1話ずつ、毎回びっくり。最低な人と優しい人が毎話入れかわり、記憶と現実が結びついたときに息を飲む
自動車事故で、「前向健忘症」をわずらってしまい記憶が保持できない主人公・ミーは森の中で血だらけで発見され、精神科閉鎖病棟へ収容される。入院中のミーに警察が事情聴取にやってくる。ミーが関わっていたとある男が失踪し、重要参考人になっていたのだ。しかし、まったく記憶のないミー。自分は事件に関わっているのか、その男は何者なのか。ミーの過去、そしてまわりの人がとった言動の真実がゆっくりと紐解かれていく…。
精神科閉鎖病棟が舞台のひとつでもあるため、非現実的な部分が出てきたりするもSF要素はゼロ、超現実的なことだけですべて回収されるので異世界が苦手な人でも安心。主人公・ミーがわずらっている「前向健忘症」の症状で、妄想と現実があやふやになって、誰のいつの記憶(あるいは妄想)なのか走馬灯のようにイメージがめぐっていくシーンは、ドラッグ映画の『レイクイエムフォードリーム』を思い出すような恐怖そのもの。え、うやうやしく話してるけど、それって妄想じゃない? そう、主人公のことすら信用できなくなるのだ。だんだん見ている側もパニックになってくる。誰も信用できない! みんな嘘をついている気がする! どれが現実なの!
毎回少しずつ明らかになっていく過去は、「なにこいつ、最低じゃん!」と、「ええ……こんなの可哀想」と、「やっぱりいい人だったんだ、てことは悪いのはあの人!?」が、話しごとに上書きされていくため、ゆっくりと進むストーリーに釘付け。不穏なターゲットが順番に入れ替わっていくので、誰ひとりとして思い入れることができない。
「な〜んだ簡単じゃん、真実がわかった!」と思っては、「いや、やっぱり全然わかってない」の繰り返し。ちゃんと毎話ごとに驚き続け、最終話のドンデン返しまでスリル満点で見続けました。記憶と現実が結びついたとき、優しさだと思っていたことがストーリー史上最低の行動だったりするので、全シーン見落とさないで。
イヤミス的不快感ですら、最終話にいたるまでに知ったそれぞれの登場人物の背景を想うと胸が痛む、つらい。全9話、見終わったあと、目に見えている世界に疑心暗鬼になってしまうこと要注意。
でも大丈夫、これはドラマだから……多分。(成宮アイコ)
ドラマ『タブラ・ラサ 隠された記憶』
製作年:2017年
製作国:ベルギー
Netflix配信日:2017年
全9話