演劇とコントを行き来する俳優・山脇唯が、今、ゆっくり話したいゲストと対談する企画「2SEE MORE」。撮影は新進気鋭の写真家PANORAMA FAMILY。
令和最初の2SEE MOREはピスタチオ伊地知さんがゲスト。2019年8月22日より始まる舞台『No.2』での共演を控え、熱い演技論を交わすかと思いきや、伊地知さんのホスト経験から生まれた恋愛アドバイスに一同膝打ちまくりの対談となりました。撮影では、よどみなくポージングを繰り出してはPANORAMA FAMILYを唸らせた伊地知さんの底知れぬポテンシャルをお楽しみください。(撮影/PANORAMA FAMILY 文・構成/山脇唯)
最初はマジで嫌で、断ったんですよ。
伊地知:お願いします、どうも~。
山脇:『わりと普通のことを聞いていく』っていう企画です。
伊地知:みんなボケてます? 真面目に答えてます?
山脇:ずっとボケてたのはハリウッドザコシショウさんだけです(2SEE MORE#3参照)。あとは皆さん真面目に。まず……8月、神保町花月で初めて共演することになって。
伊地知:よろしくお願いします。
山脇:この前のプレ稽古はどうでしたか? 実際に早稲田大学の学生劇団の稽古場に行ってみて。
伊地知:走ったりとか、肉体的なのが多かったから、部活やってる感じでしたね。
山脇:『演劇』をやる、ってなって……どんな気持ちですか?
伊地知:最初はマジで嫌で、断ったんですよ。
山脇:ええ!
伊地知:演技やだって言って。でも相方がやりたいって言うから、話し合って。ぶっちゃけた話、稽古時間めっちゃあるし本番短いし「いいだろ今さら演劇やらなくて。今までやってなかったんだし」とか思ってたんですけど、やったらやったで、今はちょっと楽しみです。
山脇:おお。
伊地知:今は「やだな」って気持ちはないです。俺、嫌だったら嫌だって正直に言うんで。
山脇:一番最初のプレ稽古の日、エレベーターで一緒になりましたよね。あのとき「嫌だな~」って状態だったんですか?
伊地知:最初は嫌ですよ、演技なんかやったことないですし、できないって思ってるから。芸人しかいない舞台だったらいいですけど、役者さんたちの前で、あきらかに自分が「できない」ってわかってるから嫌でした。
山脇:私、今回ピスタチオさんとご一緒するっていうので、懐かしの白目漫才を見返してみたんですけど……
伊地知:やめて、懐かしいっていうの(笑)。今もやってますからね。
山脇:ごめんなさい(笑)。でも、改めてみると、ちゃんとタイミング合わせなきゃいけないし、これはしっかり稽古しないとできない漫才だぞ、って。
伊地知:そんなことないですよ。感情をこめなくていいんで、台本さえ覚えれば、あんまり稽古いらないというか。
山脇:でも、前向いたまんま2人で声を合わせたりとか。
伊地知:まあ、でも間とかはコンビで暗黙のやつがあるんで。喋る量でいったら普通のしゃべくり漫才の半分もないんじゃないですか。2,3回やっちゃえばできますよ。
山脇:実はすごくちゃんとしてるって思いました。
伊地知:適当ですよ。
山脇:またまた!
僕ら、ずっとピスタチオなんで。
伊地知:白目漫才はまったく感情をいれないから、演技で感情をいれるのが慣れてないんで難しくて。コント師はやっぱうまいじゃないですか。
山脇:コントは演技しますしね。
伊地知:コント師は、ヤンキーもやればサラリーマンもやる、人殺しの役もやる……色々やるじゃないですか。僕ら、ずっとピスタチオなんで。
山脇:はい。
伊地知:漫才師でも、コント漫才で怒ったり泣いたりする人たちもいますけど、俺らはずっと一緒だから。
伊地知:最初の頃の稽古で、シェイクスピアやったじゃないですか。
山脇:『ロミオとジュリエット』を軽くやってみる、みたいな稽古しましたね。
伊地知:俺からしたら、みんな演技すごくて。すげえ、本格的だなって思っちゃって。「やべえな~」って作・演出の竜史さんに言ったら「あんなの全然みんなふざけてますよ」っていわれて。まじか~って。
山脇:あれはふざけてました。今なら何やっても怒られないかなーと思って。これからが怖いんですよ。
伊地知:竜史さん、ガチなんだもん。熱いんだもん。熱いの嫌いじゃないんですけど、熱すぎるからさ。
山脇:ははは。
伊地知:こないだも稽古中、まあ仲は良くなってきたけど、そこまでじゃないなと思って、楽しくしようとして途中途中でなんか言ってたら「あ、ちょっと静かにしてもらって大丈夫?」って普通に言われたんですよ(笑)。こっちも芸人だから、おふざけもしたいじゃないですか。
山脇:(笑)なごやかなほうが、ねえ。
僕は、カラオケよりもおしゃべりしてるのが自分では得意だと思ってるんですよ。
山脇:今回のお芝居の中で、カラオケのシーンがありますけど、伊地知さんって好きな子とカラオケに行ったりしますか?
