新宿の駅構内で電車待ちをしていると目の前の大きな看板が目に止まった。その看板にはこちらを見つめる妖艶な女性と赤やオレンジ色に染まった葉っぱがひらひらと舞い踊り、真ん中に『運命を狂わすほどの恋を、女は忘れられる』と。その時、その言葉にすごく鳥肌が立ち言葉の意味にも共感したことを覚える。2014年秋、LUMINEの広告。それから電車を待つときには無意識にLUMINEの広告を探すようになり、見つけては言葉の視点や意味に心を奪われている。その言葉の数々を作り出す“コトバの魔法使い”がコピーライターとして活躍をする、尾形真理子さん。
わたしは勝手に彼女を“コトバの魔法使い”と心の中で呼んでいる。とにかく尾形さんの言葉にハッとさせれられることが多く、2019年最新の「永遠の愛はなくとも、ずっと好き。」はもちろん、「わたしには、わたしを素敵にする責任がある。」や「運命は、生まれた日ではなく 選んだ服で変わると思う」も個人的にとても好きな尾形さんのコトバで、看板を見つめながら短い言葉の中にも物語があり、続きを想像したり、自分自身に置き換えたり、“確かに”と納得というか、腑に落ちることもよくあって足を止めてしまう。そんな“コトバの魔法使い”である尾形さんの小説作品を今回は紹介したい。
新しくお洋服を買ってみるのも…悪くないかも。
試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。 / 尾形真理子
幻冬舎文庫
恋愛に対して、不安や悩みを抱えた5人の女性が、渋谷にある“closet(クローゼット)”というセレクトショップでそれぞれの女性たちが自分に似合う“運命の一着”に出会い前向きな一歩を踏み出していくというオムニバス形式の作品なんですが、実はわたし自身“THE恋愛小説”があまり得意ではなく…正直、手にしたときもはじめは「…いや、“恋してます!”みたいな甘ったるい内容はな。」と思い、何度も本棚に戻すこともあったんですがどうしても気になってしまい…手にしてからは尾形さんにコトバの魔法によって、よく読み返す作品になっている。(甘ったるさを感じないので普段、恋愛作品が苦手な方にオススメをしたい!)
涙をこぼすような恋愛は、もうしないと思っていた。
感情は、年を取らないのかもしれない。対処の仕方が大人になっていくだけで
アパレルの店長として務めていた頃に本作品に出逢えたのはわたしの中でとても大きかった。作品と出逢う前までは、とにかく“売上”としての数字ばかりを見ていたわたしにとって、目の前のお客様を大切に、その先のことを考えてコーディネートを考え寄り添うという接客スタイルにも変わったきっかけでもあり、純粋にわたし自身も毎日のお洋服をどうに組み合わせて店頭に立とうか、あのお洋服にはこんなヘアスタイルで合わせよう、この色味に合わせたネイルとリップ、など毎日がすごくキラキラして見えるようになった。そして、恋愛に対して執着があまりないんですが、この作品を読んでいるときだけ“恋愛って悪くないかも”って思えちゃうんですよ、ね。とくに、エピローグを読んでいると“いつか大きく包み込んでくれる人に出逢いたい!”と願ってしまいそうになる。(わたしの中の女の子がキラキラ輝く感じ。笑)
この物語の最後は、読んでいる“あなた”が想像して、描いていく作品でもある。大切なひとがいるあなたはにも、恋愛で心がすっぽりと抜けてしまったあなたにも、ぜひ読んで頂きたい。(男性は“女の子ってこんな風に思ってお洋服を選んでるんだな”って思いながら、大切な子と会ったら更に愛おしく思えると思う!)
恋愛に“格好良い”も“ダサイ”もないんだから臆病にならず、好きな気持ちは相手に伝えたい。たぶん、「好き!」って言われて嫌な気持ちになる人はいないと思う。例え、気持ちに応えられなくでも“嬉しい”とか“有難い”みたいな気持ちは少なからず抱くと思うから。あとは、我慢ばかりしてないでちゃんと欲しがるに、欲しがられる女になりたいね。
“THE恋愛小説”なタイトルだけど、尾形真理子さんの言葉のセンスに心を奪われる。「恋かもしれない」じゃなくて、「恋だと思う」って言い切っている潔さに惹かれた作品。
さて、今日こそ新しい服でも買って古い自分を捨てようかな!あなたも今日は自分のお気に入りの一着に袖を通して外に出てみない?
文章:おくはらしおり SNS:https://pomu.me/okuhara1990/
サムネイル:makiko orihara Twitter:@mo_orih