくどこにもない「うた」のバンドに成長しつつある彼らの2002年は、上京することから始まり、セルフ・タイトルの4曲入りマキシを発表することで無事終了した。そして新年には堂々の自主企画〈迷子の晩餐 vol.6〉も控えている。まだまだ迷子、それでも確実に何かが変わりつつある彼らの現在を直撃した。(interview:石井恵梨子)

特定の層だけに甘んじたくないんです

──昨年は札幌から上京して、環境もガラッと変わり、いわゆる激動の一年でしたよね。

エビナ: 激動でしたねぇ。全然地上に上がってこないところで、地下で激動してましたよ(笑)。

ナオキ:とりあえず生活がね。今まで実家だったから、そのへんはみんな大変でしたよね。

エビナ:あったねぇ。あとライヴを増やして、月に4~5回やったぶん、キツかったところもあって。

──月に4~5回は、増えたことになるんですか?

エビナ:そうですね。札幌だったら月1回とか、東京には3ヶ月に1回来るって感じで。たいしてやってなかったんですよ。

オグラ:練習もするようになったからね。

エビナ:倍になったからね。

──へぇ、すごい。

エビナ:いや、週1から週2になったっていう。

──………けっこうマイペースだったんですね。

エビナ:だからそういう意味では、けっこう適当だったんだよね? それが良くも悪くも作用してるっていうか。今の練習量 も少ないんでしょうけど、俺らにとってはすごい多いんですよね。だから、違いはありますよね

サンチェ:そうっすね。上京した当初はツアー感覚で東京にいた気がするんですけど、それがライヴの本数も増えてきて。次第にライヴに対する完成度というか、より良いものを目指そうって、それを見るようになったのが大きいと思います。

──ライヴに対する考えみたいなものが、多少なりとも変わってきたということでしょうか?

エビナ:自分は変わりましたね。選曲から何から考えるようになったし。歌う、その声も一年前とは違ってると思うんですよ。けっこう(喉を)潰して歌ってて、まぁ今もそこまで変わんないんですけど、なんかやっぱ……旋律がある曲はちゃんと歌わないとダメだから最初のほうに持ってきたり。そういう、ライヴをトータルで考えるようにはなりましたね。

ナオキ:基本的な意識はそこまで変わらないんですけどね。こっちに来ていろいろなバンドを観る機会も増えたし、一緒にやるバンドの影響もありますね。

エビナ:今年はいろいろ挑戦してみたかったんですよ。あるじゃないですか。ハードコア・パンクだのギター・ポップだのメジャーっぽい感じだとかで世界が分かれていくの。そういう世界を頭ごなしに「じゃあやらない」って言うんじゃなくて、一回とりあえずやってみて、ダメだったらやめようって感じでやってたんですよ。

──畑違いのバンドとやってみると、どういうリアクションが返ってくるんでしょうね。

サンチェ:その時々によって違うんですけど……中にはまぁ……しょっぱいというか(苦笑)。

エビナ:しょっぱいねぇ! しょっぱいの、多い(笑)。

──いい意味で、聴く人を選ぶんだと思いますけどね。不特定多数がそれなりに楽しんで、適当に忘れてしまうような、そういうユルい世界じゃないですから。

エビナ:……そういうところに甘んじたくないんですよ。ホントは全員に伝えていきたいんですけど、どうしても伝わんない時はあって。それは自分らの力量 のなさもあると思うんですけどね。ただ、しょっぱい時は……多かったなぁ(笑)。客と温度差がありすぎるっていうか。

──想像できます(笑)。あれだけの熱量で、ステージでは何も見えてないんじゃないかみたいなテンションだし。だからこそ、今の「ホントは全員に伝えていきたい」っていう発言、けっこう意外なんですけど。

エビナ:あぁ、いや、伝えたいですよ。自分を伝えたいっていうか、バンドの全体の世界。それが伝わればいいと思うんですよ。それができれば一番いい。演奏が一番上手とかはあんまり意味ないと思ってて、でも、俺らしかできないことをやりたいし、やってるつもりだし、それが伝わればいいんじゃないかなーって。

サンチェ:実際、聴いてくれる人を無視したことは一度もないんですけどね。

エビナ:うん、だったらこんな曲はやってないし。曲がまず生きてるから、そこはエンターテインメントじゃないけど……そういう曲をやってるつもりだから。

──でも聴き手は娯楽性というよりは、むしろ孤独とか痛みを受け取ってるんだと思いますよ?

エビナ:あぁー、そのへんはちょっと、最近打破したいんですけどね。……もっとなんか、違う感情っていうか、そういうものを越えたところを表現したいんですけど。だんだん、完成度っていうか、自分らの行きたいところまでは行けてる気はしてるんですよ。

──ステージを転げ落ちて客席の床でも転げ回ってるようなエビナさんが、そんなことを考えているとは正直思ってなかったです(笑)。

エビナ:そう言われるとショックだな(笑)。なんて言うんだろう……別にわざと転げたりしてるわけじゃなくて。

──ええ、もちろんそれはわかります。

エビナ:……なんだろ? ……だんだん矛盾してくるんだけど(笑)。たぶん、まだいろんなものを持とうとしてる段階なのかもしれないですね。まだ模索してる。

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