伊地知:僕だったらですか?えー……
山脇:というのも、この前、知り合いが、気になる子とごはん食べて、2軒めにカラオケ行った、っていう話を聞いて、その場にいた全員で「なんでカラオケ~?!」ってなったんですよ。
伊地知:確かに俺も、彼女とか友達数人とかでは行ったりしますけど、変な話、気になってる女の子と1対1では100%行かないですね。
山脇:ですよねえ。
伊地知:単純に僕が歌上手くないってのもあるし。もし上手かったら自信満々でいっちゃうのかもしれないですけど。
山脇:はい。
伊地知:多分、その子は歌が得意分野なんじゃないですか。僕は、カラオケよりもお喋りが自分では得意だと思ってるんですよ。喋ってる中で相手の感情をみて、口説く方にもってく方が。でも喋るのが苦手な人は「だったら歌上手いのを聴かせたほうがいい」って思っちゃうんじゃないですか。あんま喋るのが好きじゃない女の子はカラオケの方がいいのかもしれないですし、それも好き嫌いあると思うんで。結局、カラオケがうまくて好きな子おとすみたいのって、ルックスありきですもんね。
山脇:確かに。歌だけうまくても、面白い感じになっちゃう。
伊地知:そうそうそう。
山脇:「わ、案外歌うまい、おもしろい!」って思うだけですよね……。
伊地知:僕ね、2ヵ月くらい前に、約10年ぶりに1人カラオケいったんですよ。
山脇:なんでまた。
伊地知:10年前、1人カラオケが流行りだしたときに、初めてガチで1人で2時間いったんですけど、2曲歌ってさみしくなって帰ってきちゃって。
山脇:えー!
伊地知:窓があるカラオケボックスで。まだピン芸人の頃だから誰も僕のこと知らないんですけど、通る人、通る人こっち見てんじゃないか、って気になっちゃって、2曲でやめて。それがトラウマでずっと行かなかったんですけど。
山脇:それが最近またどうして?
伊地知:今頃になってあいみょんの『マリーゴールド』に激ハマりしちゃって。
山脇:あら!
伊地知:あれ、めっちゃいい歌じゃないですか。ずっと新幹線移動とかでも聴いてて、だんだんあいみょんだけじゃ足りなくなってきて、YouTubeにあがってる「歌ってみた」の動画まで聴くようになって。OLのひととか、色んな人が歌ってる『マリーゴールド』をずっと聴いてたら、なんか勝手に「俺も歌えんじゃないか」と思って、俺が歌ったらどんな感じになるのか知りたくなって。
山脇:いざ1人カラオケに。
伊地知:でも自分で歌ったら、へたすぎて、声出なすぎて「俺こんな声出ないんだ」ってびっくりして。1時間で入ったんですけど、そこでもう「俺こんなヘタなんだ」って挫折して、ラップとか、うまくなくても歌えるやつ歌って。最後にもう一回だけあいみょんいれて、あいみょんで始めてあいみょんで締めて。
山脇:1時間歌ったら、喉がひらいて声も出るようになったんじゃないですか?
伊地知:そう思ったけど、やっぱだめでしたね。あれは歌うもんじゃない、聴くもんだって思いました。
山脇:ははは。
伊地知:だからもし、誰か女の子とカラオケに行く機会があったら『マリーゴールド』をうまく歌える子と行きたいです。あの曲ちょっと難しいから、歌える子がいたらいいなって思っちゃうかもしんないですね。
そんな中、まともにカラオケで胸に手を当ててバラード歌うのが、うちの相方の小澤なんですよ。
山脇:学生の頃はカラオケ行きました?
伊地知:中・高生の頃は行きましたけど。それこそコンパでカラオケっていうのは、芸人になってからはもう『いかにカラオケを歌わないで終わるか』が勝負だと思ってて。
山脇:どういうことですか?
伊地知:一応、お喋りを武器としてる仕事だから、歌に逃げるのは違うな、って。盛り上げるのはいいんですよ。カラオケしながらモノマネでいっぱい人が出てくるとか、コントみたいなカラオケやるのはオッケーなんですけど、普通に歌うのは、逃げてるって思っちゃって。ただ歌う、バラード歌って聴かせる、みたいなのはサブいなって。カラオケに逃げちゃってんじゃん、話で勝負しようよって。
山脇:ストイックだなあ!
伊地知:そんな中、まともにカラオケで胸に手を当ててバラード歌うのが、うちの相方の小澤なんですよ。
山脇:わあ!
伊地知:あいつ、すごい歌いたい空気出すんですよ。「いいよ、いいよ」って言いながら歌いだしたら止まらない。西村ヒロチョもそういうとこある。
山脇:あーなんか、そんな感じが。
伊地知:あの2人ちょっと変わってるんで。俺も変わってますけど。あの2人は心のナルシストだと思うんですよね。「俺かっこいい」って思うタイプのルックスナルシストじゃなくて。
伊地知:自分もナルシストですけど、僕は、自分が好きすぎるナルシスト。自分のことが大好きなんですよ。で、小澤とヒロチョ、あいつらは自分に酔っちゃう、自分に酔うことができるナルシストなんです。
山脇:自分に酔っちゃう……?
伊地知:だって、酔えなかったら胸に手を当ててバラードを歌えます? 女の子の前で。しかも1曲目で。
山脇:そうですね……ふと冷静になったり、「今これ大丈夫かな?」って気になったりしちゃいますね。
伊地知:盛り上がるアップテンポの曲ならまだしも。1曲めからバラードを歌えちゃうっていうのが、俺からしたら「すごいな」って思っちゃうんです。
山脇:伊地知さんは、自分に酔わないですか?
伊地知:酔いはしないですね。自分が好きだってだけのナルシストです。
山脇:ほー。ナルシストにも色々あるんですね。
伊地知:あります、あります。自分のルックスが好きなのもいますしね。内面とかじゃなく「俺かっこいいだろ」ってタイプも。
山脇:表に出る仕事してたら、みんな何かしらの部分でそういうのありますよね、でもね。
相方のこと、こんな言うのあれですけど、努力ゼロでテレビにでた初めての人間ですよ。
伊地知:小澤なんか、「俺なんて」とか「恥ずかしくて」とか言ってますけどあいつ一番ナルシストですよ。でなけりゃ、演技できないやつが12年目になって「芝居がやりたい」って言い出します?
