絵恋ちゃんの ああ えらそうに コラムが書きたい
もし、電車の中で突然「うわあ!」と大声を出してマスクを吹っ飛ばす人と乗り合わせた場合、あなたならどんな反応をしますか? わたしは先日そんな体験をしました。マスクを吹っ飛ばす側です。
その日わたしは、いつものように電車に乗り、いつものようにポケットからiPhoneを取り出し、いつものようにゲーム『邪神ちゃんドロップキックねばねばウォーズ』、通称『ねばウォ』をやっていました。「また『邪神ちゃん-全裸』か。『遊佐-着物』来いよ」 そんなことを考えながらゲームをしていると、ふと視界の端に黒い影が見えていることに気づきました。マスクに何かついているようです。家を出る時に急いでいたから、ヘアゴムか何かがひっついてきちゃったのかも…そうだったら恥ずかしいなと思いながら、その何かを掴んだ瞬間、その感触が脳に伝達するよりも先にわたしは叫んでマスクを吹っ飛ばしました。
先ほど「うわあ!」と書きましたが、正確には「うわびくした!!!!!」だったかもしれません。マスク着用必須の世の中で、いきなりマスク吹っ飛ばし女が現れたのですから、車内は緊張感に包まれます。ノーマスク派閥のアピール活動だとしてもかなりトリッキーな部類です。比較的空いている時間帯だったことが不幸中の幸いでした。吹っ飛ばされたマスクと、たまたまマスク飛ばしに遭遇してしまった乗客たちと、マスクにくっついていたカナブンがこちらを見ています。
カナブンは虫嫌いの人たちの間では、それなりに強いのに出現しやすい、レア度は低いですが安定感のある存在です。『ねばウォ』で例えるならちょうど『ゆりね-ゴスロリ』あたりでしょう。そんなカナブンが、他人のマスクに勝手にくっついてきておいて「なんか吹っ飛ばされたんだが?」という様子でわたしの前でもぞもぞと動いています。わたしは追加で叫びたい気持ちをおさえ、とにかく、替えのマスクをつけました。そしてギリギリで正気を保ち、なんともないような顔をすることに注力しました。さて、床に飛ばしたマスクを回収しなければなりません。ぐったりと横たわるマスクは両方の耳ひもがちぎれていて、事件の激しさを物語っています。すぐそばにカナブンがいて「ブジジ」と言ってきてますので、こちらも慎重になって、持っていた折りたたみ傘の中棒を伸ばしてマスクを引き寄せ、なんとか回収することができました。
いつからマスクについていたのか。想像力が働かないようにこんなにがんばったことはありません。何も考えたくない。そもそもわたしは異常なまでの虫嫌いで、その日も、家を出た時に玄関にいたカミキリムシをものすごく避けてここまでやってきました。今となってはすべてが水の泡です。わたしは仲間をさがして安心したい一心で、すぐに「カナブン マスク」で検索しました。わたしは一人じゃない。結構いる。マスク会社はすぐにでもカナブンのつきにくいマスクを開発すべきです。今はどんな褒め言葉よりもカナブンがつかないマスクが欲しい。マスクにカナブンがついてないすべての人間が勝ち組に思えます。わたし、カナブンにとって何か不都合になることしましたか? してないと思います。なのにどうしてこんな目に遭うのでしょうか。わたしは毎日こんなにがんばっているのに。
本当にわたしはがんばっているのでしょうか。何か至らない部分があり、カナブンマスクの被害に遭ったのではないでしょうか。もしかすると、これかもしれない。わたしは2カ月放置してしまったコラムの存在を思い出し、慌ててコラムを書きました。
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