デートコース、特別なところに行かなくても、街を歩いているだけでとっておきの時間にしたい── 私たちキャストはいつもそう考えています。
計画通りにいかないことも、当然あります。たとえば、お店の営業時間が違っていたり、なんなら閉店していたり。ホームページの情報とは違っていることって、実はあるあるなんですよね。そんなときもくじけず、すぐに次の場所を案内したいと思っているので、キャストの頭にある情報量は膨大になっていきます。
でも、デートではハプニングも思い出になると思うんです。ふたりで笑い合ったり、別のお店を探したりといった時間が、忘れられない出来事として私のなかにも残っています。思いどおりにいかないことって、実は楽しいじゃないですか。私自身も、ちょっと冒険している気分です。
目的地を特に決めないまま歩き出すこともありますが、話を聞いて歩幅を合わせて、そして存在を感じながら一緒に過ごす……本当はそれだけで十分なんですね。そのうち、行きたいところが見つかるかもしれません。一緒に考えて何でも思いついたことを、ゆっくりはじめればいいんだと思います。
お話がうまくできなかったり、緊張で言葉が出なかったりしても、無理に話す必要はありません。デートとは、すぐ隣でお互いの存在を感じる時間なのですから。
ああ、ここまで書いてわかりました。私がデートコースでいちばんしたいのは、「そばにいること」です。私は隣であなたを感じて、隣にいるあなたにも私を感じてほしい。
そうしてふたり並んでいると、私の目には見慣れているはずの大阪の街並みも、毎回違ったものに見えてきます。
ここからは、もうちょっと具体的な話をしましょう。
はじめてご利用いただくお客様のデートコースでもっとも多いのが、180分のコースです。
私はこれ、絶妙な時間だと思ってます。待ち合わせをしてから、ちょっと遠いところにまで思い切って出かけることができるし、レストランでコース料理を頼むこともできます。映画館や美術館、動物園、公園でのピクニック、カラオケ、ケーキビュッフェ……選択肢が多い!
もちろん、そのあいだにたくさんお話もできますね。
私が、はじめてのデートコースとして180分を推したい理由は、120分だと話を十分に深めるにはちょっと足りないと感じるからです。「はじめまして」から自己紹介をして、会話のテンポを合わせ、ふたりの共通点を探り……お互いの空気感が馴染んできて、セッションみたいなものが完成するには、およそ3時間くらいかかるものです。
120分では絶対にできないというわけではないのですが、急げば話が深まるというものでもないように思います。お食事しながらだったり、移動中だったりの会話は、途中でほかの話題に流れることもよくあります。
ときには、いままでの人生の苦い思い出やつらい経験まで聞かせてくださる方もいて、そんなときには「話したい、でも言葉がスッとは出てこない」という間(ま)も生まれます。180分あれば、その人のタイミングでお話いただけるよう私たちは待つことができます。迷っても、話が遠回りしても、大事なことを伝えてもらえるのが180分という時間なのだと思います。
そばにいて、存在を感じる。
話をする。
同じテンポで歩いて、並んで風景を見る。
ときに、特別なことをして思い出に刻む──。
デートって深い! レズ風俗キャストになって15年超、つまりデートコースでお客様をご案内するようになって15年以上が経ちますが、いまでも心からそう思います。
【ゆう プロフィール】
永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025