性格、安定していますか? こんにちは、朗読詩人の成宮アイコです。
梅雨の気配がしてきて新しい環境に馴染んでくると、たびたび、「誰にどの口調で接していたのかわからなくなる問題」が勃発します。
冗談が苦手な方への、「おはようございます、外、まだ雨降っていましたか?」。バイブス高めの方への、「おはようございまーす。湿気で髪がぐちゃぐちゃですよ〜」。通常モードの、「あぁ、おはよ」。距離をつめていきたい、「おはようございますっ! 雨ぜんぜんやまないですね! あ、聞いてくださいよ、昨日なんて〜(以下、テンション高めの会話)」。相手のポジションや雰囲気に寄せていくと、複数パターンの自分ができあがります。別のパターンで接している人たちが同席した場合には性格迷子状態です。
気を引き締めた4月、落ち込みの5月を乗り越え、やって来た6月。気持ちもゆるみ、意識せずとも出てくるおはようございますを連発。久しぶりに会った人に、「ご無沙汰しております。蒸し暑いですね」と言ったあとに、しまった! この人は飲みに行ったときに、同じアイドルが好きだと判明をしてカラオケまで行って、すごく仲良くなって友人モードに切り替わったんだ……ということを思い出し、よそ行きの態度で話しかけたことが妙に恥ずかしくなったりします。その逆もしかり。
ああ、聞いてしまいたい。
「お久しぶりです。ところで、教えてほしいのですが、あなたにはどんなわたしで接していましたでしょうか」
相手側に寄って、無理感強めで頑張ることにより、「頑張ったから認めてもらえた」という達成感と安心は得られますが、無理パターンを積み上げ続けると、頑張った自分じゃないと認めてもらえない→頑張らないと今まわりにいる人が離れていく→もっと頑張らないと自分なんて無意味……という悪循環に足を踏み入れてしまいます。あいさつひとつで、変に思われたのではないか、嫌われたのではないかと自分の情緒不安定さに振り回される日々。自己肯定感はペラペラです。たかがあいさつ、されどあいさつ。
さて、先日、少し遠くに出かけたときの朝ごはんのこと。旅館の朝ごはんってやけにおいしいですよね。生たらのこ、納豆、しそ昆布になめたけおろし。ごはん茶碗はすぐ空っぽです。いそいそとごはんをおかわりしにいったところ。
「おかわりしたの? えらいねぇ」と言われました。
もちろん、ごはんをおかわりするのがえらいわけじゃないですし、普段は朝ごはんなんてとても食べられないのですが、なんでもないようなことを軽いテンションで褒められると、言われた側はちょっと調子にのって元気になれるぞ、ということに気がつきました。そもそも、大人になってからおかわりで褒められることなんてそうないので、その日は一日中ご機嫌でした。自己肯定感とは、こんな単純なことの積み重ねなのかもしれません。
というわけで、最後に同じように言ってみますね。
「今日もちゃんと起きて顔まで洗ったの? えらいねぇ」
Aico Narumiya
朗読詩人。「生きづらさ」や「メンタルヘルス」をテーマにした詩の朗読をしたり、文章を書いている。朗読ライブが『スーパーニュース』や『朝日新聞』に取り上げられ、新潟・東京・大阪を中心に全国で興行。赤裸々な言動により、たびたびネット上のコンテンツを削除されるが絶対に黙らないでいようと心に決めている。趣味はアイドルとプロレス。