山脇:いやあどうだろう。
伊地知:コンビで10年以上やってて、浮き沈みも、仲が良い時も良くない時もあって。たまに2人で「最近どう?」とか「こうしてこうぜ」「こうしなきゃだめだよ」とか、話す時もあるんですよ。
山脇:ええ。
伊地知:今年に入って、今後を良くするために話し合いの場をもったんですよ。「お前、今後どんな芸人になりたい?」って。あるじゃないですか、芸人像。これだけやってると、できる芸風・できない芸風っていうか、これはできる仕事だな、これはできない仕事だな、っていうのがあって。僕にとって、俳優は『できない仕事』だったんですよ。
山脇:ええ。
伊地知:僕達は、コントをずっとやってきたり、演技の勉強に取り組んできた人とかをすぐ近くで見てきてるわけですよ。俳優ともコント師とも接して、その人たちがどんだけ練習してるか、勉強してるか、それをわかってて、そのうえで僕は「できない」って判断してるのに、話し合いしたら相方が「俺ちょっと俳優になりたいんだよね」って。よくそんな大口を! ってびっくりしたんですよ。なんの努力もしてないやつが、どの口で言うんだ、って。
山脇:ははは。
伊地知:努力してないですからね。あいつ、顔が特徴的だから、ちょっとした映画のちょい役とか、努力しなくてもくるんですよ。相方のこと、こんな言うのあれですけど、努力ゼロでテレビにでた初めての人間ですよ。努力してないですもん。もうルックスだけで。ルックスが飛び抜けて特徴的だから。
山脇:確かに、個性的。
伊地知:最近ね、塩顔とされてる人たちが世で人気だから。やっぱ顔が特徴的だから、そういう仕事がくるんです。で、話し合いの時に「今度、映画も決まったし」って言うから、俺その映画も観たんですよ。妻夫木聡さんと岡田准一さん主演の『来る』っていうホラーの。
山脇:あ、知ってます。
伊地知:僕、相方に1人の仕事やってほしいって気持ちがすごいあって。相方が映画の仕事決まって、僕が決まらなかったら、悔しいんですよ。だけどそれが励みになるというか。小澤が仕事とってくることによって、「ふざけんな、俺の方がやってるつもりなのに、ピスタチオのレール敷いてるの俺なのになんでこいつなんだよ」って悔しい気持ちを高めたくて観たんですよ。そしたら、全然出てこなくて(笑)。いつ出てくるんだろと思って。
山脇:あれれ。
伊地知:まあまあ時間経って、やっと出てきたと思ったら、台詞ひとことあるかないかなんですよ。一瞬、10秒15秒で終わって。「あいつこれで俳優を目指したの? とんだめでてえ野郎だな」とか思っちゃって。
山脇:はっは。
伊地知:僕、芸人やる前にもともと俳優の事務所にいて、ちょっとしたCMとかドラマ、再現VTRとかちょこちょこ出てたんですけど、そんときのほうがまだ台詞ありましたからね。あいつはすごいですよ。今度の舞台に対しても、いきいきしてますもん。
山脇:そうか、そうなんですね。それ聞いて、なんだか次の稽古すっごい楽しみになりました。
伊地知:それで、稽古でけっこうダメ出しされてるんで、笑っちゃうんですよ。よくこれでお前演技やるって言ったなみたいな(笑)。そういう意味では、僕も演技できないですけど、できないなりに「小澤より良かったじゃん」って言われたいです。
山脇:すごい、いい効果が。いい話。
伊地知:それはめちゃくちゃある。やるからには、小澤も出るし、ヒロチョもいて、俳優さんたち何人もいて、そのなかで「伊地知が一番よかったじゃん」って言われたいですよ、それは。今の段階では、まだまだ圧倒されてますけど。本読み稽古で、俳優さん同士のシーンとか、安心するというか、好きですもんね。「ああ、これが演技かあ」みたいな感じで観てられます。
山脇:いやいやいや、そんなそんな。
伊地知:相方が出てるシーンってやっぱ違う目線になっちゃうんで。
山脇:ざわざわしちゃいます?
伊地知:まだ恥ずいですね。
山脇:今後、話が進んでいくとお互いラブシーンみたいなのもありますけど。
伊地知:恥ずいですよ。相方は、俺のそういうシーンが楽しみらしいですけどね。
ホスト・嵐のときはめちゃめちゃシックなんですよ、ロングコート着たりとか、スーツとかシャツとか。
山脇:お洋服はどちらで買われるんですか?
伊地知:僕、別にあんまその、そこまでファッションにこだわりなくって。どこで買うとかあんまり決まってないんですよね。いいと思ったら買いますし。
山脇:ふらっと。
伊地知:最近、知り合いにファッション系の人が多くて、新作とか出たら結構もらうんで、そのなかから着たりして。ちょうど合うんですよ。
山脇:これじゃなきゃ、みたいなのはあんまない?
伊地知:あんまりないです。あ、でもビビッド系の色が、ここんとこ流行ってるんで結構着ちゃいます。
山脇:今日も明るい色のTシャツで。
伊地知:今日、靴もピンクなんですけど、ワンポイント派手めなのいれるのが自分ぽいかな、とか。全部黒、とかっていうよりも、服が黒だったらキャップ赤にする、とかちょっと一個いれたいな、とは思ってます。
山脇:確かに、ポップに派手めでいてくださったほうがこっちも安心します。
伊地知:どういうこと?
山脇:伊地知さんのこの感じで、あまりにもおとなしいファッションをされていたら、どうつきあっていいかわからなくなるかもしれないので。
伊地知:僕、「ホスト・嵐」でイベントやるときあって。
山脇:嵐?
伊地知:ホスト時代の源氏名、『嵐』っちゅう名前でやってたんですよ。嵐のときはめちゃめちゃシックなんですよ、ロングコート着たりとか、スーツとかシャツとか。
山脇:へえ!
