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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】長谷川裕倫(あぶらだこ)×増子直純(怒髪天)(2002年2月号) - 昭和77年如月スペシャル師弟対談! ジャンルを超越し、清濁を併せ呑み込 邁進する音の新世界

昭和77年如月スペシャル師弟対談! ジャンルを超越し、清濁を併せ呑み込 邁進する音の新世界

2002.01.16

 パンクという枠組みに寄り掛かることなく、常に既存の概念をブッ壊して前へ前へと突き進み、長きにわたり特異な存在感を放ち続ける2つのバンド──3月に待望のワンマンを控えるあぶらだこと、今年も精力的にライヴ活動を展開する怒髪天。あぶらだこを「アイドル!」と公言してはばからない怒髪天の増子直純が、敬愛する長谷川裕倫とご対面! 18年越しのあぶらだこへの想いの丈を熱く語る増子兄ィに対し、徹頭徹尾低姿勢でひたすら恐縮しまくる裕倫さん。当代きっての両ヴォーカリストによる含蓄ある至言を聞けるなんざぁ、こいつは春から縁起がいいや![text:椎名宗之]

怒髪天を観て「取り残されたのは僕らだった」って…

──あぶらだこのライヴのある所には必ずその姿を目撃されてる増子さんですが(笑)、知らないファンもいると思うので、増子さんがいかにあぶらだこから影響を受けているか、まずその辺りから訊かせて下さい。

増子:そりゃあもう、計り知れないね。アイドルだからね。

──一番最初にあぶらだこを聴いたのはいつ頃ですか。

増子:高校生かな。ソノシートのやつ。ウチのメンバー4人中2人…俺とシミ(清水泰次/B)だけど、それぞれにあぶらだこのコピー・バンドをやってたくらいだからね。なかなかいないよ? 正味な話。

──シミさんが怒髪天加入前にやってたゼラチンっていうバンドが、もろにあぶらだこから影響を受けてるバンドだったそうですが。

増子:すっごい、もろ! 物凄い影響受けてたよ。シミなんか、ベースなのにステージで一番前に出て、裕倫さん気取りだったから。しかもあんまり弾いてないし(笑)。シミを怒髪天のメンバーに入れるって時に、その基準のなかに「あぶらだこが好き」っていうのはかなり大きかったから。

──割と重要なポイントだったんですね。

増子:“割と”っちゅうか“かなり”重要。やっぱり好きなものの根っこが一緒じゃないと一緒にできないから。

──増子さんがあぶらだこのコピーをやってたのは、怒髪天の前のバンドですか?

増子:そうね。凄いよ、もう。頭もガッツリてっぺんだけ残してね、顔も白塗りしたし。札幌にいる頃って写真がなかなか届いてこないでしょ? 雑誌の記事とかが。で、何かで写真を見た時に、印刷の状態が悪くて何着てるか判らないんだよ。だから似たようなものを探して着るっていうさ。

──妄想ですね(笑)。

増子:そ、妄想! 「札幌であぶらだこといえば俺でしょう!」っていうくらい。札幌はね、意外と情報は早かったんだけど、映像と絵が見れないっていうのがあって。音源も、1枚入ってきても、その次のがなかなか入ってこないとかさ。高校の時、車高を落とした族車で、カーステであぶらだこをガンガンかけて札幌の大通公園で流してたから(笑)。友達と2人、モヒカンでね。頭おかしい(笑)。当時だったらディスコとかかけるような時代に、ガッツリあぶらだこですから! 窓全開で。学校の校内放送でもガンガンかけましたよ。「これは聴いてもらわないとダメだ!」と思ったもん。あれによってね、俺の人生こんなふうになってしまったから。もう裕倫さんに責任取ってもらわないと(笑)。

長谷川:(照れ笑)

──裕倫さんは以前から怒髪天はご存知でしたか?

長谷川:えーと、あのー、『極東最前線』のアルバム出ましたよね? あれで初めて知ったんですけど。凄くいいなと思いました。

増子:裕倫さんに褒められると恥ずかしいな。「思いました」なんて言われると恥ずかしい(笑)。

長谷川:怒髪天のアルバムは大体聴いてます。あの、最近出たのはかなり…。

増子:ちゃんと聴いてくれてるなんてねぇ…。去年は初めてライヴでも〈スペシャ列伝〉で共演できて。エッグサイトでやったやつ。もう、17年来の夢だったから…。

長谷川:怒髪天のアルバムで「サンセット・マン」っていう曲があるんですけど…あの曲が凄い僕好きなんですよね。

増子:や~褒めてもらっちゃって…。凄く嬉しいね。

長谷川:歌詞も、曲も、自然な感じがして…凄く勉強になりました。

増子:いやいや~。

長谷川:あと、この間ワンマンで、ON AIR WESTでやったですよね。あそこで観た時も、あの曲ちょっと静かな曲なんですけど、何か振りを付けて歌っておられて、それが凄い「あ~、いいな」って思って。やっぱり怒髪天ってバンドはこういうのかなと思って…。その前に去年のシェルターで一回観たんですけど、その時と全然、バンドから出る覇気っていうのがね、違うんですよ。…で、何かやっぱり、「取り残されたのは僕らだった」って感じがして…。

増子:そんなことないですよ!(笑) 何を言ってんですか!(笑)

長谷川:いや、本当に。本当に凄い、良かったですよ。

増子:バンドやってて、裕倫さんに褒められるとは思ってもなかったよね。非常に嬉しい! 特に裕倫さんは音楽に対して凄いピュアな人だから、そういう人に褒められるのは本当に嬉しいし、照れくさいよね。

──また「サンセット・マン」は増子さんご自身にとっても非常に思い入れのある歌ですよね。

増子:そうね。あれは活動停止の時に作った歌だから。メンバーと自分を取り巻いてた状態を歌詞に込めた歌だから。

長谷川:何かああいう曲って、よく切ないとかって感じるじゃないですか。そういうのは俺は感じないんだよね。凄い何か前向きな感じがしてね。凄い新鮮な感じがしました。あと、「愛の嵐」も好きですね。

増子:褒められると何て言えばいいのか…。裕倫さんと知り会えたのは、東京出てきて良かったと思う大きなことのひとつだね。

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