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寺尾紗穂 / 楕円の夢

2015.04.23   MUSIC | CD

PCD-28026 / 2,800yen(tax in)

1.停電哀歌
2.迷う
3.風と小説
4.朝になる
5.いくつもの
6.愛よ届け
7.リアルラブにはまだ
8.私の好きな人
9.あの日
10.楕円の夢

 ローラ・ニーロ、ティン・パン・アレー 系など1970年代からの流れを汲むシンガーソングライター寺尾紗穂は「路上の音楽家」なのだと思う。それは駅前で演奏するとかいうことではなく、彼女の歌が路上で出会った人達から生まれることが多いという意味でだ。例えば、山谷で出会った土方のおじさんをモデルにした「アジアの汗」。原発で被曝した労働者のことを歌った「私は知らない」(ちなみに私は前作に収録されている「私は知らない」を初めて聴いた時、自分の見ていた世界が一変する程の強い衝撃を受けた)。ライブにおいても、THE BIG ISSUE販促のためのイベント「りんりんふぇす」、あるいは脱原発のデモ中に歌うことも多く、彼女自身そうした場所が好きだという。
 3年ぶりとなるこのアルバムでも寺尾紗穂の創作に向かうのが常に自分の手に触れる場所(ローポジション)であることが伝わってくる。私がとりわけ感銘を受けたのは8曲目「私の好きな人」だ。「私の好きな人は片手のない人です」という出だしで始まるこの曲は後半「私はあなたになれなくて さいごはいつももらいなき」と歌われる。自分の隣人に対して寄り添いながらも決してすべてを理解することはできないというジレンマ。そんな時、その人の孤独な叫びをただ黙って受け止め、もらい泣きしているのが寺尾紗穂というアーティストなのだろう。だからこそ彼女の歌う曲は限りなくやさしく、そして強い。(加藤梅造)

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