伊地知:大人っぽくタートルネック着たりして。大人っぽい、っていうかもうおじさんなんで。
山脇:そういえば、私、ナンバーワンホストと話す、っていうの初めてだな、と思って……緊張しますね。
伊地知:緊張してないでしょ、全然。思い出したように言ったけど。
山脇:いやいや、しますよ。ホストの方と話すことないですから。
伊地知:僕はホストっぽくないんですよ。それが売りだったんで。全然、ホストって違いますでしょ。
山脇:1回だけ、友達の誕生日パーティーでホストクラブに行ったことがあるんですけど、19歳くらいの子がイェイイェイいってきて……ノリがすごい。
伊地知:僕も、店とは全然違いますよ。今日けっこう喋ってますけど、店だったらこれの5倍くらい喋りますからね。
山脇:自己紹介の決まり文句とかあるんですか?
伊地知:よくある「なんとかかんとか、嵐です」みたいなのですか? そんなことはしないです。
山脇:みんなやるのかと。
伊地知:でも僕、お客さんに渡す名刺にこだわってて。オリジナルで写真入れたりとか、シーズンによって変えたりして。例えば、これすげえ寒いんですけど、名刺の裏に『輩でも、近所のおじさんでもございません。これでも立派なホストです』みたいな言葉を書いたりとか。そしたら裏を見たお客さんに「近所のおじさんじゃ―ん」とか言われたりして。「いやいや近所のおじさんじゃないからね~」とか、そういうのを入り口にして、親しみやすい、みたいな感じでやってました。
山脇:ほー。
伊地知:まず自分を落とすんですよ。なんでかっていうと、僕、ホストを24歳から始めてるんですけど、周りは20歳、21歳とか結構みんな若くて。僕は始めたとき24歳で、ピン芸人でヤンキーキャラやってたんで、ヒゲはやして、金のラインが短髪にバーッて入った稲妻みたいな髪型にしてたんで、ただのヤンキー上がりみたいな雰囲気だったんです。全然ホストに見えないから「マジ気持ちわりい」「不細工じゃん」とか「じじいじゃん」とか、」席につく度、つく度、言われてたんですよ。
山脇:怖い世界! そんな世界なんですか。
伊地知:本当に言われるんですよ。
山脇:大変だ。
伊地知:最初、僕の3歳下の地元の後輩がカリスマホストみたいな感じで売れてて、そいつが独立して店を出す時に「一緒にやってくれないか」って。「店長やってくれ」って言われたんですけど、週6で出勤できない。「じゃあ週1でもいいからやってくれないか」「じゃあいいよ」って始めたんですよ。その後輩を見てて、僕の気持ちとしては「こいつでナンバーワンだったら、余裕だろ、ナンバーワンなんて」って思ってたんですよ。「地元で俺、こいつよりモテてたぞ」とか思いながら、始めたら、そんな感じでめっちゃ罵られるんで。
山脇:罵られる……。
伊地知:女の子から「きもい」「じじい」「もうやめろよホスト」とかって。
山脇:すごいですね……
伊地知:それが怖すぎて、もう言われないために、最初から「おじさんです」みたいなこと言っておいて。そしたらたまにいるんですよ「全然おじさんじゃないじゃん、かっこいいじゃん」って言ってくれる人が、たまに。そうしたら心が救われる、みたいな。
山脇:ええ~。
伊地知:名刺に自分で書いてるから、だからもうおじさんて言われようが何言われようが大丈夫、っていうスタンスでいないと心がもたなかったんですよ。ホストなのに。
山脇:大変な世界ですねえ。
伊地知:僕みたいなタイプはすごい特殊で、売れたら、別にそんなにルックスいい訳じゃないのに売れてるから「この人すげえ腕もってるんだな」とか逆に一目置かれて。
山脇:あら!
伊地知:店には他にもっとイケメンがいるのに、「誰がナンバーワンなの?」「俺」ってなった瞬間に「このひとすげえじゃん」っていうオーラに包まれるんですよ。でも売れてないときは「こいつなんで売れてないのにホストやってんだ、じじいなのにキモイ」みたいな感じになるんですよ。売れたら、逆にそれが武器になるんです。
山脇:へええ~~
伊地知:ふざけて「イエーイ」みたいなテンションでいっても、売れてなかったらうざいけど、売れてたら「このノリがやっぱすごいんだ、テクニックなんだ」みたいに思われるんですよ、女の子に。
山脇:それは、すごいもんですねえ。
伊地知:だから、僕みたいな風貌は売れてないと成立しないんですよ。
山脇:どうやって、そのナンバーワンまで登っていったんですか。
伊地知:実際の話、初めの頃は僕「男は、女を一歩後ろに歩かせろ」みたいな、『男はこうであれ』みたいなのが強すぎて。
山脇:古いなあ!
