最近、男の娘の恋人ができ、気軽に家に彼女を招きたいので、引っ越すことに決めた。
いまの自宅は事務所兼用という感じなので、他人の出入りが激しく一緒にのんびり過ごすのには落ち着かない。だから、完全に一人だけが使用する自室を作る目的の引っ越しだった。
ボクは特に引っ越しマニアというわけでもないので、どこかへ環境を移すということは何年かに1回といった感じだ。基本的にめんどくさがりなので、部屋探しや荷造り、引っ越し業者の手配などを考えると、もうどれだけその家に不満があろうと、その場に留まっているほうが楽だと思えてきてしまう。
だから、本当に今回のように必要に迫られる状況がなければ、やる気も起きない。
そういえば、誰かと付き合うという経験が久しいので、そんな感覚を忘れてしまっていたなと思う。以前、このルーフトップのコラムに、彼女と出会ってからお金を稼ぐことを意識するようになったと書いたことがある。
ボク自身はお金なんてものにはまったく興味がないし、食うに困らなければ特に欲しいものなんてない。ただ、彼女が困ったとき、なにかに不安になったときにお金で解決できるものであれば、ボクが支えてあげたいという思いがあり、最近は多少稼ぐようになった。
家もそうだろう。ボク一人ではどんな家に住んでようが気にならないが、誰かが毎回訪ねてくるとなると話は別だ。いまのところ彼女が一緒に住める状況にないので、小さなワンルームにいるつもりだが、もし、この先一緒に暮らすとなると大きな部屋に引っ越す必要も出てくるだろう。
思うに、環境を変えるときというのは、何かが関わるときなのだと思う。結婚や出産などが良い例だろう。大学に入る、就職するというのもそうかもしれない。しかし、その新しい要素は次第に自分の一部になってしまう。その状態が当たり前になると変化が必要なくなる。自分一人で引き籠って暮らす分にはどうだっていいことだ。
めんどくさがりのボクだが、実のところは変化を望んでいる。なにも変わらない日常がダラダラと続くことは、窓を締め切った室内と同じで、空気がよどむ。次第に環境が悪化していっているのだが、ずっとそこにいると、その変化に気づかない。ちょっとずつ落ちていくような感覚。
だから、ホントのところは誰かと関わり続けたり、自分で自分の生活に変化をつけるほうがいいのだが、まぁ、正直めんどくさい。実のところはみんなそう思っているに違いない。
だから、「この人のためにがんばらなきゃ」と思えるような、そんなお尻を叩いてくれるような存在がいるといい。ボクにとってはそれが彼女だったのだろう。
彼女の好きな部分を挙げるとキリがない。綺麗で、かわいくて、笑顔が素敵で……だが、一番好きなところは『ボクを本気にさせてくれるところ』なのだろうなぁと思う。
大島 薫
1989年6月7日生まれ。ブラジル出身。ノンホル(女性ホルモン未使用)、ノンオペ(性転換手術をしていない)を公言している、純粋な男の子。Twitterフォロワー約15万人を誇る。女性よりも可愛らしい容姿を武器にセクシー女優として活躍していたが、2015年6月に引退。現在はマルチタレントとして幅広く活動中。