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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】長谷川裕倫(あぶらだこ)×増子直純(怒髪天)(2002年2月号) - 昭和77年如月スペシャル師弟対談! ジャンルを超越し、清濁を併せ呑み込 邁進する音の新世界

昭和77年如月スペシャル師弟対談! ジャンルを超越し、清濁を併せ呑み込 邁進する音の新世界

2002.01.16

メイン・ストリートではないカウンター・カルチャーとしてのパンク

──増子さんがあぶらだこを生で観たのはいつ頃なんですか?

増子:〈極東~〉の時。やっと観れたの。それまでは自分のライヴと当たったりして何だかんだで観れなかった。昔の音源がCD化になった時、ライヴをまだやってるのを知って、シミと「絶対行こうぜ!」って話になって。

長谷川:俺が怒髪天を初めて観たのは、〈極東~〉でやった時で。増子さんが、PAの上で歌っててね。

増子:ははははは。

長谷川:「ああ、こういう音楽表現もあんのかな」と思ってね。最初、その前から「(PAの上で)歌う」って言ってたんですよね。「まさか歌わないだろう」って俺は思ってたんですけど、本当に歌ったからね。ビックリしちゃってね。

増子:「行けるとこまで行ってみます」って。シールドが届く限り。

長谷川:最初、絶対やんないと思ってたんだよね。それを本当にやったから、「こういう表現もあったんだなぁ」と思ってビックリしちゃってねぇ。

増子:じゃあ今度裕倫さんも、客席の真ん中にマイク立てて歌ってもらって(笑)。観てぇ! お客さんが笑えない状況になってるとこ観たいよね(笑)。裕倫さんってやっぱり迫力あるもんね。背高いしね、スラッとしてるし。ダンディな感じ。裕倫さんは立たせたらカッコイイからねぇ。

長谷川:いやー、俺なんかダッサイですよ、あんなの。古臭いですよ、あんなの。自分のライヴ映像とか、見れないもん、恥ずかしくて。

増子:それはね、俺も見れないっすよ。

長谷川:もうとにかくダサイって感じで…。恥ずかしくて見れないですよ。

増子:いや、あれはカッコイイですよ。肝据わってて。男!っちゅう感じで。…こんなお互い向き合って褒め合ってどうすんだ? っちゅう話あるけどね(笑)。

──裕倫さんのヴォーカル・スタイルは、初めから直立不動ではなかったんですよね?

長谷川:違いましたね。昔は結構、マイク・スタンド持って歌ってました。

増子:あれもね、真似しましたよ。東京からダビングされてきた、裏ビデオみたいになったビデオを何回も見てね、「ああ、こうやって動いてるんだな」って。ダビングされすぎちゃって、(画面が)真っ白なの。何映ってるか判らない。あれ、メンバー一人くらい変わってても判らないよ(笑)。

──怒髪天があぶらだこから直接影響を受けてる部分はどんなところでしょう?

増子:コーラスかな。合いの手とかね。あとね、精神的な部分が大きいね。非常にシニカルなところとか。そこは一番シビレたところだから。日本人でいて良かったなと思うことのひとつだね、あの歌詞が判るのが。俺らがメジャーに行ってどうこうってなった時に、自分のなかで最初の指針になったバンドなんですよ、あぶらだこは。あぶらだこがメジャーから出した最初のアルバムを聴いて、それまではメジャーに行くとダメになるって風潮だったけど、違うんだなと。ちゃんとできるんだな、と思った。それは、メジャーへ行って変わってしまった本人が弱いんだなって。確固たるものがあってメジャーに行くんであれば、今まで以上のことができるんだぞ、って如実に伝わってきた。まぁ、今の時代はメジャーだのインディーだのって余り関係ないけどね。でも、あぶらだこはその布石を作った先駆者だから。木のジャケのメジャー盤が出た時、いいスタジオで録って、ドラムの音とかがいい音で聴けるっていうのがリスナーとして単純に嬉しかった。「これだ!」って思った。

──本当に、あぶらだこみたいなバンドって他にいませんよね。

増子:ない! 世界でもないよ。しかも恐ろしく支持されてるからね。昨日もWhat's Love?っていう歌謡スカ・バンドの子と話してて、凄いあぶらだこが好きだって。意外なところにまで支持されてるよ。支持されないわけないもんね。

長谷川:いやー、本当に、有り難いです。

増子:ははははは。裕倫さんに「有り難い」なんて言われると(笑)。やっぱりね、昔からやってるバンドって数はいるけど、ちゃんと進化してて、長くやってる意味のあるのってなかなかいないでしょ? 新しいアルバム聴いて、「あららららら!」って新しいページめくった衝撃に震えるようなね。それがあぶらだこにはある。本当にある! これね、バンドやってる人ならなおさら判ると思うんだけど、これがいかに凄いかってことなんだよね。俺らもそうなんだけど、音楽的には決してパンク・ロックというジャンルじゃない。だけど「パンクって何か?」っちゅうと、メイン・ストリートじゃないところの、カウンター・カルチャーであるっていうのがパンクなんだよ。だとすると、あぶらだこはそこを通って、様式美と全く反対のところに行くところがやっぱり凄い。