伊地知:良く言えば「女の子には1円も払わせるな」「女の子には優しくしろ」「男はどっしりしろ」っていうのが男なんだ、って思いながら生きてきたタイプなんで。女の子にお金を使ってもらってる時点で、そこはズレてくるじゃないですか。そうなったときに罪悪感しかなくて。
山脇:ほおお~。
伊地知:ホストって本当は、例えば女の子のお会計が1万円だった時に「なんで1万円なんだよ10万円つかってくれよ」っていう世界なんですよ。10万円使った時は「なんで10万円なんだよ100万円つかってくれよ」って言えなきゃいけないじゃないですか。
山脇:はい。
伊地知:それが絶対言えなくて。「ごめんね、こんなに」ってなっちゃったんですよ。
山脇:使わせちゃったね、って。
伊地知:僕はそれを拭うのに1年くらいかかりました。ホストなのに。でもあるとき「仕事なんだ、これは」「女の子はこれを楽しみにきてるんだ」と気がついたんですよ。僕に50万使わなくても、他のホストに50万使うんだこの子は、と。俺に100万使わなくても、俺が「いいよ1万円でいいよ」って言ったとしても、残りの99万円は他の店で使うんだ、っていうことに気づいたんですよ。じゃあ、僕に使っていただこう、って思って。1円残らずね、と。
山脇:どうせ使うんなら。
伊地知:そう。それまでは女の子が僕のことを好きだって思ってくれても、「いやいや俺はなんとかだから……」とか言っちゃってたんですよ。そこからはもう「おおいに好きになってくれ」に変わったんで。そこからですね、だから。
山脇:ほえー。
伊地知:要するに……『色恋』っていうんです。自分のこと好きにさせて、お金を使ってもらう、って。
山脇:惚れさせて。
伊地知:それが僕はできなかったんですよ、申し訳なくて。自信もないし。でも1年くらいたってから「ホストだしな」と。今辞めるよりも、ナンバーワンになって辞めた方が、やった価値あったろ、って思って。そこからだいぶ変わりました。
山脇:スイッチみたいなのを切り替えて。
伊地知:言い方悪いですけど、ちょっと悪くはなったかもしれないですね。
山脇:職業人になった、プロになった、ということですよね。
伊地知:プロになりましたね。キャバ嬢って、例えばアフター行く、同伴する、ってなったら100%お客さんがお金を払うじゃないですか。でもホストは2通りで、大抵のホストは女の子に払ってもらうんですけど、「店の外では自分で払うよ」っていうホストもいて。僕はルックスもあるんで、外では自分で払ってたんですよ。
山脇:それは勘違いしちゃうのでは。
伊地知:それもあったでしょうね。自分のなかでは、外で3万使ったら店で5万使ってね、10万使ってね、みたいなシステムでした。それは相手には言わないですけど、そういう感じでした。でも、僕10万使ったのに全然店で3万しか使ってくれない、ってこともありましたし。マイナスっすけど、それはそれでしょうがないなって。
山脇:はあ~。
伊地知:結構僕は投資してました、だから。女の子に。
山脇:なるほど。
伊地知:1円も使わない人もいっぱいいますからね。ホストは使ってもらう仕事だから、なんで払わなきゃいけないんだ、って。僕はけっこう還元してました。
山脇:やっぱりそこは、人付き合いですもんね。
伊地知:だいぶ、まっとうなホストっていうか、考え方は一般人に近いホストでした、僕は。芸人もやってたんで。だからホストとしては三流ですね。全然一流じゃないです。
山脇:いま「嵐」で恋の相談のイベントとかもやられてますよね。
伊地知:やってます。結構、恋愛の仕事をやらせてもらったりしてて。
山脇:恋愛の伝道師的な感じですか?
伊地知:僕の考えなんですけど、色々な悩みがあったときに、心理学とか統計学からみると、答えは1個だと思うんですよね。変な話、心理学を学んだ人だったら誰でも言えちゃう、誰が言っても一緒だと思うんですよ。
山脇:心理学にもとづいたアドバイスは。
伊地知:僕は、経験したことをいうのがポリシーなので。ってなってくると、人と言うことはちょっと違ってくると思うんです。
山脇:アドバイスの角度が。
伊地知:恋愛アドバイスやってるけど、他の人と違うよ、っていうのが売りで。心理学を学んでる人からしたら「こいつ何いってんの、全然わかってないじゃん」ってなるかもしれないですけど、それが逆に僕にしかできないアドバイスというか……なんか、めっちゃかっこつけてますけど。
山脇:『女の子にあったら髪の生え際をみて「髪染めた?」っていう』っていうアドバイスを仰ってるところを、よしログで見たんですけど。
伊地知:それも、もしかしたら心理学だと『女性は髪型やネイルなどを褒めると喜びますよ』ってことかもしれないです。だけど僕はそこだけじゃないと思って。「髪型変えたね」って言うの、なかなか怖いと思うんですよ。なんでかっていうと、間違うときあるじゃないですか。
山脇:「え? 染めてないよ」「切ってないよ」って。
伊地知:「髪型変えてないよ」って言われちゃうパターン。「うわ、失敗しちゃった」ってなると思うんですけど、そういうときは切り返しが大事で。僕からしたら、間違えた方がラッキーなんですよ。「あ、そうなんだ、なんか可愛いと思ったんだけどなあ」ってフォローすることによって、どっちに転んでも女の子としては嬉しいんですよ。
山脇:「言いたかったのは可愛いってことだよ」ってことで。
伊地知:「染めた?」「染めてないよ」「マジで? 今日すごいキレイに見えるよ」とかっていったら、チャラなんですよ。でもそこまでは心理学の人は教えてくれないと思うんですよ。
山脇:実践的な流れまでは。
伊地知:「女の子の変化に気づいてあげてください」ってことしか言わない。でもじゃあ失敗したときどうなんの、って。僕はホストのとき「染めてないんだけど」って言われたことが何回もあったから、そういうとき「うわ、これどうしたらいいんだろう?」って悩んで、「あ、褒めてあげればいいんだ、最後のほうしか覚えてないから人は」っていうところに行きついて。だから、そこを売りにしてます。
伊地知:例えばネイルって、やらなくても生活に支障がないものじゃないですか。マニキュアとかスカルプとか、しなくても生きていけるものにわざわざ結構な額を払ってる、ということは、そこを見てもらったら嬉しいんですよ。
山脇:ほほう。
伊地知:「自己満足でやってるから」って言う人もいますけど、自分がしたくてしてることを褒めてもらったら嬉しいはずなんです。だから間違いなく僕は、ネイルは「可愛いじゃん」「きれいじゃん」って褒めます。でも、これもこれで、それだけインプットしたら、ただ褒めりゃいいって思っちゃうんですよ。それがマジで大違いで。
山脇:「基本褒めてりゃいいんだろう」っていうのは間違い。
伊地知:爪を褒めたくても、絶対に褒めちゃいけないときがあるんですよ。爪の付け根、生えてくる部分が5ミリくらいあいていたら、これは前にネイルやってから1ヵ月以上たってるんです。爪をキレイにしてる人は美意識が高いから、手入れをしてないことがバレたくない。爪が伸びてたり、スカルプとかジェルだと、ぽろっと2個くらい取れてたらもう、見てほしくないんです。明日替えなきゃ替えなきゃ、でも忙しい、時間ない、って思ってるときだから、そういうときは一切見ないです。触れないようにします。
山脇:そうですね、「気づかないで~」って思ってます。
伊地知:やってたら褒めるじゃなくて。スカルプが取れてないか、浮いてないか、確認して、オッケーだったら褒めてください、が正解です。ただ「爪を褒めましょう」が正解じゃないです。あ、ネイルやってる、褒めます、は大間違い。
山脇:馬鹿の一つ覚えみたいに褒めちゃだめ、と。ちゃんと見ろと。
伊地知:そうです。
山脇:結構目が良くないとだめですね、じゃあ。
伊地知:そんな、見えるでしょう。普通に。
山脇:視力いいですか?
