この文字の色、白ですよね? こんにちは、朗読詩人の成宮アイコです。
自分が見えている白と他人が見えている白って同じ色なんだろうか、と考えることないですか。白には赤がいいな、と思って選んだ今日の服も、「これは白だとわたしが思い込んでいるだけで、他の人にはわたしの世界の白が緑かもしれない。そうすると赤に緑なんてクリスマスカラーになってしまうぞ…」と心配になったりします。でも誰からも、「メリークリスマス!」と声をかけられてはいないのでおそらく大丈夫だとは思うのですが。いや、でもこの原理で言うと、そもそもわたしが知っているクリスマスカラーは実は他の人から見たらモノトーンかもしれないわけで。なんて議論をしているとわけがわからなくなるのでここでおしまい。
つまり、いくらインスタ映えする3Dラテアートをカフェで注文しようが、死ぬまで一緒にいようねとか言った恋人同士が隣に座って獅子座流星群を見ようが、同じものが見えているとは限らないのです。他人の目でそれらを見ることはできません。それぞれの目で見た世界しか認識できません。
視界だけじゃなくて感情も同じです。なにか取り返しのつかない失敗をしてめちゃくちゃ怒られたとき、「や〜、怒られちゃって、また失敗しちゃった」って笑いながら言ったりしちゃいません? 頭をコツンとして舌をペロって出しているLINEスタンプとか使いません? 本当は恥ずかしさと自己嫌悪で泣きながら逃げ出したい場面なのに。
だから誰かの弱音に、「簡単に死にたいなんて言うな」なんて簡単に言っちゃだめだよなと思います。その人にとってはすがるような思いで漏らした本音かもしれない、という可能性を忘れないでいよう。過労死するまでもらえないねぎらいも、自殺をしてからの「相談してくれれば良かったのに」という優しさのふりも、そんなの全部反則だよ。
感性や感情の部分について、「それは〇〇って言わないよ、△△だよ」なんていうジャンル分けとか区別とか分類とかされると、そういうのまじでどうでもいいんだけどなーと心の中で思っています。同じ色が見えているのか不安な気持ちも、「それわかるわ〜」って言われたら安心するように、繋がり合えば大丈夫じゃなくてもやり過ごせるかもしれない。だから分断しちゃだめだ。でもその反面、壁をすべてとっぱらおうとするのはもっとだめだとも思っています。内側(あるいは外側)にとって、その壁は大切で必要かもしれないのです。
わかりにくいですよね。たとえば、わたしはシイタケが超嫌いなのですが(裏側の細かい模様が気持ち悪いから)、シイタケが大好きな人もいるのを知っていますし、シイタケ撲滅! なんて願ってもいません。スーパーに普通に売っているのも当然です。でもわたしは絶対食べないし、シイタケ大好き派にはならない…というのが「受け入れ」です。多様性〜!
その壁に、まずは敬意をもってノックをして、手順に沿ってドアを開けて、あなたと手を繋ぎたい。だから、こうして言葉をかけたいんだよ。あなたとわたしは同じ色が見えていないかもしれないけれど、同じ世界で生きている。もともとすべては地続きなのだから。
あなたが真夜中に呟いてから消したあの汚い言葉は、
何度も書き直して整えられた文章の、何倍も美しかったよ。
「されど、望もう」朗読バンド形態
(Pf,Vo:青山祐己、Dr:Mr.tsubaking)
@新宿JAM 2017.07.24
■成宮アイコ:赤い紙に書いた生きづらさと人間賛歌をテーマにした詩や短歌を読み捨てていく朗読詩人。こわれ者の祭典・カウンター達の朗読会メンバー。朗読ライブが『スーパーニュース』や『朝日新聞』に取り上げられ、新潟・東京・大阪を中心に全国で興行。赤裸々な言動により、たびたびネット上のコンテンツを削除されるが絶対に黙らないでいようと心に決めている。「詩の朗読であなたを人生の当事者にしたい」