前作『夜のとなりに笑い声を』から1年半ぶりとなる3rdミニ・アルバム。タイトなアンサンブルと波間に小舟がたゆたうようなメロディが心地好い1曲目の「24時の合図」からいきなり不意を突かれる。いわゆるマス・ロック的な変拍子を多用した複雑なリズムと緻密なアレンジというポッグらしさは健在なのだが、従来の作品と比べて音数がだいぶ削ぎ落とされたせいか、清涼感溢れる和田貴之の歌がより際立ったように感じるのだ。とりわけ、夏の夕暮れを想起させる音色の「それでも」や浮遊感漂う「寝返りを100回」では瑞々しさと叙情性が一体となった和田の歌声の素晴らしさを存分に堪能できる。とは言え完全に歌ものに特化したわけではもちろんなく、性急なリズムとファルセット・ボイスが拮抗する「忘れものが届く日」などはまさにポッグの真骨頂と言うべき一曲。最後の最後に仕掛けられたイタズラと呼ぶにはあまりに惜しい逸品も含め、彼らの転機となる重要作だ。(Rooftop:椎名宗之)