伊地知:いいです。
山脇:髪染めてるかどうかも生え際をみる、って。
伊地知:見ますね。黒い部分がどれくらいあるか、っていうのは見ます、はい。
「あなたは初めてお会いするタイプだけど、もしかしたら初めて好きになるかもしれませんね」っていうのを僕は言います。
山脇:「ここを褒めて」っていうポイントが見えない感じの、素朴な女性の場合はどうするんですか? シンプルめな女性というか。
伊地知:普通のタイプってことですか? 僕が褒めるとしたら。
山脇:はい。
伊地知:「どんな子がタイプ?」って話のときに、僕は正直に「ギャルっぽい子、派手な子が好きかもしんない」って言うんです。そうすると「じゃあ私ちがうじゃん」ってなるから、「だから不思議なんだよね、こういうタイプとこんな話が合うのって初めてかもしんない」とかって褒めます。
山脇:ほえー!!
伊地知:「今までは、こういうタイプの女の子苦手だったっていうか、あんま喋ったことないけど、君は違うわ」っていう褒め方をします。そういう時に「君みたいなタイプが好き」って嘘をいっちゃうと「じゃあ元カノの写真見せてよ」ってなったらすぐバレるじゃないですか。だから嘘はつかないで「あなたは初めてお会いするタイプだけど、もしかしたら初めて好きになるかもしれませんね」っていうのを僕は言います。そういうふうに褒めるようにします。
山脇:はい。心にメモします。
伊地知:男の子の相談も受けるんですけど、例えば僕の場合で、どんな男性が好きですかって話の時に「薄い顔が好きです」「無口でクールな感じが好きです」とか言われたら、真逆じゃないですか。普通は「うわっ」て思うんですよ。僕は「うわっ」って思うのが半分、もう50%の半分は「よし」って思うんですよ。
山脇:なんで、なんでですか?
伊地知:これ、大事なのは、今その子に彼氏がいるかってことなんですけど。今、特定の相手がいないってことはチャンスだなって思うんです。今までそういう人が好きで、そういう人とおつきあいしてきたけど、結果、うまくいってない、と。
山脇:だから、今は相手がいない、と。
伊地知:ていうことは、あなたのタイプじゃないかもしれないけど、僕みたいな人がもし好きになってもらうことができたら、女の子は「私なんでこの人のこと好きになったんだろ」って気持ちになるんですよ。そうしたら「あ、この人だったかも」って思わせることができる、って。だからチャンスだと思っちゃうんですよ。
山脇:すごい。
伊地知:っていうふうに、思うようにしてます。変な話、もちろんタイプだと思われたら有無を言わさず「よっしゃ」ですよ。でも、違うよって言われても、そう思い込むことによってビビらなくなるというか、どっちでも俺はいけるじゃんっていう自信になるんですよ。
山脇:若いとき、気になる人に好きな芸能人を聞いて、全然自分と違ったら、「あーもう好きになるのやめよう、無理だ」って思ってました。
伊地知:でもね、そう言ってたって、結局そんなのいないんですよ。「誰がタイプ?」「石原さとみです~」「北川景子です~」「佐々木希です~」って言うけど、いないんですからそんな人は! 現実には!
山脇:身近には。そうですね、そうですね。そうか。
伊地知:そうなってくると、それ言ってたらもう話になんない。そう思うようにしてます、俺は。
山脇:そうか、タイプとか聞いて、がっかりするのは意味がない。
伊地知:意味がないです。そこで落ち込むのは意味がない。もったいないです。気の持ち様なんですよ、それは。
LINEは、次に会ってもらうためのツールでしかないから、LINEではウザがられるな
伊地知:僕、恋愛の格言のインスタもやってて。毎日アップしてんですよ、そういうこと。恥ずかしいんですけど、好きなんですよね、こういうことやってんのがきっと。
山脇:アカウント、どうやったら見つけられます?
伊地知:「ホスト嵐」で検索すると出てきます。本を出そうと思ってて。「LINEはこうしましょう」とか。そういうのをひたすら書いてるんです。
山脇:LINEって、すぐ返した方がいいんですか? 読んだ後に寝かせることとかあります?
伊地知:僕は、基本的に既読つけたら返しますけど。最近は長押ししたら読めたりするじゃないですか。そういうのを駆使して、基本こっちが送ったら5分で返ってくる人には、4~6分以内で返します。
山脇:え?
伊地知:相手が5分で返してくれる女性だったら、僕も5分後くらいに返すようにします。
山脇:同じリズムになるように?
