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トップコラム 朗読詩人 成宮アイコの「されど、望もう」第5回「あなたとわたしのドキュメンタリー(初書籍のお知らせ)」

回「あなたとわたしのドキュメンタリー(初書籍のお知らせ)」

第5回「あなたとわたしのドキュメンタリー(初書籍のお知らせ)」

2017.09.01

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 突然ですが、書肆侃侃房さんから書籍が出ることになりました。こんにちは、朗読詩人の成宮アイコです。
 わたしは14年ほど『こわれ者の祭典』というパフォーマンス集団に参加しており、元ひきこもりや、元うつ病や、わたしのような社会不安障害などが集まって、自分たちの病気経験や、過剰すぎる自意識が引き起こした恥ずかしい黒歴史を朗々と話して笑うという、ちょっとアレなイベントを開催しています。病気だよ、全員集合!
 結成2年目だったでしょうか、一体どうしてそうなったのか、嵐の櫻井翔さんが『こわれ者の祭典』の取材に来てくださいました。当時、すでにトップアイドル。だがしかし、青春時代を病気に捧げた暗いメンバーが勢ぞろいのこわれ者。わたしを含めメンバー全員、だれも櫻井さんを知らず、「嵐さんっていう方が来るはずなんだけど、違う方が来てるよ」と、現場にザワっとした空気が流れました。いま考えると恐ろしいです。
 そんな人たちでも、1日ずつ生きのばしていけばなんとかなるもので、「特定の数字が苦手で、その歩数で目的地に着くと悪いことが起こる気がする」という強迫神経症の症状に、「超わかる!」と食い気味で言われたり、「人がイスに座っている部屋に入ると冷や汗が出る。でも、立っている場所はわりと平気」という社会不安障害の症状にも、「あるある〜」と笑われたりしていたら、「ああ、わりとみんな大丈夫じゃないんだな」と妙な安心感を積み重ね、完治はせずとも、苦しいときにやりすごす手段をたくさん身につけました。
 単独での活動も合わせると、人生の半分近く生きづらさ界隈に関わっていることになりますが、最近、ライブハウスで朗読をしたあとに一見イマドキな方が「実は自分も…」と話しかけてくれて、もしかしてわたしは幻想のまともを目指していただけで、実際、世の中のまともの基準値ってめちゃくちゃ低いのかもしれないぞ、と思ったらほっとして笑ってしまいました。これまで、自分以外の人間は全員スーパー偉人に見えていたので、「わりとみんな大丈夫ではない」という事実は最強に効きました。わたしが先にダサいところをさらけだしておくからさ、それを見て同じように思ってもらえたらいいな〜。大丈夫、365日大丈夫な人なんていない。
 書籍にはこういった人生歴と、ライブで読んでいる詩を数点収録してもらいました。タイトルは『あなたとわたしのドキュメンタリー』。
 自分にとっての毎日は、確かに自分の人生なのだけど、同じ毎日も別の誰かにとっては誰かの人生。別のものなのに、お互いに踏み込んだり踏み込まれたりして、このコラムを通して数分でも交わる瞬間があったりして、おはようとかおやすみの挨拶だけじゃ足りない毎日をくり返して、訪れる文字数制限という強制終了には抗えなくて。でも、これからも続くわたしたちの毎日はロングランのドキュメントなので、また来月号で1300文字分の交わりができたら嬉しいです。またね。
 
  「今度こそもうだめだ」と繰り返し続けた毎日は
  ちゃんとあなたを今日に連れてきた
  今まで垂れ流してきたすべての孤愁は
  ちゃんと自分自身の味方だったのだ
 

成宮アイコ&青山祐己 
「されど、望もう」@新代田FEVER

 
Aico Narumiya Profile
 赤い紙に書いた生きづらさと人間賛歌をテーマにした詩や短歌を読み捨てていく朗読詩人。こわれ者の祭典・カウンター達の朗読会メンバー。朗読ライブが『スーパーニュース』や『朝日新聞』に取り上げられ、新潟・東京・大阪を中心に全国で興行。赤裸々な言動により、たびたびネット上のコンテンツを削除されるが絶対に黙らないでいようと心に決めている。「詩の朗読であなたを人生の当事者にしたい」
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『あなたとわたしのドキュメンタリー ─死ぬな、終わらせるな、死ぬな─』
成宮アイコ・著

定価:本体1,500円+税
ISBN978-4-86385-277-8 C0095
出版社:書肆侃侃房
2017年9月20日発売
巻末に雨宮処凛との対談収録

amazonで購入

どうか、自分の気持ちをかき消さないでいてほしい。言葉にできないときは、かわりにわたしが叫んでおくから、あなたの存在をなかったことにしないでほしい。できるだけ絶対に、死なないでほしいのだ。いつか、『その気持ち分かるわ』って笑い合いたい。笑ったときに脱力するようなあの気持ちを一緒に味わいたい――
全国で朗読ライブを続ける詩人・成宮アイコが叫ぶ言葉は、普遍的に「生きづらさ」を抱える多くの現代人の共感を呼んでいる。その全力のメッセージをつづったドキュメントエッセイ。
巻末に作家・活動家の雨宮処凛との対談を収録。


【帯文より】
生きるのが辛いのは、生きたいからだ。
言葉を憎むのは、言葉を愛したいからだ。
成宮アイコは、生を、言葉を、愛し憎む。
――松永天馬(アーバンギャルド)

アイコさん。生きててくれてありがとう。
言葉を吐き出してくれてありがとう。
私だけじゃない。この本を読んだ誰もがそう思うはず。
――香山リカ(精神科医)

成宮アイコ w/青山祐己
ライブ版「あなたのドキュメンタリー」

M1 - されど、望もう / Hello,The New World!
M2 - 4 文字じゃ足りない / りゆう
M3 - あなたのドキュメンタリー / 幻の隣に

録音:2017,01.24 新代田 FEVER
ライブ会場でのみ販売中

LIVE INFOライブ情報


▲クリックで拡大
9月16日(土)新潟県民会館
『ひきこもりと地域のひとのしんぽじうむ』

編成:成宮アイコ(朗読)+青山祐己(pf, vo)

9月30日(土)ONLY FREE PAPER ヒガコプレイス店(東京都小金井市)
『主観が作るライブショー』

編成:成宮アイコ(朗読)+タダフジカ(gt, vo)+Tokin(ライブペイント)

10月8日(日)釜ヶ崎三角公園(大阪西成区)
『釜ヶ崎ソニック2017』

編成:成宮アイコ 朗読3ピース

10月14日(土)おんがくのじかん(東京都三鷹市)
『8周年記念ライブ』

編成:成宮アイコ(朗読)+青山祐己(pf, vo)

10月21日(土)北書店(新潟県新潟市) 刊行記念トーク&ライブ
編成:成宮アイコ(朗読)+いかし(ふともも自殺)

▶︎詳細は全てこちらのサイトまで

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