──確かにあぶらだこも怒髪天も、単純なパンク・ロックとは違いますもんね。

増子:そう。パンク・ロックといえば8ビートで、ドゥタドゥタドゥタドゥタ…っていうのがパンクかっていったら、それは昔のメタルと一緒。それは様式美だと思う。今あぶらだこが好きっていう人は、俺から見て賢いっていうか、あらゆる物事をきちんと冷静に判断できた上であぶらだこに熱狂する人が多いでしょ? それってスンゴイと思う。非常に希有。

「難解だ」って言われること自体が難解だ!

──今では裕倫さんのご自宅に押し掛けてお付き合いをできるようにまでなって。

増子:本当に有り難い。音楽が好きっていうのはもちろん大前提としてあるけど、裕倫さん自身が好きなんだよ。人間的に凄く面白くて、非常に魅力がある。この間ね、酔っぱらった時に話したことだから裕倫さんは覚えてないかもしれないけど…。

長谷川:全く覚えてないですね。

増子:「曲を作っていく上で何をすべきか?」ってことで、「曲を聴いたお客さんに衝撃を与えたりとか、ビックリさせることが音楽の目的ではない」と。「いい曲を作ることの境界の違いはそれぞれあると思うけど、衝撃を与えるとかショッキングであるってことに重きを置いて曲を作るべきではない」って話をして。ホンットその通り! 非常に勉強になった。かなり酔っぱらってたけど(笑)。ちゃんとメモしとこうかなと思ったけど、手がもう震えちゃって(笑)。

──裕倫さんは酔うとどんな感じになるんですか?

長谷川:酒癖、ホント悪いんですよ。

増子:いやいや、裕倫さんは酒癖悪くないって。

長谷川:酒呑んだら、夜とか翌日はもう凄い苛まれてます。

増子:裕倫さんと呑んでて、ヤだなって思ったこと一回もないもん。ホンット面白いから。でもね、裕倫さんがどのくらい面白いかは雑誌とかインタビューでは絶対言わない! それは本人と友達になった俺の特権だから! もしこれを読んでる人でその話を聞きたいなら、裕倫さんと仲良くなるしかない(笑)。裕倫さんと呑みながら話してると、あぶらだこの歌詞にシニカルな部分やちょっとコミカルな部分とかが何で出てくるのかがよく判る。裕倫さんそのまんま。

──あぶらだこって「難解だ」とかよく言われますけど、裕倫さんの人柄がそのまま出てるだけなんですね。

増子:そう。裕倫さんがこの間言ってたけど、「歌詞や曲が『難解だ』と言われるのは不本意だ」と。「難解なつもりで作ってないし、自分をそのまま出してるだけだから、これが難解だったら、『難解だ』って言われること自体が難解だ」って。なるほどな、と思ったね。

長谷川:…生意気なこと言って、スミマセン!

増子:ははははは。いやでもね、受け取り側の音楽に向かう姿勢が出来てないとあぶらだこは聴けない。「理解できないものは嫌い」っていう浅はかな器しかない奴には聴けないと思う。裕倫さんって音楽に対して凄い純粋だからね。今まで会ったなかで誰よりも純粋だと思う。

──あぶらだこの曲の構成って凄く複雑だから、物凄い練習量だと思うんですけど。

増子:いやもう凄いでしょ。あの構成にも意味がちゃんと見えるっていうか、必要性がある上での複雑さっていうか。「難解に聴かせてやろう」って作ったものはすぐ判るからね。必然性の上でああなってる。それが凄いんだよね。俺は音楽に関してはそんなに詳しくないけど、あぶらだこにはやっぱり考えさせられる、感じ入るところがたくさんあるから。

──あぶらだこは今、ワンマンに向けてリハを詰めてる状況ですか?

長谷川:はい。練習ですよね。週一でやってます。

──今度のワンマンは昔の曲も結構やりますか?

長谷川:いえ、しません、そんなに。

──新曲はどうですか?

長谷川:新曲もそんなにやんないですね。

増子:「新曲やるよ!」って言っておいたほうがいいんじゃないですか?

長谷川:いや、やんないから。あ、やるか、ちょっとは。

増子:あぶらだこのワンマンの日、俺ら名古屋でツアー初日なんですよね。余りにもショックでね。NAHTとMOGA THE \5とやるんだけど、もうね、セイキ君(NAHT)と2人で首の骨折れそうだったもん。ガァク~って。知ってれば絶ッ対ずらしたのに。だってワンマンでしょ? 「これ観ないでどうすんのよ!?」って感じでしょ? じゃ、この日の名古屋はヴォーカルなし、ってことで(笑)。NAHTもね(笑)。あ、シミもいないから(笑)。

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