伊地知:同じリズムになるようにです。むこうが1分だったら、ポンポンポンポン返します。向こうが1時間くらいあける人の場合、1時間後に返事がきたら「きた!」と思ってすぐ返しちゃうじゃないですか。そうするとまた1時間後に返ってくる。それって相手のリズムなんですよ。自分のリズムに巻き込めてないし、むこうも心地良くないんですよ。なんで1時間後に返すかっていうと、なんか考えてる状態だったり、忙しかったり、はたまた、あんまり俺と連絡がしたくないから、もう返事こないほうがいい、って思って返してるパターンもあるわけですよ。
山脇:ラリーをやりたくない気持ちがあると。
伊地知:そういう可能性もあるんですよ。それか、単にそれがむこうのリズム。「寝たかな~。でも一応返さないとな~」と思って返したらすぐ返事がきた、「うわ、起きてた、じゃ次どうしよ」って、だんだん窮屈になるんですよ。だったら、こっちが1時間あけて返す。それによって、むこうは「寝てたよ」とか言い訳ができるし、無理して連絡とらなくていいラリーになってくんですよ。向こうがそれに対して5分で返してきたら、僕も5分。向こうが1時間あいたら1時間あけます。
山脇:すごいな!
伊地知:それだと自分も窮屈じゃないんですよ、気持ちいいラリーになるんです。相手のペースにさりげなく合わせてあげることによって、まずウザがられない。LINEやってるだけなのにウザくなってくる奴いるんですよ。LINEがめんどくさいだけで、会ったらもしかしたらめっちゃ心掴めるかもしれないのに、それが窮屈になっちゃうと「もう会いたくない」ってなっちゃうんで。だから僕「LINEで好きにさせることは無理だよ」って。LINEは、次に会ってもらうためのツールでしかないから、LINEではウザがられるな、っていうのが僕の格言です。ウザかられないようにやるのが大事です。
山脇:はー! LINEはツール!
恋愛の主役は自分。つきあうまでって、相手のことをそんなに考えなくていいんですよ。
山脇:恋愛で悩んでる子がいたら、伊地知さんに会わせたいですね。
伊地知:でも僕「今の彼氏どう思います?」とか聞かれた時に正直に「別れた方がいいよ」とか言っちゃうから、もしかしたら傷ついちゃうかもしれない。
山脇:「いい感じになるし、家飲みとかする関係になるのに、彼女にしてもらえない」という相談が多いです。なんなんですかね。
伊地知:彼女にしてもらえないんですか。
山脇:「つきあおう」って言ってもらえない。話聞いてたら「それつきあってんじゃん!」ってなるんですけど「いやでも、つきあってはない」。
伊地知:言葉を交わしてない?
山脇:「つきあおう」とは言われてない。で、だんだんだんだん……。
伊地知:言われてなくて、自分からは告白しないんですか?
山脇:そう。で、雲行きが怪しくなってきたと思ったら「彼女できたらしい」とか「実は彼女いたわ」とか。
伊地知:そういう子って、全部自分が受け身なんですよね。彼女にしてもらえない、とかじゃなくて、お前が彼氏にしろよ、と。言い方悪いけどね。自分の恋愛の主役は自分でしかないわけじゃないですか。
山脇:おお。はい。
伊地知:自分が主導権を握って、自分が主役になんなきゃいけないんですよ。つきあうまでは。つきあうまでって、相手のことをそんなに考えなくていいんですよ。
山脇:ええっ?!
伊地知:別に相手のことを思いやらなくていいんですよ。それはなんでかっていうと、思いやることは優しさではなくて、思い上がりなんですよ。お互いに好きだとしたら、相手のことを思いやらなきゃいけないけど、俺が勝手に思いやってても、相手の子からなんとも思われてなかったら、そんなのうぬぼれでしかなくて。自分が主導権で誘えばいいし、告白すればいいし、彼女になった時に初めて大事にしてあげて。
伊地知:つきあったら、大事にしたらいいんですよ。この人こうしたら傷つくだろうな、とか、そんなの、好きな人にされたら傷つくけど、好きじゃない人に何されても何とも思わないですよ、人って。
山脇:はあ!
伊地知:傷つくかもなって思う時点で、思い上がりなんですよ。傷つかないですよ。
山脇:自分が相手に影響を与えられてると思い込んでる時点で思い上がり!
伊地知:そうなんすよ。だったらつきあえてるじゃん、だったら告白してくるじゃん、そこまで思われてるんだったら。そこまでじゃないんだよってことなんですよ。だから変な話、もっといっていいんですよ。気を遣わなくていいんだよっていうのが、僕の考えです。
山脇:断らせるのも申し訳ないから、誘わないようにしよう、とかいうのも意味がわかんないってことですよね。
伊地知:意味がわかんない。何にも考えてないから相手は。
山脇:いやだったら断るだけだと。
伊地知:いやだったらブロックするから。
山脇:だから誘えよと。
伊地知:けっこうみんな受け身過ぎるんですよ。気をつかいすぎ。
山脇:慮っちゃうんですよねえ。
伊地知:『相手に彼氏・彼女ができちゃった』が一番最悪の結末なんですよ。告白してフラれるのが一番いいんですよ。それはもう終わった恋だから、次に進めるじゃないですか。たとえば、好きな子がいて、遊んだりなんだりしてても、女の子って一夜にして変わるから、違う彼氏ができて。「うーわ」ってなるんですけど「俺のこと好きだったよな」って思ってるから、いつ別れるかわかんないけど、1年か2年か待っちゃうんですよ。結論を出しておけば、「まあフラれてるからな」って次にいけるんですけど、答え出してないままだと「もしかしたらいけたんじゃないか」が残っちゃうから、次に踏み出せないんですよ。
山脇:ずるずるっと。「なんだったんだろうあのときのあれは」とか考えちゃったり。
伊地知:だから自分でパッていったほうがいいんですよ。よく、出会って1ヵ月くらいがいいっていいますよね。出会って、デートとかして、つきあうかつきあわないか、1ヵ月くらいで答えださないとダラダラいくとは思いますね。
山脇:そんな気がします。
伊地知:30分以上恋愛の話しちゃいました。
山脇:この連載の中で、こんな恋愛相談、初めてでした。
世界一相手の目を見ないコンビなんで、芝居中、目を見られるだけで恥ずかしいんですよ。
山脇:さて、そんな恋愛巧者の伊地知さんですが、8月の舞台『NO.2』本番に向けての意気込み等があれば。
伊地知:同じ神保町花月企画の公演で、1個前がライスさん、2個前がしずるさんで。先輩と比べるのはおかしいですけど、その2組よりいいライブ、舞台にしたいとはもちろん思ってますし、自分が携わった物が「あんま良くなかった」っていわれるのは、やっぱりプライドもあるんで。全力で頑張りたいとは思います、それは、もちろん。
山脇:はい。
伊地知:もしかしたらですよ。3年後、5年後に俳優として僕は歩んでるかもしれないので。
山脇:ははは! あ、笑いごとじゃない。
伊地知:その第一歩を観にきてほしいな、とおもいます。僕もこう、まっすぐになちゃうタイプなんで、すげえ好きになっちゃったら、その仕事めっちゃやりたいと思っちゃうんですよ。
山脇:ほー!
