私がレズっ娘グループで勤務して、約15年間。お客様とさまざまなデートにお出かけしました。いままで数えきれないくらいの最高の時間を、過ごさせてもらったなぁと感じています。
あんな素敵な風景を、並んで見たね。
こんな場面に、ふたりで笑い転げたね。
そして、意外な体験を一緒にしたよね。
……と、折に触れて思い出します。
デートコースの過ごし方は自由なのですが、風変わりな遊びをすることもあります。
アクティブなものでは、サイクリングデートがありました。遠方にお住まいのお客様が来阪されて、大阪の街を自転車でぐるりとめぐって観光するというもの。レンタサイクルという選択肢もありますが、なんと、お気に入りのマイ自転車とともに電車に乗ってこられた方もいるのですよ。
「釣りがしたいね!」というひと言で、海までサビキ釣りに出かけたこともあります。サビキ釣りってご存知ですか? エサに似せた小さなハリ=サビキバリで作った仕掛けで魚を釣るものです。
身体を動かすのが好きなお客様は、スポーツウエア持参でデートにいらっしゃいました。ふたりでランニングコースを一緒に走るんです! その後は銭湯で汗を流すと、楽しくて気持ちいい♪
手料理を一緒に作って食べるというのは、特別な時間になると思います。お店のルールで、差し入れの手料理はNGなのですが、キッチン付きホテルやレンタルルームで自慢の手料理をごちそうしていただいたことがあります。
“食”については、思い出がたくさんあります。有名ビール工場に行く計画では、「どうせならいろいろ行きたいよね!」と梯子しました。日帰り旅行で、イチゴ狩り、桃狩り。ひまわり畑ではしゃいでから、湧き水で洗ったキュウリをかじったことも……小学生の夏休みみたいでしょ?
キャンプでイノシシ鍋を一緒につくったり、海で貝を採ったり、プールへ行ったり。
「デート」とひと口にいいますが、本当に多様ですよね。このお仕事でお客様と出会わなければ、一生行くことはなかったかもしれない土地、食べることがなかったかもしれない料理は、たくさんあります。
私は特別な時間をたくさんもらっているんだなぁ。いつもそう感じていますが、そのためには必ずしも特別なところに行ったり、変わったことをしなくてもいいと思っています。
レズっ娘グループは、大阪のミナミが本拠地。その近辺がデートの舞台となることが多いです。お客様には、大阪在住でそのあたりに詳しい方もいれば、大阪まで足を伸ばして会いに来てくださる方もいます。
ここで、私がいつもデートのときに何を思ってどう行動しているかをたどってみましょう。
「はじめまして、ゆうです。
さあどこにいきましょうか?」
はじめてご予約いただいたお客様なら、こんな挨拶からはじまります。一緒に歩きはじめてから、私はその横顔を見て表情をうかがいながら、「◯◯さんはどんなふうに、街を歩く人なのかな」と想像をめぐらせます。
相手の歩幅に合わせる ──これ、すごく大事です。時間の関係で少々急ぎ足になるときもありますが、基本的には、あなたのペースに合わせたい。そうでないと、心の距離ができてしまうように私は感じるのです。
そのためには、どんな服装をしているか、特に足元が気になります。ヒールの高い靴を履いていては行きにくいところもありますし、逆に歩きやすい靴なら「あの通りを歩くのもいいかな」と考えます。
天候も、関係してきます。夏の暑い日は、できるだけ日陰を歩かせてあげたい。寒い日や雨の日も、可能なかぎり負担のないルートを選びます。道路状況については、「この時間、あの道は交通量が多いな」「こっちは歩道が狭くて、並んで歩きにくいな」といった具合です。
そうやって、いま自分たちはどこをどう歩いているのか、どこへ向かっているのかを考えているうちに、「どんな景色を見てもらいたいか」が見えてくるんです。あくまで、私の場合、ですよ。といっても、ここまではほんの数分の出来事。
咄嗟の思いつきで、動くこともあります。コレ絶対楽しい! って直感が働くときですね。ただ、うまくいかないときもやっぱりあるんです。
そんなとき、私たちキャストはどうするか? 次回につづきます。
【ゆう プロフィール】
永田カビ著『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のモデルになった現役キャストで、2008年から在籍するベテラン中のベテラン。レズっ娘グループ全店の新人講習スタッフを兼任する。https://tiara.ms/cast/cast.php?no=00025