伊地知:これ相方にも言ってるんですけど、芸人以外でやりたいこと見つかったら多分俺やめるよ、って。これは、もう何年も前から、ピスタチオとして出る前から言ってるんです。僕そういうタイプなんで。だから、伊地知の俳優・第一章を観にきてほしいなっていうのは思います。これで、この後なんも仕事してなかったら、オファーがなかったのか、伊地知が自分でダメだと思ったのか、だと思ってください(笑)。
山脇:いやいやでも、非常にチャーミングなお芝居をされるなって思ってます。
伊地知:それ、いい意味?(笑)
山脇:芸人さんにはかなわないな、って俳優は思ってますよ、みんな。
伊地知:そんな。勉強させてもらってます。
山脇:そのままで、すっとやれるっていうのは強いことだな、って思うんですよ。
伊地知:竜史さんが書いてくれたんでね、そういうふうに。
山脇:ピスタチオお2人のシーンを観てると楽しいな~って見てます。2人揃うと観てる方はやっぱり嬉しい。
伊地知:僕、自分たちが出てないシーンのほうが観てて楽しいですよ。
山脇:お2人がお互い向き合ってるだけでも、新鮮だな、って。
伊地知:僕らピスタチオのネタって、絶対に相手の目を見ないですからね。世界一相手の目を見ないコンビなんで。だから、芝居中、目を見られるだけで恥ずかしいんですよ。僕、(宙をさして)このへん見てますもん。
山脇:では、今からお写真撮るんですけど、お好きですか。写真撮られるの、得意ですか?
伊地知:得意かはわかんないですけど、調子にはのると思います。
山脇:「かっこつけてください」って感じの撮影なんですが。
伊地知:だいぶかっこつけるの大丈夫なんで。
山脇:なかなかそういう方いらっしゃらないですよ。かっこつけてくださるって、ありがたい!
伊地知:じゃあ、かっこつけます。
【後記】
撮影後の帰り道、写真家のPANORAMA FAMILYと2人で「あの恋の手練手管、結婚する前に知りたかったね~」と思わず感嘆のため息を漏らしまくってしまいました。知っていたら、流さなくていい涙や、かきむしらなくていい胸があったはず。現在、恋愛進行中の読者の方におかれましては、おおいに参考になさってください。ズバズバくる恋愛アドバイスはもちろん、やるからにはトップまで登り詰める、キメるとこはちゃんとキメる、という伊地知さんのエネルギーをビシビシ浴びて、これは8月の公演が楽しみだなあと思うのでした。(山脇)。
■伊地知 大樹(いじち ひろき)/ピスタチオ
1985年2月5日生まれ。神奈川県藤沢市出身。身長168cm、体重67kg。0型。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。東京NSC13期生。相方・小澤慎一朗とともに2010年4月にコンビ『ピスタチオ』を結成、その独特のスタイル「白目漫才」はアメトーークの企画「ザキヤマ&フジモンがパクりたい-1グランプリ」第2回において優勝した。歌舞伎町ホストクラブでの接客経験があり、過去にはナンバーワンの実績を持つ。趣味は釣り、特技はボクシング、サッカー、ナンパ、合コン(企画で準優勝経験有り)とアクティブ。2019年8月22日~9月1日には、相方・小澤とともにW主演を務める舞台『No.2』(神保町花月)が控えている。
■山脇唯
1981年8月3日生まれ。俳優。ヨーロッパ企画退団後はフリーとして舞台を中心に活動。2013年より「すいているのに相席」に参加、“ユーモア女優“の称号をバッファロー吾郎A、せきしろ両氏より賜る。NHK Eテレ「デザインあ」、NTTdocomo、Tokyo FM、東京ガス、他、ラジオCMを中心に声の出演も多数。2018年11月に単独公演『放課後なんかいらん』(座・高円寺2)を敢行。2019年8月12日(月・祝)に『すいているのに相席傑作選』(座・高円寺2)に出演する。
■PANORAMA FAMILY
2006年頃結成。2009年1月、3MCから1MCへ。以降はゴメス1人のユニットとなる。 渋谷Organ.b第1火曜日mixx beautyを中心に、年間60本ペースで精力的にライブを行う。remix、客演、ビールケースの上から幕張メッセ(countdown japan fes 3年連続出演)まで、大中小規模なイベントに参戦する他、トラック、楽曲提供など活動は多岐に渡る。レぺゼン宮城県女川町スタイル。2014年から写真家として活動。SLIDELUCK TOKYOの第一回ファイナリストに選出される。雑誌STUDIO VOICEでとりあげられる。2016年3月写真集「fastplant」発売するも即SOLD。
2017年12/4~12/17に個展『PARANOIA SLAPPYS』を行い、同タイトルを冠した写真集を発売。新作photo zine『Don't mind others, your dance is awesome/周りばっかり気にすんな、お前のやり方で大丈夫だから』発売中。TOMMY HONDA名義でも活動しており『Make yourself at home』をリリースしたばかり。